Event Report

Wemade Online・スマートニュース・ぐるなびから学ぶ、ユーザーを起点にアプリを成長させるデータ活用とは

アプリ分析サービス「AppApe」のフラー、アドフラウド対策ツール「SpiderSF」のSpider Labs、そして「KARTE」のプレイドが、アプリデータ基盤の整備とアプリ改善をテーマにセミナーを開催し、それぞれのサービスを活用するWemade Online、スマートニュース、ぐるなびによるパネルディスカッションを行いました。

弥永 勝彦
株式会社Wemade Online 運営室 室長
プレイステーション2の時代から運営系の業務に携わり、CSハードからPC、そしてモバイルデバイスと時代の移り変わりを見ながら、かれこれ17年ほどゲーム運営の仕事をしています。不惑を迎え、マーケティングと事業企画がメインになり、運営の現場からは少しずつ離れていきながらも、「どうすれば、お客さんにゲームのことを意識してもらえるようになるか」を考え続けています。
網谷 隆志
スマートニュース株式会社 マーケティングマネージャ
新卒で銀行に入社して法人営業を経験。その後、株式会社サイバーエージェントで約10年間にわたりインターネット広告業務に携わる。2018年より現職に参画。デジタルプロモーションを中心とした獲得施策でアプリのユーザー拡大を牽引。マーケティングマネージャとしてオンラインとオフラインを横断した統合マーケティングに取り組んでいる。
平松 巧三
株式会社ぐるなび プロダクトデザイン部 プロジェクトマネジメントグループ シニアリーダー
前職楽天でのアプリディレクション・UI設計を経験を経て、現職ぐるなびではアジャイル開発でのスピーディなアプリ改修により大幅に数値改善。昨年度からはKARTEを活用したグロースハックに取り組んでいる。

昨今1人あたりのアプリ平均利用時間は年々伸びており、タッチポイントとしてアプリの重要性が高まっていることを感じます。

たくさんあるアプリのなかから自社のアプリを選んでもらうためにはユーザー起点で改善を続けることが重要です。そして効果的な改善を考えるためには、まず自社の状況を正しく把握する必要があります。そのためには継続的にデータを追跡できる環境の整備が求められます。自社データからユーザーの行動や状態を可視化することに加え、マーケットデータを用いて競合や市場からみた相対的なポジションを明らかにすることも重要です。

このような理解のもと、アプリ分析サービス「AppApe」のフラー、アドフラウド対策ツール「SpiderSF」のSpider Labs、そして「KARTE」のプレイドが、アプリデータ基盤の整備とアプリ改善をテーマにセミナーを開催。それぞれのサービスを活用するWemade Online、スマートニュース、ぐるなびによるパネルディスカッションを行いました。

3社それぞれのツールの使い方・データの活かし方

まずは「コロナによる外出自粛といった世の中の変化をうけて各社にどのような影響があったか」をテーマに近況をおうかがいしました。

スマートニュース株式会社マーケティングマネージャである網谷氏によれば、スマートニュースでは今年の3月から新規ユーザー数が順調に伸びています。「コロナ禍で自分の状況を判断するための情報を求める動きが活発になり、手軽にニュースを確認できるニュース系アプリの需要が増えたのではないか」と、網谷氏は分析します。

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網谷氏「2019年にスマートニュースはちょうど47都道府県チャンネルをリリースし、ローカル記事を集約するようになったタイミングでした。自宅の周辺や住んでいる地域の状況を知りたいという方がたくさんインストールしてくださったようです。」

ぐるなびアプリは、外出自粛要請や飲食店の営業自粛が影響し、ユーザーの利用時間が下がっています。来店するのではなく、持ち帰って家で食べるテイクアウト需要の高まりをうけ、テイクアウト実施店舗を絞り込める機能が新たに実装されました。

平松氏「以前から競合との差別化は、至上命題でした。競合もネット予約の数がそのまま収益になるビジネスモデルをとっています。これまでは、どのような付加価値をだしていくか、そのためにどのような機能を追加するか、どういうプラットフォームと手を組むかが重要でした。しかし今まさにパラダイムシフトを余儀なくされています。いかに早くユーザーが求める新たな体験を理解し、新たな価値を実装できるかが勝負所じゃないでしょうか。」

ぐるなびは創業20年以上、競合他社のなかで最も古株です。20年以上貯めたデータは強みとなる材料ですが、データの分析基盤が整えられたのはつい最近で、現在もデータを活かしきれていないと語ります。

平松氏「KARTEを導入したおかげで、アプリのデータはリアルタイムに整理できつつあります。アプリ自体はアジャイル開発で改善を行っており、開発工数の半分をUI、半分をトラッキングの整備にかけています。今まさにデータが活用できる環境づくりに注力している状況です。」

一方スマートニュースは、BIツールを導入し、ユーザーに関するデータのほとんどを見える化しています。アドフラウド対策についても、Spider AFを導入し、正しいデータが計測できるよう整備が進んでいます。

スマートニュースでは、広告出稿先を慎重に選んでおりアドフラウド率の低いメディアへ投資できていると思われていたそうです。しかしSpider AFを導入してCPIメニューを開始したところ、獲得のうち80%がアドフラウドであることが発覚し、網谷氏は衝撃を受けたといいます。

以下は佐藤氏から共有された、アドフラウド被害の一例です。ある事業者様が1ヶ月間に獲得したコンバージョン14万のうち、46.2%がアドフラウドによるものでした。

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網谷氏「私たちは広告で他社のブランドロゴを使うこともあるため、ブランドセーフティを重視しています。メディアも慎重に選定しているつもりでしたが、蓋を開けてみれば80%がアドフラウド。実は私も代理店時代には、アドフラウドの影響はあまり気に留めていませんでした。しかしこの件で自分が持っていた認識が大きく変わりましたね。」

株式会社Wemade Onlineはゲーム運営の会社です。同社では、どのゲームを導入するかを検討する際にApp Apeを使いマーケットデータを活用されています。競合アプリのユーザーがどんなアプリを使用しているかというデータとユーザーのデモグラフィックから、市場でのポジショニングを分析。競合タイトルを一通り調べ、アプリストアにあるゲームジャンルよりもさらに細分化された市場を想定して調査・分析・検討を入念に繰り返しています。

弥永氏「私たちが展開しているのは海外からコンテンツを輸入し、国内で販売する事業です。現在の日本市場の状況を正しく把握する必要があります。なぜなら、成功できるコンテンツが2割にも満たない市場でなんとなく売れそうなゲームを選ぶことは、闇の中にただただ物を放り込むようなものですからね。」

ユーザーのロイヤリティ向上を目的とした指標

新規ユーザーがアクティブユーザーになり、やがて飽きて離脱する。休眠ユーザーが数十日後にまた復帰し、全体のアクティブユーザー数の減少が抑えられる。このような一連の流れはあらゆるサービスに見られる動向です。

Wemade Onlineでは、自社独自の指標として、復帰ユーザーによりアクティブユーザー数の減少が抑えられる流出入の均衡点を見ています。その均衡点を早めることに注力することで、結果としてユーザー数の増加を狙っているそうです。さらにゲーム個別のKPIツールでARPUを集計し、どんな人がどのゲームに対して課金しているのかを分析しています。

弥永氏「ゲームユーザーにとって、課金は特別なアクションです。課金をするとユーザーがもつアプリに対する認知が変化するようで、課金をしたユーザーとしていないユーザーではリテンションにも大きな差がでます。課金してくれているユーザーはロイヤル顧客になりやすい傾向もあります。」

ぐるなびでは、ユーザーの行動だけでなく飲食店の掲載項目に関してもKPIを設けているといいます。ユーザーが掲載店舗に予約をすると収益が得られるビジネスモデルになっているため、ユーザーが掲載店舗に予約しやすい条件を揃えられているかどうかは重要な指標です。

平松氏「掲載している飲食店がネット予約に対応しているか、その日中のネット予約に対応しているかは、ユーザーからの予約数に影響を与えます。一方でロイヤル顧客になりそうなユーザーの見極めは、ユーザーの年間予約回数や貯めているポイントの利用残高を見ていますね。」

スマートニュースが考えるロイヤル顧客を育てる戦略は大きく2つ存在します。

1つは、使いはじめてすぐにロイヤル化を狙うパターン。たとえば乃木坂46の情報がまとまったチャンネルが存在することを訴求し獲得したユーザーがあてはまります。他のアプリになく目的に沿った機能があれば比較的早期にロイヤル化しやすいと考えられます。

もう1つは、使っていく中でロイヤル化を促していくパターン。無料クーポンを目的に利用しはじめたユーザーは特に定着しづらく、インストール後に行うチャンネルのリコメンドといった施策で中長期的にアプローチしていく必要があります。

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後半はいくつかのテーマを軸にパネルディスカッションを行いました。

ロイヤル化を狙った上記2つの戦略について、ユーザーのロイヤリティの変化はどのように把握しているのでしょうか。

網谷氏「一般的なアクセスログデータを見ていれば利用頻度や利用時間はわかります。しかし毎日使ってくれている顧客でも、サービスやアプリ自体に好感をもってくれているかというと必ずしもそうとは限らず、なんとなく惰性で使っているようなユーザーもいます。好感を持って使ってくれている人とそうでもない人を明確に区分するため、アプリ外の調査会社を使ったユーザーアンケートを実施して見える化しています。あと気にしてるのはツイッター投稿やレビューですね。」

ぐるなびでも同じく、行動データに加え定性的な情報からも顧客のロイヤリティを判断していました。

平松氏「NPSやデプス調査、行動観察調査で得た定性的な情報をもとにユーザーの心情を把握しています。将来的にはKARTEにNPSを元にした感情スコアを導入したいと考えています。」

適切なデータを集められる環境を構築することで、顧客の行動や心情をより解像度高く把握することができます。アプリ内の行動データ以外にも、マーケットデータやキャンペーンのデータを組み合わせ、点ではなく線で理解することが大切です。

たとえばオフラインの実店舗で接客を行う際には、目の前のお客様の振る舞いや装いからニーズを予想することが可能です。データ基盤を整えることでオフラインと同じように、その人がどんな人なのか、何を求めてアプリを使っているのかが見えてきます。その結果オンラインでもオフラインと同じように、1人のユーザーに寄り添った体験を提供することが可能になるのでないでしょうか。

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