きめ細やかなコミュニケーションで、スムーズな活用につなげる。顧客が困りそうな場面に先回りしサポートする、カイポケのカスタマーサクセス
カイポケは「介護事業者の経営改善」に貢献することを目指し、介護事業者が行う業務を効率化する機能を提供しています。「介護事業者」と言っても、訪問介護や通所介護、リハビリテーション、ITリテラシーなどが異なるなかで、KARTEを用いてそれぞれの状況に合ったサポートを実現していています。
医療・介護・ヘルスケア・シニアライフの領域で高齢社会の情報インフラを構築する株式会社エス・エム・エス。介護事業者向け経営支援サービスの「カイポケ」に、2016年からKARTEを導入いただいています。
一口に「介護事業者」と言っても、訪問介護や通所介護、リハビリテーションなど、その種類はさまざま。顧客ごとにITリテラシーに差があるなかで、KARTEを用いてそれぞれの状況に合ったサポートを実現しています。
エス・エム・エスが取り組む顧客一人ひとりに合わせたサポートと、カイポケの顧客体験を向上させた先に見据えるビジョンを、カスタマーサクセス担当の千賀亮様と桑原 結衣様に伺います。
業務効率化と適切な情報提供で、事業者様がケアに注力できる環境をつくる
はじめに、貴社の事業内容とカイポケについて教えてください。
千賀:「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」 をミッションに掲げ、高齢社会で生じる社会課題の解決を目指しています。高齢社会に求められる領域を、医療・介護・ヘルスケア・シニアライフと捉え、価値提供先であるエンドユーザ・従事者・事業者をつなぐプラットフォームとしての情報インフラを構築し、40以上のサービスを展開しています。
その中で私たちが担当している「カイポケ」は、「質の高い医療・介護サービスの提供が困難になる」という社会課題に対し、「介護事業者の経営改善」に貢献することで解決を目指しています。
「カイポケ」は、業務効率化や財務改善など、介護事業者の経営改善に役立つサービスをワンストップで提供する、サブスクリプション型のクラウドサービスです。介護事業者が毎月必ず行う介護保険請求業務や、従業員の勤怠管理、経営数値の把握、事業所のホームページ作成など、経営にまつわるさまざまな業務を効率化できる機能を提供しています。これらが全て、パソコンやタブレット、モバイルで完結します。
桑原:介護従事者の皆さんは、日々の介護業務だけでなく、介護保険請求をはじめとしたさまざまな記録業務や書類作成に追われています。本来、介護の仕事は「エンドユーザに対して質の高いケアを届けること」であるはず。そのコア業務にできる限り時間を割けるよう、カイポケでは、書類作成のデジタル化等の業務効率化を支援しています。
千賀:介護施設を経営する事業者、そして実際の介護を行う従事者を支援することで「質の高いケアの提供」に専念でき、エンドユーザが安心して介護を受けられる状態をつくること。 これが、カイポケが目指す理想です。
ITリテラシーに差があるからこそ、パーソナライズされたサポートが必要
カイポケとして目指す理想に近づくにあたり、どのような課題をお持ちでしたか?
桑原:「プロダクトを十分に使いこなせない」という悩みを抱えるユーザーが一定数いらっしゃったんです。 ユーザーの中には、これまで紙で書類作成や記録をしている事業所も多く、PCやタブレットなどのIT機器を日常的に使う習慣がなかったために、デジタルに対して苦手意識を持つ人も少なくありません。例えば、下線が入った青文字をテキストリンクだと認識できずに、「どこをクリックすればいいのですか?」とカスタマーサポートに問い合わせをいただくこともありました。
操作に困った方向けのよくある質問(FAQ)サイトも設置していたのですが、直帰率の高さと個別のQ&Aページへの到達率の低さが課題 でした。 IT機器に慣れていない人にとって、「困った時にQ&Aのページを見つけ出し、自己解決する」という作業は、ハードルが高いんですよね。結果、どうしてもカスタマーサポートにお問い合わせいただくことになってしまい、特に電話が込み合う時期は お待たせしてしまうことも多くありました。
千賀:ITに対して苦手意識がある人たちが、コールセンターに問い合わせずよりスムーズにカイポケを使いこなせるようになれば、業務効率化につながるはずだという確信がありました。 実際に、活用が進んでいる事業者の方からは、「ストレスになっていた書類作成業務が減り、業務を効率化できるようになった」といった声も寄せられています。そこで、しっかりと活用していただくためのサポートを強化していきたいと考えました。
実際にどのようなサポートをしたのでしょうか?
桑原:以前は全ユーザーの操作画面に、Q&Aページに誘導する案内を出していましたが、必要な情報が見つけられず、結局カスタマーサポートに電話したほうが早いと感じるかたが多くいらっしゃいました。期間・時間帯によっては、カイポケを使い慣れていない方々や、電話で問い合わせることが習慣化している方々がカスタマーサポートに集中し、ご対応まで数十分以上お待たせしてしまうケースもあるのですが、それでも電話を置いて待つ方もいらっしゃいました。
千賀:一方で、カイポケを使い慣れているユーザーからは「案内が煩わしい」という声をいただきました。ITリテラシーや導入フェーズに応じて細かくセグメントして、一人ひとりに合わせたコミュニケーションが必要なのだと実感しましたね。
きめ細やかなコミュニケーションで、必要とする人に必要な情報を届ける
顧客の状態に応じて、コミュニケーションを変える必要性を感じたのですね。今はどのようなコミュニケーションを取っているのでしょうか?
千賀:迷いそうな「タイミング」と「ユーザーグループ」を指定して、その状況に対して最適な回答が記載されているQ&Aページへご案内するポップアップを出しています。
迷いそうな「タイミング」や「ユーザー」は、どのように指定していますか?
桑原:CRMツールとKARTE Datahubを連携させ、事業者の状況に合わせた接客を行なっています。 カスタマーサポートの入電を分析したところ、多くが契約して1年以内のユーザーであり、また入電内容のうち半分はよくある質問(FAQ)で解消ができることが分かっていました。そのため、CRMツールのデータをもとに、契約1年以内のユーザーや、電話での問い合わせが多いユーザーにのみQ&Aページへ誘導するポップアップを出しています。
千賀:どの場面でどのQ&Aを案内するかに関しては、コールセンターに寄せられた問い合わせの内容を見ながら、Q&Aで解決できそうなものを中心に抽出 しています。 例えば、「利用歴○ヵ月の人がこの画面に来た場合は、こういう点でつまづきやすい」などと分析し、適切なQ&Aを表示。直近1ヵ月の問い合わせ数に応じて、表示するユーザーグループを変えることもあります。
桑原:合わせて、ポップアップの表示の仕方や掲出箇所についても工夫しています。単に、最適なQ&Aが記載されているURLをご案内するだけでなく、「この操作をすると解決できます。続きはこちらをご覧ください」という形で、回答の一部分を見せるようにしているんです。
Q&Aページを普段見ない人にとっては、解決策をチラ見せすることで、試しに見てみようという動機付けになると考えて、回答の一部を見せるようにしました。逆に、すでに操作に慣れているユーザーには表示しないように設定をして、過度なご案内をしないようにしています。
かなりパーソナライズされた接客を実現されていますね。
桑原:ありがとうございます。合わせて、Q&Aページ自体をさらにわかりやすくするために、リニューアルも行いました。リニューアルにあたって、「KARTE Live」でユーザーのページ上での動きを観察する と、Q&Aページを活用できているユーザーと、活用できてないユーザーの動きの違いが見えてきました。
Q&Aを使い慣れているユーザーは、検索窓で「Google検索」のようにキーワードを入れてすんなりと検索をしてくれるのですが、そうではない方々は検索画面で動きが止まっているんですよね。そのまま、何となくサイト内を回遊するものの、最終的には離脱してしまいます。何をキーワードとして入力すればいいのか、迷っているのかもしれないと感じました。
その課題を、どう解決しようとしたのでしょうか。
桑原:まずはトップページのUIを改良しました。Q&Aページを使い慣れているユーザーは検索窓の利用率がかなり高いことがわかったので、メイン導線としました。Q&Aページを使い慣れていないユーザーは、検索窓ではなくカテゴリーやマニュアルから自身の困りごとに該当するものを探す傾向があったため、初期ユーザーが選びやすい項目をサブ導線として設けました。
合わせて、ユーザーにあまり使われていないと分かったカテゴリーツリーをなくしパンくずに変更、その分Q&Aページの幅を広げ、画像を見やすくしました。またカスタマーサポートとも連携し、回答内容の精査や見せ方の工夫を行い、「Q&Aページを見たら、電話せずにスムーズに自己解決できた」という経験を積んでもらえるよう心掛けました。
リニューアル後には、KARTE Liveで想定通りの動きがされているかも確認していきましたね。
KARTEでのコミュニケーションを取ったことで、顧客からの反応はどのように変わりましたか?
桑原:施策を行ったことで、活用するユーザーが増え、直帰率や個別Q&Aの到達率が改善 されました。今までQ&Aページを活用してこなかったユーザーに、「ページを見ながら自分の力で解決する」きっかけを届けられたのは、非常に意義があったと感じています。
KARTEは、顧客との理想的なコミュニケーションを実現するための “味方”
貴社は2016年に導入いただいて、5年になりますね。長い期間お使いいただくなかで、KARTEの魅力をどのように感じていますか?
桑原:当初は「簡単にポップアップを出せて便利!」という程度のイメージだったんです。しかし、今はその認識がかなり変わっています。
事業者ごとに、ITリテラシーもサービスの業態も違うなかで、パーソナライズされたコミュニケーションが実現できている のは、KARTEがあるからこそ。表示する対象のユーザーやタイミングも細かく設定できるので、事業者の状態に合わせて必要な情報をお届けするための強力な味方 だと感じています。 逆にKARTEがないと、どうコミュニケーションをとればいいのか戸惑ってしまいそうですね(笑)。
千賀:「顧客の状況に合わせたコミュニケーションを取るためのサービス」 という認識が、カスタマーサクセスだけでなく、社内全体にも徐々に浸透しつつあります。私自身、KARTEで行うアクションに対する事業者の反応を見るなかで、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを取ることの重要性を認識しました。そういった反応を元に、理想的なコミュニケーションを考え、実行する。この流れをスムーズに実現できるのは、KARTEがあるからこそだと感じています。
理想の顧客体験を叶える仲間であると認識していただいているのですね。KARTEとともに、この先どのような顧客体験を実現させていきたいですか?
桑原:事業者の状況に合わせたコミュニケーションは、徐々に設計できるようになってきたと思います。今後は、困った時にピンポイントで案内を出すような「点」でのコミュニケーションだけでなく、オンボーディングから最初の成功体験、その先の活用の展開、定着までのステップを円滑にご案内できる「線」としての顧客体験をもっと磨いていきたいです。
千賀:私は、事例にも挙げたQ&Aのポップアップ表示のように、ユーザーが困りやすいタイミングに先回りしてサポートするようなテックタッチの精緻化に力を注ぎたいです。そのためにも、KARTEやCRMツールで取得できるデータを活用し、「顧客像」の解像度を上げる必要があると思います。
これまで実行してきたアクションへの反応と、反応しているユーザーの特徴などのデータをしっかりと蓄積していけば、一人ひとりに合わせたコミュニケーションがさらに磨かれるはず。ユーザーが求めるコミュニケーションを実現して、よりスムーズにカイポケを活用いただくことで業務効率化に貢献していきたいですね。
まさに人が接客しているかのような、個別最適化されたコミュニケーションですね。介護事業者の中でカイポケの活用が進んだ先に、どのような未来を思い描いているのでしょうか?
桑原:ユーザーがカイポケを使いこなせるようにサポートをすることで、介護業界に「デジタルを介在させる意義」を浸透させていきたいです。
カスタマーサクセスとして多くの事業者に伴走する中で、介護に対する強い想いがあるにも関わらず、経営面や業務効率化が上手く進まず、つまづく方たちを多く見てきました。デジタルを通して手助けすることで、想いのある人がサービスの質の向上に注力できるような状態をつくれたらいいなと思っています。
千賀:カイポケを、介護事業者にとっての駆け込み窓口のような存在にしていきたいです。 経営者が介護施設の経営に迷ったときに、「カイポケになら、何かヒントがあるかもしれない」と想起してくれたら嬉しいですね。
その実現に向けて、モバイルやタブレットの提供、アプリでの記録管理による業務効率化や経費削減、資金繰りに困った際の金融系のサービス、新しい事業所の設立など、幅広くサービスを展開しています。ただ、それらが事業者の皆様に届いているかと言うと、まだ不十分な段階です。サービスとコミュニケーションを磨いていき、全方位的に介護事業者の経営課題を解決できるプラットフォームにしていきたいです。