Product Story

数字としてではなく、顧客をひとりの「人」として理解する。KARTE Liveが実現する、行動から本音を理解することの価値とは

オフラインの店舗では当たり前のようにできる、顧客の動きを見ることをオンライン上でも実現する「KARTE Live」。クリックやページ遷移といった、数字の奥にある顧客の一連の動きの流れを動画で見ることができます。活用することで、顧客の解像度がより高まることに加え、職種をまたいで動画と一緒に「感覚」を共有することで改善に取り組みやすくするなど、業務にも変化が生まれているそうです。プロダクトマネージャーの佐瀬とリードエンジニアの小川に、KARTE Liveの機能や活用方法、価値、実際に導入した企業の事例などをお話しいただきました。

商品を見る顧客の動きをもとに、商品棚の配置を入れ替える。困っていそうな顧客に、さりげなく声をかける。店舗での顧客体験を高めようと思ったら、顧客の行動をよく観察するかと思います。オフラインなら当たり前にできるその観察を、オンラインでも可能にしてくれるのが、「KARTE Live」です。

KARTE Liveは、顧客のサイト上の動きを動画で確認できるという、KARTEのプロダクトのひとつ。KARTEを導入いただいているお客様に、オプション機能として提供しています。クリックやページ遷移といった「点の情報」から「線の情報」へ、一連の動きの流れを動画で可視化。顧客理解の解像度がより高まり、様々な業務に変化が生じる企業も増えてきています。

顧客の行動がKARTE Liveによって浮かび上がることで、顧客体験の向上を目的とした取り組みにどのような影響がもたらされるのか。プロダクトマネージャーの佐瀬ジェームズ幸輝と、リードプロダクトエンジニアの小川拓也に聞きました。

顧客の本音は「動き」に表れる

お二人は、KARTE Liveの開発にどのように携わっているのでしょうか?

佐瀬:プロダクトマネージャーとして、KARTE Liveの立ち上げ時から全体のプロジェクトに携わってきました。主な役割としては、コア価値の規定から、新機能を追加する際の提供価値や機能要件の定義、開発チームとビジネスチームの橋渡し、顧客にプロダクトを届けるうえでのマーケティング施策の立案・実行などを担当しています。

小川:私は、リードプロダクトエンジニアとして、開発チームをけん引しています。プロダクトの価値を高めるための追加機能を考えたり、導入企業のみなさまに安心して使っていただくための改善を担っています。

KARTE Liveの機能と特徴を教えてください。

佐瀬:KARTE Liveは、ユーザーがWebサイト上でどのような行動をしているのかを、数値データやログではなく、動画で見られる機能です。

動画で見ることで、同じ「ボタンをクリックしてページ遷移」であっても、ページを上下にスクロールして迷いながらクリックしたのか、迷うことなくクリックしているのかなど、細かな行動の違いを知ることができます。

特徴として、見たいシーンやある属性の顧客を特定して、検証したい箇所をピンポイントで確認できます。

氏名や住所、決済情報など、ユーザー自身が入力する情報やプライバシー性の高い情報は自動でマスキングされるので、個人情報に配慮しながら動画を見て検証を進められます。このマスキングは任意で追加設定いただくことも可能です。

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動画で「それ、あなたの感覚でしょ?」の壁を超える

KARTE Liveを使うことで、どのような変化が期待できるのでしょうか?

佐瀬:まず、顧客への理解度が格段に上がります。

数値データを分析することでも、顧客理解は深められます。ただ、数字の裏にある細かな違いにこそ、顧客体験を向上させるヒントがあるというのも事実。KARTE Liveは、そんな顧客の機微を知るのに非常に有効的です。

PVを例にとると、期待値と合わずにすぐに離脱した人も、じっくりとページを見て満足して離脱した人も、それぞれ同じ「1PV」や「離脱」として数えられますよね。でも、顧客が感じていることはそれぞれ違う。この違いは、高速にスクロールをしているのか、はたまた時折手を止めながらスクロールしているのかといった行動に表れます。

こういった細かな行動の違いを動画で目で見て直接感じることで、顧客への理解を深められると考えています。

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プロダクトマネージャーの佐瀬

また、ユーザーの動きを動画で見られることで、違う部署や役割の方との「共感」が生まれやすくなります。 KARTE Liveをお使いいただいている方々にヒアリングしたときに「経営層やチームのメンバーに、ユーザーが抱える課題を伝えやすくなった」という声をいただいて、この価値が明確になったんです。

プロダクトの開発には、経営層やマーケター、エンジニア、デザイナーなど多くの人たちが関わりますよね。それぞれユーザーとの距離感や役割が異なるため、プロジェクトを進めていくなかで、すれ違いが起きてしまうこともあるかと思います。

しかし、ユーザーの動きを一緒に見ると、細かい説明をせずともユーザーが抱える課題を視覚的に捉えられ、「これは改善しなければいけない」という意識を共有できる。「それはあなたの感覚じゃないの?」と言われてしまっていた提案も、動画という証拠があると受け入れてもらいやすくなるんです。

顧客の課題に対して動画を通して共通認識を持てれば、アクションにつなげるサイクルもスムーズに確立できますし、改善のスピードも上げられるのではないかと考えています。

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「動画」という共通言語があることで、コミュニケーションコストが減り、改善のサイクルを早められるのですね。

小川:活用いただいている方々からは、数字だけでは分からないユーザーの実際の動きを目の当たりにすることで、チーム全体が「ユーザー起点で考える」ように変わっていくということをお伺いしたこともあります。「ユーザーのためにどんな施策を行うべきか」という点に目線を合わせて組織を動かしやすくなった、と喜ばれている様子を見たときはは、私も嬉しかったですね。

数字だけではわからない「顧客の心」が見えたことで、新しいアイデアが生まれた

社内で認識を揃えていくうえでも、動画は非常に重要な役割を果たしてくれるんですね。実際に導入している企業では、どのように活用されているのでしょうか?

佐瀬:大きく分けて、4つの利用方法があります。KARTEで実施した施策の細かな改善や、プロダクトの機能開発にあたっての課題発見、問い合わせしてきたユーザーの動きを見てサポートをするカスタマーサポートなどです。また、「ユーザビリティテスト」や「ユーザーヒアリング」の代替手段として使っていただくケースもあります。

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ユーザビリティテストやユーザーヒアリングの代替というのは、具体的にどのような活用イメージでしょうか?

小川:ユーザビリティテストでは、特定の利用状況に当てはまるユーザーにお声がけして、会社などに来ていただいて実際の利用場面を観察したり、ヒアリングしたりするケースが多いです。

ただこれは、かなりの時間やコストがかかります。そのうえ、プロダクトやサービスは日々アップデートしていきますから、せっかく集めた声も、どんどん古くなってしまうんです。

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リードエンジニアの小川

KARTE Liveでは「実際の動きを観察する」ことは可能です。手間を抑えながらリアルな顧客行動を見ることができ、かついつでも見ることができるので、量も鮮度も担保される。常に「今、ユーザーはどのように使っているのか」を見ながら改善案を考えられるので、ユーザビリティテストやヒアリングの代替として使えるシーンもあると考えています。

一方で、その時々の感情や意図など直接対話することで実感し理解が深まることもあると思うので、従来の手法と組み合わせながら、補完するイメージで活用いただくことで改善の質もより高めることができるのではないかと思います。

実際に活用いただく中で、印象的だった事例はありますか?

小川:特に印象的だったのは、ゴルフに関するサービスを提供する『ゴルフダイジェスト・オンライン』のECサイトの事例ですね。検索機能改善のプロジェクトでKARTE Liveを使い、もともと考えていた仮説が覆ったそうなんです。

同社のECサイトの検索機能には、「絞込み機能」がありました。当初は、ユーザーがこの機能を活用して自分のニーズにあった商品にたどり着いていると仮説を立てていたそうです。しかし、実際にKARTE Liveでユーザーの動きを見てみると、絞り込み機能が意外と使われておらず、検索一覧からポチポチと気ままに遷移していることに気付かされたそうです。結果、他のインサイトが判明し、それに即した形でのリニューアルをしたと伺いました。

もし、KARTE Liveで見ていなければ、お客様のニーズから外れたリニューアルをしてしまっていたかもしれない。動画で「生の動き」を見ることで得られる価値を感じましたね。

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「ゴルフダイジェスト・オンライン」のECサイト

佐瀬:私たちもKARTE Liveを利用して、KARTEの管理画面やサポートページを改善しているのですが、ユーザーの想定外の行動をKARTE Liveで発見し、改善したケースがあります。

どのような行動を発見したのでしょうか?

佐瀬:KARTE Liveをより多くの方に使ってもらうために、KARTE Friendsが使うKARTE管理画面にKARTE Liveへの導線をいくつか埋め込んでみたんです。ただ、ユーザーが導線をクリックしてKARTE Liveの画面に遷移した後に、次々と離脱してしまっていたんですね。

KARTE Liveでユーザーの動きを見るためには、機能をインストール後、配信設定をしなければなりません。しかし、KARTE Liveでユーザーの動きを見てみたら、インストールしてすぐに動画を見られると思ったのか、動画の再生ボタンを押していました。そのため、「なぜ動画が再生されないのかわからず、離脱しているのでは」という仮説を立てることができました。

その後、セットアップを喚起する案内を比較的目立つような箇所に出したほか、インストールの直後に必要な設定をメールでお送りするなどの施策も実施しました。結果、インストール後に離脱をするユーザーが格段に少なくなりました。

「顧客をひとりの人として理解する価値」を、多くのKARTE Friendsに提供したい

KARTE Liveは2019年に有償オプションとして提供が始まり、2020年には一部無償化されました。なぜ、無償化に踏み切ったのでしょうか?

佐瀬:多くのKARTE Friendsに使ってもらい、動画で「直感的に顧客を知る」体験をしてもらいたいという思いがありました。

「顧客を人として可視化し、理解すること」は、KARTEのコアとなる価値です。ユーザーの一連の動きを映し出す動画は、顧客理解を深めるうえで強力なリソースになると考え、2018年のKARTEのブランドリニューアルに伴い、「顧客を知る」機能の強化を目的にクローズドベータ版の開発・提供が始まりました。

その後2019年5月に正式にリリースし、有償オプションとして提供しましたが、導入いただいている企業は一部にとどまっていました。ですが、KARTEの価値のコアを強烈に実現しているこの機能の間口はもっと広くあるべきだ、という議論は社内で常にしていました。

KARTE Liveは、実際に使ってみることで魅力が伝わるプロダクトです。導入のハードルを限りなく下げるためにはどうするべきかを考えた結果、一部の機能の制限やデータ保存期間の制約を設けたうえで、無償で使えるようにしました。

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小川:私自身、2019年末から開発に携わっていたものの、顧客に価値提供できているイメージが不明確で、どこか確信までは持てていない感覚も正直ありました。でも、実際に活用いただいているFriendsの声を聞いていくうちに、みなさんが感じてくださっている価値が身にしみて分かってきました。

だからこそ、まずは気軽に使ってみてほしい。一度その価値を知ると、これ以上に解像度が高くユーザーを知れるサービスはないと言ってくださる方も多くいらっしゃいます。 価値に触れるまでのハードルをなるべく下げ、多くの人にKARTE Liveを使っていただきたいと思います。

作り手の想いを受け取ってもらうためにも、より深い顧客理解を

今後、KARTE Liveをより多くの企業様に活用いただき、より良い顧客体験の創出へとつなげていくために、どのようなことに挑戦していきたいですか?

小川:安心して使っていただくために、セキュリティ面には力を注いでいきたいですね。

現状も、データの取得方法を工夫したり一部の情報にマスキングされるようにすることで、氏名や住所、クレジットカード番号、パスワードなど、ユーザーが直接入力する情報は、確実に守られる仕組みになっています。

今後は担当の方やそのサービスを使っているお客様によりご安心いただけるよう、設定をしなくても保護すべき情報が自然と検知されるような仕組みを作りたいと考えています。

より安心して使えるように、保護すべき情報が自然と検知され、動画上でしっかりマスキングされるような仕組みを作りたいと考えています。

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佐瀬:私は、普段オフラインで人が感覚的にできることで生まれる価値を、どんどんオンラインの世界でも再現できるようにしていきたいです。

オフラインだと、即座に目の前でお客様の動きを見ることができ、そこから色々な気付きを得られる。お客様と同じ目線で体験を見るからこそわかる、自社の製品の良さや特徴、逆に課題や悪い体験などがあります。例えば、お客様が迷ったり止まったりする動きをしていたら、ちょっと使いづらいのかな?など、顧客体験を向上するためのヒントがたくさんある。

ですが、オンラインではそのようにお客様の動きを見るのは難しい。そこで、オフラインでは当たり前にできる、即座に直感的に動きを見て気付きを得られることを、KARTE Liveでも実現できるように、進化させていきたいと思っています。

もう少し具体的にいうと、今でもKARTE Liveではある程度見たいシーンやお客様を絞り込むことができますが、サイトという場自体や体験、ユーザーの行動に何か疑問を感じたときに、即座に直感的にそのシーンやお客様にアクセスできるようにしたいですね。

小川:KARTE Liveを使っている方はマーケターの方が現状では多いですが、私は、エンジニアやデザイナーなど、プロダクトを作る立場の方にも使ってほしいと思います。

サイトやアプリのボタン、フォームといったUIの一つひとつは、言い換えれば、お客様とFriendsの皆様のコミュニケーションです。自分自身もエンジニアとしてどんな価値・想いをユーザーに届けるのか、どう伝えればメッセージを受け止めていただけるか、プロダクトを作るとき、常に向き合って考えています。

作り手の想いを、顧客に良い体験として感じ、受け止めていただくには、作り手自身が顧客の姿を本質的に捉え、分析し、改善していくことが欠かせません。 顧客の姿を実感し、体験に寄り添ったプロダクトを届けてもらうために、KARTE Liveを磨いていきたいです。

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