会員サイト「MyJCB」で実現するパーソナライズなサポート――JCBが語る、お客様ファーストの体験設計とデータ活用の裏側
JCBは会員サイト「MyJCB」にWebサポート基盤「QANT Web」を導入し、お客様一人ひとりに最適化されたサポート体験を実現。導入前はFAQで自己解決支援を強化し、状況選択型UIにより満足度が大幅向上、約44%が自己解決に至ったほか、Web手続きへの移行も促進しました。本格導入では「CSをマーケより優先」とする方針のもと体験設計を再構築。導入後は顧客データを活用し、案内の出し分けや迅速な手続き導線により利便性向上と問い合わせ削減を両立しています。
2025年11月、「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2025」が開催されました。本稿では、RightTouchのセッションに登壇した株式会社ジェーシービー(以下、JCB)の講演内容をお届けします。
登壇したのは、JCBメディアデザイン部 コンタクトチャネルG次長の見谷 舞氏です。同社では、RightTouchのWebサポートプラットフォーム「QANT Web」を会員専用Webサービス「MyJCB」に本格導入し、お客様一人ひとりに寄り添うサポート体験の構築を進めています。
JCBが抱えていた課題認識から具体的な施策、そしてAI時代を見据えた今後の展望まで、セッションで語られた内容を時系列でお伝えします。
「お客様の状況を絞り込んで最適解に誘導」――MyJCB導入前のFAQサイトでの挑戦
JCBはお客様との接点の中心である会員専用Webサービス「MyJCB」の体験価値向上に取り組んでいます。JCBは2022年度にQANT Webのトライアル導入を開始し、2025年度には満を持して「MyJCB」への本格導入を実現しました。
本格導入以前、JCBはまずFAQサイトでQANT Webを活用し、費用対効果の検証を行いました。セッションでは、その代表的な2つの施策が紹介されました。

(株式会社ジェーシービー メディアデザイン部 コンタクトチャネルG次長 見谷 舞氏)
1つ目は、「カードが利用できない」という、原因が多岐にわたり自己解決が難しい問い合わせへの対応です。利用できない状況は、店舗でのショッピングなのか、オンラインなのか、あるいはキャッシングなのか、お客様によってさまざまです。
これに対しJCBは、フローティング型のUI(画面に浮かぶように表示される操作パネル)を設置。お客様自身がWeb上でご自身の状況を選択していくことで、原因を絞り込み、最適な解決策へ誘導するシナリオを設計しました。
見谷氏によると、この施策の結果フローティングUIのお客様満足度は36.4%を記録。これは従来のFAQページでお客様自身で課題解決を行うことと比較して28ポイントも高い数値でした。さらに、電話での問い合わせが必要となるケースは56%にとどまり、44%が自己解決できていると、高い成果を強調しました。

2つ目の施策は、「カードの紛失・盗難」に関するものです。
本施策の検討にあたり、「カード紛失・盗難」の問い合わせの裏側には、お客様にとって「一刻も早くカードを停止したい」という強い動機があるのではないか、という仮説を立てました。この仮説に基づくと、お客様の目的は“電話をかけること”ではなく、“カードをすぐに停止すること”であり、その観点では電話よりもMyJCB上での手続きの方が、より迅速に目的を達成できる可能性があります。
そこで、FAQサイトに記載された電話番号をタップしたタイミングで、「MyJCBなら最短2分で手続きが完了します」というメッセージを表示し、Web手続きの利便性を訴求しました。あえて電話を選択しようとしているお客様に対しても、より早く目的を達成できる手段を提示する設計としています。
その結果、電話ニーズのあるお客様のうち22.4%がMyJCBでの手続きを選択しました。お客様の本質的な目的に着目し、体験を再設計することで行動変容につながった好例といえます。

社内優先度「CS(Customer Support)>マーケ」の明確化――MyJCBへの本格導入を支えた3つの方針
FAQサイトでの成果を経て、JCBはQANT WebのMyJCBへの本格導入を決定します。しかし、その背景には乗り越えるべき課題がありました。
当時のサポートは、メールでのコミュニケーションが中心で、さらに、MyJCBの目立つ場所はマーケティング施策による情報発信が優先されており、お客様起点のサポートが実現しにくい構造となっていました。
一方で、お客様から見れば、マーケティング施策もカスタマーサポートの施策も、すべて「JCBからのコミュニケーション」です。しかし実態としては、それぞれが個別に設計・運用されており、統一された体験にはなっていませんでした。
こうした状況を踏まえ、お客様体験の観点からコミュニケーション全体を捉え直し、優先順位をつけながら統制の取れた設計へと再構築していくことが、大きな課題となっていました。

この状況を打開するため、JCBはマーケティング部門と協業し、3つの方針を掲げました。
・ Web接客システムの刷新
・ 社内の優先順位
・ 持続可能な枠組みの構築
1つ目は、マーケティング部門が保有するデータとシームレスに連携でき、高度なシナリオ型提案が可能なシステムへの刷新です。2つ目は、社内での優先順位について、「どちらも重要だが、優先すべきは『CS』」という合意形成です。そして3つ目は、一部の部署だけでなく全社が参画し、各部署の強みを生かせる持続可能な枠組みの構築でした。
見谷氏は、特に社内の優先順位の明確化について、この方針転換がパーソナライズサポート実現の礎になったことを強調しました。

データが導くパーソナライズ体験――MyJCBへのQANT Web導入後の具体的な施策と成果
MyJCBへのQANT Webの本格導入後、JCBはデータ活用によるパーソナライズ施策を次々と展開していきます。
サポートページでは、ログインしているお客様のカード券種(一般、ゴールド、JCBザ・クラスなど)を判別し、表示する問い合わせ先の電話番号を自動で出し分ける仕組みを実装。これにより、お客様は自身のステータスに適した専用デスクへスムーズにアクセスできるようになりました。


マーケティング部門と連携した施策では、目覚ましい成果が報告されました。たとえば、クラス会員向けのメタルカード申し込みページでは、当初、途中離脱の多さが課題でした。分析の結果、お客様が抱くであろう疑問点をFAQとしてページ内に表示したところ、申込完了率は69.2%も改善したといいます。
また、入会時に口座が未設定の会員へポップアップで設定を促す施策では、口座設定率が15.3%改善しました。
今後の自己解決チャネルの方向性としてのナレッジの共通化
これらの施策の成果は、事業インパクトとしても着実に表れています。2025年5月の導入から約4か月で25本の施策をリリースし、短期間で継続的に打ち手を展開。上期時点で粗利貢献額は数千万円となり、当初の計画の達成が見込まれるなど、順調な立ち上がりを実現しています。
また、呼量削減においても継続的な効果が確認されており、コスト最適化とお客様体験の向上を両立する取り組みとして、確かな手応えを得ています。

この高速PDCAサイクルを支えているのが、QANT Webの「ノーコード」という特性です。開発コストや期間をかけずに施策を実装し、すぐに効果を測定して改善できるため、従来は数百万円の投資が必要だった改修も、社員の工数さえ確保できれば実行可能になりました。
その結果、業務部門やマーケティング部門など、部門の垣根を越えて施策の実施要望が多数寄せられるようになりました。経営層からもQANT Webの活用が各所で聞かれるようになり、全社的な取り組みへと進化している様子が語られました。

セッションの終盤、見谷氏は生成AIの急速な普及を踏まえ、今後の自己解決チャネルの方向性について言及しました。JCBが描く未来像は、各チャネルの役割を再定義し、ナレッジを共通化することです。
下記4つの観点でQANTシリーズを活用しながらお客様体験向上と業務効率化を図っていきます。
・ FAQ:各社AIの検索元として、コンテンツの充実を継続。
・ BOT:現在のルールベース型から、生成AIを活用した自由対話型へ移行を検討。
・ QANT:MyJCB内でさらに活用を拡大し、自己解決率向上を目指す。
・ ナレッジ:FAQ、BOT、QANT、そしてオペレーター向けマニュアルで重複しているナレッジをデータベースで一元管理し、効率化を図る。
最終的な目標として、見谷氏は本人特定が完了しているMyJCB内で「テキストで電話レベルの応対を目指す」という壮大なビジョンを掲げました。
