一人ひとりに寄り添うオンボーディングの実現に向けて。STORESがショップオーナー向け管理画面にKARTEを導入した理由
ネットショップ開設・運用サービス「STORES」では、カスタマーサクセスの実現にKARTEを活用いただいています。同社が目指すオンボーディングや、KARTEの活用方法について、担当の山崎祐司様、諸角大輝様にお話を伺いました。
ネットショップ開設・運用サービス「STORES(ストアーズ)」を運営するヘイ株式会社。
STORESでネットショップを開設したショップオーナーに寄り添ったサポートを提供し、カスタマーサクセスを後押ししたい。その想いから、2019年よりショップの管理画面にKARTEを導入。カスタマーサクセスを担う部署がKARTE運用を担当し、現在は主にオンボーディング部分にご活用いただいています。
同社が追求するカスタマーサクセスとはどのようなものなのか。それを後押しするためにKARTEを導入するに至った経緯や活用方法とは? カスタマーサクセスマーケティングディビジョンに所属する山崎祐司様、諸角大輝様にお話を伺いました。
ショップオーナー様によって異なる「サクセス」を知り、その実現を支援する
STORESとはどのようなサービスなのでしょうか。
山崎:HTMLなどの専門的な知識がなくても、誰でもかんたんに本格的なネットショップがつくれるサービス「STORES」を運営しています。ネットショップのデザインから注文、発送の管理、顧客情報の蓄積など、運営に必要な機能のほとんどを無料で提供しています。
私たちは、現代社会において自分の好きやこだわりを発信し、そこに共感する人たちのコミュニティを作って商売をする「楽しみのための経済」が広がっていると考えています。経済活動のひとつの手段としてネットショップも主流になってきましたが、ITの知識に自信がなくて挑戦できない方や、設定や運用の煩雑化から途中で挫折する方が少なくありません。
私たちのミッションは、そういったテクノロジーの難しさを取っ払い、ショップオーナー様が自分の「好き」に没頭したり、こだわりを追求できる世界を実現することです。
ヘイ株式会社 カスタマーサクセスマーケティングディビジョン オンボーディングチーム 山崎祐司様
そうした世界の実現のために、山崎様、諸角様が所属するカスタマーサクセス マーケティング ディビジョンでは、どのような業務を担当されているのでしょうか?
山崎:私たちの部署はマーケティング、PR/広報、オンボーディング、カスタマーリレーションズの4チームで構成されており、カスタマーサクセスの実現に向けて各チームが連携しています。私と諸角は、オンボーディングチームに所属しています。
STORESにおけるカスタマーサクセスとは、「一人ひとりのショップオーナー様がSTORESで自身の理想を実現できること」。ショップオーナー様のなかには「今月は最低でも100万円は売りたい」と販売計画を立てている方もおられますし、「自分にできる範囲で、楽しみながら少しずつ続けていきたい」という考え方のオーナー様もいらっしゃいます。それぞれ「サクセス」とする状態が違うんです。
売上高や販売個数などの画一的な指標で測るのではなく、ショップオーナー様自身の想いや理想を尊重し、後押しすることを大切にしています。
お二人が所属されているオンボーディングチームは、STORESが考えるカスタマーサクセスの実現において、どのような部分を担っているのでしょうか。
諸角:オンボーディングチームが担うのは、「ネットショップ開設から初めて商品が売れるまで」におけるショップオーナー様の支援です。
商品の販売に至るまでの過程は大きく2つのステップに分けられます。まずは商品の登録や送料の設定など運用面のセッティング。その次が、ネットショップの告知と集客です。
ヘイ株式会社 カスタマーサクセスマーケティングディビジョン オンボーディングチーム 諸角大輝様
この2つのステップをスムーズに進んでもらうために、山崎はKARTEの運用やサイトの改善、私はオンラインセミナーの開催に主に従事しています。具体的にはネットショップを開設したばかりのショップオーナー様に向けて、STORESのセッティング方法やSNSを使った集客についての説明を行ったり、ショップオーナー様から質問を受けてその場で回答するなど、STORESの理解を深めてもらう取り組みを実施していますね。
リソースの限界が招いた限定的なコミュニケーション
オンボーディングチームとしては、これまでにどのような施策を行ってきたのでしょうか?
山崎:1年前までは、ネットショップを開設したばかりのショップオーナー様のお悩みをメールで聞いたり、ショップ運用の参考資料を送ったりするなど、1対1でやり取りをして、オンボーディング完了まで伴走していました。
しかし、STORESは無料で登録できる手軽さもあり、毎月1万ショップがオープンします。ネットショップの基本設定をすでに完了した方、商品を1点以上登録した方など、やり取りするショップオーナー様の範囲を絞っても、1対1の関わりを続けるのはチームのリソースに限界がありました。
そもそも、コミュニケーションにおいてもメールの開封率も20%ほどで、こちらがアプローチしたくてもできないケースも多かったんです。リソースの問題も相まって、ほんの一握りの方としか接点を持てませんでした。
諸角:1対1での対応が難しいなら、個別のやりとりをせずともネットショップの設定を完了できたり、集客についてのノウハウを知ることができたりするなど、ショップオーナー様に共通して必要な体験を届ける仕組みを作るしかありません。そこで、最低限の操作でネットショップの設定が完了するように動線や設定項目を見直したり、初心者向けマニュアルを見つけやすいようにサイトを改善したりしていました。
ですが、サービスの改善はエンジニアやデザイナーに協力してもらう必要があり、一つの改善に膨大な時間と労力がかかっていました。
そこで、KARTEの導入を検討されたんですね。KARTEのどのような点が、導入の決め手になったのですか?
ショップオーナー様が利用する管理画面にKARTEを導入
山崎:最初は、「KARTEを導入するお金を、カスタマーサクセス部専任のエンジニアの人件費に回せばいいのでは?」といった意見もありました。ですが、一からエンジニアを雇うにしても、社内のエンジニアにチームに入ってもらうにしても、その体制と仕組みが軌道に乗るまでには時間がかかります。仮にエンジニアがチームに入ったとしても、施策のたびに管理画面を改修するのも大掛かりになってしまいます。
KARTEなら、初期設定が完了すれば、都度エンジニアにお願いしなくても管理画面に変更を加えられるようになる。ツールの操作だけで、管理画面上の行動に合わせてポップアップを表示させるなど、手軽に様々なテストを実行できます。
デモを触らせてもらい、本格的な導入前に利用イメージを社内に共有できたのも大きかったです。「これだけの機能があるなら、KARTEのほうがいいね」という納得感が高まり、稟議を通すうえでも大きな説得材料になりました。
料金プランの情報を正しく伝え、ニーズに合ったプラン選択を支援した結果、加入率が1.5倍に
これまでのKARTEを通じた施策のなかで、オンボーディングについて効果を感じた事例はありますか?
山崎:効果的だったのは、有料プランの訴求です。STORESは、ネットショップ初心者の方でもスムーズにショップを開設できる体験を優先していたので、積極的に有料プランの訴求をしていませんでした。
ですが、特に月間の売上金額が大きいショップなどは、決済手数料が低い有料プランのほうが圧倒的にお得にご利用いただけます。他にも本格的なショップ運営に適した機能がついているので、有料プランを使ったほうが理想のネットショップ運営に近づけるショップオーナー様もいらっしゃるだろうなと感じたんです。
よりニーズに沿った料金プランをご利用いただくために、有料プランを訴求するテストを実施しました。
有料プランを訴求するテストはどのように実施したのでしょうか?
山崎:ショップ開設が完了した直後、ショップオーナー様の管理画面のトップに有料プランを訴求するポップアップを出しました。
データを分析してみたところ、有料プランに加入するショップオーナー様の約6割はネットショップの開設当日に加入していると分かったので、開設直後での訴求が有効なのではと仮説を立てました。
有料プランを訴求する際に悩んだのは、有料プランのどこがショップオーナー様にとってメリットだと思ってもらえるかでした。STORESの有料プランには大きく分けて「決済手数料の値下げ」と「機能充実」のメリットがあるのですが、どちらが加入の決め手になるのか分からず……。
どの訴求ポイントが有効かを調べるために、「両方のメリットを訴求する」「メリットごとに訴求する」「そもそも訴求しない」の4パターンによるABテストを1ヶ月間で実施しました。
諸角:結果、有料プランを訴求しない場合よりも、訴求したすべてのパターンにおいて成果が出ました。一番効果があったのは、「両方のメリットを訴求する」パターン。何も訴求しない場合に比べて、加入率は1.5倍※伸びました。
(※2020年3月、施策未配信の対照群との比較。調査者:ヘイ株式会社)
施策をスタートした日にKARTEの管理画面をずっと見ていて、リアルタイムで加入者が増えていく状況に興奮したのを覚えています。社内のチャットで「すごい勢いで伸びています!」って報告してしまうくらい(笑)。
「有料プランの存在やメリットを知ってもらえれば、加入者は増える」という仮説が当たったんですね。
山崎:そうなんです。STORESの有料プランは初月無料なので、「有料プラン利用者が増えても、お試し期間でやめる人も多いのでは?」と心配だったのですが、初月だけで解約する人はほとんどいませんでした。
今までは情報が届いていないために、自然に無料プランに誘導されるショップオーナー様が多かった。このテストを通して、必要な方に有料プランの良さを実感していただけて、STORESに対する満足度も高まったのかなと思います。
施策を素早く実施することで、仮説検証の速度が向上したんですね。
山崎:かなり早くなりましたね。ポップアップの1本目は、デザイナーにデザインを起こしてもらうなど、諸々の検討も踏まえて実施まで2週間ほどかかりましたが、そのあとのテストはたった1週間で実施できました。1つ目の型ができるまではある程度の時間を要しますが、2つ、3つと別パターンをつくるときの所要時間は1時間ほど。こんなスピード感でテストを実施できるなんて驚きでした。
今までは1本のポップアップを表示させるのにも実装が必要だったので1ヶ月半かかりましたし、デザイナーやエンジニアのリソースを大きく割く分、「その施策は本当に価値があるの?」と慎重に検討する必要があったんです。KARTEなら仮説段階のものを気軽に試せますし、その結果を社内に共有することで全体的に施策実施のハードルが下がりました。
諸角:社内全体でプロダクト改善に対して、以前よりも意欲的になった気がします。ABテストの1回目をリリースして早速効果があったときに、デザイナー側から「もっとこうすれば良くなるかも」と提案をもらいました。自分たちが実施する施策に対して、周りのメンバーも積極的にアドバイスを送ってくれたのが、何よりも嬉しかったですね。
個人の「こだわり」や「行動」に寄り添ったサイト体験を
今後、カスタマーサクセスの部署の一員としてどのような体験をユーザーに提供していきたいですか?
山崎:ショップオーナー様それぞれのフェーズやリテラシーに合ったオンボーディングを実現したいです。
STORESを使われる方の属性は非常に幅広く、いろんなサービスを使い慣れている方もいれば、ほとんどPCを触ったことがないという方もいます。前者と後者で必要な情報や適切な伝え方も変わる。今後は、そういったショップオーナー様の状況をできる限り推測し、一人ひとりにあった接し方を実現できればと考えています。
例えば、ショップ設定のページにどれくらい滞在し、どこまでスクロールしているのか、詳細な設定を行うページにアクセスしているか、といったデータから、ショップオーナー様の心理や状況を想像できます。それを積み重ねるなかで「こういう方には詳細な解説ページを案内する」「こういう方には、オンラインセミナーの情報を表示する」と判断し、個人に合った支援を提供したいです。
KARTEを導入してから数ヶ月しか経っていないので、KARTEで見られる行動データを具体的な改善に落とし込めていない部分もたくさんあります。試したい施策はたくさんあるので一つひとつ進めていきたいですし、オンボーディング完了後も含めてKARTE活用の範囲を広げていきたいと考えています。
また、よりショップオーナー様のことを理解し適切な支援をするためには、KARTE Datahubを導入して、セミナー受講データなどと紐づけて管理したほうがいいのではないか、といった検討もしています。KARTEをもっと活かして、一人ひとりの「カスタマーサクセス」を実現していきたいですね。
個性豊かなユーザーそれぞれの「こだわり」や「行動」に寄り添ったサイト体験の実現ですね。
山崎:その通りです。将来的には、オフラインとオンラインの垣根を超えた商売のあり方を提案したいと考えています。最近は新型コロナウイルスの影響もあり、今まで縁のなかった方がネットショップに挑戦する動きが増えています。オフラインの商売はベテランだけど、オンラインでは初心者。そういった方に向けて、公式マガジンやSNSなどを通じて、ネットショップの運営に役立つ情報を発信しながら、スムーズなオンライン化を手助けしたいです。
そもそも、オフラインとオンラインの両軸から「楽しみのための経済」を広げていくために、親会社のheyは誕生しました。STORESはネットショップの開設・運用をサポートしていますが、別事業のSTORESターミナルは、誰もが手軽で簡単にキャッシュレス決済を導入いただけるサービスを提供しています。オフライン、オンライン問わず、だれもがこだわりや好きを突き詰める活動を続けられる世の中を実現したいです。