顧客の悩みに適したマッチングで約4,000件の自己解決を実現。サポートから全社CX向上を目指すauじぶん銀行のRightSupport by KARTE活用
auじぶん銀行 CS本部は、基幹システムの刷新を機に、顧客の体験価値を高める構想を描いてRightSupport by KARTEを導入。3つのフェーズに分けて実現を目指す、全社のCX向上までの道のりを伺いました。
顧客の自己解決を促すアプローチは、コスト削減の観点だけで重要なわけではありません。お客様が問題を解決するための努力度合いがゼロに近い状態(エフォートレス)をつくってCXを向上し、さらに収益にもつなげていこうとしているのが、auじぶん銀行です。
auじぶん銀行では基幹システムが切り替わるタイミングで、理想的なWebサポート導線を中心に顧客体験を描き、その実現に向けてRightSupport by KARTEを導入。試行錯誤を重ねた結果、社内でも認知が広がり、各部と連携しながらCX向上を目指す動きが始まっているそうです。
本記事では、auじぶん銀行 CS本部の堀野和明さん、山内寛さん、惟村亮祐さんにRightSupport by KARTEの導入背景から活用方法と成果、そして今後の展望を伺いました。
システム刷新に合わせて、あるべき顧客サポートの理想を描く
堀野: auじぶん銀行でCS本部長を務めている堀野です。CS本部はCS企画部とお客さまセンターの二部門に分かれていますが、その統括をしています。役割としては社内でカスタマーサポート(CS)を浸透させること、ミッションはグループを含めてCXを向上することです。
そうしたミッションを実現するためにも、RightSupportは必ず必要であろうと判断し導入を決めました。
山内: お客さまセンター長の山内です。お客さまセンターはカスタマーサポートの品質を向上させると共に、そもそもお客様に電話を強いるのではなく、負担をかけぬよう自己解決の促進に取り組んでいます。
惟村: 同じくお客さまセンター所属の惟村と申します。お客様が電話をする前段階から自己解決を促すための施策を考え、実行しています。
──RightSupport by KARTE導入以前に抱えていた課題を教えてください。
堀野: 特定の課題があったというわけではありませんが、実現を目指す仕組みに必要になったのがRightSupportでした。
当行はインターネット専業銀行でありながら、基幹システムの刷新を背景に、システムに手を加えられず、お客様が希望するお手続きを電話でのみサポートする期間が一定生じておりました。2021年5月の基幹システム刷新のタイミングでWeb上のサポートや導線のあり方や仕組みを見直しました。その際、我々の構想を後押ししたのが「シフトレフト」という概念です。
(出典:HDI-Japan)
シフトレフトは、「顧客に提供できる価値の大きさ」を縦軸、「顧客の問題解決のための努力度合い」を横軸に設定します。その上で、お客様が問題を解決するための努力度合いがゼロに近く、満足度が高い左上部の状態を目指すという考え方です。
有人サポートの品質は高めていくことは変わりませんが、有人サポートの手前でお客様による自己解決にも促すことが非常に重要です。
自己解決はコスト削減を目的として取り組むのではありません。よりお客様の体験価値を高めるために、Webでも一人ひとりのお客様に合わせたコミュニケーション(One to Oneサポート)を実現しなければならないと考えていました。
その未来を実現するために必要な手段がRightSupportでした。
CS本部長 堀野和明氏
「手段選択型」から「問題解決型」へ、Webの導線を切り替え
──シフトレフトの実現に向けては、どのような取り組みから検討していったのでしょうか。
堀野: シフトレフトに関して大事なのは「可能な限りWebで自己解決できるようにすること」です。まずはWebのコンテンツの構成自体を見直しました。FAQコンテンツの改善も、三段階のフェーズに分けて取り組みました。
まず第一段階では、Web上の不足を無くすため、コンテンツやFAQを増やす。第二段階では、外部の評価によるお客様の声を受けて、Webでの自己解決や満足度の高い状態へ改善を加えていきました。そして第三段階では、「手段選択型」から「問題解決型」へと切り替えていきました。
──「手段選択型」から「問題解決型」へというのは?
堀野: 以前までの金融各社のWebの作りは「サポート手段選択型」になっていました。例えば、お客様が問題を解決するためにサポートページに行くと、メールの問い合わせ、電話の問い合わせ、あるいはチャットの問い合わせと、お客様がサポート手段を選ぶ形になっていました。お客様の目線に立てば、解決はサポートを得ることでしか成立しないような作りです。
そこで、私たちは導線の切り替えに着手しました。商品、あるいは提供するサービスの全項目を作成し、解決したい問題を合わせて列挙。そこに紐づくように専用Webサイト、そしてFAQへの導線を設置、それでも解決しない場合はメールや電話といった直接問い合わせいただく形で、基本的には自己解決を目指したWebサイトの構成へ移行したのです。
──RightSupport by KARTEの導入を検討されたのは、どのタイミングだったのでしょうか。
堀野: 「問題解決型」への移行直後はプロダクトの導入は考えていませんでした。「問題解決型」の効果を検証していくにあたり、画一的・統一的ではないお客様一人ひとりに合わせたサポートの重要性が見えてきたときに、RightSupportの導入を検討し始めました。元々、KARTEは知っていたのですが、RightSupportについては、プレイドの担当者の方と会話をする中で、理解を深め、活用イメージを具体化させていきました。
──導入から実際に活用するところまではスムーズに進んだのでしょうか?
堀野: 銀行は社会的なインフラとしての側面もあるので、情報管理に対して求められるレベルも高い。新しいシステムを導入するにあたって、いくつもの工程を経なくてはなりません。それでも臨機応変にご調整いただいたこともあり、導入自体はスピーディーに進めることができました。
導入後、約4,000件の自己解決を促したフィッシング詐欺対応の施策
──導入後、どのように活用を進めていきましたか?
堀野: RightSupportを導入してからの流れも、三つのフェーズに分けて実現していこうと考えていました。
まず第一フェーズで、一人ひとりのお客様にあったサポートを実現する。第二フェーズでは、当行のマーケティング部門と連携して何かしらの形で収益につなげる。つまり、サポートを通じて顧客体験価値を高め、LTVを向上し、収益につなげるモデルを確立することを目指したいと考えていました。第三フェーズでは、グループ内で他の金融事業も含めた全体最適での価値を確立したい。こうした三つのフェーズを描いた上で、第一フェーズを3〜4ヶ月ほどの時間をかけて進めていきました。
(取材時の内容を元にCX Clip編集部が作成)
──一人ひとりのお客様にあったサポートの実現はどのように進めていったのでしょうか。
CS本部 お客さまセンター長 山内寛氏
山内: 当行の社内承認の関係で、RightSupportの導入後、施策を打つまでに少し時間がかかりました。
とはいえ、一度導入できれば、お客様の行動データが収集できるようになります。もちろん、以前から利用していたGoogle Analyticsでも一定分析はできるのですが、しっかりと分析しようとすると集計の難しさの壁に当たり、高い専門性が必要になります。
その点、RightSupportはデータ分析がやりやすく、ダッシュボードを見て仮説が立てやすく、施策のイメージが湧きやすかったですね。
──最初は、どのような施策を実行したのですか。
山内: フィッシング被害に関するサポートウィジェットを表示したのが最初の施策でした。検討していた施策のアイデアは別にあったのですが、お問い合わせが急増し、お客様をお待たせするタイミングでしたし、何よりお客様のご不安を少しでも早く解消できないか模索していたので、これはRightSupport を活かすタイミングだな、と考え実装しました。
惟村: お客様が「フィッシングの被害にあったかもしれない」と考えた際、「フィッシング auじぶん銀行」と検索しますよね。当時、そういった検索行動をした場合に結果の上位に表示されるのが、過去のフィッシング被害に関するお知らせページになっていました。
過去のお知らせページに流入してくるお客様が閲覧したいのは、現在のフィッシングに関するサポート情報だと推測できます。こうしたお客様に対して、RightSupportでサポートウィジェットを表示し、適切なページへとご案内する施策を実行しました。
どのページへの流入が増えているかといった情報は別の分析ツールでも可能です。ですが、RightSupportの分析機能では、サイト全体・ページごとのレポートを参照することで、お客様が該当ページを見たあとにどう遷移してどう具体的に行動したのかがわかるため、対応策の検討を行いやすかったですね。
月ごとに変動はしますが、月間27,000件〜28,000件ほど発生するお問い合わせ数のうち、RightSupportによって4,000件前後は新たに自己解決を促せたというデータも出ています。
CS本部 お客さまセンター 惟村亮祐氏
山内: 表示したサポートウィジェットをお客様がクリックすると、状況をお伺いする質問を表示し、ケースごとに回答が表示されていきます。このやり取りで解決できれば、お客様は電話する必要もなくなります。
また、私どもとしてもお電話をいただかず、お客様の自己解決を促せたことが数字として把握できました。この施策で定量的な結果も確認でき、この取り組みを起点に社内での調整もスムーズに進むようになりました。
堀野: RightSupportはいわゆるマーケティングツールとは似て非なるものなので、最初はその差異を経営陣に理解してもらう必要がありました。最初の施策事例では、先程もお伝えしたとおり、定量的な結果も示すことができました。
他部署からの相談も続々。CS起点の新たな顧客価値創出を目指して
──他には、どのような施策を実施されているのでしょうか。
山内: シフトレフトを目指してコンテンツを拡充すると、ある程度の網羅性を作れる一方で、お客様が迷いやすくなることも増えてきます。そうしたお客様が迷いやすいページで、RightSupport を使い、お客様のお困りごとを先回りして解決に導くようにしています。
今ではどのページに施策を出しても、10%超の高いクリック率を記録していますし、その後のアンサー(FAQ)までの到達率もかなり高い数字を出せています。
また施策によっては、設定の容易さもあり、新たに加わった社員が数日で施策配信まで行うことができました。良いスピード感で施策対応を実現できています。
惟村: 最近では、第二フェーズに関する仕掛けにも取り組み始めています。具体的には、解約抑止の施策や特定キャンペーンに興味がありそうなお客様へのサポートを進めています。
──RightSupportを導入したことで生まれた印象に残っている変化などあれば教えてください。
惟村: 私たちの部署はどうしてもWebに強いメンバーが少なく、Web上の改修対応をするのに労力が膨大にかかっていました。RightSupportを導入したことで、Webに詳しくないメンバーであっても、様々なことを思考し、アイデアを試してみる、というのがラフにできるようになりました。これは大きな変化ですね。
堀野: あとは、従業員満足の向上につながってきている実感があります。CSの現場に入り、オペレータがお客様側の声を聞けば聞くほど、「なぜ、早く改善しないのだろう」とサービスの改善速度への不満が生じます。とはいえ、なにかを改善するというのは、時間とお金、労力がかかるもの。それがRightSupportの導入によって、お客様の声を聞き、お客様の声を反映する対応がシームレスに行えるようになりました。その結果として、従業員満足度の向上にもつながっていると実感しています。
惟村: 私たちの部署以外の変化も印象的です。まだまだ試行錯誤を重ねている段階ですが、社内でもRightSupportの認知が広まってきたこともあり、マーケティングや営業部門など他部署から「こういうことをやってみたい」といった相談が寄せられるようになってきています。
山内: 便利さが伝わっているのか、様々な部署から気軽に相談が来るようになってますよね。
堀野: RightSupportの効果が表れ、実績が社内で認められてきたことで、他部署との連携も活発になってきました。お客様の声が集まるのはお客さまセンターなので、お客様に提供する価値を考える動きは他の部署と連携しながら取り組んだほうがいいはず。
まだまだ手探りですし、様々な調整は必要ではありますが、当初思い描いたCSを基点としたお客様のCX向上からグループ全体の価値創出につなげていくという絵の実現を目指した動き、手応えが徐々に生まれ始めています。
──今後の展望をお伺いできますか。
堀野: これまでの繰り返しにはなりますが、RightSupport活用を活性化しつつ、部署間のつながりを一層強化し、ともに施策を検討・実行していきたいですね。
惟村: 現場では、現在10の施策に取り組んでおり、RightSupportの重要度がますます高まっています。引き続き、安定したサービスのご提供を期待しています。
山内: RightSupportを活用して、お客様のWeb行動と各コンタクトチャネルの行動を連携したデータ分析をしっかりと進めていきたいと思います。得られた発見や示唆により、さらなるシフトレフトの推進と、お客様のニーズにあった商品提案の強化に取り組んでいきたいと考えています。