サービスのパーソナライズ化やサブスクリプション化が進む昨今、より良い顧客体験を提供し、顧客との関係性を持続させ、いかに「ライフタイムバリュー(LTV)」を向上させるかが重要になりつつあります。

ライフタイムバリュー(LTV)とは何か、算出方法や活用事例を知ることで、業務に活かしていきましょう。



ライフタイムバリュー(LTV)とは

ライフタイムバリュー(LTV)は「顧客生涯価値」と訳され、「一人の顧客が、その取引期間を通じて企業にもたらすトータルの価値」を意味し、一般的にマーケティング指標の一つとして使われています。

LTVの考え方は、CRMが登場した頃から存在していました。しかし近年、「売っておしまいの関係」から、「売ってはじまる関係」へと企業と顧客の関係が変化するなかで、LTVの重要性が高まっています。

一度接点を持った顧客との関係を重視するべき理由に、日本の市場が成熟化してしまい、新規顧客を獲得しにくくなっていることが挙げられます。「新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客を維持するコストの5倍」という調査結果から、米コンサル会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレデリック・ライクヘルド氏が「1:5の法則」を提唱したように、新規顧客の獲得にはコストがかかります。

新規顧客が獲得しにくくなっている中で、新規顧客の獲得のためにだけコストをかけ続けるのは、ビジネスに良い影響をもたらしません。新規顧客を獲得するだけでなく、既存顧客との長期的な関係維持に努めるのは、必然だといえます。

顧客との長期的な関係の継続を測るための指標として「ライフタイムバリュー(LTV)が活用されています。



ライフタイムバリュー(LTV)の算出方法

では、ライフタイムバリュー(LTV)はどのように算出すれば良いのでしょうか。代表的な式は以下の通りです。

LTV = 平均顧客単価 × 平均購買頻度 × 平均継続期間

例)定期購入の単品通販サイトの場合

・平均顧客単価:4,000円

・平均購買頻度:2ヶ月に1回(1ヶ月あたり0.5回)

・平均継続期間:10ヶ月

LTV = 4,000円 × 0.5回 × 10ヶ月 = 20,000円


広告費用を最適化するための計算例

ライフタイムバリュー(LTV)を計算できるようになると、何が可能になるのでしょうか。たとえば、マーケティングにかけられる予算が正確に計算できるようになります。

新規顧客の獲得を考える際の施策の1つに、リスティング広告があります。広告を出す際に重要なのがCPA(Cost Per Acquisition/新規顧客獲得にかかる広告費)です。CPAの目標値を決める際、ライフタイムバリュー(LTV)を考慮することが重要です。目標CPAは「LTV × 粗利率」で求めることができます。

先ほどの例から、粗利率を考慮し、CPAも求めてみましょう。

例)

・平均顧客単価:4,000円

・平均購買頻度:2ヶ月に1回(1ヶ月あたり0.5回)

・平均継続期間:10ヶ月

・粗利率:40%

LTV = 4,000円 × 0.5回 × 10ヶ月 = 20,000円

CPA = 20,000円 × 40% = 8000円

このようにライフタイムバリュー(LTV)を考慮することで、先を見据えた予算の組み立てが可能となることでしょう。

ライフタイムバリュー(LTV)を上げる方法は、商材によって異なりますが、ここではスタンダードな3つの方法を紹介します。その際に、企業は企業側の視点のみで考えないようにしなくてはいけません。ライフタイムバリュー(LTV)の向上が、顧客にとっても価値の向上につながるかどうかを考え、施策を検討していきましょう。


1.平均顧客単価を上げる

ライフタイムバリュー(LTV)を上げるために、平均顧客単価を上げるアプローチは、ほとんどの商材で有効です。平均顧客単価を上げる方法は大きく3つあります。

一番シンプルな方法は「商品の値上げ」です。ただし、値上げの理由を明確にし、顧客に納得してもらわなければ、購入頻度等の指標にマイナスの影響を与え、結果としてLTVを損なう恐れがあります。

2つめは「クロスセル」です。顧客がもともと購入を希望した以外の商品の追加購入を促すアプローチです。クロスセルを行うためには、データ等を分析し、関連商品など相関性の高い商品は何かを把握する必要があります。

最後の3つめは、「アップセル」です。顧客に提供しているサービスや商品よりも高額なグレードに引き上げるアプローチです。単に高いものを勧めるのではなく、より顧客のニーズに寄り添い、メリットをアピールすることで、商品の値上げと同様に納得して購入してもらうことが肝心です。


2.購入頻度を上げる

同じ顧客に買ってもらう回数を増やすことで、ライフタイムバリュー(LTV)が向上します。例えば、これまでは1年に2回ほどの購入だったところを4回にすることで、LTVは2倍になります。

適切な購入頻度は商材によって異なります。単純に頻度をあげようとしても、需要がなければ購入はされませんし、無理に売ろうとして商品に対して満足度が下がれば、購入をやめてしまうことにもつながります。

提供する商品が消耗品であれば、使い切ったタイミングに。洋服であれば、季節の変わり目に。このように自社の顧客の購入タイミングをしっかりと掴み、無理がない頻度の数値目標をおきましょう。

顧客満足度を上げるために、購入後の顧客サポートを充実させる、次回購入時期を予測してメールを送るなど、自社との関係性を親密にするような施策がポイントとなるでしょう。


3.継続購入期間を伸ばす

顧客が一度購入したあと、購買を止めるまで継続購入期間を伸ばすことでLTVは向上します。定額課金型のサービスなどは、このアプローチが考えやすいかと思います。

継続購入期間を伸ばすためのポイントは、顧客との継続的な関係を構築していくことです。企業本位ではなく、顧客が必要な時に、必要な情報を届けるような顧客本位の施策を行ってサービスやブランドの顧客満足度を高めることで、顧客が継続して購入することにつながります。

商品やサービスの「価格」や「機能性」といった価値だけではなく、それらを通して得られる「満足感」や「喜び」というような感情や情緒的な価値を育むような取り組みを日々行うことで、顧客との関係性をより強くしていきましょう。



ライフタイムバリュー(LTV)向上に取り組む企業


徹底した顧客目線でLTV増加 | オイシックス・ラ・大地株式会社

定期宅配サービス事業「Oisix」を営むオイシックス・ラ・大地株式会社。「お客様により長く続けていただける『仕組み』を実施すること」をマーケティングの基本方針と置いています。そこで、「新規顧客獲得」と「ライフタイムバリュー(LTV)向上」の活動に注力しています。

ライフタイムバリュー(LTV)向上のために、Oisixを利用し始めた顧客の利用率をアップするための施策と、お客様の購入回数を増加するための施策を行っています。当初は、

メールマガジンや広告の積み上げによって売上を作っていましたが、一部を「お客様に何ができるのか」に主眼を置いたアプローチ方法に変えていきました。

お客様目線でお客様のして欲しいことを続け、お客様が嫌なことは止める。この顧客目線を徹底的に追求し、テストマーケティングを繰り返しながら施策を積み上げていった結果、ライフタイムバリュー(LTV)が増加していきました。

参考:

https://marketing-base.jp/hot/5439

https://markezine.jp/article/detail/27004?p=2


カスタマーサクセス強化でLTV最大化を目指す | Sansan

サブスクリプションモデルの法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」のカスタマーサクセス部隊は「顧客の成功に向けてSansanの価値を届けLTV最大化を実現する」ことをミッションとして掲げています。

契約後の導入支援や活用動向のモニタリング等により、顧客がサービスを活用する中で生じる課題に先回りしてアプローチを行います。顧客がサービスの活用を通じて成果をあげ続けることで、サービスの契約継続やアップセルによるライフタイムバリュー(LTV)向上を実現し、継続的に双方にとってメリットがある関係作りを意識しています。

また、既存顧客が満足している状態を作り続ければ、サービスはプロモーションをせずとも口コミで広がっていく循環型の購買プロセス目指し、コミュニティ形成を進めています。これもカスタマーサクセスの活動が重要となるでしょう。

参考:

https://markezine.jp/article/detail/2951


ターゲットを明確化したパーソナライズ 施策 | 株式会社一休

高級ホテル予約専門サイト「一休.com」を運営し、現在は「一休.comレストラン」や「一休.comショッピング」など幅広いビジネスを展開している株式会社一休。単純な顧客数の最大化ではなく、顧客あたりのライフタイムバリュー(LTV)の最大化にフォーカスした組織作りを行なっています。

一休では、取り扱う施設を厳選することで、外れの少ない安心感を提供することに価値を生み出しています。そして、これに対し価値を感じるのは、毎月高級旅館や高級ホテルを利用する人々です。このような顧客が一休の明確なターゲットとなり、サイト上でパーソナライズがしやすくなります。

例えば、年間十回ほど利用する顧客が、「京都」で検索した時に、好みが蓄積されているので、どこの施設を優先的におすすめすれば良いか判断できます。また、顧客に対するメール等のコミュニケーションもパーソナライズし、One to Oneコミュニケーションを実行していきました。このように、顧客一人ひとりの満足度を高めることで、顧客当たりの利用額を高めていきました。

参考:

https://industry-co-creation.com/industry-trend/31546

https://industry-co-creation.com/management/24464



ライフタイムバリュー向上におすすめのツール


一人ひとりに合わせた最適なコミュニケーションで顧客体験の価値をあげる | KARTE

CX(顧客体験)プラットフォームのKARTEではサイトを閲覧しているユーザーの情報をリアルタイムに把握することができます。会員/非会員、購買履歴、閲覧履歴、参照元などを個人単位で可視化でき、属性に合わせて具体的な接客方法や、接客対象(サイト内の遷移や滞在時間などでセグメント)、接客のタイミングなど、ルールを設定することで最適な顧客体験を実現できます。

KARTEはライフタイムバリュー(LTV)向上にどのように役立つのか

キリン株式会社のビールブランド「一番搾り」のブランドサイトには、KARTEが導入されています。飲料メーカーの商品などは日常的に、非常に短いスパンで購買が行われることから、中長期的な顧客関係を築くのは難しいとされてきました。そこで、キリンデジタルマーケティング部では、顧客に継続してキリンの商品を選んでもらえるように、ライフタイムバリュー(LTV)向上を意識した施策を展開しようとしました。

KARTEを導入したことにより、顧客をより深く知るための情報を蓄積することが可能となりました。例えば、サイトにて記事アンケートを実施しており、顧客の興味や趣向を取得する他、コンテンツの改善に役立ています。

顧客情報を蓄積・分析することで、一人ひとりの趣味嗜好をしっかりと捉えながら、それぞれに合わせた施策やコミュニケーションができるようになり、LTVの向上に寄与しています。

参考:

https://cxclip.karte.io/kirin/

https://ecnomikata.com/ecnews/15503/


KARTEとの連携も可能 | Googleアナリティクス

Googleアナリティクスの「eコマーストラッキング」を活用することで、LTVを明確にすることができます。「商品詳細ページ」「カートページ」「購入完了ページ」それぞれに目標設定することで、どの段階でユーザーが離脱したのかを把握し、対策を立てることが可能となります。

また、GoogleアナリティクスはKARTEとの連携ができます。Googleアナリティクスで解析したデータをKARTEに反映することが可能となります。

参考:https://press.plaid.co.jp/data/20180125/



売上以上の価値に繋がる施策を意識しよう

ライフタイムバリュー(LTV)を意識することは、売上の向上だけでなく、ブランドに対する体験価値を高めることにも繋がることになります。そしてこの体験価値は、その一人の顧客がもたらす利益以上のものを企業に届けてくれるでしょう。マーケティング部署だけでなく、企業の組織全体としてLTVを見据えることが、この先重要となってきます。