「理想の接客」は、デジタルとリアルを組み合わせることで実現する。スヴェンソンが全社横断で挑んだ、顧客体験の進化
2025年7月24日、プレイドは 「AI時代の価値創造を再定義する」をテーマに『X DIVE(クロスダイブ)』 を開催しました。株式会社スヴェンソン メンズ事業部 事業部長 本谷 光洋氏、情報システム部 部長 高沢 冬樹氏、メンズ事業部 マーケティング部 マネージャー 北島 寛之氏、そして株式会社電通デジタル データ&エンゲージメント部門 CXMストラテジー事業部 ビジネスアナリシス第2グループ 竹川 健貴氏 が登壇したセッションの模様をお届けします。
2025年7月24日、プレイドは「AI時代の価値創造を再定義する」をテーマに『X DIVE(クロスダイブ)』を開催しました。本記事では、「自分磨きの感動を支える"理想のデジタル接客"とは?顧客起点で組織のシナジーを創出するプロジェクトの背景と今後」と題したセッションの模様をお届けします。
セッションに登壇したのは、株式会社スヴェンソン メンズ事業部 事業部長 本谷 光洋氏、情報システム部 部長 高沢 冬樹氏、メンズ事業部 マーケティング部 マネージャー 北島 寛之氏、そしてプレイドのパートナー企業であり、今回のプロジェクトに取り組んだ株式会社電通デジタル データ&エンゲージメント部門 CXMストラテジー事業部 ビジネスアナリシス第2グループ 竹川 健貴氏の4名。プレイドの川野辺 慎吾がモデレーターを務めました。
本セッションでは、スヴェンソンがいかに部門を越えて理想のCXを描き、共通理解を育みながら、店舗とデジタルのデータを統合していったのか。その背景を共有していただきました。
ツール変更にとどまらない、マーケティング活動そのものの再設計
オンラインでのコミュニケーションや買い物が当たり前になった今、「デジタル接客」のあり方が問われています。ヘアケア企業として昨年40周年を迎えたスヴェンソンも、この課題に直面していました。
同社のメンズ事業部は、全国に28店舗を展開し、主力サービスである24時間装着可能なウィッグ「スヴェンソン式増毛法」やエクステ増毛サービス、ご自身の頭髪を活かして薄毛を目立たなくする独自のカット/ケア/コーティング・サービスを提供しています。
しかし、オフラインとオンラインを横断して複数のサービスを展開する中で、大きな課題が浮き彫りになりました。それは、データが分断されていたため、お客様像を正確に把握できず、お客様に寄り添った体験を届けづらくなっていたことです。

株式会社スヴェンソン メンズ事業部 事業部長 本谷 光洋氏
本谷氏「事業部長に就任した当初、業績の現状把握をしようにも、情報があちこちに分散しており、精緻な分析ができない状態でした。マーケティング戦略を立案しようにも、データもなく、身動きが取れない。さらに、部署ごとでKPIも統一されていなかったので、新しい取り組みを判断する基準も曖昧でした」
高沢氏「マーケティングに関するシステムが独立して存在していて、販売管理データといった実際の店舗活動とWeb上のお客様の動きを組み合わせた分析が全くできない状況でした。情報システム部が関与できていない状態も合わせて、改善が急務でした」

株式会社スヴェンソン 情報システム部 部長 高沢 冬樹氏
この全社横断プロジェクトに伴走したのが電通デジタルの竹川氏です。単なるシステム変更ではなく、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)構築を視野に入れ、マーケティング活動そのものを見直す提案が、変革のきっかけとなりました。
竹川氏「ツールのご提案ではなく、顧客体験をリデザインしていきましょう、という提案をさせていただきました」
竹川氏からの提案について、「スヴェンソンのマーケティング活動はどうあるべきか、根本から考えたかった。企画段階から一緒に考えていただける会社を探していたところ、電通デジタルさんから事業に深くコミットしていただける提案をいただきました」と北島氏は振り返ります。
「理想の顧客体験像を策定する」というプロセス自体がナレッジとなり、新たな取り組みを生み出す
マーケティング活動をリデザインするプロジェクトは「理想の顧客体験像を策定する」ことから始まりました。スヴェンソンの店舗では、お客様の悩みや「こうなりたい」という理想を直接伺いながら、サービスを提供してきました。そのため、これまでの対面での接客をオンラインでも再現することができるのか、あるいは、デジタルと対面をどのように組み合わせるべきかが、大きな課題となりました。
この課題を解決するため、まず部署の垣根を越えて関係者から意見を聞き、理想の顧客体験を話し合いました。そして、店舗での接客から継続的な来店、ロイヤリティ向上まで、全体を通じた顧客体験のあるべき姿を描いていきました。

株式会社電通デジタル データ&エンゲージメント部門 CXMストラテジー事業部 ビジネスアナリシス第2グループ 竹川 健貴氏
竹川氏「たとえば、店舗の方々に対して『どんなお悩みをお持ちの方がいらっしゃるんですか?』とヒアリングをし、その内容をもとに、”お客様のペインポイントを解消したらどれくらい来店数が増えるのか” ということをKARTEを使って効果検証しました。その結果を店舗に共有したり、店舗の接客データをもとにWebでの接客を構築したりするなど、事業部を越えたコミュニケーションを行いました」
店舗に課題をヒアリングをし、その意見をもとに、課題を解決するWeb施策を随時実施し、検証していく。その結果は店舗にも共有し、さらにリアル・デジタルともに理想の接客への精度を高めていく。このプロセス自体が、組織に大きな変化をもたらしたと北島氏は振り返ります。
北島氏「当初の目的は『理想のデジタル接客をどう叶えるか』でした。しかし、事業部を横断してヒアリングすることで、『こういう接客を目指すべきだよね』という共通理解が生まれました。このプロジェクトの過程自体が、社内のナレッジになっていると感じます」
また、部署を横断して連携したことで新たな取り組みも生まれたといいます。それがお客様の夢を叶えるキャンペーン。店舗スタッフがお客様の「実現したい夢」をヒアリングし、本社に提案、審査を通った夢を会社が支援するという内容になっています。

北島氏「このキャンペーンを通じて、お客様に『スヴェンソンは、モノを提供する会社ではなくて、その先のお客様がなりたい姿を応援する会社なんだ』というメッセージを伝えられたと思います。スタッフに対しても、『自分たちの仕事は、お客様の夢を叶えることなんだ』という意識づけにもなりました」

株式会社スヴェンソン メンズ事業部 マーケティング部 マネージャー 北島 寛之氏
このキャンペーンでは、企画時の想像を超える熱いプレゼンが社内から多数寄せられたといいます。
本谷氏「本社勤務では通常、お客様の顔は見えません。ですが、店舗からのプレゼンによって、一人ひとりのお客様を知ることができました。『あのお客様、その後どうだった?』『こんなに喜ばれました!』という会話が本社と店舗を横断して生まれるようになりました」
デジタル接客は店舗の接客をより豊かにする 「補完」的な存在
スヴェンソンにとって、デジタル接客は店舗での接客を置き換えるものではありません。むしろ、店舗での接客をより豊かにする「補完」的な存在として位置づけています。
本谷氏「デジタル接客によって生まれた時間を使って、さらにお客様とコミュニケーションを取ってもらいたい。デジタル時代だからこそ、アナログコミュニケーションを大事にしてほしいのです」
高沢氏「デジタル接客を構築する上で重要だったのは、デジタルだけで完結させようとせず、店舗での接客との補完関係をうまく作っていくという意識でした」
また、北島氏は、デジタル接客のデータが店舗接客の改善にどう役立っているかについても言及しました。
北島氏「KARTEを導入することで、Web上での行動データの蓄積ができるようになり、そのデータを店舗での接客にも活用できるようになりました。今後も、オンライン・オフラインのデータを組み合わせ、総合的に良い接客をしていきたいと考えています」

セッションの最後は、理想の顧客体験の構築を全社横断で推進する人に向けた本谷氏の言葉で締めくくられました。
本谷氏「理想と現実の間で揺れる場面もたくさんありました。 他部署との連携がうまくいかないとか、システムがバラバラでデータが取れないとか。 みなさんも似たような経験があるのではないでしょうか。
それでも少しずつ歩み寄り、共通の目的に向かって部署を横断して取り組んできたことで、確かな成果が見え始めています。 我々と同じように、日々試行錯誤しながら、お客様のために何かを変えようと努力されている方に、 何か1つでも参考になれば幸いです」