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もっと早く柔軟に、顧客視点の金融サービスを。保険クラウドInspireとKARTEがつくりたい体験価値

2021年3月「新たな金融サービスをつくる」を支援するFinatextホールディングスと、データから顧客を理解し、状況や文脈に合わせたサポートで「一人ひとりに合った体験を届ける」に貢献するプレイドが協業。CXプラットフォーム「KARTE」と保険クラウド「Inspire」の連携をスタートします。今回の連携によって何が実現できるのか、2社が金融業界における顧客に届けたい価値や今後の展望について、Finatextグループの保険事業責任者である河端一寛氏、プレイドで金融領域をリードする金田拓也に聞きました。

顧客にとって機能や手続きが複雑になりやすい金融サービス。多くの事業者が、顧客のニーズや目的に沿ったサービスを実現しようと取り組んでいますが、レガシーな基幹システムや複雑なビジネスモデルなど、いくつものハードルがあります。

そうした課題の解消に向け、2021年3月「新たな金融サービスをつくる」を支援するFinatextホールディングスと、データから顧客を理解し、状況や文脈に合わせたサポートで「一人ひとりに合った体験を届ける」に貢献するプレイドが協業。CXプラットフォーム「KARTE」と保険クラウド「Inspire」の連携をスタートします。保険領域において、より顧客視点に立ったサービス開発・運営を支援します。

今回の連携によって何が実現できるのか、2社が金融業界における顧客に届けたい価値や今後の展望について、Finatextグループの保険事業責任者である河端一寛氏、プレイドで金融領域をリードする金田拓也に聞きました。

金融サービスをつくるうえでのハードルと顧客を知る価値

連携の前提として、まずはFinatextの事業内容について教えてください。

河端:私たちは“金融サービスENABLER”を自称しています。金融機関並びに金融サービスに参入したいすべての非金融事業者を支援する、つまりイネーブルすることを目的に、事業者向けの企画・開発支援、クラウドサービスの提供を行ってきました。

テクノロジーを用いて、レガシーな基幹システムなどの壁を取り払い、柔軟かつスピーディーな金融サービスの提供を可能にするのが、私たちの目指すところです。

保険クラウド「Inspire」はどのようなサービスなのでしょうか?

河端:Inspireは、さまざまな保険商品を、Webサイトやアプリなどオンラインで簡単に販売できるクラウドサービスです。事業者は、新しい保険商品の登録や契約の受付、保険金の請求受付までオンラインで簡単に行うことができます。

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従来のシステムでは、新たな保険商品を登録して顧客へ提供するまで、だいたい2、3年ほどかかっていました。仮に大手ベンダーへ依頼した場合、数億円の予算が必要です。年単位の時間と億単位の予算、どちらにも見合う案件を絞り込むとなると、どうしても既存製品のマイナーアップデートが選ばれやすく、新たな商品や売り方のトライ・アンド・エラーは重ねづらい。

Inspireを活用すれば数週間・数百万円から、オンラインで新たな商品やサービス、売り方のトライができ、リリース後も顧客の反応を確かめながら継続的な改善を行えます。 そうした顧客視点のPDCAが回り、より多くの事業者がきめ細やかな金融サービスを提供できる世界を実現したいと考えています。

システムの面から顧客の体験向上にアプローチしているのですね。対して、プレイドではどのように金融業界にアプローチしてきたのでしょうか?

金田:プレイドでは今まで、KARTEを通じて業界や業種を問わずさまざまなサービスの顧客体験の向上に寄与してきました。金融業界へのアプローチでは、銀行や保険の窓口での優れた体験をオンラインの体験でも実現するという点で、KARTEが貢献できる余地は大きいと考えていました。

実際に銀行の店舗や窓口で業務をされている方々は、顧客一人ひとりの言葉遣いや表情から顧客が今求めているものを想像し、必要に応じてATMの使い方を案内したり、商品をさりげなく紹介したり、とても柔軟、親切に顧客に寄り添っています。そうした体験をオンラインでも実現できるようにするためにKARTEを活用していただきたいと思っていました。

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Webサイトやアプリのリアルタイムの動きから顧客の興味や目的を理解し、それに合わせたサービスのご紹介や、寄り添ったサポートを行う。さらに、ヒアリングやアンケートを通じて、商品への興味関心の度合いを深く知り、次のコミュニケーションに活かす。

そのように、顧客を「知り、合わせる」サイクルを回しながら、最適なサービスを案内し、サポートする。そんな“真のデジタル窓口”を、金融業界特有のセキュリティなどにも準拠しながら、実現しています。

顧客に合わせたコミュニケーションは「納得感」につながる

両社が連携するきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

河端:Finatextでは2020年の夏から、グループ会社でto C向けの保険サービス「母子保険はぐ」を提供しています。そこで、「母子保険はぐ」のWebサイトやアプリ改善にKARTEを活用できないかと、問い合わせをさせていただいたのが始まりでした。

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今回の連携によって、具体的に何ができるようになったのでしょうか?

河端「母子保険はぐ」では、顧客がどのような目的や興味を持ってサービスの利用を検討しているかをリアルタイムに知り、保険商品の詳細や意図を伝えたり、理解度に応じてのサポートができるようになりました。 そのため、「Inspireで保険を今後提供するパートナー事業者にもKARTEを使ってもらえたら良いのでは」と考え、連携に向けた検討を進めてきました。

金田:元々私たちが持っていた問題意識として「オンラインでは、お客様を“人”として捉えられていないのではないか」というのがあります。インターネットの向こう側には人がいて、刻一刻とその感情や関心は変わっているはずなのにそれを知ることができていない。 本来は“線”として顧客の体験を捉えるべきなのに、“点”でしか追えず、それに基づいたトライ・アンド・エラーしかできていないというところに課題があると考えています。

店舗や窓口でのお客様への手厚いコミュニケーション、リアルタイムで移り変わる機微を捉えた接客ができていたことに比べると、従業員の方々はこれまでのオンラインでのコミュニケーションにストレスを感じていたのではないでしょうか。

その結果、お客様もオンラインでの体験にネガティブな印象を持ってしまう。InspireのプロダクトとKARTEをパッケージ化することで、その課題も解決することができます。従業員体験を通じて、顧客体験をよくすることも実現していきたいと考えています。

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保険商品を提供するためのインフラ・管理システム領域はInspireで、コミュニケーション領域はKARTEで行えるようになる。

金田:その通りです。各領域でディベロッパーやマーケターなど担当者の業務が効率化され、より顧客に丁寧に向き合えるようになる。Inspireが担う金融サービスを「つくる」部分とKARTEが担う「届ける」部分を連携し、スピーディーで柔軟に、顧客を中心とした事業を構築できる。 金融業界のより良いCXに向けた、DX(Digital Transformation)とEX(Employee Experience)を推進していきたいと考えているんです。

お客様にとって金融商品は選ぶのが難しく、色々調べても最後まで懐疑的な部分が残ったまま購入される場合も多いかと思います。KARTEでお客様それぞれのライフステージや状態に合わせた提案ができるようになることで、納得して商品を選んでいただけるようになる。 そういった価値を提供していきたいですね。

このような構想を実現するため、まずは保険領域で、顧客の反応や行動にもとづき、商品を適切に案内できるようにする。まだ今は第1フェーズですね。

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顧客の「欲しい」から始まる金融サービス構築の支援を

現時点で、第2フェーズに向けた展望などもあるのでしょうか?

河端:やりたいことは尽きませんね。今話しているのは、お客さまに合わせた金融サービスの種を見つけ、提供していくことです。

例えば、同じ保険商品であっても少し契約内容が異なるパターンを用意しておいて、KARTEで理解した顧客のニーズや課題に合わせて、リアルタイムで商品を出し分けるなどもあり得ると思います。そのパターンの学習を重ねていけば、タイミングや話し方のカスタマイズの精度をより高められ、さらにきめ細やかな提案ができると考えています。

もちろん保険業界の規制もありますし、私たちも保険会社として経験も知見もこれから積んでいく段階。まずはWebサイトやアプリで心地よい体験を提供し、納得して買ってもらうところからですね。

金田:例えば、非金融事業者の方々がKARTEを活用して、顧客を知る中で顧客のニーズや求めていることを発見することができます。それを元に、事業の立ち上げをしようという選択肢を持ったり、考えたりできる環境自体を2社の連携の延長線上で整えていけるのではと考えているんです。

顧客視点で金融サービスを提供する新たな事業者の数自体を増やしていく。

河端:そうですね。新しい金融サービスが増えて行くことは目指すところです。そのためには、長年金融サービスを提供してきた既存の金融事業者との共創も欠かせないと思っています。

というのも金融は規制業種ですから、新たに参入し、サービスを立ち上げるのに、最短でも1、2年はかかる。かつ規制の関係上、新しい事業者が大規模な金融サービスを展開するのには相当高いハードルがあります。

なので、非金融事業者が保険事業を立ち上げるといったときも、Inspireが媒介となって既存の保険会社と連携する。つまり、システムやオペレーションなどのインフラ部分をInspire、顧客を知る・合わせるのコミュニケーションをKARTE、ライセンスの必要な領域を既存の金融機関が担う形が良いのではないかと思っています。

既存の金融事業者は顧客との新たな接点が得られ、新規の金融事業者は顧客のニーズに沿った充実したサービスを、より素早く提供できる。そうやって既存の金融事業者にとってもメリットのある形で、新しいマーケットを再設計していけたら理想ですね。

なるほど。まずは保険領域での連携を切り口に、金融業界との共創、顧客から始まる金融サービスの提供に展開をしていくという大きなビジョンも描いているのですね。

金田:その通りです。今回のInspireとの連携は第1弾の位置づけです。今後もFinatextグループの各会社が展開するサービスとの連携はもちろんのこと、金融事業者の皆さんとの連携、非金融事業者の皆さんとの事業構築も進めて行く予定です。ぜひ今後の発表も期待していただけたら嬉しいです。

ありがとうございました!

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