「三井のリハウス」を選んでいただくために、サイト改善を続ける。部署の垣根を越えてCX向上に取り組む三井不動産リアルティ
三井不動産リアルティ株式会社では、「三井のリハウス」にKARTEを導入。KARTEを活用したUI/UXの改善を進めています。KARTEの導入背景や活用の様子、今後の展望について伺いました。
三井不動産リアルティ株式会社は、「三井のリハウス」「三井のリパーク」「三井のカーシェアーズ」などのサービスを提供する不動産流通事業のリーディングカンパニーです。
同社は「三井のリハウス」にKARTEを導入。KARTEを活用したUI/UXの改善を進めています。
三井不動産リアルティ DX推進部の永井 友佳里さん、波山 晴香さん、リテール事業本部の髙橋慶多さんの3名に、部署の垣根を越えてナレッジを共有し、顧客体験の向上を目指しているという同社のKARTEの導入背景や活用の様子、今後の展望について伺いました。
「三井のリハウス」のブランドサイトの役割は、営業現場に顧客をつなぐこと
まず始めに、「三井のリハウス」が目指していることについて教えてください。
髙橋:「三井のリハウス」は、個人のお客様向けに不動産の売却、購入、および賃貸に関するさまざまなサービスを提供しています。近年、お客様にとって住宅の購入は一生に一度のイベントではなくなってきています。お客様にとって、ライフステージにあわせて住み替える「リハウスすること」が当たり前になる状態を目指しています。

三井不動産リアルティ株式会社 リテール事業本部 髙橋 慶多氏
永井:大手不動産ポータルサイトと比較すると、三井のリハウスWebサイトに掲載している物件数は少ないです。そのことがわかったうえで、Webサイトを訪問してくださるお客様は、物件だけでなく「三井のリハウス」というブランドを選んでくださっています。
たとえば、物件の売却査定を希望するお客様のなかで、ブランド名を検索して流入する方はロイヤルティが高い傾向にあります。そういったお客様に対し、利用しやすいサービスの提供を大切にしています。
「三井のリハウス」においてWebサイトはどのような役割を担っているのでしょうか?
永井:不動産の売買は、オンラインだけでは完結しません。営業担当者が対面で丁寧にお客様と接してきたことで信頼関係ができ、その積み重ねが私たちのブランドの強みであると認識しています。いかにお客様を営業担当者につなぐことができるかが、Webサイトの役割です。
あとは、せっかくWebサイトを訪れてくださったお客様に向けて、「三井のリハウス」はどんなサービスで、どこが良い点なのかをお伝えするのも、大切な役割です。仮にお問い合わせにつながらなかったとしても、「見やすいな、また訪問したい」と思っていただけるよう、使いやすいWebサイトにすることを重視しています。
WebサイトのUI/UXを継続して改善するためにKARTEを導入
KARTEを導入した背景を教えてください。
永井:2022年春に、Webサイトのリニューアルを実施しました。リリース後にも継続してUI/UXを改善する環境を整えることにも注力するため、KARTEを導入しました。

三井不動産リアルティ株式会社 DX推進部 永井 友佳里氏
導入を検討する上で重視したことはありますか?
永井:リニューアルでは、ページの表示速度が重要な指標でした。サードパーティのツールを導入して、表示速度に悪影響が出ないことは必須条件でした。この懸念事項は、私たちから何度もプレイドの担当の方にお伝えしていました。
商談を進めるなかで、KARTE自体もUI/UXの改善に取り組んでいることや、Webサイトの表示速度についても改善が進んでいるとわかりました。ページの表示速度への悪影響はないと事前に確認ができ、KARTEの導入に至りました。
KARTEを使ってみた感触はいかがでしたか?
永井:デモを触った際、他のツールと比較して使いやすいと感じました。将来的には、ツールに慣れていない社内のメンバーでもKARTEを使いこなせるようにしたいと考えていたので、このシンプルで操作しやすい点は非常に重要なポイントでした。加えて、社外のパートナーが使うことも想定した仕様であることも魅力的でしたね。
正式導入後は、「どういうデータを今後KARTEで利用するか?」を考え、タグやイベントなどの設定にしっかりと時間をかけました。たとえば、物件の価格帯やエリアによって施策の出し分けを行うことを想定し、マイページにログイン中か否かのデータを取得できるようにしました。他にも、お気に入り登録した物件と似た物件をメールで送付する施策の促進が必要だったため、お客様が閲覧中の物件がお気に入りに登録済みか否かの情報を取得する設定などを行いました。
導入当初からいろいろな設定をされたのですね。
永井:過去のWebサイト改善における経験の積み重ねがあったこともあり、お客様が問い合わせに至るまでの過程において、どのような指標を取得する必要があるのかのめどが立っていました。もちろん、初期設定後に追加で導入したイベントや指標もあります。そんなときは、追加のタグ設置をせずとも、特定のルールに合致するイベントが発生した際に別の名前のイベントを発生させられるKARTEの「フィルターイベント」機能が便利で助かりました。
顧客の行動に合わせて、必要な情報をポップアップで表示し、成果につなげる
KARTEを活用して、どのような施策を行っているか教えてください。
永井:導入初期は、売却を検討中のお客様に対して、Webサイトでの行動に応じて、問い合わせを誘導する接客を作成していました。
お客様が物件を購入する場合、Webサイトを回遊しながら物件を探していくので、セグメントを絞り、興味や関心、条件に応じて物件をご提案します。一方、物件を売却する場合はWebサイトを回遊したうえでお問い合わせに至ることは少なく、Webサイトに流入したら直接お問い合わせという流れがほとんどです。
そのため、私たちが考えるべきなのは、いかにお客様が売却を検討する段階で役に立つコンテンツから売却の問い合わせにたどり着きやすくするのかという点。たとえば、売却に関するお役立ちコンテンツを閲覧したお客様に対して、別ページへの遷移後に、売却に関するページへの導線をポップアップで表示しました。
ほかにも、売却に関するキーワードで広告や自然検索からWebサイトを訪問したお客様に対して、売却をご案内するポップアップを表示する施策も有効でした。初回の訪問でお問い合わせに至らなかった場合でも、KARTE上にそのお客様の行動データが残るので、再訪した際にもその行動に最適化した施策を出せるので助かっています。
売却の注意点を伝えるコンテンツを閲覧しているユーザーにAI査定でのチェックを案内する接客例
初めて来訪したユーザーに対して、三井のリハウス内での他物件探しを案内する接客例
永井:あとは、空室物件のオープンハウス開催や予約制内覧会をご案内する施策も行っています。ただ、内覧会を実施している物件とそうでない物件があり、さらに内覧会に関する詳細情報はアコーディオンメニュー内に格納されているので、メニューを開かないと閲覧できない仕様になっていました。
そこでKARTEを活用して、内覧会の予定がある物件ページを閲覧中のお客様に向け、電話での内覧会の予約を促すポップアップ施策を行いました。ポップアップにはイラストを付けて、予約可能な日程を表示し、そこに電話ボタンを配置しました。この施策は成果が高かったので、継続して実施しています。

内覧会の予約を促すポップアップの接客例
現在はどのような体制でKARTEを運用していますか?
波山:現在は三井のリハウスWebサイトのUI/UXを担当する外部パートナーと協力しながら、施策立案から接客作成・効果検証・ネクストアクションの決定までを行っています。導入当初は社員のみでKARTEを運用する予定でしたが、Webサイト全体のUI/UXに沿った施策を作成するためには専門的な知識が必要となったため、徐々に現在の体制になりました。外部パートナーにはUIUXデザイナーとアナリストもいらっしゃるので、心強いですね。

三井不動産リアルティ株式会社 DX推進部 波山 晴香氏
KARTE Liveで実際の顧客行動を確認して、想定と異なるニーズを発見
KARTEをつかった施策はどうやって企画しているのでしょうか。
永井:KARTEの施策案に限らず、WebサイトのUI/UX改善のアイデアは誰でも出していいことになっています。それもあって、DX推進部には、いろいろな部署や担当からアイデアが寄せられます。「KARTEはUI/UXの改善を手軽にするためのツールである」という認識を持って、日々寄せられるアイデアに向き合っています。
まず、Webサイトで試してみたい施策やお客様に訴求したいことの要望やアイデアをもらいます。それをもとに、どのような施策にできそうかをデザインチームと議論し、「KARTEで実施するのがいいね」となれば具体化を検討します。また、Webサイトの機能要望であったとしても、まずKARTEで試して数値を見てから再度検討することもあります。
髙橋:リテール事業本部で施策のアイデアを考えた場合は、Excelシートに要望をまとめ、それをDX推進部にチェックしてもらい、実施の可否を判断してもらっています。その結果、実施できない場合でも、代替案のアドバイスをもらい、リテール事業本部で再度検討することもあります。最近では、私たちから案を出すよりも、DX推進部から案を出してもらうことも増え、垣根を越えてアイデアを出し合っています。
継続して施策案を出すことに取り組むコツはなにかありますか?
永井:開発チームが「スクラム開発」を実践している影響が大きいと考えています。課題を挙げ、施策のアイデアを出し、分析して改善するというサイクルを回し続けるにはある程度のリソースが必要なため、簡単ではないと思います。
サイトの機能やデザインが変わると、KARTEの接客も見直す必要があるため、開発チームとの連携が重要です。開発チームが採用しているスクラム開発は、継続的な改善を基本とする手法です。この開発チームの進め方に合わせるうちに、少しずつですが自然と継続して施策のサイクルを回せるようになっていきました。
そして、出したアイデアを実行したり、結果を分析したりといった部分を、KARTEが支えてくれています。スクラム開発的な改善のサイクルは、KARTEと一緒にチームに根付いていった部分もあると感じています。

改善を進める際に実行していることはありますか?
永井:最近、KARTE Liveを活用してお客様の行動の様子をチェックしながら、アイデアをブレストする会を実施しました。KARTE Friends Meetupに参加してこのアイデアを知り、「これはやってみよう!」と思ったことがきっかけです。
KARTE Liveでは、お客様がどんな行動をしているのかをしっかりと確認できます。施策のアイデアに行き詰まったときには、お客様の実際の行動を確認すると、さまざまなヒントが得られます。

ユーザーの実行動を動画で再生して確認できるKARTE Live
波山:このブレスト会には日々KARTEに関わっているメンバーだけでなく、他の部署やサービスの担当者にも参加してもらいました。普段、三井のリハウスWebサイトやKARTEに接していないメンバーからの視点は新鮮で、さまざまな改善点やお客様の視点などをフィードバックしてもらえました。KARTEチーム以外の社内メンバーと一緒にブレスト会を開催するのはとても効果的だと感じましたね。
他にもブレスト会から得られた発見はありますか?
髙橋:リテール事業本部のメンバーは、日常的に自社と他社のWebサイトを比較して、自社のWebサイトに対する課題感を持っており、それをKARTEで解決できないかというアイデアも出ました。たとえば、他メンバーから出たアイデアとして、他の不動産サイトでは複数の物件写真を横スクロールしていって、最初の写真に一度に戻れるけれど、「三井のリハウス」のWebサイトではそれができない。「これはユーザーフレンドリーと言えないのでは?」というものです。これは私たちが気づいていなかった点でした。
他にも、KARTE Liveを皆で見ていて気づいたのは、物件画像から得られる情報がお客様にとって重要だということ。以前は物件の紹介ページに記載されるコメントの充実度が重要だと考えていたのですが、コメントはあまり見られていないことがわかりました。みなさん、物件ページを訪問した後は、真っ先に画像を見ていたんです。これもブレスト会から得られた発見でしたね。
店舗とWebの連携に加え、事業部間でナレッジをシェアし、さらなる価値の提供へ
今後、貴社で予定している新たな挑戦はありますか?
髙橋:「三井のリハウス」でKARTEを活用して成果が生まれたので、最近「三井のリパーク」にも導入しました。これまではリハウス・リパークのサイト改善について担当者同士で直接意見交換をすることはほとんどありませんでした。KARTEを導入したことで、運用しているDX推進部を基点に担当者の距離が縮まってきているんです。サービスのWebサイトはもちろん、会社をもっと良くしていこうという雰囲気になっていて、非常に良い変化が生まれています。
永井:DX推進部は社内の事業部を横断して、各事業部のWebサイトの運用や改善を担当しています。各事業ごとにKPIなどの違いはありますが、共通して参考にできる点も見えてくる。せっかく見えているのであれば、各事業部に改善できると良さそうなことは伝えるようにしています。まだWebサイトの改善だけですが、いずれは会社全体でサービスの利便性向上につなげていきたいですね。
最後に、サービスの今後の展望を教えてください。
永井:プロダクトオーナーとして、まずはCX(顧客体験)の改善に力を注ぐことを第一に取り組みたいと考えています。具体的には、ページの表示速度を落とすことなく、UI/UXを磨き、お客様のニーズを汲み取って新機能として実装すること。また、その際には新機能の利用促進を図ることも重要です。
お客様との接点は、Webサイト来訪時だけでなく、来訪前や離脱後も考慮しなければなりません。現状では、メールマーケティングや広告などを含めたジャーニー全体を通じてのCX設計ができていないと感じています。ここも今後取り組む必要があります。
髙橋:リテール事業部とDX推進部で役割を分担しながら、営業担当がいなくてもお客様が再訪してくれる状態を目指し、常に改善し続けていきたいと思います。お客様が「三井のリハウスのWebサイトに来たら新しい発見がある」と感じていただけるようなWebサイトづくりができればいいですね。