定性分析で顧客の悩みを見つけ出す。SBI証券とJIMOSのKARTE Liveによる顧客理解の実践
KARTE Liveでは、顧客のサイト上の動きを動画で確認することにより、顧客の感情や文脈、背景などの“行間”を読み解くことができます。とはいえ、単に動画を見るだけでは顧客理解に活かすことはできません。そこで、プレイドでは「KARTE Live」を長らくKARTE Liveをご活用いただいているSBI証券様、JIMOS様と一緒に、「定性分析のこれから、実践と事例」と題したセミナーをオンラインにて開催。
オンライン上の数字やデータを見ても、改善に活かすには何か物足りない……そう感じたことはないでしょうか。KARTE Liveでは、顧客のサイト上の動きを動画で確認することにより、顧客の感情や文脈、背景などの“行間”を読み解くことができます。
とはいえ、単に動画を見るだけでは顧客理解に活かすことはできません。そこで、プレイドでは「KARTE Live」を日々活用いただいている企業様と一緒に、「定性分析のこれから、実践と事例」と題したセミナーをオンラインにて開催。
今回のセミナーでは、長らくKARTE Liveをご活用いただいているSBI証券様、JIMOS様に登壇いただき、KARTE Liveによって実現した顧客体験の向上や運用のプロセスをお話しいただきました。
顧客の体験が見えれば、「気づき」が生まれ、アクションにつながる
KARTE Liveは、顧客がWebサイト上でどのような行動をしているのかを、数値データやログではなく、動画で見られるKARTEの知る機能のひとつです。「PV」や「離脱」といった定量的なデータではなく、「どこで立ち止まっているのか」「ページ内でどう動いているか」「どのように離脱していったか」といった解像度の高い情報を得ることができます。
見たいシーンや属性の顧客を特定してピンポイントで確認できるため、例えば「ポップアップを閉じる人はどのタイミングで閉じているのか」「何度も来訪しているが申し込まない方は、どのページに長く滞在して悩まれているのか」など、数字の奥にある細やかな違いから顧客を理解することができます。
つまり、顧客と同じ目線でサイトを見ることで、想像が膨らみ、数字からは得られなかった思いも寄らない「気づき」 が生まれます。
※氏名や住所、決済情報など、顧客自身が入力する情報やプライバシー性の高い情報は自動でマスキングされるので、個人情報に配慮しながら動画を見て検証を進められます。このマスキングは任意で追加設定いただくことも可能です。
見るシーンや顧客を絞り込んでから得たKARTE Liveによる「気づき」をチームに共有したり、KARTEで実施しているアクションやサイトそのものの改善に活かし、またその振り返りをKARTE Liveで行う、といったサイクルを回していくことが、KARTE Liveによる定性分析のやり方です。
困っているお客様を見つけ、店舗のようなおもてなしをカスタマーサポートで実現(SBI証券様)
はじめに登壇いただいたのは、株式会社SBI証券 カスタマーサービス部 デジタルコミュニケーション課長 飯島正二氏。SBI証券はネット証券の口座開設数No.1を誇る証券会社です。同社のカスタマーサービス部では2018年に「KARTE」を導入。2020年からは「KARTE Live」も活用し、カスタマーサポートの体験向上に取り組まれています。
飯島氏「一言で言えば、KARTE Liveで『困っているお客様を見つけ、救う』ための取り組みを行なっています。弊社のサイトから実際にお問い合わせいただくケースというのは、およそ4%、氷山の一角だと考えています。
その他96%のお客様は、問い合わせの意欲があったものの軽微な疑問や何らかのストレスを抱えて離脱するか、お問い合わせすること自体に手間を感じて離脱しているだろうと。私たちが『サイレントカスタマー』と呼ぶ、このような方々にもしっかりサイトをご利用いただくことを目指しました」
SBI証券はこの課題に対し「エフォートレスな体験、つまりお客様が努力することなく困りごとを解決できる」ことを掲げ、サイト改善の方針を定め、FAQやチャットボットを設置しました。しかし、設置しただけでは目立った効果を感じることができなかったそうです。
飯島氏「FAQやチャットボットの設置は、定量的な分析をもとにしたものでした。しかし、設置した箇所に本当に困っているお客様がいるのか、自信が持てていなかった。お客様が何をきっかけに離脱に至ったのかは、数字だけでは実態が掴みにくかったんです。
KARTE Liveを活用することで、定性的な分析が可能になりました。実際のお客様の動きをもとに、サイトのどこで何に困っていたのか、自信を持てるようになりました」
また、KARTE Liveを活用するようになってから、アクションの振り返りをスピーディーに行えるようになったと話します。
「振り返りは、調査・作成・テスト・公開・メンテナンスという流れで実施しています。KARTE Liveを活用する前は、データをためるまでに時間がかかっていたので、調査や効果検証をするにも時間を要していました。ですが、KARTE Liveを使えば、急激にお問い合わせが増えても、すぐに動画を確認して課題を発見することができるので、すぐにアクションを作成・テストして、公開できるようになりました」
さらに今回は、SBI証券のサイトで行った改善アクションの例もご紹介いただきました。飯島氏は「店舗のおもてなしをオンラインで実現する」ことを意識したと振り返ります。
飯島氏「まずは、お問い合わせページを訪れたお客様に対して行ったアクションです。『直前にどのページにいたか』に連動したポップアップを出すようにしています。例えば、国内株式のページからお問い合わせページを訪れた場合は『国内株式のよくあるご質問』というポップアップが表示されます。お客様のお困りポイントに合わせたご案内をしています」
また、株式の取引画面の改修は「特に効果が大きかった」と飯島氏は振り返ります。
飯島氏「特定の株に関しては通常の取引ページとは別の専用ページにて行う必要があります。しかし、通常の注文画面のまま注文を行なってしまうお客様が多くいました。専用ページに移るためのボタンが小さくわかりにくいため、気付かずに進んでしまい、エラーが表示されてしまうケースが多くみられました。
エラーが出てしまったお客様の画面には、エラー表示と同時に『単元未満株の取引をご希望ですか』というポップアップが表示されます。これはケースごとのエラー表示の文字情報をトリガーに、ポップアップでご案内を出しています。ポップアップの案内通りに進むとチュートリアルが始まり、先ほどわかりにくいとお話ししたボタンにフォーカスし、再度ご案内する仕組みになっています」
SBI証券さまのKARTE Liveの活用の詳細については下記からご覧いただけます。
KARTE Liveで顧客を知り、適切なご案内を。ストレスフリーな体験を目指す、SBI証券カスタマーセンターの取り組み
KARTE Liveを起点に、事業部全体で顧客理解を高める。チームでの活用方法(JIMOS様)
次に登壇されたのは、株式会社JIMOS Coyori事業部 相田雄貴氏。同社は、1998年に創業され、現在3つの化粧品ブランドを展開しています。Coyori事業部では、事業部全体で顧客理解に取り組んでいます。KARTE Live活用においても、課題やアクションの幅が広がるよう「共有」に力を入れています。
相田氏「弊社は『KARTE Liveを事業部全員が視聴できる状態』が特徴だと思います。事業部全体として『メンバーの一人が、KARTE Liveで一人のお客様を調査し、その内容を発信する』という活動を毎週続けています。
社内のコミュニケーションツールに投稿するのですが、箇条書きで『検索サイトから流入』『リップトリートメントの商品詳細へ』『美容液オイルのバナーをクリック』『商品詳細に戻る』『商品をカートに入れる』『ログインを求められ、パスワード入力部分で離脱』のように詳細な流れを記載し、気になった点や所感なども合わせて書きます。
すると、他のメンバーからも『商品詳細をかなり見てもらえている』といった声や『ログインを諦めないような、こんなアクションをしてみては?』といったアイデアが続いて出てくるんです」
事業部全員がKARTE Liveを視聴できる状態だからこそ「顧客理解、気づきの共有、課題の摘出、アクションの立案が、スムーズにつながっていく」と相田氏は話します。
また、JIMOSのCoyori事業部には「KARTEチーム」があり、ひと月あたり30〜40件のKARTE Liveの動画を視聴しているとのこと。このチームではさらに顧客を深く知り、アクションに落とし込むため取り組みを行なっています。
相田氏「毎週1度の定例会議で、KARTEチームの5人全員が画面共有をしながら、10名程度のお客様の動画を視聴し、気になったことや改善点のブレストを行っています。話した内容は事象別に記録して、後々も確認しやすいフォーマットを作ってあります。
もともと社内コミュニケーションツールでの発信が活発だった文化も後押しし、KARTE Liveを起点に顧客体験向上への意見は多く集まっていると言います。 こうしたチーム活用を続けたことで確実な成果にも結びついた例も多いと言います。
相田氏「例えば、マイページの改善例です。定期購入の状態やクーポン状況を確認するためにマイページにログインしたお客様の多くが、そのままサイトを離脱していることがKARTE Liveで判明しました。
『開催中のお得なキャンペーンなどをご案内できれば、クーポンを利用していただけるのではないか』という仮説のもと、マイページ内にキャンペーンのポップアップを表示。このアクション以降は、1日あたり20名、月間で600名ほどのお客様がキャンペーンページを訪れていただき、効果を実感しています」
さらに、KARTE Liveでピンチを乗り越えたこともあったと言います。JIMOSでは昨年、ECシステムのリニューアルを行い、以前のシステムでログインしていた全会員を対象に、パスワードの再発行が必要となった時期がありました。
相田氏「パスワードの再発行をしていただくためのお知らせは、メールやサイトのトップページでもご案内していましたが、当然ながらすべてのお客様に読んでいただけるわけではありません。当時、ログインエラーが続出していました。
KARTE Liveで確認したところ、どうしていいかわからず、そのままサイトから離脱されるお客様が多くいらっしゃいました。
そこで、エラーページの表示に合わせて、ポップアップで『再発行は下記より』『不明点がございましたら、お問い合わせください』といったご案内を実施しました。これにより『エラーページでの離脱』は、ピーク時の半数にまで抑えることができました」
Q&A「何人くらい見る?」「定性分析とのバランスは?」
おふたりの発表後には参加者からの質問にお答えいただきました。
Q 毎月PDCAを回すために、何人くらいの顧客の動画を確認していますか?
飯島様: 2〜30人分を、1〜3人でパーッと見ています。ひとりで見るとどうしても先入観が入ってしまうため、複数で見るようにしてます。わかったことや気づいたことがあれば、内容と一緒にKARTE LiveのURLを同じメンバーと共有して、議論したりしています。
相田様: 1週間で10人、1ヶ月30〜40人程度を同じチーム5人くらい見ています。
Q 定量分析と定性分析をどのように掛け合わせていますか?
相田様: 定量分析で使っているツールは、 Google アナリティクスと社内データベースのデータです。 Google アナリティクスで月別の直帰率から課題を抽出したあと、KARTE Liveでページごとになにが起きているか、お客様がどのように離脱しているかを見る、という流れで使うことが多いです。なので、最初にGoogle アナリティクスで定量データを見て、そのあとにKARTE Liveで定性分析をするという流れになります。
深い顧客理解が、より良い顧客体験につながる
飯島様からは「カスタマーセンターでの経験とも照らし合わせ改善のきっかけの多くはお客様の声である」、相田様からは「KARTE Liveの活用を続ける中で、オンラインのお客様をまだまだ理解できていないと気づかされた」とお話しいただきました。
サイトを訪れる顧客一人ひとりの行動の背景には、数字ではわからない感情があります。それらを動画から読み取ることで顧客理解が深まり、よい顧客体験につながるアクションの道筋が見えてくるのではないでしょうか。
セミナーで使用した資料はこちらから
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