施策実行のスピードアップから、新規事業の創出まで。カウネットが実践する“両利き”のKARTE活用
オフィス用品の通販サイトである「カウネット」は、KARTEの導入以降、スピーディーな施策実行と顧客行動の可視化を両立し、高速なPDCAサイクルを実現しています。本記事では、導入背景から活用法と成果、今後の展望を伺いました。
コクヨグループの一員である株式会社カウネットは、オフィス用品の通販事業を展開しています。カタログビジネスを基盤に成長し続けていた同社がECサイトを立ち上げたのは、2001年のこと。以来、ECサイトは順調に成長し、現在は同社における主要販売チャネルとなりました。
しかし、バナーの掲出やキャンペーンの告知など、施策の実行に多大な時間と工数を要するという課題を抱えていました。その課題を解決するため、2019年、同社はKARTEを導入。素早い施策実行と顧客行動の可視化を両立するだけではなく、現在はKARTEを活用した新規事業の立ち上げにも取り組んでいます。
本記事では、同社EC本部 データマーケティング部で部長を務める奥澤浩史さん、同部 CRMデータグループの宮澤怜希さんと井上真之介さんをお招きし、KARTE導入の背景や活用方法、施策の効果と今後の展望を伺いました。
理想とはほど遠かった「施策の実行スピード」の向上を求めて、KARTEを導入
まずは、貴社の事業内容を教えてください。
奥澤:当社が展開するオフィス用品通販サイト「カウネット」は、インターネットを軸としたBtoB向けサービスです。一般的なECとは異なり、多くのお客様が備品発注など日常業務の一環としてご利用されており、発注担当者と実際の利用者が異なることもあります。さらに、法人取引の特性上、事前に購入予算が設定されているケースも多く、こうした点でも通常のECサイトとは異なる運用が求められます。

株式会社カウネット EC本部 データマーケティング部 部長 奥澤浩史 氏
KARTE導入の経緯を教えてください。
奥澤:KARTEを導入したのは、いまから6年前の2019年です。当社の「カウネット」はカタログビジネスを中心に展開してきましたが、EC部門も非常に大きな売り上げを占めるようになりました。現在はビジネスサプライ流通事業の7〜8割がECサイトからの注文です。
しかしECサイトがローンチした2001年から2019年までの間、サイトの更新や修正をするためにはシステム部門に依頼しなければなりませんでした。システム部門のリソースも限られていたため、ちょっとした文言の修正にも1週間、場合によってはバナーを掲出するだけでも数ヶ月は待たなければならない状況が続いていました。
そのため、サイト上でどのような施策を実行するにも、著しくスピード感を欠いてしまっており、PDCAを素早く回せなかったんです。そんな状況に手を付けるのが遅れたのは、カタログ事業の地盤があったのでECサイトが多少不便でも、事業としては大きな問題にならなかったのが理由の一つです。
しかし、次第にECサイトの売り上げが上がるとともに、ユーザーにとっての利便性向上やマーケティングを目的とした施策の検証をスピーディーに実行することの重要性が上がりました。とにかく「顧客体験を良くするアイデアをすぐにウェブサイトに反映できるツールが欲しい」と考え、KARTEの導入を決断しました。
宮澤:私は現在の部署に異動してくる前、営業を担当していたのですが、営業目線でも改修スピードの遅さは課題に感じていました。
たとえば、「こんなキャンペーンを特定のお客様だけにご案内したい」と提案しても、システム改修が大変で、スピーディーに施策が実行できないことが多かったんです。以前はキャンペーンの対象となるお客様に対して、紙のチラシを作って配ることくらいしかできず、苦労した思い出があります。

株式会社カウネット EC本部 データマーケティング部 CRM・データグループ 宮澤怜希 氏
他のツールと比較検討されましたか?
井上:はい、いくつか考えました。KARTEを導入した決め手は、「お客様ごとの行動履歴を可視化できる」という点です。「個々のユーザーがどのようなアクションをし、何を見ているのか」を把握した上で、施策につなげられるところが決め手でした。また、現在「KARTE Blocks」や「KARTE Message」などを使っていますが、いずれのツールもノーコードで扱えて操作がシンプルなのも嬉しいですね。
KARTE導入以前、メール配信やA/Bテストをサポートしてくれるいくつかのツールを使用していました。性能自体は問題なかったのですが、UIの癖が強くて、使いこなすまでに時間がかかり、使い方のレクチャーが難しかったため、結果として業務が属人化してしまっていたんです。
その点、誰でも直感的に操作ができるKARTEであれば、業務が属人化しにくい。ツールをKARTEに一元化することで業務の属人化という問題を解決できただけではなく、コストも数百万円単位で削減できました。
災害対応から創業祭キャンペーンまで。幅広くKARTEを活用
導入後、どのようにKARTEを活用されましたか。具体的な事例を教えてください。
宮澤:ひとつはパーソナライズの強化です。当社には多様な業種のお客様がいらっしゃり、業種によって購入される頻度の高い商品が異なるので、かなり細かくセグメントを設定し、施策を出し分けています。具体的には、業種ごとに表示させるバナーやキャンペーン内容を切り替えているんです。
KARTEを導入するまでは、この切り替え作業にもかなりの工数を使っていましたが、KARTEを活用すればすぐに切り替えができるので、作業時間が短縮されたのはもちろんのこと、気持ちの面でもかなり楽になりました。
井上:ほかにも、たとえばカート画面で「あと何円で送料無料」「ついでに、この商品もいかがですか?」といった訴求の効果を検証するためにA/Bテストしてみるとか、そうしたことも部署内で完結させられるようになりました。

株式会社カウネット EC本部 データマーケティング部 CRM・データグループ 井上真之介 氏
宮澤:地震の影響で配送が難しくなってしまった地域からのご注文に対して、ご注文の確認画面に「配送が遅延する可能性がある」と通知する仕組みをすぐに実装できたことも大きかったですね。これもKARTE導入以前であれば、かなりの時間を要する大がかりな改修になったはずですが、住所情報をイベントとして取得し、対象のユーザーにだけポップアップを出すかたちで対応できました。まさにスピードが勝負の事案でしたので、素早く実施できてよかったです。

井上:効果が大きかったのは、年に一度の創業祭のキャンペーンとして実施した、「ルーレット」を活用した販促施策です。ルーレットの実装にはKARTE Blocksを活用しました。画面全体にオーバーレイ表示させたルーレットを回してもらい、当選者にはポイントやお菓子をプレゼントする仕掛けを準備しました。
ゲーム的な楽しさをサイトに取り入れ、お客様に「また買いたい」と思っていただくきっかけになればと思い実行したところ、平均購入金額が上昇。顧客体験価値を高めながら、事業にもインパクトを与えられた事例になりました。

奥澤:KARTE導入以前であれば、このようなインタラクティブな仕掛けをサイトに組み込むには、システム部門に依頼をして、短く見積もっても1ヶ月は待つ必要があったと思います。しかし、KARTEのテンプレートを活用することで、企画考案から実装までのすべての作業を自部署内で、それも1週間前後で完結させることができました。
失敗を恐れずに、さまざまなチャレンジができる環境が整った
KARTEシリーズを導入したことによって、どのようなメリットが得られましたか?
井上:施策の実行スピードが上がったことが最大のメリットです。施策に関するアイデアを思いつけば、自部署内で実装から検証までを完結させられるようになったことは、とても大きい。思うような効果が得られなければすぐに改善につなげられますし、施策の試行回数が圧倒的に増えましたね。
当社ではBigQueryに購買履歴や行動ログを集約していて、そのデータをKARTEに連携させてセグメントの設定に活用し、施策の出し分けにつなげています。開発部門を通さずにデータが扱えるので、やりたいことをスピーディーに形にできています。

宮澤:先ほど触れた震災時の緊急対応は、「KARTEを使えばこんなこともできるのか」と社内からも大きな反響を得ました。この事例をきっかけにKARTEの知名度が上がり、コールセンター部門からも「こんな情報もサイト上でお知らせできないか」、あるいは「こんなことをやりたいのだけど、KARTEを使えばできますか?」とさまざまな相談が寄せられるようになりました。
KARTEを導入し、地道にさまざまな施策を実行しているうちに、他部署にもユーザーのアクション履歴などのデータを重視する考え方が根付いた気がします。最近ではコールセンターと連携し、実際にKARTEのタグやイベントを使って、問い合わせフローを最適化することに取り組んでいます。部署をまたいだ企画は他にもいくつか立ち上がっていて、これもKARTEがもたらした大きな効果の一つです。
奥澤:数字面で言えば、カート画面の追加施策で平均注文単価が向上したり、特定業種のお客様のCVRが改善したりと効果は多岐にわたります。他の二人と重複するようですが、施策ごとに大幅な開発コストをかけなくてもいい分、リスクを恐れずにいろいろチャレンジできるようになったのは大きな進歩ですね。
細やかな行動ログ。新たなチームメンバーの顧客理解にも貢献
新たに配属される社員へのオンボーディングはどのように進めていますか?
奥澤:まずはKARTEを触ってもらい、簡単な機能を活用しながら、少しずつ慣れてもらうようにしています。その中で気付いたのは、KARTEに触れてもらうと、私たちが取り組んでいる事業や業務理解の深化につながるということ。
最近は異動してきたメンバーや新卒社員に、まずKARTEのユーザーストーリーを見てもらうようにしています。数件ほど行動ログを追うだけで「お客様がどんな商品を見て、どこで躊躇しているのか」が一目でわかるんです。数字だけではイメージしにくい「購入までの流れ」を直感的に理解できるので、早い段階からお客様目線でサイトを見る目が養われる。そうなると、施策のアイデア出しも格段にスムーズになります。

宮沢:実際、去年うちの部署に異動してきたメンバーは、ウェブマーケティングに関する業務をほとんど知らない状態でした。そこでまずはKARTEのユーザーストーリー、行動チェーン(β)などの機能でお客様の行動をさっと見てもらったんです。すると「登録しても買わない人って意外といるんですね」とか、「主にコピー用紙やクリアホルダーのような事務用品が売れ筋なんですね」といった気づきを自分でつかんでくれて。
売り上げなどの数字を単に見せるよりも、実際のお客様の動きをログで追体験するほうが理解が早いと感じました。おかげで新人や異動メンバーのオンボーディングは、以前よりずっとスムーズですね。
井上:私自身、1年目の頃にKARTEを触り始めて、一気にECサイトの流れを理解できました。たとえば「登録後にしばらく迷っている人が多いな」など、リアルな動線が見えるので「なぜここで離脱するのか」も考えやすいんですよね。最近はチーム全体で画面を共有して議論する機会も増え、結果的に新メンバーが早く業務に馴染めるようになっていると感じます。
「パーソナライズ」を加速させ、自社サイトを「メディア化」する
今後、さらにKARTEを活用して取り組みたいことや、目指している方向性があれば教えてください。
奥澤:これからはもっと高度なパーソナライズに踏み込みたいです。お客様の業種や行動パターンだけでなく、在庫状況や特定のキャンペーンとの連動など、あらゆるデータを掛け合わせて最適な情報を提供する。理想は、一人ひとりに合わせてサイトに掲載されている情報が変化する世界観ですね。
宮澤:将来的には、自社サイトを「メディア化」していきたい。そこを目指して、メーカーさんや代理店さんと連携し、特定の商品を訴求する枠を提供し、その枠を購入していただく新規事業を検討しています。
この新規事業によって、メーカーさんや代理店さんが、これまで得ることのできなかったデータを活用して適切なマーケティングができるようにサポートできると考えています。ユーザー目線で言えば、自らが求める商品を見つけやすくなり、より快適で利便性の高い購買体験になるはずです。現在、KARTE Blocksを利用したPoCを進めています。

最後に、KARTEの導入を検討している企業の方へメッセージをお願いします。
井上:ECサイト運営ではちょっとした修正すら大掛かりな開発工数が必要、というケースが多いと思います。“小さく”、そしてスピーディーに施策を実行し、その効果を検証することは、ECサイトの成長にとって極めて重要なことです。そういったことが可能な環境をつくりたいと考えている方には、KARTEの導入をおすすめしたいですね。
宮澤:KARTEは私のように営業からウェブマーケティング部門に移ってきた人でも、すぐに使いこなせるツールだと思います。このメリットはとても大きいと感じていて、どのような人の、どのようなアイデアでも簡単に形にできるので、施策の幅も大きく広がるはず。ぜひ、まずは小さなことからトライしてみてほしいです。
奥澤:大規模ECサイトほど、開発プロセスや調整に時間がかかりがちですが、KARTEで内製化できる領域を増やせばPDCAのスピードは劇的に上がります。担当者ご自身が考えた施策をすぐに形にし、効果を見ながら改善を続けていく――そのサイクルを回してこそECは強くなる。
私たちの取り組みが、導入をご検討される際の参考になれば幸いです。もし導入されることがあれば、施策やノウハウについて意見交換できる機会があると嬉しいです。
