チームの枠組みを越えたメルマガ運用と改善プロセスの確立。KARTE Message導入でKG情報のコミュニケーションはどう深化したか。

賃貸住宅・不動産を探せるWebサイト『賃貸スタイル』を運営する株式会社KG情報は「KARTE Message」を導入し、メルマガなど顧客コミュニケーションを改善。導入の背景や活用事例を聞きました。

株式会社KG情報(以下、KG情報)は、求人・住宅など、人々が暮らす地元のニーズに向き合い、暮らしのさまざまなシーンに対して価値ある情報を発信するサービスを複数展開しています。

同社は、全国のアパートやマンション、一戸建てなどの賃貸住宅・不動産を探せるWebサイト『賃貸スタイル』と関連サービスにてKARTEを導入し、CX、EXの向上に取り組んできました。2022年から、新たに「KARTE Message」を導入。サイト外での顧客とのコミュニケーション改善にも取り組んでいます。

導入からわずかな期間でさまざまな施策を実施し、すでに売り上げにも大きく寄与する他、人材成長など売り上げ以外の領域にも効果を発揮しているといいます。今回、KARTE Messageの導入背景や、活用の詳細について、同社の事業推進本部に所属している武田千春さん、横山莉奈さんのお二人にお話を伺いました。

少人数のマーケター体制、一人で複数サイトの運営を担当

まず、貴社の事業内容について教えてください。

武田:「賃貸スタイル」という、月間391万セッション・掲載物件数700万件超を数える不動産ポータルサイトを運営しています。

当サイトでは、地域や駅の近くといった不動産サイトでなじみのある検索条件に加えて、小中学校、大学、ショッピングモールなど、生活に欠かせない施設の周辺情報を踏まえて物件を検索できます。また、公共料金や地域ごとのごみ出しに関する情報、物件周辺のハザード情報も公開しており、お客様が物件を比較検討しやすくなるように工夫しています。

また、「賃貸スタイル」では、賃貸・不動産売買・注文住宅・引越しなど、住まいに関する領域をそれぞれカバーするサテライトサイトも多数展開しています。これらの活動を通じて、お客様の住まいに関する多様なお悩みにお応えし、お手伝いできるサービスを目指しております。

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賃貸スタイル

お二人のこれまでのご経験や、現在の役割について教えてください。

武田:私は新卒でKG情報に入社し、最初は求人誌の営業を担当しました。途中から現状のWeb中心の部署に異動しています。現在は、賃貸に関するサービスの現場責任者として、「賃貸スタイル」を中心に、関連するサテライトサイトの運営をしています。

横山:私も新卒でKG情報に入社し、最初から今の部署で活動しています。武田と一緒に賃貸をメインに担当しており、サテライトサイトの中でも小中学校の周辺で探せる子育て世代向け賃貸サイト『ママ賃貸』や、病院名から物件が探せる賃貸サイト『ほすぴた賃貸』の運営などを担当しています。具体的な業務では、メルマガの作成や配信準備、配信後の効果測定なども、私が主に担当しています。

武田:私たちの部署は全員で15名ほどで、マーケターの数は多くありません。賃貸領域では私たち2人で5つものWebサイトを担当しています。会社全体で見ると、文系出身者の割合が多く、IT経験が豊富というわけでもありません。そのため、部署としても入社後にイチからみんなでWebサイトについて勉強しているような状態です。私たち2人も、入社してからWebサイトに関連する知識をインプットして業務を進めています。

メルマガ配信の工数が大きく、定期的な配信が難しいという課題

貴社サービスにおいて、メールコミュニケーションはどのような役割を果たしていたのでしょうか?

武田:リピート促進を目的に、不動産ポータルサイトに新着物件が追加された際のお知らせなどに利用していました。以前は、何かツールを使うのではなく、自社開発のシステムから送付していたのです。しかし、自社開発のシステムでは、配信したメルマガの開封率、クリック率などの数値の計測ができるようになっていませんでした。そのため、お客様の実態の把握ができず、改善が難しいという課題がありました。

また、新着物件のお知らせ以外のメールをお送りする際は、送付するお客様のリストをエンジニアに用意してもらい、私たちが作成した文章をエンジニアに渡して、送付してもらうというフローでした。お客様にお知らせするためには都度工数がかかるので、メルマガは基本的に繁忙期に合わせてのスポット配信のみ。定期的な配信が難しいという状況でした。

その状況からツールの導入検討はどのように進んだのでしょうか。

武田:別の部署で、お客様にメールを一斉送信できるMAツールを使っていたことは知っていて、開封率などの数値を取得できるのは改善につなげやすいだろうと考えていました。

一方で、別の部署が使っていたのはBtoB向けのMAツール。私たちの部署では、多数の一般のお客様に送付する必要があり、求めている機能が異なっていたのです。そのため、参考にはしたものの、同じMAツールの導入はしていませんでした。

また、私たちのメルマガでは、お客様に関する大量のデータを踏まえながらメールを送る必要があります。どのツールを使って、何をすれば、自分たちが実現したいことができるのかすらわからず、ツールの検討が難しい状況でした。

KARTE Messageの導入に至ったきっかけはなんだったのでしょう?

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KG情報 武田千春さん

武田:プレイドのカスタマーサクセスの方から、KARTE Messageを紹介いただいたのがきっかけでした。KARTE Messageであれば、すでにKARTEで設定しているお客様のセグメント分けなどもそのまま活用できるとわかり、懸念していたデータの扱いに関してもKARTE Datahubを使うことで解決できそうだなと。

あとはお客様にお送りするメールの文章をマーケターが直接編集して送信できるという点、そしてHTML形式でリッチな表現が可能になる点も魅力的でした。以前は、テキスト形式のメールをエンジニアに依頼して送っていたので、HTML形式で自分たちが直接編集して送れるようになれば、内容の工夫もいろいろできるな、と。管理画面の使いやすさや、A/Bテストが簡単にできるというのも魅力的な点でしたね。

導入前にはROIの検討をされたと思いますが、どのような観点でKARTE Message導入のROIを試算されましたか?

武田:私たちの部署としては、「お問い合わせ」がコンバージョンであり、事業において重要な数値です。そのためにいくら予算をかけられるかは、追加でかかるコストと、コストを支払うことによって可能になった施策から得られるコンバージョン数で算出することが必要になります。なので、KARTE Messageで送付するメールによって得られるであろうコンバージョン数を試算して検討しました。

メールの配信に関してはじめてのツール導入だったかと思います。導入はスムーズに進んだのでしょうか?

武田:導入に際して、まず新着お知らせを配信する際のリストを設定しました。これは弊社のエンジニアと、プレイドの担当の方と相談しながら対応し、大きなつまずきもなく、順調に進められました。

弊社はエンジニアとの距離が近いんです。オフィスでのデスクも近く、すぐ相談ができる環境になっています。少人数なので、互いにいい意味で越境しながら仕事を進めることが求められる体制ということも相まって、導入がしやすかったかもしれません。

KARTE Message導入後、複数の施策を組み合わせて売り上げが大きく向上

導入後の手応えはいかがでしたか?

武田:いろいろな手応えがあります。まず、配信する内容の検討から配信準備、配信スケジュール設定までをマーケターだけで行えるようになりました。HTMLの知識やコーディングスキルのない新入社員でもスムーズにメルマガ配信ができています。以前はエンジニアに協力してもらいながらの配信だったので、かなりの時間と工数の削減ができました。

KARTE Messageの配信スケジュール機能を使って、毎週決まった曜日と時間に配信できるようになったこともあり、お客様にサービスを認知していただく機会が大幅に増加しました。以前は、一通のメール作成にかかる時間が約30分だったのが、導入後は約5分と大幅に時間が短縮できています。

かなり作業効率が上がったのですね。

武田:他にも、配信したメルマガの開封率、クリック率、メルマガ経由の問い合わせ件数など、効果を数字で把握できるようになりました。数字で把握できるようになったことで、より効果を発揮するための改善も進めやすくなったことも大きいですね。

KARTEと併用していることで、メルマガの数値はもちろん、KARTEで計測しているWebサイト訪問後のお客様の行動データと紐づけて効果を確認できます。Webサイトに流入した後のお客様の行動データと合わせて効果を確認できるので、配信したメルマガが事業成果につながったのかどうかを振り返りやすくなりました。事業成果を目指した施策の検討もやりやすくなりましたね。

横山:A/Bテストも可能になったことも大きな変化です。例えば、メルマガ内のボタンテキストのA/Bテストを行ったところ、クリック率が向上し、配信停止率も下げることができました。
「これなら成果が出るはず!」と考えた施策でも、A/Bテストをすると想定と異なる結果が出ることは珍しくありません。A/Bテストができるようになったことで、自分本位で施策を考えるのではなく、お客様の目線を忘れてはいけないという学びも得られています。

配信するメルマガの内容はどのように考えているのでしょうか?

武田:以前はマーケターが一人でメルマガの件名や文面を考えていました。それも、数値を可視化できるようになり、結果を社内に共有できるようになってから変わってきています。

内容について考えている際、「普段Webサイトでお客様向けにコラムを執筆しているメンバーに協力してもらったら、お客様に刺さるメルマガになるのでは?」というアイデアが出ました。それで、キーワード選定にたけたメンバーに時期に合ったキーワードを選定してもらい、それを元にマーケターが件名や文面を考える進め方に変更したのです。

横山:例えば、1月に配信するなら「1月中 確保」「年明け 争奪戦」など、その時期にあったキーワードをメルマガに含めて、受け取ったお客様が問い合わせ代行を依頼したくなるような件名や文面を作成しました。

このキーワードを設定してメルマガの内容を考えるようになったおかげで、マーケターがイチから文面を考える手間や時間が減少。さらに開封率、クリック率、メルマガ経由の問い合わせ代行件数も大きく伸び、一石二鳥の施策になりました。

武田:さらにより多くのお客様にメルマガを配信してサービスを広めるために、メールアドレス取得を促進するための改善も実施しました。新着物件をメールで通知するサービスについて紹介する接客をKARTEを使って配信。A/Bテストを実施したことで、より効果が出るパターンを見つけられました。

KG情報 施策


1はLPへの遷移を促す施策、2はメールアドレス取得促進の施策。それぞれ、効果があった②のパターンを採用。

武田:KARTE Messageを導入して実施したこれらの施策によって、メルマガをより効果的に配信できるようになり、目標である問い合わせ代行件数も増加につなげることができました。

KARTE Message導入前の2022年11月と導入後の2023年11月で比較すると、チャットやLINEでの問い合わせ代行件数も含めると件数としては約2.1倍に、売り上げは約2.2倍に増えました。2023年11月時点では、月間のお問い合わせ代行件数のうち、約6%がメルマガ経由となっています。

また、前の配信結果を受けて考えた施策を次の配信ですぐ実施、というワークフローを確立できたことで、改善スピードの向上にもつながっています。

かなり大きな成果が出ているのですね!最近ではどのような施策を実施されていますか?

武田:Webサイトでお気に入り登録をしたお客様にリマインドのメールを送付しています。お問い合わせをいただいた後に、どのお客様もスムーズに物件の契約が決まるわけではありません。そこで、お問い合わせいただいたお客様のリストを作成し、継続して私たちのWebサイトをご活用いただくためのメールコミュニケーションを実施しています。効果が出るのはこれからですが、お客様のニーズに対応できる施策になっているのではないか、と手応えを感じています。

横山:あとは、特定のWebサイトへのアクセスを強化する目的で、メルマガ内に漫画を設置するというのを試してみています。「住まいの紹介サービス」に関する漫画を設置してみたところ、該当のLPへのクリック数が増えました。設置なしのメルマガと比較するとクリック率は0.8%向上しています。他のサービスのWebサイトへのクリック数は減り、目的のLPへのクリックにお客様の関心を集約できた施策でしたね。

KG情報 漫画メール

漫画を設置したメルマガのイメージ

社内を巻き込みながらスピーディにお客様のために施策を実装する

KARTE Messageを用いてさまざまな施策を実行されていますが、施策内容はどのように検討しているのでしょうか?

武田:さまざまな企業の公式アカウントなどに触れてみて良い取り組みを見つけたときに、自社でも実施できないかは日常的に考えるようにしています。また、毎月1回、社員が集まってアイデアを出す機会があるんです。そこではマーケターからの目線だけではなく、さまざまな立場からお客様のために実行できると良さそうなアイデアを多角的に集められています。そこで集まったアイデアから試してみているものも多いですね。

横山:もともと、弊社が過去に配信したメルマガを参考にしながら、メルマガの文面を作っていました。ただ、そのやり方だと、ネタ切れに苦しむことになってしまって…。打破するために社内の巻き込みに動きました。そこから、先ほどの時事のキーワードを盛り込んで文面を作成する流れが生まれました。

最近では、メルマガをつくった後、送付する前にお客様のお問い合わせ対応をするオペレーターにも文面を見てもらっているんです。実際にお客様のお部屋探しの状況と照らし合わせて、文面がお客様に響くものになるかどうかの意見をもらって、ブラッシュアップしています。月1回の会議でアイデアをもらえていることもそうですし、自分ひとりでは良いメルマガは作れないなと日々感じていますね。

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武田:チームの枠組みを越えた情報交換は本当に大事ですね。KARTE Messageを導入して、数値が可視化できるようになったので、共有しやすくなったことが大きく影響しています。とはいえ、他のチームには数値に触れることに慣れていない人もいます。そのため、数値を社内共有用にレポートをまとめていて、それを見てもらっているんです。数値と合わせて社内に共有できるようになったことで、社内からも意見やアイデアを出しやすくなったと感じます。

かなり社内と協力しながらメルマガの運用を行っているのですね。月1回の会議の他に、社内からアイデアをもらう機会はあるのでしょうか?

武田:弊社では日常的に社内チャットで疑問やアイデアの共有をしています。会議などの決まった場ではなかったとしても、常に一人ひとりがお客様のために何ができるかを考え、議論をしている状態です。

少人数で運営しているのは大変さもありますが、意思決定が早いという利点もあります。出てきたアイデアの中で、わずかでもプラスの影響が生まれそうなものはとりあえず試してみて、結果を数値で見て判断しています。

スピード重視でどんどん実装してやってみよう、というのは弊社の強みかもしれません。早く進むものは、アイデアが出てから1時間後には実装しています。重たい施策でも、アイデアから1〜2週間で実装しています。とにかく、できるだけスピーディに手数を増やしていこうとしています。

スピード感を持って進められた施策で印象に残っているものはありますか?

武田:「住まいの紹介サービス」でLINEの相談受付を実装したのは印象に残っていますね。もともと、相談受付にはチャットのみを使っていました。ただ、チャットでの相談が終わった後、お客様が再度Webサイトを訪問されることが少ないという課題がありました。
どうしたら継続してお客様とコミュニケーションができるだろうかと考えていたときに、「LINEならもしかしたら使ってくださるのでは」と。LINEであれば、弊社からメッセージを送るのも気軽ですし、お客様にとっても気軽に使えるという利点があります。

LINEの相談受付をやってみようとなってから実装までは早かったですね。キーワードに応じたシナリオはすでに組んであったので、LINE用に新たにシナリオを設定する必要がなかったこともあって、実装はスムーズに進みました。

LINE相談受付を実装した結果、LINE経由のお問い合わせは増加し、売り上げも増えました。最近では、さらにお客様へのLINEのご案内を強化しており、LINE経由の売り上げは拡大しています。

LINE相談受付のデモ画面。LINEの会話形式で物件の相談ができる。

LINE相談受付の導入はかなりインパクトのあった施策にも関わらず、スピーディに進んだものだったのですね。

武田:はい。LINE受付導入を導入したことで、お客様がより手軽にサービスを利用できるようになり、心理的なハードルを下げることにもつながりました。「住まいの紹介サービス」の認知拡大を図ったことにより、これまで本サービスに到達していなかった潜在的なお客様や、部屋探しに悩みを抱えているお客様に、「本サービスを利用して探してもらう」という新たな選択肢を提示でき、お悩みの解決に貢献できたと思います。

お客様からは「いつも早い対応で本当にありがたかったです。ありがとうございました!!」「メールで希望条件に合う物件を提案していただき参考になりました」「LINEでのやり取りが、的確でよかった」といったお声もいただけています。こうしたお客様からのフィードバックは、お部屋探しのサポートをしているオペレーターのメンバーにとって、モチベーションの向上にもつながっていますね。

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KG情報 横山莉奈さん

より顧客に寄り添うコミュニケーションの実現を目指して

KARTE Messageは貴社にとってどのような存在になっているでしょう?

武田:私たちの部署にはマーケター、エンジニア、デザイナーが所属しています。以前より、部署内で対話を通じて物事を解決していこうという話はよくしていました。しかしながら、デスクワークをしていると、それぞれが画面に向き合う時間が増え、会話が減りやすい。データも含めてお客様のことを理解し、チームで認識を共有しながらどうしたらいいだろう?というコミュニケーションを図り、施策を実現できるツールになっていると感じます。

私個人は、もともと手を動かすことが好きなタイプ。KARTE Messageのおかげで、マーケター単独で見た目も変えて、HTML形式で送付できるようになり、できることの幅が広がって、日々の楽しみが増えています。

横山:私は、入社した時点ですでにKARTE Messageが導入されていました。そのため、導入以前と比べることはできないのですが、入社してからわずか2ヶ月で使って、配信から効果測定、A/Bテストまでできる便利なツールだと感じています。「逆に何ができないの?」と思っています(笑)

武田:KARTE Messageのおかげで事業上の成果が生まれたのはもちろん良いことですが、効果測定がしっかりとできるようになったのが大きいですね。KARTE Message導入後は数値の結果をもとにPDCAが回せるようになりました。それにより、改善のプロセスが変わったことのインパクトは大きいと感じます。

今後、KARTE Messageを使って挑戦してみたいことは?

武田:引き続き、お客様に寄り添って、お客様のためにサービスを運営していきたいと思います。現在、LINEでのお客様のサポートを強化していますが、今後さらにサポートの幅を広げていきたいと考えています。お客様のご利用状況に合わせて、伴走していくことはできないかというのを検討しています。

横山:私も、メルマガやLINEをつかって、お客様一人ひとりに寄り添い、お部屋探しに迷ったときには思い出してもらえるような存在となることを目指していきたいと思っています。

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