freeeが最も大切にしているのはユーザーに満足してもらうこと。BtoBメディアにおける満足度向上のための取り組み

人事労務・会計クラウドソフトを提供するfreee株式会社が運営するBtoBのメディアでKARTEをご導入いただいています。一般的にオウンドメディアでは、KPIをCVとすることが多いですが、freeeではユーザーの満足度を最も大切にしていると話します。freeeでは、ユーザー満足度を高めるため、KARTEをどのように活用されているのでしょうか。

人事労務・会計クラウドソフトを提供するfreee株式会社(以下、freee)は、近年のIT技術の進歩や働き方の変化に伴うフリーランスや個人事業主の増加など、時代の流れにも後押しされ、成長と認知拡大を続けています。

freeeでは、自社サイト内にユーザー向けとして「バックオフィスの基礎知識」というコンテンツを配信しており、その中にKARTEを導入しています。運営で最も重視しているのは、「ユーザーの満足度」だといいます。

メディアのコンテンツに来訪するユーザーは、多様な属性と異なる目的を持っています。CX(顧客体験)の向上のために、KARTEはどのように活用され、どのような貢献をしているのでしょうか。メディアを運営するfreee でマーケティングを担当している上原麻奈美様に伺いました。

属性もニーズも多様な顧客の満足度を高めるために、施策や改善の数とスピードが必要だった

はじめに、freeeの事業内容について教えていただけますか?

freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションのもと、クラウド会計を始めとした、バックオフィス支援ソフトやサービスを開発・提供している会社です。ユーザーは個人事業主や中小企業が中心というイメージを持たれることがありますが、大企業や上場企業にも広く活用いただいています。

そんなfreeeでは、KARTEをオウンドメディアに導入されています。このオウンドメディアは、どのような役割を担っているのでしょうか?

自社サイト内に「バックオフィスの基礎知識」として会計や確定申告、開業といったテーマで、ユーザ向けコンテンツを発信しています。オウンドメディアの一般的な目的は、ユーザーの会員登録やアプリのダウンロード、お問い合わせの数など、サービスへのCV(コンバージョン)になると思います。私たちもCVを指標の一つとしては見ていますが、それをメインには考えていません。ユーザーへ配信する情報は有益かつは正確な情報提供を行う場であり、併せてfreeeを知ってもらう、好感をもってもらうといった、ユーザーとの接点のひとつだと捉えています。

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まずはユーザーに役に立つ情報をしっかり届けられるメディアであることが重要ということですね。

はい。ユーザーの満足度を高めることが重要だという考えは、社内全体に浸透していると思います。freeeのカルチャーに「マジ価値」というものがあって「ユーザーにとって本質的(マジ)な価値があると自信を持って言えることをする」という思いを表現したものです。

まずはいい記事を作って、ユーザーが欲しい情報をしっかり得られ、満足してもらう。その先に、お問い合わせやダウンロードなどのCVがあるんだと思います。

ユーザーの満足度を高めていく中で、KARTEを導入しようと思ったきっかけや課題はどのようなものだったのでしょうか?

一番の目的は スピード感を持って施策を実行したかった からです。「この記事を読んだ人には、さらにこの記事を提案しよう」という案内を、最適な形やタイミングでやりたいと考えていました。

オーガニック検索からさまざまなユーザーが来訪されます。記事数はすでに1000を超えていて、今も作成し続けています。属性やニーズが多様なユーザーに対し、彼らが求める知識を素早く、正確に提供する方法は常に模索しています。

KARTEの導入前は別のツールを利用していたのですが、何か施策をやろうと思っても、社内の別部署や外部に依頼する必要がありました。要件をまとめて、依頼書を作って説明して、といったフローが生まれ、時間もコストもかかっていたんです。

メディアの担当が基本的に私一人なので、担当者レベルで施策を回しながらユーザーの満足度を高め、CVにつなげられること、外注よりも費用対効果が改善すること、あとはKARTEに蓄積されるデータの活用 などを期待して、1年ほど前にKARTEを導入しました。

一つのポップアップで10種類ものABテストをし、顧客の傾向を掴む

実際にKARTEを導入してから、どのような施策を実行したのでしょうか。

KARTEを導入した12月は、確定申告の時期を控え、検索流入が増え始める時期でした。流入のピークの時期に向けて、さまざまなA/Bテストやクリエイティブテスト、CVに繋がる効果検証をスピーディーに実行していきました。

例えば、「ポップアップ機能」を使った施策なら、どのような表示にするか、プロダクト画像とイラストのどちらを出すべきか、テキスト文言はどう変えるか、どのタイミングで表示したら効果的かなどを、一つの施策に対して10種類ほど検討していました。それを短期間で順番にテストしていったんです。

下記のような確定申告に関する記事の右下に掲出したサービス登録への導線を設けたポップアップでは、3種類でA/Bテストを行いました。

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結果として、イラストの方が効果が良く、コピーは「税務署に行かず」のクリエイティブが徐々に効果が良くなっていきました。それぞれ、イラストの方が良かったのはステップが見えて簡単そうに見えるからなのか、「税務署に行かず」のコピーの方が良かったのは新型コロナウイルスの影響なのか、などの仮説を立てることができました。

多くの施策を短期間でテストする、という点がまさにKARTEに期待していた「スピード感」の部分ですね。

そうですね。ピークの山に近いときには、1〜2日単位でABテストして最適なクリエイティブを決定していくことができました 。もし外部に依頼していたらと考えると、やりとりの手間も発生していたので、かなり動きが鈍くなっていたでしょうね。

特に効果的だった施策や事例を教えてください。

新型コロナウイルスの影響もあり、freeeの「税務署に行かずに確定申告ができる」という点がプラスに働き、そうした関連記事への検索流入が増加しました。特にモバイルからの流入が多かったんです。

これまでの知見で、確定申告関連の記事を探しているモバイル経由のユーザーに、アプリ版freeeのダウンロードを促す施策は効果がよくなることがわかっていたので、モバイルユーザー向けにはアプリダウンロードに焦点を当ててA/Bテストを実施しました。結果、この施策の配信期間中にアプリをダウンロードした方のうち、半数以上がKARTEを経由していました。確定申告のピーク時期を超えてもこの割合は続いており、確定申告記事の来訪ユーザーとKARTEポップアップ施策の相性がよいことを発見できました。

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KARTE導入前までもA/Bテストは行っていましたが、パターンごとに配信する比率を決めることはできませんでした。こうした細かい施策の出し分けを技術的なことが分からないようなメディア運用者レベルで、実行できるようになったのは、KARTEを導入したからこそですね。

たとえCVに有効でも、ユーザーが邪魔に感じる施策ならやめる

KARTEには、顧客を知るための分析機能も多く備わっています。KARTEを導入して、訪れるユーザーの理解は進みましたか?

各記事にどんな属性のユーザーが来訪されているのか、どれくらい読んだらCVするのか、他の記事に遷移するのかなど、次の動きと紐づけて見える「ユーザーダッシュボード」はよく見ていましたね。

ユーザーダッシュボードでは来訪ユーザーのセグメントを設定できるので、まずはユーザーをしっかり捉えてから「このユーザーには、この記事を読んでいただこう」「このコンテンツを案内したらいいのでは?」など、ユーザー軸やコンテンツ軸などさまざまな方向から検証していきました。その結果、ダッシュボード上でユーザーの反応に変化があれば、それに合わせて施策や接客を変えていますね。

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ユーザーダッシュボードの画面(サンプル)

例えば、検索から訪れた初回訪問のユーザーは、その検索した悩みを解決する記事を探して訪れるケースがほとんどなので、freeeのサービス導入の案内やアプリダウンロードを促すバナーを表示させても、クリックされる割合は低いです。しかし、だからといって施策のターゲットから外すと、記事全体のCVが下がることもあります。そういった関係性も数字を見て理解しながら、最適な施策を導き出すイメージです。

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ユーザーを知ることで、具体的に変えていった施策などはありますか?

関連記事の内容やポップアップの頻度をよく調整しています。ユーザーの興味に合いそうな関連記事を出しクリック率を測ったり、一度ポップアップを閉じた方をユーザー群として設定できるので、次回からポップアップの表示がされないようにしたりして。

一見CVのために有効な施策だったとしても、その他の多くのユーザーが邪魔だと感じているならやめるときもあります。 こうした試行錯誤の結果、ユーザーの欲しい情報がスムーズに手に入り、気持ちよく記事を読んでいただけるようになったかなと思います。

BtoBは長期戦。興味や理解を深めてもらうことから始まる

freeeが重視している、ユーザーの満足度はどのように計測しているのでしょうか?

今までも定期的にユーザーアンケートを行っていましたが、KARTE導入後は「アンケート機能」を活用して実施しました。アンケートでは、元々freeeを知っていたか、記事を通して満足度が上がったかなど、データからは読み取りにくい定性的な部分を質問しています。今回の結果では、全体的に満足度が向上したことが分かりました。

日頃からKARTEを活用することで、ユーザーの属性ごとの記事への興味度合いやモチベーションは理解できるようになったと感じますね。

メディアではPVや記事の遷移率、CVといった見えやすい数字がありますが、定性的な評価も重要な指標にしているんですね。

そうですね。freeeのサービスは、BtoBの性質が比較的強いです。サービスを知っていただき、検討段階を経てご利用いただくまで、長期間かかります。一度オウンドメディアを訪れたといって「freeeを導入しよう」「会員登録しよう」といった行動が起きることは稀です。BtoCやECサイトのように、流入してきた方に接客を行ってすぐにCVにつなげるというよりは、まずは興味や理解を深めてもらうことを重視しています。

そのために ユーザー行動を分析して、興味深度のスコアリングを作り、ユーザーにとっていい体験、いいコンテンツを届けることを心がけていますね。

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今後、KARTEを使って実施したい施策や、活用していきたい機能はありますか?

KARTEを導入したおかげで、集めたデータを元にユーザーの行動予測が立てやすくなりました。今後はその行動データを活用して、プロダクト導入までの検討プロセスに時間が要する層をリードに転換する施策を打つ予定です。

ユーザーへのコンテンツを配信するメディアとして満足度を高めるようなアプローチはまだまだあると思うので、もっとユーザーへの理解を深めて寄り添っていき、さらに顧客体験を向上させていきたいですね。

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