テックタッチとハイタッチの最適なバランスは?KARTEが支えるベルフェイスのデータドリブンなカスタマーサクセス体制

電話面談システム「bellFace」と営業担当者向けのSalesforce AI入力ソリューション「bellSalesAI」を提供するベルフェイス株式会社。同社は、顧客とのデジタルチャネル最適化やデータドリブンなカスタマーサクセス体制の構築にKARTEシリーズを活用。今回は、KARTEの導入経緯や具体的な施策や成果についてお話を伺いました。

「テクノロジーとデータで営業の未来を創造する」というミッションのもと、電話面談システム「bellFace(ベルフェイス)」と営業担当者向けのSalesforce AI入力ソリューション「bellSalesAI(ベルセールスAI)」を提供するベルフェイス株式会社。

同社は、顧客とのデジタルチャネル最適化やデータドリブンなカスタマーサクセス体制の構築にKARTEシリーズを活用。限られたリソースで最大限の顧客体験を実現するための取り組みを進め、2025年の⁠KARTE BRONZE STARを受賞しています。

今回、ベルフェイスのbellSalesAI事業部 カスタマーサクセス部に所属する作道 麻友子さんに、KARTEの導入経緯や、具体的な施策や成果についてお話を伺いました。

営業領域の課題を解決するプロダクトを提供し、セルフオンボーディングを推進

まず、作道さんの所属と役割について教えてください。

作道:現在、電話面談システム「bellFace」と2024年4月にリリースした営業担当者のSalesforce入力作業を自動化するAIソリューション「bellSalesAI」の2つのプロダクトのカスタマーサクセスを担当し、テックタッチ施策の実行や企画を担当しています。

当社のカスタマーサクセスの基本方針は、プロダクトの利用に関してのお困りごとの対応は、お客様によるセルフオンボーディングを推進して解消を目指すというものです。そのために、ポータルサイトの構築や改善、プロダクト管理画面やメールなどのお客様との接点における施策に取り組んできました。

最近では、プロダクト改善のためのVoC(顧客の声)の収集や、さらなるセルフオンボーディングの精度向上のための取り組みを進めています。

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ベルフェイスのbellSalesAI事業部 カスタマーサクセス部 作道 麻友子氏

KARTEを活用する前の課題について教えていただけますか?

作道:bellFaceでは顧客数が増加する中で、カスタマーサクセスの担当者1人あたりの担当顧客数も増えてしまい、業務負荷が大きくなっていました。カスタマーサポートの品質を維持しながら、チャーンレートの目標水準を達成しなければならず、品質と効率の両立という課題に直面していました。

また、新プロダクトであるbellSalesAIの立ち上げにあたって、カスタマーサクセスのアサインが必要なものの、既存プロダクトほどは人員を割くことはできず、限られた人員で効率的にお客様をサポートする体制の構築を進めなければなりませんでした。

NPS®やWeb上の行動データを組み合わせて仮説を立てる

そうした背景のなか、KARTEを導入した理由を教えてください。

作道:私はKARTEの導入を担当していなかったのですが、以前はセルフオンボーディング推進のためチュートリアルなどを実装できるツールの導入を検討していました。いくつかのツールを検討するなかで、ユーザーのアクションにあわせたリアルタイムコミュニケーションが可能だったためKARTEを選びました。当時、他に検討していたツールは、ユーザーアクションとコンテンツ提供にタイムラグが発生していてリアルタイム性が低いと感じたと聞いています。

作道さんがKARTEと関わり始めたのはいつ頃からでしょうか。

作道:私がKARTEを使い始めたのは、当社のお客様向けのポータルサイト「ベルポータル」を立ち上げた後です。そのポータルサイトを活用してもらうために、コンテンツの出し分けをしようと、KARTEを使い始めました。

実際にKARTEを使ってみたところ、UIが非常に使いやすく、わかりやすいという印象を抱きました。オンボーディング用のセミナー動画を視聴しながら、プレイドの担当の方からのサポートも受けられたので、困ることなく利用できましたね。

最初は、KARTE、KARTE Datahubを導入しました。1年ほどしてからKARTE Blocksを導入し、その後にKARTE MessageKARTE for AppRightSupport by KARTEなどを導入していきました。

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ベルポータルの画面

KARTEを使った最初の施策はどのようなものだったのでしょうか。

作道:まずは試してみようと考えて、ベルポータルでのコンテンツ出し分けをKARTE Blocksで行いました。ベルポータルのスライドビューに、導入後1週間以内のお客様には導入に関連するコンテンツを出す、管理者のお客様には管理者向けのセットアップ情報を出す、といったコンテンツの出し分けを行ってみました。

ただ、当時のベルポータルはトラフィックの母数が多くなかったため、期待通りの効果は得られませんでした。その後、bellFaceの管理画面上でお客様に新機能のお知らせをするといった事業への直接的な貢献を目的とした施策や、アンケートを作成してVoCを収集する施策などを中心に進めるようになりました。

他には、KARTEを使ってNPS®(ネット・プロモーター・スコア)の測定なども行いました。NPS®をWeb上の行動データと合わせてデータを分析して仮説を立て、新たな施策を実行するというサイクルを継続的に回してきました。

注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

マルチプロダクト化に伴うシステム構成変更により、施策自動化も実現

KARTEを活用して得られたデータでわかったことはありましたか?

作道:さまざまなことが判明しました。たとえば、オンボーディングの初期にメールやポータルサイトの閲覧頻度が多ければ多いほど、利用継続、稼働率につながることがデータからわかりました。

この傾向を踏まえて、テックタッチでもオンボーディング初期に丁寧にコミュニケーションをすることにしました。これはn1分析などを通じてKARTEで解析できるデータに加え、当社で保持しているデータをBIツールに入れて分析していった結果、判明したことです。

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データの分析を行う環境はどのようになっていますか?

作道:基本的にはKARTEのデータと、bellFaceとbellSalesAIの利用状況データ、お客様の契約情報データなど全てBigQueryに集約し、必要な情報だけをTableauなどに出力しています。KARTE Datahubを活用することで、クエリを書くだけで必要なデータを抽出できるため、分析のしやすさという点で非常に助かっていますね。

BigQueryに分析基盤を集約できたことで、実行した施策とプロダクトの利用率との関連性など、幅広く柔軟な分析が可能になりました。また、BigQueryから顧客の属性情報をKARTEに連携することで、複雑かつ柔軟なセグメンテーションも可能になるなど、多くの利点が生まれています。

システム構成を準備するのは大変だったのではないでしょうか。

作道:社内にデータベースの整備をするチームがいるため、BigQueryにデータを集約するシステム構成の大枠は、そのチームに対応してもらい、その後の日々の分析は私のほうで進めています。

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KARTEの導入初期から、このシステム構成だったのでしょうか?

作道:いえ、途中からですね。私たちは2つのプロダクトを展開しているため、データをどう保持し、それぞれのプロダクトで活用するかは大きな課題で、チームで幾度も議論を重ねました。基本方針として、顧客向けのデジタル配信チャンネルはKARTEに集約しようとしていたので、それを前提にシステムを考えました。

最も注意したのは、bellFaceとbellSalesAIのお客様に対して、誤った情報を出し分けてしまわないようにすること。そのために、ユーザーIDのデータ命名規則などを変更したり、配信先のリストを再構築したりといった取り組みを最初に行いました。

システム構成を構築していく過程で大変だったことはありますか?

作道:特に大変だったことはありませんでしたね。この作業を通じて既存データの不足している部分や不要な項目を精査できたことは有益でした。過去に登録したデータも新しく追加したデータも、最新のフィールドが反映されるようになったおかげで、施策の設定も行いやすくなりました。

テクニカルサポート関連以外のKARTEを使った接客やメール配信施策などは私一人で担当していますが、BigQueryを中心にしたシステム構成にしたことで、メールやプッシュ通知、接客で定常的に訴求したいものは自動配信が可能になり、工数の削減ができました。体感的には全体の約5割が自動化されており、そのおかげで約1年間で200本以上の施策を展開できています。

データドリブンに効率と品質の両立を目指すカスタマーサクセスを推進

その他、KARTEを導入して印象に残っていることはありますか?

作道:bellFaceのカスタマーサクセスの体制は「効率と品質の両立をどう成し遂げるか」が課題だったのですが、KARTEを導入して施策の自動化が実現できたおかげで業務オペレーションの効率化が実現できました。

「責任者となるユーザーの自動更新」「顧客状況にあわせた利用ガイドの自動案内」「契約更新等の一部自動化」「利用超過アラートの自動配信」など事務的な領域かつ、全顧客に共通する案内については自動化できたのです。

また、オペレーションの効率化のみならず、お客様に合わせたコミュニケーションの最適化も進んでいます。データ分析が柔軟にできるシステム構成にできたため、プロダクトの契約更新時に、更新につながりやすい機能の利用状況が改善するようにお知らせを配信するなどの施策を実行しやすくなりました。

さまざまな効率化が進んだのですね。品質の向上についてはどのように取り組んだのでしょうか?

作道:リソースが限られたなかで、品質を向上させるために、どのお客様に対してどのようなサポートするかを整理する必要がありました。そのためにKARTEで収集したNPS®のデータをもとに、顧客を4つのグループに分類しました。

縦軸にNPS®の高さ、横軸にbellFaceの稼働率を設定し、顧客ごとにクラスタリングしたところ、グループ1は最もパフォーマンスが良く稼働率も高い顧客、グループ2はNPS®は高いが稼働率の低い顧客、グループ3は満足度はあまり高くないが稼働率の高い顧客、グループ4は最も解約リスクの高い顧客という分類ができました。

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作道:それぞれのグループに対する最適なアプローチをテストした結果、グループ2から1に対してはテックタッチを中心に接触頻度を上げることで稼働率向上につなげる施策が効果的であり、それ以外のグループにはハイタッチでの介入が効果的であることがわかりました。このセグメントに合わせて、適切な施策を行う取り組みを約3ヶ月継続した結果、約88%のお客様がグループの昇格または上位グループの維持を達成でき、チャーンレートが改善しました。

それはすごいですね。この顧客セグメントはすぐに整理できたのでしょうか。

作道:いえ、NPS®と稼働率という組み合わせを発見するまでには少し苦労しましたね。最初は、かけ合わせるデータを平均利用回数にしたのですが、これは結果がイマイチでした。BIを使って分析していくなかで、利用の更新において最も結果との関係が深い結果が出たのが稼働率だったのです。NPS®と稼働率の組み合わせを見つけた後は、四半期に一度くらいの振り返り会議を実施しており、この顧客セグメントのチェックを行っています。

新規事業立ち上げに伴うテックタッチ中心の顧客支援体制づくりに挑戦

新規事業であるbellSalesAIにもカスタマーサクセスをアサインする必要があるという課題には、どのように向き合ったのでしょうか。

作道:事業が急成長すると、顧客数の増加スピードにカスタマーサクセスの人員が追いつかなくなることが想定されました。そこで、あらかじめ人手をかけずにデジタルを活用してお客様を支援する体制を構築する必要があったのです。

テックタッチによるオンボーディングを通じてお客様をサポートするという基本方針のもと、bellSalesAIのカスタマージャーニーをもとに、オンボーディングプロセスにおける各チャネルでの施策をマッピング。その上で、テックタッチでできることを整理し、KARTEで実現できる施策のほとんどはテンプレートを活用しました。

bellSalesAIに関しては特にカスタマーサクセスの人的リソースが割けないため、基本的な利用方法やチュートリアルに関するガイドは最小限に抑え、個別に必要なサポートに注力するという形で、基本的な使い方は全て自己解決できる状態を目指しました。

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オンボーディングプロセスについて簡易的に表現した図

取り組みの結果はいかがでしたか?

作道:人が対応する操作レクチャーなどが必要なくなり、レクチャーにかかる工数は大幅に削減できました。その上で、チュートリアルのゴール率は35%以上と、当初の目標を達成できました。チュートリアルを提供している機能に関しては、「使い方がわからない」という問い合わせをゼロにできたのは大きな成果です。

さらに、休眠ユーザーの再活性化施策として、KARTE Datahubを使ってお客様がアクティブな時間帯を分析した上で、ジャーニー機能を使ってプッシュ通知を自動送信しています。その結果、20%のお客様が1ヶ月以内に活性化するという成果も生み出すことができたのです。効率化だけでなく、事業につながる成果を生み出せたのは大きいですね。

組織全体に広がるデータに対する意識、NPS®は過去最高に

KARTEを活用してさまざまな取り組みを進めていらっしゃいますが、KARTEを導入したことでの変化として印象に残っているものはありますか?

作道:以前は、先行指標である稼働率とカスタマーサクセス担当者の定性情報のみを更新予測に使用していましたが、NPS®のデータを適切に活用できるようになったことで、更新予測精度も向上しました。

また、定性・定量両面の顧客データに基づいた支援を行うことで、顧客体験の向上に貢献できていると実感しています。データに基づいた適切なタイミングでの適切な支援が可能になった結果、直近実施したNPS®は過去最高のスコアを記録しました。

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組織にも変化はありましたか?

作道:これまで以上にチーム全体でデータの活用に対して積極的になりました。定量データを可視化し、誰でも確認できる状態にしたことで、顧客の解像度が上がり、質の高いサポートを提供できるようになったのです。

また、社内から「KARTEでこんなことができないか」という相談が増えてきました。たとえば、特定の機能の利用促進方法や、特定の顧客向けに表示する情報のカスタマイズなど。KARTEであれば大抵のことは実現できるという認識が社内に浸透してきている手応えがありますね。

セルフオンボーディングのさらなる進化とナーチャリングの強化に向けて

セルフオンボーディングのさらなる進化とナーチャリングの強化に向けて

作道:bellFaceについては、効率と品質の両立を目指す既存の取り組みを継続していきます。bellSalesAIについては新規事業として頻繁に機能追加されていくため、適切なセルフオンボーディングの仕組み構築と、新機能を効果的にお客様へと届ける体制整備、さらにはマーケット分析に基づいた適切な施策展開を進めていきたいと考えています。

今後は、さらにKARTEを活用したデータドリブンなカスタマーサクセス体制を強化していくつもりです。具体的には、継続的なデータ分析とセグメンテーションの精緻化を進め、よりパーソナライズされた顧客体験を提供することを目指しています。現状ではKARTEを十分に活用しきれていない面もあるため、より積極的に活用していきます。

また、マルチプロダクト環境における顧客データの統合と活用をさらに高度化させていくことにも挑戦したいですね。bellFaceとbellSalesAIの顧客データを統合的に分析することで、クロスセル機会の発見やプロダクト間の相乗効果を生み出していきたいと考えています。

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