自分が顧客だったらどう感じるか。小説や漫画をより楽しんでもらうために、大切にしている考え―――アルファポリス様導入インタビュー
小説や漫画などの投稿・閲覧ができるWebサイトとアプリを展開する「アルファポリス」では、「作り手にも読み手にも使いやすいサービスを提供すること」を掲げています。顧客とのコミュニケーション手段を増やしたいとKARTEを導入、顧客の行動データを細かく見ることで得られた様々な発見や気付きを活かしながら、日々サービスの改善に向き合っています。
小説や漫画などの投稿・閲覧ができるWebサイトとアプリを展開する、アルファポリス。「作り手にも読み手にも使いやすいサービスを提供すること」を目指し、KARTEを活用しながら、日々サービスの改善に向き合っています。
同社が大切にするのは「顧客との長期的な関係構築」。短期的には売上げアップにつながる施策であっても、ユーザーの体験を損ねる部分があれば方針を転換する姿勢を大切にしています。
今回は、アプリの改善やプロモーションを担うWeb企画開発部 Web企画課 ディレクターの舛賀計彦さんと西尾美砂さんに、ユーザーにとって心地のいい体験の作り方と大切にする価値観、それらを実現するためにKARTEをどのように活用しているかを伺いました。
自分たちが好きなアルファポリスを多くの人に楽しんでほしい
はじめに、アルファポリスのサービス内容を教えてください。
西尾:「アルファポリス」は、誰もが自由に小説や漫画などの投稿と閲覧ができる総合エンターテインメントメディアです。2000年に前身となるサービスをリリースしました。今では約10万作品以上が投稿されていて、毎月約436万人※にご利用いただいています。
※2020年度3月時点
投稿型のサービスとしては珍しく、社内に編集部が設けられており、コンテストで入賞した作品や、作家から出版希望が出された中から選ばれた作品は、編集部が伴走しながらブラッシュアップし、出版されます。その過程を、作品を読むユーザーが楽しめるのも大きな特徴です。
基本的に無料でコンテンツを読めますが、会員登録をすると「お気に入り」や「感想」機能を使うことができ、書籍化した作品を読むためには無料会員登録をした上でチケットを購入する必要があります。
多くの方に愛されているサービスなのですね。顧客体験においては、どのような点を心がけているのでしょうか?
西尾:コンテンツを投稿する作家と読者、双方にとって使いやすいサービスを作ることを意識しています。
作家向けには、小説の投稿や管理などができる「アルファポリス 小説投稿アプリ」を提供しています。小説の投稿はもちろん、内容の編集や公開予約の設定、出版申請などをアプリ一つで管理できます。その他にも漢字のルビやカギカッコなどをワンタップで挿入できるなど、「欲しい機能がそろっている」「直感的に使える」と、作家の方から嬉しいお声をいただいています。
また、月に一度、ライト文芸やミステリー小説など、各ジャンルの優秀作品を表彰する「Webコンテンツ大賞」を開催。作家発掘のために、作品を投稿したくなるような仕組みづくりにも力を入れています。
舛賀:コンテンツを読む読者には、フォントや文字サイズ、文字幅を自由に変更できるビューワーを提供し、一人ひとりが読みやすいUIへカスタマイズできるようにしています。
あわせて、多くの作品を楽しんでもらえるように、書籍化された作品の「無料話増量キャンペーン」も実施。書籍化した作品を読むためのチケットを購入するハードルを下げるため、定期的に無料で読める話を増やしたり、広告を通してチケットを付与したりしています。
投稿する作家と閲覧する読者、双方への細やかな配慮を感じます。
西尾:ありがとうございます。私も舛賀も、もともとアルファポリスのユーザーだったんです。だからこそ、いちユーザーとして好きだった部分を大切にしていきたいと思いますし、より心地のよい体験をお届けしたいと思いながら、日々サービスと向き合っています。
舛賀:私も、類似サービスを含め、小説や漫画のサイトはかなり読み込んでいました。今は大手の出版社さんもアプリを出していて、有名な作品をWebやアプリで読むことができますが、アルファポリスは多くのオリジナル作品を無料で読めるので好きでした。
実際に入社してサービスに携わるようになり、かつての私たちと同じように、サービスに対して愛着を持ち、長く楽しんでくださるユーザーが多いことを実感しています。機能改善などの要望や、各作品に対しての感想や応援コメントも多くの方が送ってくださるんです。そういった声をいただく度に、真摯に応えていきたいという気持ちが強まっていますね。
簡単な操作で「顧客を知る」細かな設定ができる点が決め手に
日々、顧客の声に耳を傾け、真摯に対応されている中、なぜKARTEを導入しようと考えたのでしょうか?
西尾:一番の理由は、ユーザーとのコミュニケーション手段を増やしたかったからです。
その一例が、先ほど舛賀がお伝えした「無料話増量キャンペーン」です。KARTEを導入した2020年2月ごろは、キャンペーンを開催しても、それをユーザーに届ける手段がアプリのトップ画面上部にあるバナーしかありませんでした。もともとこのバナーはあまり目立たず、情報を必要としている方にちゃんと届けるのが難しかったんです。
その点、KARTEなら対象やタイミングを設定してポップアップを出せるなど、細やかなコミュニケーションをとれるのが魅力的でした。
サービスを検討する際に、他にどのような点を重視していましたか?
西尾:ディレクターだけで十分に使いこなせる、複雑すぎないサービスであることですね。 弊社は、アプリ担当のエンジニアがそこまで多くありません。多くの施策を実施、改善していくためには、私たちだけで完結する必要があります。
あわせて、ユーザーの行動データを詳細に取れることも大切な条件でした。 もともとアプリの分析には別のツールを活用していたのですが、細かなデータの把握ができていなかったんです。例えば、総合的なインストール数や読まれている作品数などの全体的な数は把握できていたものの、どういった方がどのような作品を読んでいるかといったユーザー毎の情報までは知ることができず……。もちろん、細かい設定をすれば見られるようにはなるのですが、エンジニアに依頼しないといけなかったりと、手が回っていませんでした。
KARTEは、操作が直感的でわかりやすいですし、細かなセグメントも簡単に設定できるなど、カスタマイズ性が非常に高く、ユーザー毎のアプリ上の行動も、私たちだけで設定でき、簡単に見られるようになりました。 大きな負荷がなく、ユーザーごとの詳細なデータを見られる点は非常に魅力的ですね。
KARTEで細かなデータを見ることで、顧客への理解度が高まった
導入後は、どのような体制で運用されていますか?
舛賀:私が運用のリーダーとして、主に西尾と2名で運用しています。私がオーガニックユーザー、西尾が広告から入ってきたユーザーの分析とアクションの立案を担当しています。お互いの業務の状況も見ながら、適宜カバーし合っていますね。
西尾:各々の状況を把握するために、週次でミーティングを開き、KARTEで行ったコミュニケーションの振り返りやネクストアクションの設定をしています。
KARTEの導入理由でもあった無料話増量キャンペーンはどのように実施されたのでしょうか?
舛賀:KARTEでアプリのトップ画面上にキャンペーンのポップアップを出しました。キャンペーンには大きな反響があり、新しい書籍化作品を読んでいただくための他の施策も組み合わせながら続けたところ、平均課金率が向上しました。無料話の増量をすることで、続きも読みたいという気持ちを醸成することができ、課金率のアップにつながることがKARTEによって実証できたので、今ではネイティブで実装しています。
トップページのバナーに「今だけ無料」を設置。キャンペーン中の作品にスムーズにアクセスできるようになっている
西尾:無料話を増量するとチケットを購入するユーザーが減るのでは、という懸念もありましたが、実際には購入が増えたんです。やはり無料話が増えることで、自分が読みたい作品かどうかを判断しやくなり、結果的に課金してくださるユーザーが増えることが実証できました。
KARTEによって、顧客のインサイトが証明できたのですね。
西尾:そうですね。ユーザーごとの行動データが可視化されたことによって、他にも様々な気づきがありました。 アプリ内には書籍化作品の新作、最近更新された作品など、ジャンルごとに細かなタブが設定されています。それぞれ、どれぐらいの数のユーザーに見られているのかKARTEで分析してみたところ、意外と使われていないタブが多くあったんです。このデータを見ながら、タブを整理したり、ポップアップを出すページを決めたりしています。
舛賀:ほかにも、作品を読むためのチケットの利用状況についても意外な発見がありました。コンテンツを読むためのチケットには、毎日1枚ずつもらえる「ボーナスチケット」、動画リワード広告を見ることでもらえる「プレミアムチケット」、ユーザー自身が「購入したチケット」の3種類があります。それぞれどの程度、ユーザーが利用せずに保持しているのか、検証してみました。
すると、プレミアムチケットが、予想よりも利用されていなかったんです。このように私たちが立てた予想や仮説を、細かなデータを通して検証できることは、正しいユーザー理解につながり、ユーザーへの理解度は格段に高まっています。
導入時にやりたいと思っていたことをどんどん実現されていますね。
舛賀:そうですね。さらに、導入時には想定していなかったのですが、メンバーの教育にもかなり役立っているんです。ディレクターチームにも新卒メンバーが入ったのですが、初めてこういったサービスを使う人にとって、KARTEは難しすぎず簡単すぎず、ちょうどいい難易度だと感じています。
深い専門知識がなくてもある程度は直感的に操作できますし、設定したアクションに対してユーザーからどんな反応がくるのかがすぐにわかるので、ユーザー視点を養いやすい。新人教育として適切なツールだと感じています。
顧客の満足度を起点にコミュニケーションをとる
他にもKARTEで実施されたアクションについて教えてください。
舛賀:毎日無料で書籍化作品を読めるチケットを配布しているのですが、もらい忘れている方がいらっしゃるので、そういった方々に向けて「もらい損ねていますよ」というプッシュ通知をお送りしています。
普段はプッシュ通知の開封率は1%前後なのですが、そのご案内に関しては他の倍ほどの開封率でした。「忘れていたけど、気づけてラッキー」と感じる方がたくさんいらっしゃったのかしれませんね(笑)。
とても親切ですね。こういったコミュニケーションは顧客の満足度に大きく影響するのではないでしょうか。
舛賀:無料チケット自体は、売上げのアップにつながらないのですが、ユーザーにとっては作品との大切な接点になるんですよね。
ユーザーとのコミュニケーションを考えるとき、売上げだけではなく、「ユーザーにとっての満足感」を起点にしています。 お得なキャンペーンのご案内だとしても、ポップアップを出しすぎて顧客体験を損ねていないか、など。
例えば、以前に無料会員登録のメリットを訴求する施策を実施したとき、ポップアップを表示するタイミングを工夫しました。ホーム画面で表示すると、多くの方に見てもらえますが、「ユーザーが無料会員になって続きを読みたくなるのはいつか」という視点に立ち返り、無料公開されている漫画もしくは書籍化された作品を3回以上読んだユーザーは、続きを読むために会員登録を検討する可能性が最も高まっていると考え、そのタイミングで施策を配信することにしました。
結果、トップページで表示するよりも成果がよくなったので、やはりユーザー視点を持つことは大切だなと思いましたね。
「作品の続きを読みたい」ユーザーの気持ちに寄り添い、適切なタイミングでメリットを伝え、会員登録率が向上|App
KARTEは顧客に話しかけるサービス
ここまでのお話を伺っていて、徹底して顧客体験にフォーカスをする姿勢が根付いているのだと感じました。
西尾:ありがとうございます。私たちのサービスは、「インターネット上に、誰もが自由に自分の考えを表現し、自由に楽しめる都市を作りたい」という思いのもと生まれました。
だからこそ、ユーザーが楽しめて、毎日覗いてみたくなるような場所にしていきたい。そのためにも、心地よい体験を追求したいですね。
今後はどのように顧客体験を充実させてくのでしょうか?
舛賀:ユーザーが「心地よい」と感じられる距離感を大切にしていきたいです。具体的にいうと、適切なタイミングで適切なコミュニケーションが行えている状態が理想です。
ユーザー理解が深まると、各々に合わせた接客をしたいと考えるあまり、ご案内が増えてしまいます。しかし、ユーザーは作品を読むためにアプリに来ている。ポップアップを出しすぎてしまうと、顧客体験を損ねてしまいますよね。「ポップアップを含めたコミュニケーション頻度は適切か」「作品の邪魔をしていないか」を見極め、満足感につながるコミュニケーションを考えていきたいです。
例えば、有料チケットの購入を促す場合でも、読みたい作品があるもののチケットが無くなってしまったときに、有料チケットのメッセージを出すような形が理想です。
西尾:KARTEは、私たちからユーザーに話しかけられる唯一の存在だと感じています。 今後は、より一人ひとりのユーザーに合ったコミュニケーションをとり、愛着を感じてもらいたいです。
そのためには、今よりももっとユーザー理解の解像度を上げる必要性を感じています。過去に、小説を閲覧する方の割合が増えてきたので、ビューワーの使いやすさを訴求するコミュニケーションを上長に提案したんですね。しかし、「それは本当にユーザーが求めているのか?」と指摘されて、ハッとしたんです。そこで、KARTEを使って本当にそのようなニーズがあるかを確かめてみようと思っています。
今後もKARTEを活用して、どんどんユーザーの気持ちを理解しながら、毎日訪れたくなるようなサービスをつくっていきたいです。