SchooがKARTEで挑む、toC・toB一気通貫のCX改善──4部門横断で実践する学びの体験設計
「自発的な学び」をどうデザインするか。9,000本以上の授業を持つSchooが、KARTEを共通基盤にプロダクト、マーケ、CSなど4部門横断で取り組むCX改善の裏側。toC・toBそれぞれの体験設計の極意に迫ります。
「世の中から卒業をなくす」をミッションに掲げ、オンライン学習サービス「Schoo」を運営する株式会社Schoo(以下スクー)。9,000本以上の授業を擁する同サービスが向き合う最大の課題は、「自発的に学び続けてもらう」ことの難しさです。
個人ユーザーには膨大なコンテンツの中から「自分に合う学び」を見つけてもらい、法人の管理者には自社の社員に学習を浸透させる力を持ってもらう。この二つの体験を同時に磨くために、スクーではプロダクト開発・マーケティング・コンテンツ・カスタマーサクセスの4部門がCXプラットフォーム「KARTE」を共通基盤に据え、部門横断でのCX改善に取り組んでいます。
同社のプロダクトデザイナー・中村 佳保さんと、法人カスタマーサクセスの工藤 成実さんに、toC・toBそれぞれの体験設計の裏側を伺いました。
スクーが向き合う「一生、学び続ける」ための高い壁
まず、お二人のご所属と普段の業務について教えてください。
中村:プロダクトデザインユニットに所属しています。Schooの利用者がアクセスする画面のUIやUXの設計を担当していて、利用を促進するための施策の企画・実行に取り組んでいます。
工藤:CS(カスタマーサクセス)のチームに所属しています。オンライン動画研修プラットフォーム「Schoo for Business」をご導入いただいている企業の管理者の方に、どうしたらもっとサービスを活用していただけるか、ポータルサイトの運営やTips記事の作成などを通じてサポートしています。
スクーとして、ユーザーにどのような学習体験を届けていきたいと考えていますか?
中村:弊社のミッションは「世の中から卒業をなくす」です。一人ひとりが社会人として過ごしていくなかでわからないことに出会ったとき、学びの選択肢を届けてサポートし、可能性を広げていくことを目指しています。
ただ、学習というのはどうしてもハードルが高いものです。「頑張らなきゃいけない」という気持ちが先行しがちなので、そのなかでも楽しみながら発見が生まれるようなサービスにしていきたいと考えています。
工藤:ミッションである「世の中から卒業をなくす」は、「Schoo for Business」においても常に念頭に置いています。ただ、法人の場合は「学びたい個人」だけでなく、「社員に学んでほしい管理者」の視点も加わります。
管理者の方は、「導入したからには社員にしっかり使ってほしい」という切実な思いを持っています。一方で、社員の方は日々の業務で忙しく、なぜ学ぶ必要があるのか腹落ちしきっていないことも珍しくありません。
そうしたギャップを埋め、管理者の方が無理なく社内の学習を推進できるよう、サービス活用の「自走」をサポートすること。一人ひとりの学びが当たり前になり、それが組織の力になっていく状態を目指すのが、法人カスタマーサクセスの役割だと考えています。

「北風ではなく南風」というアプローチが社内にあると伺いました。
工藤:はい。学習を促進するための働きかけ方について、社内では「北風ではなく南風のアプローチを大切にしよう」とよく言っています。
北風と太陽ではないんですね。
工藤:そうですね(笑)。太陽の暑さに耐えかねて……というのもちょっと違うので、社内では南風という言葉を使っています。「やらないとダメ」という強制ではなく、「これを知ったらもっと面白いことができるかも」と自ら一歩を踏み出してもらえるように、背中を押すような働きかけを意識しています。
そうしたミッションを実現するうえで、どのような課題がありましたか。

プロダクトデザインユニット 中村 佳保さん
中村:施策としてやりたいことはあっても、対応できるエンジニアの工数が限られていて、UI改善や各種施策は後回しにされがちでした。運用保守やバックエンド開発のほうが優先される構造があって、CXを改善するための施策はなかなか実行に移せないもどかしさがありました。そこでKARTEを共通基盤として導入したことで、現在はエンジニアの開発工数を待たずに自分たちで施策を実行できる環境が整っています。
個人ユーザーの「迷い」を払拭し、自然な「学び」のサイクルを作る
まず、個人ユーザー向けの体験改善についてお聞きします。Schooは9,000本以上の授業を揃えていますが、コンテンツが多いゆえの課題もあったのでしょうか。
中村:はい。多種多様なコンテンツを揃えていることはSchooの強みですが、「自分に合った授業をもっとスムーズに見つけたい」」という声も寄せられていました。実際に、授業を検索しても思うような結果が得られないことや、カテゴリから探すにも手間がかかるといった課題がありました。
好奇心旺盛なユーザーは自ら学習を進めていくのですが、大半のユーザーは外発的なきっかけがないと動けないのが実情です。自発的に学ぶとなるとハードルが上がる。そうした方々に対して、強制力を持たずにどう一歩を踏み出してもらうかは長年向き合い続けてきた課題です。
その課題に対して、どのようなアプローチを取りましたか。
中村:大きく二つの施策に取り組みました。一つは授業検索AIアシスタント、もう一つはトップページのカルーセルです。
授業検索AIアシスタントとはどのような取り組みでしょうか。
中村:9,000本以上のコンテンツがあるなかで、伸ばしたいスキルや学びたいことを入力するだけで、二択か三択くらいで個人に合った最適な授業が提案されるようにしたいと考えました。AIアプリケーション開発プラットフォーム「Dify」でバックエンドの仕組みを作り、KARTEと組み合わせて配信する形です。この施策もエンジニアの開発工数はゼロで、1か月ほどで実装まで進めることができました。

授業検索AIアシスタントのイメージ
リリース後のユーザーの反応や手応えはいかがでしたか。
中村:利用数としてはまだこれからで、「もっと使われてほしい」というのが本音です。ただ、実際に使ってくださっているユーザーがどのような言葉を入力しているかというデータには、非常に興味深いものが蓄積されています。
これは、従来のサイト内検索やアンケートでは見えてこなかった「ユーザーの生の悩み」が可視化されているということであり、今後の授業コンテンツを企画する上でも貴重な情報源になると考えています。現在は、この機能をより多くの方に届けるために、A/BテストでUIを最適化したり、コーチマークの表示で存在を知らせたりと、認知向上のための施策を強化しているところです。
カルーセル施策についても教えてください。どのような狙いがあったのでしょうか。
中村:世の中のトレンドや受講者の関心に合わせて、「いま、必要な情報に迷わずアクセスできる環境」を届けたいという思いがありました。
具体的には、ログイン後のトップページにカルーセルを新設し、旬な授業やテーマを提案する仕組みを構築しました。この施策はエンジニアの開発工数ゼロで実現できました。KARTEを使ってカルーセルをテンプレート化しているので、コンテンツの差し替えも即座に対応できます。マーケティングやCSのチームからもコンテンツ掲載の企画が上がる体制になっていて、部門をまたいで「ユーザーに届けたいもの」をすぐに形にできるようになったのは大きな変化だと感じています。

カルーセル施策のイメージ
実際に運用を始めてみて、ユーザーの動きに何か変化はありましたか?
中村:カルーセルで表示した授業の受講率が上がりました。運用を続けるなかでどんなコンテンツがユーザーの関心を引くのかが見えてきて、月を追うごとにクリック率も向上しています。
さらに、クリックした後に実際に受講画面まで到達しているかどうかも追跡しています。単にクリック数だけではなく、受講という最終ゴールまでの一連の行動を可視化することで、コンテンツの改善ポイントや「勝ちパターン」が見えてくるようになりました。
実際にユーザーの動きを見ることで、先ほどおっしゃっていた「迷い」の正体が見えてきた部分はありますか?
中村:ありました。たとえば、KARTE Liveで受講までの動線を観察していると、コース詳細画面で離脱するユーザーが一定数いることがわかりました。他の動画サービスと比べて受講画面に到達するまでに1ステップ多く、ユーザーの判断に迷いを生んでいるのではないかという仮説を持ちました。実際にユーザーが迷っている様子が見えることで仮説の強度が上がり、導線を短縮する施策に優先的に取り組めるようになっています。
Schoo for Business管理者の「自走」を支援し、組織の学びを加速させる
ここからは法人向けの体験改善について伺います。Schoo for Businessの管理者からは、活用にあたってどのような悩みの声が上がっていたのでしょうか。

カスタマーサクセス第2ユニット 工藤 成実さん
工藤:先ほどお話しした「社員に学ぶ必要性を納得してもらいたい」という課題はもちろんですが、実はその手前に、管理者の方自身も「どうすれば自社に合った学びの環境を作れるのかわからない」という、運用の手間やノウハウの課題を抱えていらっしゃいました。管理ツールにログインしても、どこを見たらいいか、設定の仕方がわからないという方が多かったのです。
FAQで機能的な質問には対応していましたが、専任担当者が手厚くサポートする「ハイタッチ」での支援ができていないお客様に対して、能動的なサポートが十分にできていませんでした。管理者の方が孤独に悩まず、自走して社内の学びを盛り上げられるようにしていくこと。それが当時の大きな課題でした。
その課題に対して、どのような取り組みをされましたか。
工藤:大きく二つあります。一つは管理者向けポータルサイトの構築、もう一つはログイン頻度や活用状況に応じたテックタッチによるナビゲーションの自動化です。
管理者が「自走」できる状態を目指すために、まずポータルサイトという形を選んだのはなぜでしょうか。
工藤:管理者の方が「次に何をすればいいか」を自分で見つけられるようにするためです。Tips記事や活用事例、おすすめの研修設定方法など、管理者が自走するために必要な情報を集約した場所を新たに用意しました。
ポータルサイトの設計段階から、開設後の集客や情報の出し分けまでを見据えてサイトを構築しました。「サイトをつくって終わり」ではなく、管理者一人ひとりの状況に応じた情報提供ができる仕組みをあらかじめ組み込んだことが、大きなポイントでした。

ポータルサイトのイメージ
管理者の方々の「自走」に向けた動きに変化はありましたか?
工藤:ポータルサイトは公開から半年ほどで、全管理者の約4割、契約企業の約3分の1が訪問するまでに成長しました。
単にサイトを置くだけではなく、メールのタイトル別の開封率やクリック率から「今、どのお客様が何に困っているか」という興味領域を特定し、KARTEでポップアップの出し分けを最適化していった結果だと捉えています。
この仕組みによって、私たちが直接お話しできない時間も、ポータルサイトが管理者の隣で「次に何をすべきか」をガイドしてくれる状態が作れました。数値以上に、お客様が迷わずに一歩を踏み出せる「自走のサイクル」が回り始めたことに、大きな手応えを感じています。
「ナビゲーションの自動化」によって、具体的にどのようなサポートが可能になったのでしょうか。
工藤:管理者の方一人ひとりの状況に合わせた、一歩先のアドバイスを自動で届けられるようになりました。
たとえば、ポータルサイトをまだご存じない方にはサイト内の活用記事をご案内したり、専任担当者がついていないお客様には「おすすめの研修設定ページ」へ誘導するポップアップを表示したりといった形です。KARTE Messageによるメールとポップアップを組み合わせることで、私たちが直接介在せずとも、お客様が自分の力で施策を進められる「自走の仕組み」が整ってきました。
運用側の体制としても、大きな変化があったようですね。
工藤:はい。実はこれらの一連の施策は、基本的に私一人で担当しています。データの分析からコンテンツ制作、配信設定まで、PDCAサイクルを自分たちだけでスピーディーに回せるようになりました。 その結果、以前は「ハイタッチ(対面)」でしか届けられなかった質の高いサポートを、今はより多くのお客様へ同時に届けられるようになっています。
部門を越えた「まずKARTEでやってみる」という意識の変化
部門横断でCX改善に取り組むなかで、組織としてどのような変化がありましたか。
中村:一番大きいのは、「まずKARTEでやってみる」という選択肢が当たり前になったことです。プロダクト開発のブレストで改善アイデアを出すと、「これはKARTEでできるんじゃないか」という声が自然と出るようになりました。
ブレストの時点で選択肢が広がったのは大きな変化です。KARTEで先に検証した結果があるので、本番実装が必要になったときにもエビデンスを提示でき、開発側の意思決定に対して優先度を上げてもらいやすくなっています。
部門間ではどのようなコミュニケーションを大切にしているのでしょうか。
工藤:土台になっているのは、週次の部門横断定例ミーティングと、Slackのチャンネルです。定例ミーティングではKARTE施策の結果を共有し、アジェンダがないときには各部門の課題感や今後やりたいことをフラットに話し合う時間を設けています。この仕組みが、部門を越えたアイデアの発案と実行を後押ししています。
toCの取り組みとtoBの取り組みが、相互につながることはありますか。
中村:はい。実際に、CSから生まれたアイデアがプロダクト改善につながったエピソードがあります。たとえば、CS部門から「Schooに30分の短尺授業もあることをもっと訴求できないか」というアイデアが出て、コンテンツ部門が授業の選定を担当し、プロダクト部門でバナーやカルーセルの実装を行いました。行動チェーン分析でクリック後に実際に受講まで至っているかを検証したところ、短尺コンテンツの訴求が有効だと確認が取れました。こうした部門をまたいだ連携が、今では特別な調整を挟むことなく自然に生まれるようになっています。
工藤:CS側からすると、お客様の声をもとにしたアイデアが素早く形になり、結果まで見えるというサイクルが回るようになったのが大きな変化です。以前は要望をいただいても対応に時間がかかっていましたが、今は『やってみました』とお客様にすぐにご連絡できるスピード感が出てきています。

部門間の連携がうまくいっている理由はどこにあると感じますか。
中村:私たちがこうした部門を越えた動きができるのは、まず根底に「世の中から卒業をなくす」というミッションが、全社員の共通認識として深く浸透しているからだと思います。
ただ、それだけではなく、各部門が抱える課題を本質的に掘り下げていくと、目指すべきゴールが自然と一致していきました。
たとえば、toB領域を担うCSとしては、「いかにお客様の組織内でSchooを定着させ、学びの文化を育てていくか」が最大のテーマです。しかし、その歩みを阻む要因を突き詰めると、結局は「受講者がサービスを使いこなせていない」という、toCにも共通する課題に辿り着きます。これは、プロダクト部門が追っている「利用率の向上」という指標と、本質的に全く同じものなんですよね。
それぞれの部門がプロとして「お客様の体験」に真摯に向き合った結果、お互いのミッションが重なり合い、自然と同じ方向を向いて連携できる体制が整っていきました。
施策の「点」をつなぎ、学びを習慣化させる「線の体験」へ
ユーザーや管理者の皆さんの「学び」が、今後どのような形になって欲しいですか。
中村: これまでは、特定の機能を使いやすくするといった「点」の改善が中心でした。今後はそれらが自然に溶け込み、ユーザーの皆さんが無理なく歩みを進められるような「線の体験」に育てていきたいと考えています。
そのために、もっと深く一人ひとりの受講者を知るための分析に力を入れたいですね。数字の先にある具体的な行動や背景を丁寧に読み解くことで、より確信を持って今、この方に必要な一歩を提案できるようになりたい。そうした小さな積み重ねが、結果として迷いのない学習体験に繋がると信じています。
工藤: CSとしても、一つひとつの施策を単発で終わらせるのではなく、それらがつながった「一貫したストーリー」として管理者の皆さんに届く状態を目指しています。
せっかく良い成果が出ている施策も、点在しているだけではお客様の本当の支えになりきれません。導入から活用、そして組織の文化として根付くまでのプロセスを一つの「線」として捉え、どんな時でもSchooが隣で伴走していると感じていただけるような。そんな、お客様の日常に寄り添い続けるサポートの形を追求していきたいです。
最後に、Schooとして目指す「学びのプラットフォーム」の姿を教えてください。
中村:ユーザーが「学ばなきゃ」ではなく、「学びたい」と自然に思えるサービスでありたいですね。そのためには、ログインした瞬間から「自分に合った学び」に出会える導線設計が不可欠です。KARTEのようなツールを活かしながら、点の施策を線の体験へとつなげていく。スクーが目指す「世の中から卒業をなくす」を、体験として実現していきたいと考えています。
工藤:管理者の方が自走でき、受講者の方が自発的に学び続けられる。その両輪が回ることで、組織の学びの文化が根付いていくと思っています。Schoo for Businessを導入してよかったと思っていただけるよう、KARTEの助けを借りながら、一人ひとりの「学びの旅路」に寄り添い続けたいですね。