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全国約2900店舗、約19万人のクルーが主役。日本マクドナルドが「人を大事にする」採用を徹底している理由

全国約2900店舗、約19万人のクルーが主役。日本マクドナルドが「人を大事にする」採用を徹底している理由

23th Jun, 2022

“ハンバーガービジネス”ではない、パーパスを実現する“ピープルビジネス”

マクドナルドでは、人を大事にすることこそ、自分たちのビジネスという考え方を大切にしているそうですね。どういった考え方なのですか?

マクドナルドの創業者レイ・A・クロックは「マクドナルドはハンバーガービジネスではない、ハンバーガーを売っている“ピープルビジネス”である」という言葉を残しています。ハンバーガーを売ることではなく、ピープルビジネスを通じてハンバーガーを売る。それこそが自分たちのビジネスだと捉えていました。

私たちは、パーパスとして「おいしさと笑顔を地域の皆さまへ」を掲げています。これを実現するには、クルーがみずからお客様に「良いサービスを提供したい」と考え、行動することが必要です。そしてお客様に「このお店、いい雰囲気だな、また来たいな」と感じてもらう。つまり、まず従業員の成長や活躍があり、お客様に価値を提供した結果、最後に実る“果実”がビジネスの成長なのです。

「人を大事にする」と掲げる企業は多いと思いますが、私たちはそれ自体をビジネスと捉えています。

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宮沢泰成 日本マクドナルド 人事本部 フィールドHR部 マネージャー。1994年に日本マクドナルドに入社、新宿歌舞伎町店などの店長を務め、店舗運営やクルーのマネジメントに従事。本部でのマーケティングを経て、2015年8月より現職。

そんな「ピープルビジネス」において、宮沢さんの担う役割を教えてください。

私は、クルー採用の担当として、もう一人のメンバーとともに、クルーのブランディングや店舗の採用支援に取り組んでいます。また、新たな採用手法の開発や、オウンドメディアからの応募促進なども行ってきました。

一言で言うなら、私の役割は店舗を支えることです。マクドナルドの最も重要な場所は店舗です。なので、店舗で働くクルーが主役。マクドナルドにとって、クルーが一番大事な存在で、経営陣も、本社も、クルーを支える立場にあると考えています。実際に社内では、本社を「ナショナル・レストラン・サポート・オフィス」と呼んでいるんです。

「クルーが主役」という考え方が、組織の名称にも体現されているんですね。

はい。例えば役員会議でも、「店舗に情報を“おろす”」といった言葉遣いは許されません。店舗で働くクルーは、情報を“上からおろされる”立場ではないからです。この考えこそが、マクドナルドのコアコンピタンスです。

「本社は、店舗を支える立場なのだ」と常に意識しています。自発的に働くクルーがいて、お客様に喜んでいただいて初めて、マクドナルドのパーパスが実現できるわけですから。

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(ピープルビジネスの考え方について表した図。働きやすい職場環境が土台にあり、従業員のエンゲージメント向上やバリューの体現、顧客サービスの向上が実現され、最後にビジネスの成長へと結実する)

「この店で楽しく働ける……?」初バイトなら必ず下見に来る

店舗で働くクルーを大事にし、活躍や成長を支えるために、具体的にどういった取り組みをしているのですか?

ベースは、働きやすさと働く楽しさの担保です。“Fun place to work”を提供する、という言葉で表しています。一人ひとりのクルーにとって働きやすく、充実した職場環境を用意しようと取り組んでいます。

そのための要素はいくつかあります。最も重要なのは、シフトやスケジュールの柔軟さ。高校生から幼稚園のお子様がいる主婦の方まで、できる限り多くのニーズに寄り添えるよう、店舗のクルー数や曜日や時間帯ごとの売り上げ予測、属性による働き方のパターンなどを踏まえてベストなシフトを組んでいます。

シフトの構築を含めて、店長のリーダーシップも大事です。店長の仕事ぶりや人柄は、クルーの仕事への愛着や意欲を大きく左右します。そこで、リーダーシップやマネジメントを学べるよう、本社に設けている研修機関『ハンバーガー大学』で複数の教育コースや教材を提供しています。

実は店舗の清潔感や雰囲気も、クルーの働きやすさに大きく影響します。これらはお客様にとってはもちろん重要ですが、クルーにも大事な要素です。クルー同士や店長とのコミュニケーションがスムーズだと、店舗が生き生きとしてきますね。

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(本部と同じビル内に「ハンバーガー大学」を設置。アジアでは日本とシンガポールにある)

店内の雰囲気は、顧客に対してだけでなく、採用の観点でも重視されているんですね。

そうなんです。例えば、人生で初めてアルバイトに応募する高校生は、絶対に一度は店舗を下見します。カウンターでポテトを食べながら、クルーや店長の一挙手一投足を見ているんですよね。そこで「厳しそうだな」と感じると、応募を辞めてしまうし、逆にクルーが楽しそうに働いていたら、応募する気持ちが高まります。

さらに、雰囲気の良い店舗は、自然とリファラル採用も増えていきます。「バイトを始めたい友達がいるから紹介してもいいですか?」と、クルーが新人さんを連れてきてくれるんですね。紹介した側のクルーが、紹介された側の新人クルーのメンターを務めてくれるので、離職も起きづらい。雰囲気の良い店舗ほど、リファラルで採用をまかなえるし、クルーも長く働いてくれる。その意味で、本社として採用を支援するわけですが、やはりここでも主役はクルーであり店舗なんです。

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各店舗ではタブレット学習も導入。各クルーが自分のページにアクセスしてトレーニングを受けたりするほか、クルーと店長間のコミュニケーションにも活用している

立場の異なる外部の会社ともKPIを共有し、改善する

クルーの採用に向けたコミュニケーションについても、詳しく伺いたいです。先ほど「店舗の採用状況をデータで把握している」というお話がありましたが、具体的にはどのように?

フランチャイズも含む全国約2900店舗において、現状の人数や採用が必要な人数をダッシュボードで把握し、戦略や施策に役立てています。

私が人事本部に異動した2015年ごろまでは、各店舗のクルー数くらいしか把握できていなかったんです。全店舗のうち7割ほどがフランチャイズなので、他社の従業員の情報を私たちが管理するのは難しいのでは意識がありました。

ですが、データで客観的に採用状況を把握できず、的確に施策を打てなければ、人が足りない状況が起こってしまう。結果として、各店舗のお客様に迷惑をかけてしまいます。

そこでフランチャイズの事業主のみなさんに、採用の改善のために必要だと伝えてご理解いただき、現状のクルー数や不足人数などを把握するためのダッシュボードを作成しました。必要なクルー数や「足りない」と判断する基準などは、各店舗の事情を踏まえて、お互いに納得できる数字を定めています。
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データにもとづいて、フランチャイズの事業主とも協力しながら採用状況を改善する上で、意識していることはありますか。

やはり、立場が違うと利害の観点も違います。なので、データをどのように評価し、改善するのか、丁寧に議論して合意することを大事にしています。

例えば採用であれば、お互いにとって納得できるKPIをどこに置くのか。フランチャイズの方々にとっては「クルーが採用できたか」が重要です。私たち人事本部が、応募人数やサイトのアクセス数など、いわば途中経過の数値を勝手にKPIに設定して、「応募人数は達成しました!」と言っても、採用人数が増えていなければ納得できないでしょう。

一方、採用のプロモーション実施やサイト制作など、役割ごとにお願いしている外部の協力会社の方々とは、応募人数やアクセス数を含めてなるべく多くの指標をともに評価できるほうがいい。実際、採用状況や達成度合いを毎月共有して、PDCAを回しています。
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安心して応募してもらえるサイトを追求し、応募率アップ

高校生や主婦の方だけでなく留学生、シニアの方も店舗で働いていらっしゃるかと思います。採用サイトも、多種多様な方が訪れますよね?

そのとおりですね。なので、多様なインサイトや属性に合わせて、どのように最適な情報を届けるかは、これまでも試行錯誤してきました。

例えば「応募コンシェルジュ」というサービスでは、「朝だけ働きたい」「子育て優先でシフトを組みたい」などの要望を電話でお伺いし、それらと合致する最適な店舗をオペレーターが提案しています。

他にも、学生時代に働いていたというクルーに今改めて応募してもらえないかと考え、歴代のユニフォームを紹介するページを作ったこともあります。

そうした顧客の属性やインサイトに合わせた対応や施策から、一定の成果を得られていたわけですね。

一定の成果はありましたが、このような方法を続けられるかというと、難しさを実感していたのも事実です。それが、KARTEを導入した背景でもあります。

例えば、以前は開発環境の事情で、一度試して反応を確かめてから細かく修正するといった運用が難しかったんです。本番環境に実装するしかないので、ひたすらコンテンツが増え、次第に収集がつかなくなる。まるで増築を繰り返した温泉旅館で、迷路のようになっていました。属性やインサイトに合わせてコンテンツを出し分けたりして、届けたい顧客に最適な情報が届く状態をつくれたらと思っていた折に知ったのが、KARTEでした。

私たちはあらゆる応募者、求職者が安心して応募できるサイトを実現したいと考えています。顧客一人ひとりを丁寧に知り、合わせた体験を届けるというKARTEの思想に共感したことも、導入の後押しになりました。

そうだったのですね。これまで実施した施策には、どのようなものがありますか?

例えば、サイトを訪れて一定時間が経過すると、電話応募を案内するポップアップを出しています。ここには、応募フォームに長時間滞在しているのは、ネットに慣れていない方かもしれないという仮説があります。ネットとは別の応募方法を案内してあげられないかと考えたのです。

他にも、伴走してくれているプレイドさんを中心に、私たちだけでは思いつかない施策を提案してもらって非常に助かっています。最近だと、「来訪2回目の方は応募を迷っているかもしれないから、応募を急かすのではなく、それぞれの属性に合ったコンテンツを提案してサイト内をじっくり回遊してもらうほうがいいのでは」と提案いただいて。

その仮説のもと、高校生、大学生、主婦の方、シニアの方、また外国人の方というセグメント別のインタビュー記事へ誘導するポップアップを出しました。結果、再来訪率とポップアップをクリックした人の応募率の向上につながりました。

これまでに感じている効果や手応えを伺えますか?

まず、素早く施策をテストできるようになったのは大きいです。効果も見やすくなったため、改善のスピードが上がりました。また、応募数が足りない理由を探るための指標を数多く得られるようになりました。

施策の手応えも感じています。来訪した方のサイト経由での応募率は、導入前と比べて上昇しています。コロナ禍の影響でWebでの応募が増えたことも影響しているとは思いますが、着実に改善していると感じます。

一方、このまま施策の設定を重ねた結果、一つのページに表示されるポップアップなどが増えすぎてしまうと、サイトの閲覧を妨げてしまう可能性もあります。十分に効果が検証できたボタンやコンテンツはサイトに実装するなどして、訪れた方の体験を損なわないようにしていきたいです。
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店舗の魅力が伝われば、クルーの応募者も増える

今後、クルー向けの採用サイトをどのように改善していきたいですか?

私たちが目指したいのは、安心して応募できるサイトを作ることです。KARTEからは、そのためのヒントをたくさんもらっています。応募ボタンなどだけでなく、ページに載せるコンテンツ自体も、いろいろなトライアルを通して改善していきたいですね。

クルーへの応募を検討してくださる方で、マクドナルドを利用したことがない人はほぼいないと思います。そうすると、全員が私たちの「お客様」でもある。前述のように、CVRなど指標も見ていきますが、気持ちとしては「お客様にどういうサービスを提供するか」という視点で取り組むべきだと考えています。
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ありがとうございました。最後に、クルー採用全般について今後の展望を教えてください。

「マックのバイトは良いよね」という評判が広がり、店舗が採用活動を負担なく行える世界にしたい。それが個人的なビジョンでもあります。

その理想に近づくために、今後もクルーの採用サイトを含むオウンドメディアを通して、マクドナルドで働く魅力を伝えていきたいですね。魅力が伝わると、自然とクルーが集まり、店舗に余裕が生まれる。そうするとクルーはより良い接客を提供できるので、お客様も良い体験ができる。店舗のイメージが良くなると、クルーがさらに集まりやすくなる。そうしたポジティブなスパイラルを実現していきます。

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