「なぜ行動したのか」の言語化が事業も組織も成長させる。エス・エム・エスが磨き込む、徹底した顧客視点|人材業界限定勉強会レポート
2026年1月、株式会社エス・エム・エスの求人PFマーケティング推進部 求人PFメディアグループ グループ長 兼 クライアントマーケティンググループ グループ長である佐藤剛史さんを登壇ゲストにお迎えしてプレイドオフィスにて開催された、人材業界限定の勉強会の様子をお届けします。
2026年1月、プレイドオフィスにて人材業界勉強会を開催しました。今回ご登壇いただいたのは株式会社エス・エム・エスの求人PFマーケティング推進部 求人PFメディアグループ グループ長 兼 クライアントマーケティンググループ グループ長の佐藤剛史さん。転職サイトディレクターや新規サービスのPM、メディア運営などを経て、現在は株式会社エス・エム・エスが運営する求人プラットフォーム「ウェルミージョブ」のメディア責任者として toCおよびtoBマーケティングからプロダクト開発まで横断的にリードしています。
「ウェルミージョブ」のコアとなるコンセプトに基づいてどのように顧客理解・体験を作り上げたかや、部門の壁を超えてともに成果を目指せる組織ができあがるまでの裏側についてお話しいただきました。
「ウェルミージョブ」の面白さと難しさー多様な求職者のニーズに寄り添うコミュニケーション設計
「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」というミッションを掲げる株式会社エス・エム・エス。同社が運営する求人サイト「カイゴジョブ」は、2025年7月1日、より広範な職種をカバーする「ウェルミージョブ」へと生まれ変わりました。介護・医療・障害福祉・保育領域におけるキャリア事業領域のサービスです。
佐藤さん「人手不足の問題は深刻化し、特に介護従事者はあと15年で約60万人が不足するとも言われています。『質の高い医療・介護/障害福祉サービスの提供が困難になる』という社会課題に対し、人材業界の中でも特に、この医療・介護・障害福祉・保育の領域で従事者と事業者の最適なマッチングを通じて課題解決を目指すのが『ウェルミージョブ』です」

株式会社エス・エム・エス 求人PFマーケティング推進部 求人PFメディアグループ グループ長 兼 クライアントマーケティンググループ グループ長 佐藤 剛史氏
リブランディングによって、サービスが対象とする領域は介護だけでなく、医療、障害福祉、保育へと広がり、各領域を横断して求人を掲載するようになりました。佐藤さんは、この多角化こそが「ウェルミージョブのマーケティングの面白さ」につながっていると話します。
佐藤さん「介護、医療、障害福祉、保育。それぞれの領域にいる求職者の方々は、働く環境も、抱えている悩みも、求めている情報の質も異なります。希望する仕事の職種や意思決定要素も、求職者の年齢や資格の有無などによっても変わります。WEB上での情報収集が得意でない方もいる中で、様々な求職者に向けて『どのタイミングで、どのような情報を届けるべきか』の適切なコミュニケーションを設計していくのは非常に面白い部分です」

一方で、人材プラットフォームならではの「法人(toB)側」の課題も併存すると言います。特に介護などの領域には中小規模の事業者も多いため、現場に専任の人事がいないことも。人手不足でありながら、採用プロセスに明るくないために対応が遅れてしまうといった事業者側の課題にも向き合う。求職者(toC)と法人(toB)の双方の能動的な活動を支える必要があるという業界共通の課題に、ご参加いただいた皆さまもうなずきながら共感されていました。
「ウェルミージョブ」では、「求職者が入職するまで」と「法人が採用できるまで」の双方のプロセスを横断して捉えることで、求職活動の初めからユーザー行動を後押しし、時にはニーズを先回りできる設計にしていると佐藤さんは語ります。
「CVR向上」だけを目的にしない。約200の施策を通じて知ろうとするのは「ユーザーの行動理由」
佐藤さんのチームが施策を実施する上で大切にしているのが、「検証のゴールをCVR向上だけに置かない」というマインドセットです。
佐藤さん「大切なのは、『なぜこのユーザーが迷い、離脱し、あるいは行動したのか』を明確に説明できる状態を目指すことです。主語は常にユーザー。もちろん仮説出しのタイミングでは行動や心理背景などの文脈を推測して仮説を立てますが、仮説の思い込みは厳禁です」
この「説明できる状態」を作るために活用しているKARTEについて、佐藤さんが最大の良さとして挙げるのは、「思い立ったらすぐ試せる」という点。「ウェルミージョブ」では、KARTE Datahubを用いて求職者や求人のデータをKARTEに取り込み、そのデータを参照しながら施策を実施できる仕組みを構築しています。KARTEを使い、求職者側で約200以上の施策をWEB上で実施、検証していると語られた際は、ご参加の皆さまもその圧倒的な施策量に驚きを持って受け止めていました。

続いて、「ウェルミージョブ」のマーケティングチームが仮説検証を進める際の3ステップが佐藤さんから紹介されました。
まず最初のステップは事業KPIから逆算し、閲覧回数や希望条件、ログイン頻度などの行動データを基に、ユーザーが現在どのような状況にあり、どのようなニーズを持っているのかを仮説立てます。
次に、たとえば求人から離脱した求職者が多い場合、サイト上で複数パターンのバナーを出し分け、クリックされた内容から不安要因や本当の関心を読み取ります。そして最後に、クリックや離脱といった行動指標を分析し、数値結果だけにとどまらずユーザーの心理状態を言語化することで、セグメントごとに最適なメッセージ設計につなげています。
佐藤さん「こうした各ステップで検証していく中で十分な効果が得られそうだと判断したものは、開発チームがプロダクトに実装していきます。KARTEを単なるマーケ施策実行のツールとしてだけではなく、言わば顧客ニーズを検証する実験装置として活用しています。」
顧客ニーズのユニークな検証例として、求職者や法人向けの読み物コンテンツの中に、読後アンケートを設置した取り組みの紹介も。記事が「有益だったかどうか」を読者に回答してもらうことで、コンテンツの価値を可視化し、記事評価や改善に活かしているそうです。
組織や役割を横断してマーケティングと開発が連携ー徹底した顧客視点を磨いていく
多くの施策を展開しながらユーザー行動を理解しながら、求職者側からは安心感を、法人からは信頼感を得られるWEBサイトへの進化を目指す「ウェルミージョブ」。このような姿勢が徐々に、プラットフォーム全体の事業数値にもポジティブな影響を及ぼす好循環につながっています。
かつては施策実行にあたって開発部門への依存やフローの長さが課題だったものの、現在は施策検証はマーケティングチーム内で完結できるようになっていると言います。

佐藤さん「検証要素のある企画はすべてマーケティングチーム内で完結させ、開発リソースはサイトの根幹となる『コア機能強化』にできるだけ集中してもらいたい。そのためにもマーケ側がKARTEでまず検証し、効果が証明されたものだけを本機能として実装へ回す。この切り分けができたことで、エンジニア側からも『まずKARTEで試せる?』と相談が来るような、理想的な関係が築けています」
この体制の変化は、組織変化はもちろんのこと、メンバー一人ひとりの意識も変えました。「自分の領域でもKARTEを使えばKPIに貢献できる」という実感から、部署横断でアイデアが出てくるようになったといいます。
セッションの締めくくりに佐藤さんは、かつてのように各部門がそれぞれの領域の中で独立している状態ではなく、ユーザー行動を軸に、部門や役割を超えて連携することで顧客視点を磨いていく組織になってきたことが今の成長を支えていると話しました。
「ウェルミージョブ」でのKARTE活用については、過去にCX Clipでもインタビューを掲載しています。同社の取り組みが気になる方はこちらもどうぞ。

当日会場でご参加いただいた人材業界の皆さまからは、セッション中にリアルタイムで質問を募集しました。佐藤さんの熱量の高いセッションに対して参加者側からも数多くの質問が寄せられ、求人情報のデータ連携や施策の管理方法など、同じ業界ならではの実情が垣間見える質問に佐藤さんも真摯に回答を返していました。
ディスカッション・交流会でさらに業界ならではの知見や悩みを共有

セッションの後は、参加者同士のディスカッションタイムへ。人材業界ビジネスのサイト運営や組織間の役割分担や開発体制、データ活用の方法など、各社の取り組みについて活発な意見交換が行われました。
交流会では、軽食と飲み物を楽しみながら、参加者同士がより深い議論を展開。カジュアルな雰囲気の中、話に花を咲かせながら業界特有の課題や対応策を話し合う輪が会場のあちこちで見られていました。

今回の人材業界勉強会は、人材派遣・人材紹介・求人広告といった業種をはじめ、toC/toB双方の視点からマーケティング、プロダクト開発、ブランディング、プロモーションなど、幅広い領域の方々が一堂に会する場となりました。
プレイドでは今後も、業界特化型の勉強会を通じて、皆さまの交流と学びの場を提供していく予定です。次回の開催もぜひお楽しみに!