ジオターゲティングで位置情報に合わせた適切なアプローチが可能に
デジタルデバイスの普及により、企業は様々なユーザー情報を獲得できるようになりました。その一つが位置情報です。この位置情報を活用した技術に「ジオターゲティング」があります。デジタルマーケティング領域では広く活用されているこの技術について、活用事例などを交えながら解説します。
デジタルデバイスの普及により、企業は様々なユーザー情報を獲得できるようになりました。その一つが位置情報です。この位置情報を活用した技術に「ジオターゲティング」があります。デジタルマーケティング領域では広く活用されているこの技術について、活用事例などを交えながら解説します。
ジオターゲティングとは
ジオターゲティングとは、ユーザーの位置情報を用いてターゲティングを可能にする技術のこと。GPSやWi-Fiの接続情報、IPアドレスなどを元に、現在地や居住地を絞り込み、その位置に関連した情報や広告の配信を行うことが可能になります。
参考URL::位置情報(IPロケーション)データを活用したマーケティング施策や事例
近年、ジオターゲティングが注目されている背景には、テクノロジーの変化やユーザーの消費行動の変化が影響しています。
これまではジオターゲティングの精度は低く、大まかな位置情報しか判別できませんでした。しかし、スマートフォンをはじめとした様々なデジタルデバイスが普及(図1) したことで、膨大なユーザーの位置情報が取得可能となりました。
図1
デバイスの性能や通信環境が向上したことにより、より正確な位置情報データが、膨大に、かつスムーズに取得可能となったことで、ターゲティングの精度が向上しました。
こうしたデジタルデバイスの浸透は、人々の消費行動にも変化をもたらしました。ECを通じてインターネットでも購買が可能になったことで、多くの店舗が顧客との関わり方を変化させています。
「リアルな場」を持つ小売業やショッピングセンターでは、インターネットとの差別化や連携を図るために位置情報の活用に向き合うようになりました。
その結果、「Online to Offline(O2O)」と呼ばれる、オンラインでの情報接触行動をもって、オフラインでの購買行動に影響を与えるような施策などが登場しています。
ジオターゲティングにできること
では、ジオターゲティングの技術はマーケティング等にどう活用できるのでしょうか。ここではいくつかジオターゲティングの活用パターンをご紹介します。
1.位置情報にもとづいた通知
ジオターゲティングの技術を使えば、ユーザーが訪れている場所を把握し、適切なタイミングで、適切な情報を表示できます。また、位置情報をリアルタイムに把握し、クーポンやおすすめ商品などを表示できます。
例えば、ユーザーがアパレルブランドのアプリをダウンロードし、スマートフォンの位置情報をオンにすると、店舗側はユーザーが店舗を訪れた際にクーポンを配信することもできます。
2.コンテンツのローカル化
ジオターゲティングの技術を活用してユーザーの位置情報を判定すると、Webサイト上のコンテンツをユーザーの位置に合わせて最適に切り替えることができます。
例えば、Googleの検索にもジオターゲティングが活用されています。Googleの検索には、検索する場所によって検索結果の掲載順位が変わる仕組みが導入されています。
ユーザーが現在地付近のビジネス情報や場所を検索すると、その場所に近しいものが表示されます。たとえば、スマートフォンで「中華料理 レストラン」と検索すると、ローカル検索結果として、近くのレストランが優先的に表示されます。
参考URL:https://support.google.com/business/answer/7091?hl=ja
この他にも、位置情報と天候データを活用することで、アクティビティを予約できるポータルサイトでエリアごとに天気を把握し、雨の日予報の出ている地域ユーザーにのみ雨の日向けのアクティビティを表示するといったことも可能です。
参考URL:位置情報(IPロケーション)データを活用したマーケティング施策や事例
3.広告の最適化
ジオターゲティングの技術を使って、「広告の最適化」が可能になります。これは「ジオターゲティング広告」と呼ばれ、位置情報をもとにしたターゲティングを行い、適した広告を配信することを指します。
ジオターゲティング広告は、顧客の位置情報や行動履歴などをもとに、セグメント分けを行うので、特定のエリアにいる見込み顧客に対し、効率的にアプローチが行えます。また、ターゲットを絞ることで広告配信時のCPAをおさえることも可能となります。
スーパーマーケットが新しく開店した際に、近隣住民に告知チラシを配る施策は昔からよく行われています。ジオターゲティング広告では、店舗の商圏範囲内の他のスーパーマーケットやドラッグストアのサイト閲覧者をターゲットに配信します。これにより、単に近くの住民だけでなく、普段の購買行動として利用する可能性が高いユーザーにも新店舗の告知が行えるようになりました。
ジオターゲティングを活用した事例
行動データから紐解くインバウンド戦略 | TRAVEL JAPAN Wi-Fi
訪日外国人向けのWi-Fi接続アプリの「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」でもジオターゲティングの技術を活用しています。
同アプリでは、位置情報を活用し、地上に仮想の境界線を張る「ジオフェンス技術」を使っています。登録したエリア内にアプリをダウンロードしたユーザーが入ると、現在訪れている場所の周辺の観光名所や店舗から、アプリ内のタイムラインにレコメンドメッセージが届くようになっています。
今まで訪日外国人向けのプロモーションを打ちにくかった店舗や地域への集客、ターゲットを絞った情報配信に利用され、インバウンド戦略として注目されています。
LINEのユーザー基盤を活かしたジオターゲティング | LINE Beacon
「LINE Beacon」とは、ビーコンと呼ばれるBluetooth発信機器からのLINE向けの信号を受信する機能です。これにより、ユーザーはLINE公式アカウントを通して、お得・便利な情報やサービスなど様々なコンテンツを受け取ることができます。
大手コンビニエンスストアのローソンでは、全国の約13,400店舗にLINE Beaconが設置されています。これを活用したセールスプロモーションが「LINEチェックイン」です。
来店したユーザーがLINEを開き、チェックインするだけで、LINE公式アカウントからキャンペーンの告知や参加ができ、店舗にてインセンティブや景品が受け取れます。これにより、来店ユーザーへのリアルタイムなキャンペーン訴求が可能となりました。
「LINEチェックイン」を利用することで、LINEのユーザー基盤を活かした、継続的な来店の促進や、店内のPOPやポスターに依存することのない大規模な店頭告知が実現できるようになりました。
参考URL:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2019/2598
行動範囲から適切な広告を配信 | Shufoo! Audience Targeting Ad
ジオターゲティング広告の事例として、電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」を紹介します。同サービスでは、広告サービス「Shufoo! Audience Targeting Ad(シュフー・オーディエンス・ターゲティングアド)」を提供しています。
この仕組みは「どのエリアのどんなチラシを閲覧したか」という年間3,000万人にものぼるユーザーごとのShufoo!利用ログを蓄積・分析。そして、買い物の行動圏や、店舗カテゴリなどにセグメント化し、買い物意欲の高いと考えられる顧客へ適切な広告が配信されるというもの。
具体的な利用例では、大手スーパーマーケット「イトーヨーカドー」では、このサービスを使い、「1都3県にあるイトーヨーカドー各店舗の商圏5Km内が買い物の行動範囲である」「Shufoo!でスーパー・ドラッグストアのチラシを閲覧したことがある」をターゲットの条件とし、特定の日に割引になる「ハッピーデー」キャンペーンの告知で動画広告を配信しました。
Shufoo!によると、ターゲットユーザーに動画広告を配信したところ、1都3県の25~49歳の女性ユーザー全員に配信した時と比べて、動画再生完了率は1.6倍、キャンペーンページへのCTRは1.9倍と高い反応が得られたそうです。
参考URL:http://www.shufoo.net/biz/example/sata/case.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000005565.html
ジオターゲティングで一人ひとりのユーザーに向き合う
ジオターゲティングの技術により、一人ひとりのユーザーの置かれている状況を従来よりもさらに詳しく把握することが可能となります。ジオターゲティングの技術を活用して、一人ひとりのユーザーに向き合っていきましょう。