Event Report

膨大な作品の中から「運命の一冊」を届ける。コミックシーモアが挑戦する最適なマッチングの実現 | KARTE Friends Meetup in KANSAI vol.2

2025年7月、KARTE Friends Meetup in KANSAI vol.2を大阪にて開催しました。日本最大級の総合電子書籍ストア「コミックシーモア」を運営するNTTソルマーレ株式会社におけるKARTEシリーズの活用事例と、顧客体験向上への取り組みについて共有いただきました。

2025年7月、KARTE Friends Meetup in KANSAI vol.2を大阪にて開催しました。関西でのオフラインミートアップの実施は約2年ぶりとなります。

今回は、日本最大級の総合電子書籍ストア「コミックシーモア」を運営するNTTソルマーレ株式会社 電子書籍事業部 マーケティングG チーフプロデューサーの田北 泰裕さん、プロデューサーの前田 絵美さんがゲストとして登壇。
同社におけるKARTEシリーズの活用事例と、顧客体験向上への取り組みについて共有いただきました。前回のKARTE Friends Meetup in KANSAIの模様はこちらからどうぞ。

KARTE Messageで“ユーザーに必要な情報だけ”を届ける。ネクイノのカスタマーサクセスによる継続率改善の取り組み | KARTE Friends Meetup in KANSAI vol.1

膨大な量の作品とお客様をつなぐ、最適なマッチング実現への挑戦

久しぶりのKARTE Friends Meetup in KANSAIは、まずテーブルごとに自己紹介タイムからスタート。その後、田北さんと前田さんによるKARTE活用事例の発表に移りました。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0081

NTTソルマーレ株式会社は、2004年からケータイ向けコミック配信サービスを展開し、今年で21周年を迎えました。同社が運営する「コミックシーモア」は、169万冊以上の電子書籍を取り扱い、月間4000万UU以上が訪問する国内最大級のプラットフォームです。※記載されている数値は2025年8月末時点のものです。

同社の強みは、月1000本以上実施されるキャンペーンの質と量。出版社との長年の関係構築により、先行配信作品も多数提供しています。しかし、この膨大な作品数とユーザーの多様な好みをマッチングさせることは、大きな課題でもありました。

こうした課題を解決するために約3年前にKARTEを導入した背景について、田北さんは「お客様ひとりひとりに作品との出会いを創出し、CXを向上させるため」と表現します。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0061

NTTソルマーレ株式会社 電子書籍事業部 マーケティングG チーフプロデューサー 田北 泰裕氏

田北:「以前のツールでは3つの大きな課題がありました。1つ目はマッチング精度。作品数やキャンペーン数が非常に多いため、手動でお客様のセグメントに合わせていくには限界がありました。

2つ目はリアルタイム性の不足。施策の対象者を設定するためにSQLでデータを抽出してCSVアップロードという工程が必要で、最新の会員データと施策に用いるデータにタイムラグが発生し、工数もかかっていました。

3つ目は効果測定の不十分さ。以前のツールでは、しっかりとしたPDCAが回せていませんでした。施策の目的に応じた、計測や効果測定を明確にする必要がありました」

課題解決に向けて、コミックシーモアではKARTE活用の明確な方向性を策定しました。田北さんから、3つの軸での取り組み方針が詳しく説明されました。

マッチング精度の向上:手作業から自動化への転換

田北:「まず最優先課題だったマッチングについては、手作業では限界があるため、どんどん自動化・効率化していく方向性を決めました。2つ目がレコメンドの精度向上、そして3つ目が運用部門と技術部門の密な連携ということで、体制の見直しも併せて行いました」

膨大な作品数と年間1000本以上のキャンペーンという規模では、従来の手動セグメント設定では到底対応しきれません。そこで、ユーザーの行動データや属性データを活用した自動マッチング機能の充実を図ることとなったそうです。

リアルタイム性の確保:データ基盤の刷新とシナリオ設計

リアルタイム性の向上については、技術基盤から見直すアプローチを採用しました。

田北「データウェアハウスをリアルタイム基盤に変えるタイミングでしたので、直接データを連携していくための構成に決めました。また、接客に必要なイベントを網羅して定義し、設定しました。工数はかかりますが、最初に使う可能性のあるものも含めて設計してしまいました」

この網羅的なイベント設計により、後から「このデータが欲しかった」という状況を避け、迅速な施策実行を可能にしているとのこと。また、シナリオ設計においても、ユーザーの行動に応じて自動で接客内容が決定される仕組みを充実させることで、人的リソースの制約を解決しています。

効果測定の高度化:KPI設計と振り返りの仕組み化

3つ目の柱である効果測定については、より本質的な成果指標の設定を行いました。

田北「まずは、KPIを綿密に設計し、接客ごとにカテゴリー分け、実績の見える化などを行いながら、振り返りを容易にする仕組み作りのためにKARTEを活用してきました」

この方針により、実際のビジネス成果につながる指標での施策評価が可能となり、継続的な改善サイクルを回せる体制が整いました。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0105

施策配信フローの改善や購買促進の自動化など多面的にKARTEを活用

続いて、コミックシーモアにおけるKARTEの具体的な取り組み事例について、前田さんから「広告クリエイティブとKARTE接客の連携」「完全自動の購買促進接客」「配信管理と実績の可視化システム」の3つの施策が紹介されました。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0068

NTTソルマーレ株式会社 電子書籍事業部 マーケティングG プロデューサー 前田 絵美氏

最初に紹介されたのは、既存の制作フローを見直すことで効率化を実現した事例です。

前田:「従来は、漫画のコマを接客に使う際、画像作成から出版社様への許諾取得まで含めると、1週間以上かかっていました。そこで広告で使用している素材をそのまま施策に活用することで、リードタイムを大幅に短縮できました。

また、最近のユーザーの情報受信スタイルの変化に注目し、TikTokやYouTubeショート動画のように受動的な体験を重視しました。自動で画面が切り替わってアニメーションのように情報に触れられるテンプレートをプレイドさんに準備していただきました。この施策では、従来のスクロール型の施策と比べて約2倍のクリック率向上を実現しました」

続いて紹介されたのは、手動運用の限界を突破するための自動化事例です。ECではおなじみのレコメンド機能を、電子書籍サービス向けにカスタマイズした取り組みについて語られました。

前田「ユーザーの購入ジャンルや性別に応じた作品を、1日1回完全自動で表示する施策を実装しました。紐付けテーブルを活用して毎日データを連携し、リアルタイムでマッチングした3作品をおすすめとして表示しています。ただし改善点もあり、キャラクターの『ヨムビー』が目立ちすぎるあまり、作品自体に注目が集まりにくいという課題も見つかっています」

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0122

3つ目の事例は、KARTE活用の拡大に伴い必要となった運用体制の整備について。KARTEの導入後、以前より施策数が約1.5倍に増加するという変化に伴って、発生した新たな課題にどう対応したかが語られました。

前田:「3〜4人のチームでKARTEを運用していますが、社内のさまざまな部門から依頼が来るようになりました。売上に直結する施策を優先したいところですが、社内連携も重要で、どこまで対応するかの線引きは常に悩んでいる部分です。

実績の可視化では、KARTEの管理画面で必要なゴールを設定し、日別・月別で可視化。BIツールとも連携して、依頼部門が自らデータを確認できる仕組みを構築しました」

KPIについては、メインをクリック率とCV率に設定し、売上をサブKPIとしているそうです。その理由について「売上をメインの目標にすると接客数を増やせばいいという考えになり、CXを損ねる可能性があるため」と前田さんは説明しました。

前田さんが3年間のKARTEの運用を通じて見えてきた今後の課題についても紹介し、発表を締めくくりました。

前田:「レコメンドの精度向上が、現在の最優先課題です。電子書籍の特徴として、一度読んだ作品の再購入は基本的に発生しません。そのため、すでに読んだ作品を除外したおすすめ機能の実現が重要になります。

また、ユーザー行動に基づいたリアルタイムな施策の配信をどう実現するかも課題です。現在はページごとに表示を設定していますが、今後はn1顧客分析を活用して、ユーザーが迷っているタイミングでの最適な施策を目指します。

施策の頻度をどう最適化するかも重要な課題ですね。現在はフラグを使って1日あたりの接客上限数を設定していますが、ユーザーが煩わしく感じない最適な頻度の見極めを分析中です」

コミックシーモアのKARTE活用については、過去にCX Clipでもインタビューを掲載しています。同社の取り組みが気になる方はこちらもどうぞ。

データを活用して膨大で多様な作品をユーザーの好みに合わせて訴求する。「コミックシーモア」のKARTE活用事例

関西のKARTE Friendsが集い、実践的な運用ノウハウを共有して知見を深める

田北さんと前田さんによる発表後の質疑応答では、参加者から実践的な質問が多数寄せられました。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0148

運用体制について質問された際、前田さんは「プロジェクトは10人規模の横断チームで組んでいますが、実際の運用は3人で他業務と並行しながら行っています。ただし技術的な部分は専門メンバーがサポートする体制です」と回答。KARTEの使い方を習得するまでの期間については「半年以上かかりましたが、管理画面でさまざまな分析ができるようになったのは、運用メンバーにとって大きなメリットです」と語りました。

「KARTEを使いこなせているかどうかは、永遠の課題だと思います。全機能を覚える必要はなく、必要な機能を必要なときに使えることが重要です。プレイドさんが提供するチャットサポートも積極的に活用していただければ」と、田北さんは参加者のみなさんに向けてアドバイスを送りました。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0186

質疑応答の後は、立食形式での交流会を開催。KARTE Friends同士で通じるところもあるのか、久しぶりのKARTE Friends Meetup in KANSAIでありながら、会場では和やかな雰囲気での交流が行われていました。

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0191
★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0205
★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0245

交流会の途中ではビンゴ大会も!

今後もプレイドでは、KARTE Friendsが実践的な知見を共有し、より良い顧客体験を実現するための機会を提供していきます。次回の開催もぜひご期待ください!

★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0231
★20250717 KARTE Friends Meetup Kansai vol2 0015

会場では、参加してくださったKARTE Friendsの皆様にこの2年で増えたいろんなお土産もご用意しました

SHARE