自社の商品を、どのように知り、どこに興味を持ち、なぜ購入したのか。私たちは、顧客の気持ちや行動をどれくらい理解できているでしょうか。

購買の多様化が進む中で、アプローチしたい顧客像をこれまで以上に具体的に知っておくことは、マーケティング戦略を立てる上で重要となってきています。そこで有効な一手となるのは「ペルソナ」を作ること。今回はこのペルソナを用いたマーケティング手法についてご紹介します。



「ペルソナマーケティング」とは


まず「ペルソナ」とは、心理学では外向きの(表面的な)人格のことを指し、マーケティングにおいては製品やサービスの「典型的な顧客像」のことを指します。

年齢や性別、職業やライフスタイルなどを詳細に設定することで、彼らにどのようにアプローチするべきかを具体的に考える材料になります。

ペルソナと似た言葉として「ターゲット」がありますが、ターゲットよりもペルソナの方が、より詳細に人物像を設定することになります。

「ペルソナ」を作り、このペルソナを意識したプロモーションを行う手法を「ペルソナマーケティング」と呼びます。



ペルソナマーケティングの成功事例

企業では具体的にどのようなペルソナを設定しているのでしょうか。ペルソナマーケティングを用いて、売上につなげたり、話題となった事例をご紹介します。


「秋野つゆ」らしさ追求した末の成功|Soup Stock Tokyo

創業17年で、76億円近くまで(2018年12月時点)売上を伸ばしたSoup Stock Tokyo。その根底には、「秋野つゆ」という架空の女性の存在があったといいます。1998年、創業者の遠山正道会長が、「1998年、スープのある1日」と題した企画書を作成しました。物語形式の企画書の中心にあったのが、都心で働くキャリアウーマンという設定の「秋野つゆ」というペルソナ。

独身か共働きで、経済的に余裕あり・自分の時間を大事にする・シンプルでセンスの良いものを好むといった彼女の性質までも明確になっていたことで、商品開発から店舗デザインまで、方向性を決める際の軸になったといいます。

参考:https://www.dreamgate.gr.jp/contents/case/interview/35424


ペルソナマーケティングで業界初の大ヒット|カルビー

かつて「20~30代の女性には売れない」というのがスナック菓子の常識でした。カルビーの「ジャガビー」は、その常識を破ったといわれるお菓子です。

カルビーは、文京区に住む27歳の独身女性をペルソナに設定しました。これを軸に、パッケージのデザインをおしゃれな部屋においても違和感がないものに変更したり、ペルソナがよく読むであろう「Oggi」で活躍中であったモデルをCMに起用したりしました。その結果、生産が追いつかず一時販売停止になるほどの大ヒット商品となり、お菓子業界の常識を覆すことになりました。

参考:https://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/JIREI/20070914/282071/


複数のペルソナを設定し活用|富士通株式会社

富士通では、「未来を担う子どもたちに”技術の素晴らしさ”を伝える」ことを目的にした子供向けサイト「富士通キッズ 夢をかたちに」をオープン。

サイト製作時に、「小学生の佐藤美咲ちゃん(10歳)」、「美咲ちゃんの先生・松本秀幸先生(32歳)」、そして「美咲ちゃんの保護者・佐藤幸子さん(38歳)」という3人のペルソナを設定しました。その上で、「このページを開いた時、美咲ちゃんはどう感じるのか」「美咲ちゃんはこのリンクに気づくのか」という視点でサイトを制作していきました。加えて、松本先生や保護者の幸子さんの視点も同様に取り入れていきます。

こうして完成したサイトは、多くのメディアで取り上げられることになりました。また富士通は、子供向けユニバーサルデザインの普及を目的に、サイト制作にあたって培われたノウハウをまとめたハンドブック「富士通キッズコンテンツ作成ハンドブック ペルソナマーケティング編」を公開しました。このハンドブックの累計ダウンロード数は、7,000件を超えています。

参考:http://jp.fujitsu.com/about/kids/handbook/



ペルソナの作り方における3つのステップ

ペルソナを作成し、そのためにマーケティング戦略を練るためにも、まずはペルソナを作らなくてはなりません。次は、実際にペルソナを作る際の手順を、3ステップでご紹介します。


1.ユーザー調査

まずは、製品やサービスの顧客となる人物像の情報収集から始めましょう。数値での測定・分析が可能な定量情報と、顧客の声など数値で測れない定性情報の双方の情報収集を心がけましょう。

インタビューやアンケートの実施に加え、営業やカスタマーサポート担当に尋ねてみることで、様々な角度からの調査が可能になります。既存のアンケート・分析結果を参考にすることも効果的ですが、その際にはデータの信憑性や取得した時期に注意しましょう。

また、ユーザーが普段どのように商品・サービスを利用しているかを、実際の現場に出向いて観察することも有効な調査の一つです。アンケートでは出てこなかったユーザー自身も無意識な行動や心理などを捉えることができます。


2.セグメントを分ける

次に、集めた顧客のデータをいくつかの顧客群に分けていきます。セグメントを分けることで、サービスや製品を販売する対象となりそうな顧客群が見つけやすくなります。

セグメントの切り口としては、単純な年齢・収入などの属性情報ではなく、顧客が抱いている課題感やサービスを利用する動機、行動変数などの方が良いでしょう。

セグメントを分けたら、自社に理想の購買層となるグループを見極め、ペルソナ化する顧客群を決めます。



3.ペルソナの形に仕上げる

いよいよペルソナ作成が始まります。上記で決めた顧客群の行動や性格、属性の傾向を抽出し、ペルソナを作成します。

作成する項目は、年齢・性別・職業・居住地・収入などのデモグラフィックデータ(量的・質的に値が変化するもの)と、性格・趣味・価値観・ライフスタイルなどのサイコグラフィックデータ(心理的に変化するもの)の2種類を兼ね備えたものが良いでしょう。1人の人格を作り上げるイメージで、顧客プロファイリングを行い、それを物語風に仕上げます。


+α. ペルソナからをカスタマージャーニーマップをつくる

ペルソナを作成した後は、あわせてカスタマージャーニーマップを作成するケースも多くあります。カスタマージャーニーマップとは、ペルソナが製品やサービスを認知してから購入するまでの行動や思考を時系列で描き、各接点でペルソナがどのような体験をするのかを整理したものです。

カスタマージャーニーマップを参考に、ペルソナにどんな方法で、どんな情報・メッセージを伝えるか、継続的な関係を築くための方法などを考え、自社のマーケティング施策を考えることができます。

参考:カスタマージャーニーとは?効果的なマップ作りのために知っておきたいこと



ペルソナマーケティングのメリット

ペルソナマーケティングを行うメリットとして、次の3つが挙げられます。


顧客イメージを共有しやすくなる

日々業務をこなす中で、顧客となる消費者とマーケターが接する機会はなかなかありません。顧客と対面するのは営業やサポート担当者だけ、という企業も多いはずです。

ユーザーへのインタビューやデータ収集、営業やカスタマーサポートへのヒアリングといったペルソナを作る過程で、顧客に対する理解を深めることができます。これによって、ペルソナを取り巻く環境や心情をイメージしやすくなり、彼らに適したサービスの開発がしやすくなります。


意思決定が迅速になる

顧客をイメージし、ペルソナが作成できていれば、誰にどんなサービスを届けるのか、また、どのようなチャネルを用いて、どんなメッセージやコンテンツを届ければ売れるのか、といった判断を迅速にできるようになります。

また、共通のペルソナ像を共有しておくことで、チーム内に判断軸が生まれ、意思決定やコミュニケーションのスピードを早めることができます。


適切なマーケティング施策が打ちやすくなる

ペルソナを作ることで、自分たちが価値を与える相手の人物像が鮮明になります。カスタマージャーニーマップまで作成すれば、どのタッチポイントでどういう体験を提供すべきかも整理できるでしょう。結果として、どのようなメッセージをどう届ければ顧客は商品に興味を持ち、購入してもらえるのかを考え、マーケティング施策を打つことが可能になります。

例えば、広告を出すときに、ペルソナと親和性がある媒体を選びやすくなり、広告のセグメント設定がしやすくなるなどが考えられます。また、Webサイト制作では、配置するコンテンツの情報や言い回しなどをペルソナに合わせて設定すれば、サイトに訪れるターゲットの行動を喚起しやすくなります。



ペルソナマーケティングのデメリット

一方で、ペルソナマーケティングを行う際に、デメリットや気をつけておきたいこともあります。


作成にコストがかかる

ペルソナ作成に向けた情報収集には、時間とコストがかかります。コストをかけてペルソナを作り、企業としての方針を統一するべきか議論することが大切です。


時代の流れに合わせた改変が必要

ペルソナは一度作ってしまえば終わり、というものではありません。市場の動向や流行、会社の変化に合わせて顧客は変化します。ペルソナは定期的に見直し、更新していくことが必要になります。


ペルソナは絶対ではない

ペルソナを設定すれば、様々なメリットを享受できますが、ペルソナを作らない場合もあります。ペルソナを作成することで顧客像を共有しやすくなり、施策も考えやすくなります。ただ、ペルソナに縛られすぎてしまうこともあります。一人ひとりの顧客と向き合うために、ペルソナが絶対ではない、ということも覚えておきましょう。



顧客を具体的にイメージするペルソナマーケティング


顧客目線をマーケティング戦略に組み込む際には、ペルソナをつくることはとても重要となってきます。「本当にこの施策はユーザーに響くのか?」と考えやすくなるからです。

ペルソナマーケティングは新規サービスだけでなく既存サービスに対しても有効な戦略の一つです。価値を与えたい相手についてどれだけ想定できているか、一度振りかえってみてはどうでしょうか。