「まずKARTEで見てみよう」が社内で自然と起きるように。坂ノ途中が、戦略の中心に顧客理解を置けるようになるまで
坂ノ途中は「100年先もつづく、農業を。」を掲げ、環境への負荷の小さい農業の普及を目指しています。ECサイトにKARTEを導入し、KARTEでの顧客理解がサイトを含めた顧客接点での改善の起点に置かれ、自信を持って事業上での判断ができるようになったと話します。1年間の活用を経ての成果や、KARTEによって得られた気づきなどをお伺いしました。
坂ノ途中は「100年先もつづく、農業を。」を掲げ、環境への負荷の小さい農業の普及を目指しています。そうした農法で育てられた季節の野菜を、オンラインショップや京都の店舗(坂ノ途中Soil)、百貨店などで販売しています。
坂ノ途中がKARTEを導入して約1年。KARTEでの顧客理解がサイトを含めた顧客接点での改善の起点に置かれ、自信を持って事業上での判断ができるようになったと話します。坂ノ途中のEC事業部マネージャー田畑 活水さんと、EC事業部マーケティング担当丸山 真穂さんに、KARTEの活用方法や改善についてお伺いしました。
エンジニアの手を借りず、マーケティングチームだけで施策を実施できるようになった
はじめに、貴社のミッションや事業内容について教えてください。
田畑:私たちのミッションは、環境負荷の小さな農法で育てられた野菜が流通する仕組みをつくり、持続可能な農業を実現することです。パートナーは主に、新しく農業をはじめた新規就農者さんや、若手農家さん。そうした方たちには、農薬や化学肥料への依存度を減らした有機農業や、気候や土質に合った栽培スタイルに挑戦している方が多いのです。
ただ、小規模な農家さんが多く、収穫量が少量不安定になりがちなため、一般の流通では扱われにくい。だから私たちは、オンラインショップや店舗などで彼らの野菜を販売し、持続可能な農業に取り組む人たちが営農を続けられる環境をつくりたいと考えています。
実際に、野菜を購入するお客さまからは「新しい野菜との出会いがある」「坂ノ途中の野菜は本当に美味しい」という声をいただいています。新規就農者が丁寧に育てた野菜を、その背景にあるストーリーとともに旬のタイミングでお届けできることが強み だと考えています。
定期便のサンプル
日常的な業務ではどのようなことを大切にされていますか?
丸山:お届けする野菜セットには、店頭ではなかなか見かけない少し珍しいものが入っていることがあります。また、セットの内容は私たちが季節を感じられる野菜を選んで組み合わせているので、お客さまご自身で選んでいただくことはできません。野菜を使いこなせるかとお客さまが不安に感じられることがあるのではと考えています。そのため、オンライン上でもカスタマーサポート(お客さま窓口)でも、言葉にこだわり、きちんと説明することを大切にしています。
例えば、野菜には春と秋に端境期(はざかいき)という、野菜のバリエーションがどうしても少なくなってしまう時期があります。この時期の定期便は似通った内容が続いてしまうことがあるため、お客さまが不安や疑問を持たれないよう、理由を説明した上でお届けしています。
お客さまから野菜の見た目が良くないという問い合わせがあったときも、農家さんと生育状況に問題がなかったか、天候の影響なのか等を話し合い、ひとつひとつ丁寧にご回答するようにしています。
丸山:また、お客さまに野菜を美味しく食べていただけるよう、レシピや保存方法についてのコンテンツも丁寧につくっています。
KARTE導入時の課題感を教えていただけますか?
丸山:そのようにたくさんコンテンツをつくっても、見てもらえなければ意味がありません。見てもらうためには、たくさんあるコンテンツのなかから お客さま一人ひとりに必要なコンテンツを適切なタイミングで届けることが大切 だと考えていました。
しかしながら、エンジニアの人数や工数は限られているので、細かい調整をスピーディーに進めていくのは難しい と感じていました。KARTEでは、簡単に柔軟に施策を実施できる点が魅力的だった ので、導入しました。
実際にどのような施策を実施しているのでしょうか?
丸山:特定の食材が使われているレシピを見ている方にその食材の販売開始タイミングでお知らせしたり、特定の商品に興味のありそうな方にだけその商品にまつわるストーリーに関するコンテンツを表示したりしています。
▲ 検索結果が0の際に他の商品をおすすめ他には、定期宅配利用者のみが利用するマイページの新機能を必要な方だけにお伝えすることも、これまではエンジニアによる開発が必要でしたが、自分たちの手で完結できるようになりました。
田畑:まさに、私たちが実現したかった「坂ノ途中の商品がもつストーリーやコンテンツを適切なタイミングで伝えること」ができていますね。
他にも、例えば新たな機能を追加するかの議論が出たときに、エンジニアからも「KARTEで実装できない?」と声があがります。施策だけでなく、開発の選択肢にもKARTEは入ってきている ので、今もしKARTEがなくなったら選択肢がだいぶ狭まってしまいます(笑)。
お客さまの行動がわかったことで、事業方針が変更に
KARTE導入時の目的である、コミュニケーション施策の実施は達成された上で、当時と異なった目的である「顧客理解」での活用が現在はメインとお聞きしました。
丸山:はじめは簡単に施策が実施できる点に重きを置いて活用していたのですが、使い始めてみるとお客さまを知るための機能が充実していて、KARTEは私たちの業務のなかで必要不可欠なものになりました。
坂ノ途中はもともと、一人ひとりのお客さまと向き合うことを大切にしてきました。お問い合わせのひとつの声をきっかけに、社内で議論を重ねガラッと方針転換することも。その積み重ねがお客さまの体験をよくすることにもつながっていると思っています。
オンラインショップでは、これまでサイトの全体数値を元にした仮説でしか議論ができていませんでしたが、KARTE導入後はお客さまのサイト上の実際の行動を元にして、お客さまに近い目線から仮説をたてて議論し、改善につなげることができています。
田畑:仮説が生まれたら「まずKARTEで見てみよう」が自然と起きるようになりました。 お客さまと近い目線に立てることで、「これって課題かも?」というふんわりした状態から、「ここは解決すべき課題だね」と、自信を持って動けるようになりましたね。
今では当初のアクションツールの目的だけでなく、お客さまを正しく理解できる手段 として、KARTEがサービス運営の中心に据えられています。
実際にKARTEで得た気付きからどんな変化がありましたか?
田畑:解約導線の改善に関する気づきは大きかったですね。元々解約についての情報がサイト上でまとまっておらず、お客さまが迷いやすいのではないかという仮説を持っていました。そこで、解約をしたお客さまの行動をKARTE Liveで見てみると、色々なページを行ったり来たりして時間をかけながら、解約についての情報を見つけていた方が何人もいたんです。施策を行うだけではなく、サイト自体を変えないといけないと思いました。
解約導線をわかりやすくすると解約するお客さまが増え、ビジネス上はネガティブな影響を受ける可能性があります。ですが、解約しにくいネガティブな体験をすると、再開したいという気持ちを削ぐことにもなるのではないかと考えています。解約体験をいかに充実させてその先につなげるかを重視して改善をすることにしました。
改善後の導線。【定期宅配の設定を変更する】に「お届けの停止」の文言を追加し、マイページから解約ページまでの導線を明確にした
丸山:お客さまから「支払い方法を変更したいが、サイト上ではわからない」と問い合わせがあったときにもKARTEが活躍しました。今までは問い合わせに対し、スタッフがその場で対応して解決するということを繰り返していましたが、KARTE Liveで他にも同じように困っている人を探して問い合わせが起きる原因を把握し、仮説を精緻にしてからサイト改善に取り組めています。このように、お客さまから問い合わせがあったときに、KARTE Liveをちょっと見てみようといった行動が自然と生まれるようになりました。
KARTE Liveに関しては、数値で見たら「1PV」であっても、そのお客さまがスムーズに活用できていたり迷っていそうだったりと、1つの行動から様々な気づきが得られることを実感しています。 動画をURLひとつで共有し、複数人で見ることができるので、エンジニアにもお客さまがサイト上で迷っている様子を見てもらいました。メンバーが自信を持って改修に向けて動くことができていますね。
KARTEならではのデータを活用したケースもありますか?
田畑:以前から、お客さま窓口へ問い合わせをした方は対応の良さを感じてくださり、結果として解約率が低くなっているのではないかという仮説を立てていました。そこで、行動チェーン(※)で問い合わせをしたことのある方・ない方の解約率を比較したところ、3倍以上の差があり、問い合わせした方は解約率が低いことがわかりました。
それまではカスタマーサポートは「窓口への問い合わせを減らす」方法を中心に考えていましたが、加えて「お客さまとのコミュニケーションをどのように適切に増やしていくか」を考えることにしました。そのひとつとして、KARTEのウェブチャットでも問い合わせを受け付けるように体制を整えています。
(※注釈)行動チェーン(β)は、顧客に発生する複数ステップの行動をひとつの流れとして定義して、その行動に到達したユーザーの量と該当者を表示できる機能。これによって、ボトルネック箇所を特定し、該当ユーザーの行動を分析することができる
社内全体に広がる“顧客理解” を中心とした事業活動
顧客理解の面でも価値を感じていただけていることがわかりました。
田畑:そうですね、今は 「顧客理解をどんどん深めていけること」がKARTEの大きな価値 だと感じています。KARTEを使う前までは、自分たちの感覚で「こういうところが使いづらいんじゃないかな?」と思っていることが、本当にお客さまもそう感じているかがわからず、行動に移すことができていなかったんです。
ひとつの理由として、自分たちは自社のサイトをずっと使っているので操作に慣れてしまい、使いにくいところがわからなくなっていました。感覚的に持っている疑問に対して、KARTEでお客さまの実際の行動を見ることで、本当にお客さまが困っていることだと確信を得られていますね。
例えば、実際の動きから読んでいるスピードもわかるので、特定のページをお客さまはどのように読んでいるのか、そもそも本当に読んでいるかなどを知ることができています。
最後に、今後KARTEをどのように活用していきたいか教えてください。
田畑:今は主に直接的にお客さまとの接点がある部署のメンバーがKARTEを活用していますが、生産者さんと接点を持っているメンバーにもKARTEを見てもらうことで、より 事業全体が顧客理解を起点に動けるようになるのではないか と思っています。
また、将来的には坂ノ途中のパートナーである生産者さんを含めたコミュニティーを作り、坂ノ途中の存在をより身近に感じてくださる方を増やす取り組みも進めたいですね。そのために、例えばKARTEのチャットも活用して直接的な接点を増やすことで、より多くの人に「坂ノ途中らしさ」を感じてもらうことが大切なのではないかと考えています。
丸山:私もお客さまと坂ノ途中の距離を近づけていきたいと思っています。コンテンツや商品に対するお客さまの反応や感想をスピーディに知り、仮説を次々と立てて実行していくことが大事だと捉えています。そのためにはまずは一人ひとりの行動を見たり理解する必要があります。引き続きKARTE Liveやユーザーストーリーをもっと活用していきたいです。