EC化率が高まるドモホルンリンクルで進む“パーソナライズ”――おすすめ商品の同封率が2倍に向上
基礎化粧品のドモホルンリンクルなどで知られる再春館製薬所では、以前から電話による通信販売や実店舗で、顧客一人ひとりに合わせたサポートに力を入れてきた。同社は利用者が増えるECサイトでも、誰にでも利用しやすいサイト体験を作りたいと考え、プレイドが提供するKARTE Blocksを導入。どのような効果を発揮しているのだろうか。本記事では、再春館製薬所のDX推進チームと、デジタル領域の支援を行うジオブレインの担当者にその詳細を伺った。
基礎化粧品「ドモホルンリンクル」のECサイト運営
今回は、再春館製薬所さんにおける、ECサイトにおけるパーソナライズ化された、UI/UXのお取り組みについてお聞きしていきます。まず自己紹介をお願いします。
川口:再春館製薬所のドモホルンリンクル事業部のDX推進チームでマネージャーをしています。このチームでは、主に弊社ECサイトのお客様に対するマーケティング施策を行うほか、サイト運用やUI/UX、CRMチーム(既存顧客の対応チーム)によるマーケティング施策のサポートなどを横断して行っています。
古江:同じく再春館製薬所DX推進チームに所属し、新規利用者の増加をミッションとしています。中でもシステム面のフォローなどをしています。
大渕:私は同チームで、Webサイトの運用改善のほか、メール配信やメールマーケティング、ツール管理などを行っています。
塩野:協力会社としてデジタル領域の支援を行うジオブレインに所属しています。私は再春館製薬所さんに常駐し、キャンペーンの要件定義やマーケティングツールの支援などをしています。
ドモホルンリンクルについて伺えますか。
川口:ドモホルンリンクルは基礎化粧品のラインで、弊社ではこの1ラインのみです。 全部で8点あり、その中でも保湿液、美容肌エキス、クリーム20、保護乳液の4点が基本となっています。主にご使用くださっている方々は30〜50代の女性 で、80代の方にまでお使いいただいています。
顧客一人ひとりに寄り添う、お客様プリーザーの存在
昨今、化粧品業界は競争が激化しており、アンチエイジングをメインにした商品も増えてきたように思います。貴社では、どのようなブランド戦略をとっていますか。
川口:私たちは、お客様一人ひとりに合わせたブランド体験が鍵になると考えています。一つ例を挙げると、ドモホルンリンクルは、初回お試しセットを申し込んでも、自動的に定期注文にはなりません。お客様がご自身のタイミングに合わせて購入いただけるようになっています。
株式会社再春館製薬所 ドモホルンリンクル事業部 DX推進チーム マネージャー 川口大貴氏
古江:お客様の”お肌と心の満足”を追求すること、ブランドへの信頼を得ることが、結果としてお客様との末長いお付き合いとなり、売り上げにつながっていくと考えています。
お客様にはそれぞれお肌のお悩み背景があり、なりたい理想のお肌があります。そこで、「お客様プリーザー」と呼ばれるオペレーターが、一人ひとりに効果を実感していただけるように、お客様に合った商品選びや使用方法のご案内をサポートしています。
すべてのお客様が「心地よさを感じる」サイト体験を実現
ECサイトでは、何に焦点をあて、取り組みを行っていますか。
古江:元来ドモホルンリンクルは、電話での販売がメインでした。今ではECサイトで購入される方が増え、新規の方は9割、全体では半分ほどがECサイトで購入されています。
ECサイトでは、お客様一人ひとりの細やかなインサイトを拾い、ご案内することが難しいです。 そこでより柔軟なECサイト設計が求められました。
弊社のお客様は30代・40代のお客様に多いですが、70代・80代のお客様も多くご愛用頂いています。Webサイトやスマホに慣れていない方も含めて、老若男女すべてのお客様が心地よく使えるECサイト改善を目指しています。
その際も、私たち企画職だけではなく、お客様プリーザーからヒアリングし、一緒に企画を考えることを重視しています。データで得られる情報も重要ですが、お客様プリーザーを通して得られるお客様の声が一番大事だと考えています。
株式会社再春館製薬所 ドモホルンリンクル事業部 DX推進チーム リーダー 古江順氏
こうした中で再春館製薬所さんでは、お客様のデータを活かしそれぞれに合わせたサイト設計やUI改善が行えるKARTE Blocksを活用されていると伺いました。活用の経緯を教えてください。
川口:弊社のECサイトはフルスクラッチ(独自でECサイトを構築)かつCMS化されておらず、お客様へのキャンペーンの提供や軽微な修正でもシステム部門に依頼して開発が必要でした。 システム部門もリソースが不足しており、バナーひとつ変更するにも2ヵ月かかることもありました。そこでフレキシブルかつクイックに施策を行うため、プレイド社のKARTE Blocksを活用し始めました。
元々CXプラットフォームKARTEを利用しており、多様なデータを蓄積していたことも後押ししました。
どんなサイトも導入はタグだけ。10秒で改善・A/Bテスト・パーソナライズを実行できる。
他には存在しない、独自のサイト体験を目指して
実際、KARTE Blocksを活用してみていかがですか。
古江:KARTE Blocksを導入して、更新管理やUIの検証が我々のチームで対応できるようになり、改修にスピードが出ました。
塩野:A/Bテストをするだけなら、他のツールでも可能です。しかしKARTE Blocksなら、顧客データを蓄積しながら、イメージした通りにお客様をカテゴライズし、その人に合わせたパーソナライズを容易に実施できます。
注文履歴だけでなく、発送した経過日数のデータも取得。 これまで活用してきたセグメント設定は、190を超えています。お客様プリーザーの対応履歴のように、ECサイト上のお客様の行動データを体験設計に活かせているのです。
株式会社ジオブレイン マーケティングソリューション部 CXソリューション課 塩野恭生氏
古江:我々がやりたいことは、お客様のこれまでのお付き合いやお悩みに応じて、届けたい情報を届けること。 KARTE Blocksにより、我々の目指す他にはない独自のサイト体験に近づいていると感じています。
KARTE Blocksの運用について伺えますか。
塩野:課題の抽出や施策の企画を再春館製薬所の方々に出していただいた際に、ECサイトに実装可能なものかという技術的な確認をしつつ、ジオブレインではその施策をKARTE Blocksでサイトに実装するところを行っています。実装の後は、施策のPDCAを回しています。
「初めてのお客様にも使いやすい」UIへと手軽にパーソナライズ
KARTE Blocksの具体的な活用方法と成果をお聞かせください。
塩野:初回購入されるお客様と購入経験のあるお客様では注文ステップは異なるため、お客様を迷わせる要因でした。そこで、初回と2回目以降の注文フローのステップガイドをパーソナライズ化。結果、 商品選択から完了までの遷移率が0.4ポイント向上 しました。
川口:また、何かアイデアがあるとKARTE BlocksでA/Bテストを実施し、効果が出たものはシステムに実装しています。おかげで、フットワーク軽く施策を試せるようになりました。 お客様が注文にいたるまでのサイト内の回遊導線を分析。A/Bテストなどを駆使してお客様がサイトで迷うところを見つけ、細部のUI改善することにも活かしています。
塩野:他にも、マイページ内のポイント交換品選択エリアにて、季節のおすすめエリアを新設するのに活用しました。
従来このページでは全ての商品を表示していましたが、ドモホルンリンクルを始めたばかりのお客様には迷いやすい状況でした。そこで会報誌の内容と連動しながら季節のおすすめ商品を紹介するエリアを新設。 カルーセルのテンプレートを活用することで開発なしですぐに実装することができました。 A/Bテストを実施した結果、以前と比較してポイント交換品選択から完了までの遷移率は0.16ポイント向上、 おすすめされた商品の開封率が2倍 (※)となり、確かな手応えを感じられました。
(※)取材・執筆時点の2024年2月。株式会社再春館製薬所調べ
1ヵ月の施策数が3倍。やりたいアイデアがどんどん出てくるように
KARTE Blocksを活用してよかった点を教えてください。
川口:やはり、施策を試した上でECサイトに本格導入する「小さく始める」ステップを挟める点が良いです。結果が悪かったとしてもすぐに改変できるため、地に足ついた検証をしている感覚があります。
大渕: 改善にスピード感が出ました。 以前は自社のECサイトにシステムを実装するとなると月に2〜3件しか試せなかったものが、KARTE Blocksでは月に10〜15件もの施策を行えるようになりました。 色々なセグメントを切って複数の施策を同時に走らせていることが多いのですが、複数の評価を見る際にも、KARTE Blocksは検証結果が見やすいです。
検証結果のデモ画面
塩野:実はアイデアをためていた方も多くいらっしゃったことがわかりました。KARTE Blocksを導入したことで、再春館製薬所のみなさんからアイデアがこれまで以上に出てくるようになりました。
大渕:僕らが発信することで「こんなこと実現できるんだ」という声が届いています。他部署から相談や要望をもらうことも増え、施策のアジャイル化が進んできています。
株式会社再春館製薬所 ドモホルンリンクル事業部 DX推進チーム リーダー 大渕光祐氏
最後に今後の展望をお聞かせください。
塩野:今後は連携できるデータを増やし、再春館製薬所さんの購買データと突き合わせながら、お客様ごとの行動を可視化していけば、さらに確度の高い検証ができると思います。プレイドさんとも連携を図りながら、取り組みを推進していきたいです。
川口:KARTE Blocksを活用して、ECサイトのパーソナライズ化した接客にさらに注力していきたいです。今得られる情報は購入履歴などに限られているため、まだ一人ひとりというより「こういう人」という範囲でしかセグメントができていません。今後は、肌悩みを伺うアンケートの結果やよく見ているページに沿ったご提案をするなど、よりパーソナライズを活性化できればと思っています。
※Markezineで2024年8月30日公開の記事を転載しています。