心的資本経営を現場へ。丸亀製麺が「ハピカンダッシュボード」で挑む、内発的動機を刺激するデータ活用|KARTE Friends Meetup vol.42
2026年2月開催「KARTE Friends Meetup vol.42」レポート。丸亀製麺が始動した「心的資本経営」とは?現場の熱量を高める「ハピカンダッシュボード」の実装プロセスから、KPIを超えた「内発的動機」を刺激する体験設計の真髄を探ります。
2026年2月に開催されたKARTE Friends Meetup vol.42には、「丸亀製麺」などを運営する株式会社丸亀製麺の間部 徹さん、齋藤 亜紀さんに登壇いただきました。
丸亀製麺などを運営するトリドールホールディングスでは、2025年9月より新たな経営思想「心的資本経営」を始動。今回のMeetupでは、その経営思想を現場に浸透させるための仕掛けである「ハピカンダッシュボード」にフォーカスしました。 単にKPIデータを可視化するだけでなく、「いかにして現場従業員の内発的動機を刺激するか」に徹底的に向き合った本プロジェクト。共同開発を行ったPLAID ALPHAのメンバーとともに、現場の「体験」を変えるための具体的な実装プロセスについてお話しいただきました。
経営思想「心的資本経営」と「ハピカン繁盛サイクル」
まず前半では、トリドールホールディングスが掲げる新たな経営思想「心的資本経営」の背景が語られました。丸亀製麺は「すべての店で粉から打つ」製麺所にこだわり、効率化だけを追うのではなく、店内のライブ感や人とのコミュニケーションを重視しています。
間部:「私たちのスローガンは『食の感動で、この星を満たせ。』です。オフィスの壁面にも書いてあるのですが、『満たす』じゃなくて行動を喚起する『満たせ』なんです。自分たちで満たしていこうぜ、という私たちの意思表示が込められている非常に魅力的なスローガンだと思っています。この想いを実現するために、私たちは従業員のハピネス(心の状態)とお客様の感動(心の動き)、この二つの『心』を資本として経営していこうという『心的資本経営』を発表しました」

株式会社丸亀製麺 マーケティング本部 エクスペリエンスデザイン部 部長 間部 徹氏
社内では「ハピカン」と呼ばれているこの思想は、従業員の幸せ(ハピネス)がお客様の感動を生み、それがお店の繁盛に繋がる、そして繁盛がまたスタッフに還元されるというサイクルを指します。

ハピカン繁盛サイクル
間部:「このハピカン繁盛サイクルを思想としてだけではなく、数字でも立証しています。内発的動機、つまり『自分たちでこうしたい、ああしたい』という想いをどう引き出すか。そのために設計されたのが今回のダッシュボードです」

「ハピカンダッシュボード」の画面イメージ ※数字はダミーです
現場の「第一次情報」から見えた、真の課題
続いて、この経営思想で重要となるデータを集約・可視化した「ハピカンダッシュボード」の要件整理について、PLAID ALPHAの小國と田原を交えたクロストークが行われました。司会はPLAID ALPHAの永尾が務め、プロジェクトの核心へと迫ります。まず小國は、プロジェクトの始まりは徹底的な現場インタビューだったと振り返ります。
小國:「最初から『こういうダッシュボードを作ろう』と決まっていたわけではありません。まずは間部さんたちと4店舗ほど現場に伺い、店長さんがどう数字を見ているかを観察しました。そこで目にしたのは、店長さんが忙しい業務の合間を縫って自ら会計機まで足を運び、手作業で数字をメモしたり印刷したりしてバックヤードで共有されている姿でした。その負担を少しでも減らしたいと強く感じました」

株式会社プレイド / PLAID ALPHA CX Strategy Team Unit Manager / Senior Manager 小國 晴郎
このような「第一次情報」こそが、要件定義の大きなヒントになったといいます。
間部:「世の中にいわゆるBIツールとしてのダッシュボードはたくさんありますが、私たちが作りたかったのはそういうものではなくて。店長さんといっても、入社したての若い方もいれば、ベテランの方もいらっしゃいます。誰が見ても『面白い、見てみたい』と思える、スマホのサイトを見ているような感覚で、誰が見ても気づきが得られる体験としてのダッシュボードを意識しました」
小國:「単にデータを出す場所を決めることじゃなかったんです。このダッシュボードを使ったスタッフさんがどう動いて、結果的にお客様にどうなってほしいか。そこまで含めた『体験』を変えたいということで、ユースケースの洗い出しには非常に時間をかけました」
UIUXの根源は「優しさ」。アクションを生むデザインのこだわり
デジタルリテラシーへの配慮と、内発的動機を刺激する楽しさ。この両立をデザインでどう落とし込んだのか。齋藤さんは3つのポイントを挙げました。

株式会社丸亀製麺 マーケティング本部 エクスペリエンスデザイン部 齋藤 亜紀氏
齋藤:「1つ目が『内発的動機』をいかに高めるか。ITリテラシーが高い方ばかりではないので、明るく直感的なデザインにこだわりました。また、ネガティブに感じやすい要素を極力入れないことも重視しました。スコアが下がった場合に『悲しい表情』のアイコンを使う例も多いのですが、あえて採用しませんでした。結果が良くなくても、『じゃあ次はどうしよう』と前向きになれる仕組みをプレイドさんと議論して作り込みました。
2つ目が、現場のアクションに落ちる仕組みです。店長さんがAIのアドバイスやスコアを見て、そこに手書きでスタッフへのメッセージを書いて掲示できる『印刷用ビュー』を実装。これにより、ただ数字を見るだけで終わらず、店舗で具体的な行動に繋げられるようにしました。
3つ目は、アクセシビリティへの配慮です。長年働くベテランの方にも目に優しく、かつパッと見た瞬間に理解できる。UIUXの本質はどれだけ人に優しくできるか、だと思っています。『おせっかい接客』を大切にする丸亀製麺だからこそ、その優しさをデジタルでも実現することを目指しました。
KARTE Craftによる高速実装と、現場に生まれる変化
実装面では、KARTEのデータを活用して独自の機能開発が可能になる「KARTE Craft」が大きな役割を果たしました。田原は、デザインの想いを妥協なく形にするための選択だったと語ります。

PLAID ALPHA Digital Experience Team Unit Manager 田原 裕樹
田原:「デザインや皆さんの『想い』を、実装の都合で削らずにそのまま形にする。普通のスクラッチ開発なら1年以上かかるような複雑な構成ですが、KARTEの拡張性を使って数ヶ月というスピード感でローンチできました」
間部:「現場は常に動いています。改善に半年かかっては意味がない。プレイドの皆さんのスピード感があったからこそ、現場の『今』に応えることができました。実際にAIエージェントから『うどーなつの試食会をやってみたら?』というアドバイスがあり、それをきっかけにスタッフ間で会話が生まれ、アクションに繋がっている店舗も出始めています」
また、ローンチ直後から「どの店舗がどのくらい見ているか」をKARTEですぐに計測し、分析と改善のサイクルを回せる体制が整っていることも大きな強みだと思います。現場に深く入り込み、課題の本質を共に見極めてきた小國さんたちPLAID ALPHAの伴走があったからこそ、この短期間で納得感のある形までやり切ることができました。

PLAID ALPHA CX Strategy Team CX Consultant 永尾 美沙
データは「余白」のために。心的資本経営を信じて
最後に、データを使って組織を動かそうとするすべての方へのメッセージとして、間部さんは自身のスタンスを語りました。
間部:「ダッシュボードを通じて何か答えのようなものは言わないようにしています。店舗でお客様と対している皆さんが自分で考えて動く内発的動機こそが重要だからです。データは現場が楽しんで取り組むための余白やきっかけを見つけるためのものだと考えています。この「心的資本経営」という、会社としても進むべき道を信じてやっていく。PLAID ALPHAの皆さんとは、明日もまた現場インタビューに行きますが、現場の一次情報を取り続けながら、このサイクルをさらに強化していきたいと思っています」
小國:「私たちも、納品して終わりではなく、この経営アジェンダに向き合っていきたい。現場インタビューをしている中で、心の繋がりを大事にしている店舗さんにこそ大きな影響を与えているという肌感覚があります。それを数理的に集計して、このアジェンダの解決にダッシュボードが効いているということをしっかり証明していきたいです」

KARTE Friends同士の交流会での情報交換
イベント後半は、バレンタイン仕様の交流会が催されました。銀座オフィスの開放的な空間で、ドリンクやお菓子を片手に、参加したKARTE Friends同士で熱心な情報交換が行われました。


丸亀製麺より特別にご準備いただいた「うどーなつ」をご提供。軽食や飲み物を片手に、Friends同士の深い対話が続きました。

KARTE Friends Meetupでは、KARTE Friends向けに、KARTEの最新機能や実際の活用事例について共有しています。KARTE Friends同士やプレイド社員との交流の機会も設けておりますので、都合が合う際にはぜひお越しください!