Event Report

CSの品質と生産性を両立しサポート起点の事業貢献を目指す、パナソニックのサポートチャネル最適化構想

2024年11月、国内最大のコンタクトセンター/CRM関連イベント「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2024」が開催され、イベント内にて、「パナソニックが描く、CX向上と事業貢献を実現するサポートチャネル最適化とは?」をテーマにしたセミナーを実施しました。パナソニック株式会社CSセンター 顧客ネットワーキング企画部 課長 三好 惇也氏、株式会社RightTouch Business Development 奥泉 琳太郎が登壇したセミナーの模様をお伝えします。

2024年11月、国内最大のコンタクトセンター/CRM関連イベント「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2024」が開催されました。

同イベント内にて、「パナソニックが描く、CX向上と事業貢献を実現するサポートチャネル最適化とは?」をテーマにしたセミナーが開催。同セミナーでは、パナソニックが2030年度に向けて構想する、デジタル相談センター化のビジョン、その実現に向けてRightSupport by KARTE(以下、RightSupport)を導入した狙い、顧客データに基づく「サポートチャネル最適化」の実態が語られました。

今回は、パナソニック株式会社CSセンター 顧客ネットワーキング企画部 課長 三好 惇也氏、株式会社RightTouch Business Development 奥泉 琳太郎が登壇したセミナーの模様をお伝えします。

コンタクトセンターが抱える「品質」と「生産性」の両立というジレンマ

登壇した三好氏が所属しているのは、パナソニック株式会社のエレクトリックワークス社のCSセンター。同センターには、顧客ネットワーキング企画部、お客様相談部、CS企画部などがあり、セッションでは自社商品の相談対応を行う同センターの事例を中心に語られました。

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エレクトリックワークス社は、ライティング事業、電設資材事業、ソリューションエンジニアリング事業などを手掛けており、コンタクトセンターではそれぞれの商品の相談対応を行っています。

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コンタクトセンターに寄せられる問い合わせは約60万件で、そのうちBtoBが70%ほど。対応チャネルは、FAQ、電話、メール、有人チャット、チャットボットなど。電話における問い合わせ内容は、商品仕様や故障・交換・保証などの比率が高いといいます。

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三好氏が所属するコンタクトセンターの背景について共有した上で、コンタクトセンターが抱えるジレンマについて言及しました。

三好氏「コンタクトセンター運営では、『品質』と『生産性』がトレードオフになりやすい。たとえば、コールの削減はその典型です。生産性のためにはお客さまの自己解決を促進するのが正しいですが、品質の観点ではやみくもにFAQをご案内すればいいわけではありません。では最適なバランスはなにかと問われると難しい。これをチャネル最適化によって解決していけたらと考え、取り組んでいます」

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三好氏は「商品仕様と販売につながる購入相談、この2件のお問い合わせの価値は同じでしょうか?また、BtoBのお客さまとBtoCのお客さま、それぞれからのお問い合わせの優先度は同じでしょうか?」と会場に問いかけます。

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パナソニック株式会社 CSセンター 顧客ネットワーキング企画部 課長 三好 惇也氏

三好氏「企業ごとにこの考え方は異なります。ただ、ひとつ言えることは、すべてのお問い合わせが同じ価値であり、同じ優先度になることは、どの企業でも当てはまらないのではということ。

たとえば、B2Cのお客さまから一問一答形式で回答可能な内容についてのお問い合わせが電話であったとします。お客さまにとっては電話をかける手間もありますし、解決までにも時間がかかる。企業側としても電話の応対にかかるコストは相対的に高く、弊社の場合は販売にもつながりません。こうしたケースでは、FAQをご案内することが、お客さまと企業双方にとって効率的かつ適切な解決方法となります。

このように一つひとつのお問い合わせに対して、「お客さまがどのような方なのか」「どのチャネルで対応するのが最適なのか」を考慮し、お客さまと企業双方にとっての最適なチャネルでの対応の実現を目指しています」

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では、サポートチャネルの最適化とはどのようなものになるのでしょうか。三好氏は、RightSupport を活用して、お客さまがWebサイトに訪問した段階で顧客を特定し、Web行動から問い合わせ内容を事前に把握できることを例に挙げます。

そのうえで、顧客や問い合わせにランクをつけ、かけ合わせたものを「問い合わせ価値」と定めて最適なチャネルへと案内する、パーソナライズしたコミュニケーションに取り組んでいると語ります。

三好氏「これまではお客さまが、自由にお問い合わせのチャネルを選択することが当たり前であり、企業側の対応は受け身でした。これからは、各種データを活用し、企業側からプロアクティブに最適なチャネルを提案する時代になっていくことを見据えています」

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「問い合わせ価値ランク」を算出し、サポートチャネル最適化を進める

三好氏が見据えるサポートチャネル最適化の展望が話された後、奥泉からは「どのようにサポートチャネル最適化の着想を得たのでしょうか」という質問が投げかけられました。

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株式会社RightTouch Business Development 奥泉 琳太郎

三好氏は、現在取り組もうとしているのは、CRMの領域では浸透してきている考え方だと述べます。前職はEC関連の顧客接点部門も担当していたため、現プロジェクトを担当することになった際、コンタクトセンターでは電話とWebが切り離されていることに課題を感じたといいます。

続けて、奥泉が問いかけたのは、着想後にどのようなプロセスでサポートチャネル最適化を企画し進めていったのか、そのプロセスについて。三好氏は3つのステップに分けて進行していったと語ります。

三好氏「3ヶ月ほどかけて企画全体を整理しました。Step1で、お問い合わせ内容や顧客属性など各種データを分析し、カスタマージャーニーを作成。続いて、問い合わせや顧客ランクを設定し、問い合わせ価値を定義し、最適なチャネルがどこかなど、あるべき姿を検討(Step2)。その後Step3として、お問い合わせ導線の設計やソリューションの選定、ROIの算出を進めていきました」

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各ステップの詳細について、奥泉が質問を続けます。最初のステップである「データ分析」における問い合わせ内容や顧客属性の分析はどのように進行したのでしょうか。

三好氏「これはどのコンタクトセンターでも取得している基礎的なデータかと思います。お問い合わせの内容・比率はどうなっていて、どんなお客さまからのお問い合わせが多いのかなどを把握してから次のステップに進んでいきました」

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こうした情報をもとに三好氏はカスタマージャーニーを作成。同社の場合、カスタマージャーニー上に問い合わせの売上貢献度に応じて、重要度を設定し、「問い合わせランク」として整理していきました。以下の図で、「A」のところは問い合わせ価値が高く、「C」のところは問い合わせの価値が低いという整理になっていると語ります。

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問い合わせランクに加えて、売上規模や意思決定権の大きさに応じて、顧客の優先度を設定し、顧客ランクも整理しました。

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問い合わせランクと、顧客ランク。この2つのランクをかけ合わせることで、「問い合わせ価値ランク」を決定。

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「問い合わせ価値ランク」に応じて、最適なサポートチャネルを選定していった、と三好氏は語ります。たとえば、問い合わせランクと顧客ランクが共に高い「AA」であれば、最適なのは電話やメールといった有人のサポートチャネル。問い合わせランクが「B」で顧客ランクが高い場合は、チャットボットに案内。それ以外はFAQやボイスボットなどの自己解決のサポートチャネルが最適、といったように決めていったそうです。

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コスト削減効果を定量的に社内に示し、さらにパーソナライズしたサポートの実現へ

「問い合わせ価値ランク」を設定し、ランクに応じて最適なサポートチャネルも決定した三好氏は、構想の実現に向けてRightSupportを導入。時間をかけながら、社内での調整を進めていきました。

三好氏「企画立案からローンチまでのプロセスは、想定よりも時間がかかりました。これまでに取り組んだことのない新しいチャレンジだったので、仕方のない部分もありました。4ヶ月ほどかけて情報を収集し、RightSupportにしようと決めてからはまた4ヶ月ほどかけて社内調整を行い、導入を決定してからは3ヶ月ほどでレクチャーを受けるなど導入準備を進めていきました」

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これまでになかったことを企画し、新しいプロダクトの導入も含めて、進めていった三好氏。取り組みの費用対効果など、社内でどのように示していったのかについて、奥泉が問いかけます。

三好氏「費用対効果は、お客さまの自己解決促進によってどの程度のコスト削減効果があるのかをシミュレーションし、伝えるようにしていました。コスト削減効果の算出には、自己解決件数にCPC(※)をかけた金額から、RightSupportの利用料を引くという計算式を用いました。(※Cost Per Call / 電話応対1回の通話にかかるコストのこと)

また、プラスαの効果としてシームレスな導線が構築できることによるお客さまの体験向上(CX)、購入検討のお客さまの最適チャネルとして電話にご案内することでの売上貢献なども示すようにしました。プラスαの価値も実際は大きいのですが金額換算が難しいため、RightSupportに関わるコストの回収を最低ラインとし、コスト削減効果を示すようにしています。実態として、シミュレーション時の想定を上回るコスト削減効果が出ています」

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セミナーの最後に、三好氏からは同社の今後の展望について語られました。サポートチャネル最適化の取り組みを進めてきた同社は、今後どのようなことを進める予定なのでしょうか。

三好氏「まずはWebサイトに訪れたお客さまの情報を把握して、FAQを閲覧していないお客さまに限定し、FAQ自動ポップアップ(自己解決促進)を進めました。次のステップとして、Webサイト訪問時のお客さま情報をより効果的に把握する仕組みづくりに取り組んでいます。具体的には、RightSupportで収集した行動データと、弊社CRMに蓄積された顧客データを統合することに挑戦しています。こうした地道な取り組みを重ねていけば、描いたチャネル最適化の戦略に沿って、さらにパーソナライズしたお客さまのサポートが実現できると考えています」

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Webサイトを訪問した際に顧客を把握する仕組みとしては、Webでの行動データやCRMの情報に加えて、初回の問い合わせ時にNPSアンケートを実施していくことを考えている、と三好氏。これによって2回目の問い合わせ時には、必要な顧客情報や課題を把握した上で、問い合わせ価値ランクを判別し、最適なサポートチャネルへと案内できる状態を目指していると語りました。

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本セミナーは最後に三好氏が「事業貢献、品質、生産性の3つをバランスさせ、One to Oneの世界を作り上げていけたら」と語り、締めくくられました。

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