Event Report

三菱UFJ eスマート証券の行動データを活かしたMA活用とは?|KARTE 金融業界限定勉強会レポート

三菱UFJ eスマート証券株式会社のマーケ企画グループ長 矢島優人さんをゲストにお迎えして開催した、金融業界限定の勉強会「サイト内外の顧客体験をつなぐ、行動データを活かしたMA施策のつくり方」の模様をお届けします。

2025年6月、プレイドオフィスにて金融業界限定の勉強会を開催しました。今回のテーマは「MA(マーケティングオートメーション)を活用し、サイト内外における連続した顧客体験設計をつくるには」です。ゲストとして、三菱UFJ eスマート証券株式会社 営業推進部 マーケ企画グループ長の矢島 優人さんにご登壇いただきました。

矢島さんからは、KARTEとKARTE Messageを活用した顧客の行動データ分析と、メール・LINE・プッシュ通知など多様なチャネルを連携させた施策の具体事例をご紹介いただきました。また、参加者同士のディスカッションタイムでは、MA活用の悩みや成功体験が活発に共有され、金融業界ならではの課題と解決策について深い議論が交わされました。

顧客の行動データを深く理解し、サイト内外で一貫した体験を提供する

三菱UFJ eスマート証券でMAツールを活用したCRM業務に従事する矢島さん。2023年にKARTE導入後、行動データに基づく施策設計で成果を上げ、過去には顧客向け年次カンファレンス「KARTE CX Conference」にも登壇いただいています。今回のイベントでは、プレイドのカスタマーエンジニア 和田 吉平が聞き手を務めました。

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三菱UFJ eスマート証券株式会社 営業推進部 マーケ企画グループ長 矢島 優人氏

矢島「当社では、KARTE MessageのほかにKARTEも導入しており、n1分析なども行っています。個人的に非常に重宝しているのが、いわゆる『行動チェーン』と呼ばれているファネルごとのデータ分析機能です」

矢島さんがスライドで示したのは、口座開設から初回ログイン、銘柄検索、注文入力という一連の顧客行動の流れ。特に注目したのは、注文入力画面での高い離脱率でした。

矢島「ファネルの中で詳しく見たい箇所をクリックすると離脱したユーザーの一覧が出てきて、そこから数人をピックアップしてn1分析をしていきます。離脱したユーザーがその後どのようなページを見ているのか、口座に入金しようと試行錯誤しているのか、操作せずに放置しているのかなどを分析し、仮説を立てます」

n1分析を経て、離脱率が高い理由について、矢島さんは「証券会社の注文入力画面ってよくわからない言葉も多いし、なんとなく注文しようと思っていたけどやっぱり怖い」という顧客心理があるのではと仮説を立てました。そこで、必要な情報をKARTEに集めることから始めたといいます。

矢島「ユーザーが注文入力画面に来たときにスクリプトが発火するようになっていて、見ている銘柄、有効買付可能額、銘柄コードなど画面内の必要な情報をKARTEに送っています。ここで集めた情報を使って、メール送信やプッシュ通知をパーソナライズしています」

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プレイド カスタマーエンジニア 和田 吉平

このパーソナライズを行う仕組みについて、和田は「GTM(Googleタグマネージャー)やGoogleアナリティクスではなく、KARTE内でこのデータを取得するということですか?」との質問を投げかけ、矢島さんはこう回答しました。

矢島「GTMにタグを設置するケースも稀にありますが、99%の施策はKARTE内のスクリプトという項目を使って、私が自分でスクリプトを書いて情報を取得しています」

収集した顧客のデータを効率よく活用し、正確な効果測定を

収集したデータの活用方法について、矢島さんはさらに詳しく説明しました。

矢島「誰がいつどの銘柄を見ていて、その後注文せずに離脱したというデータをKARTE Datahubに蓄積し、株価や値動きという詳細データを基幹システムの方からファイル連携。その2つのデータを掛け合わせてリストを作っています。

たとえば、お客様が銘柄を見たり、企業情報を見たりした後に離脱したケースがあった場合は、時価総額が大きい銘柄で送ってみようか、閲覧順が一番新しい銘柄で送ってみようか、と仮説を立てます。その仮説も踏まえて一人ひとりのお客様に『この人はこの企業のプッシュ通知用』という形でリストを作っています」

和田から「そのリストも、再利用されているのでしょうか?」という質問が投げかけられると、矢島さんはマスターとなるリストを作成した後の効率的な運用方法を紹介しました。

矢島「たとえば、値動きがプラスの時とマイナスの時で効果がどう変わるのか検証してみたいなと思ったら、特に何もSQLなどを書かなくても、値動きという項目でExcelでフィルターをかけるような感覚でフィルターリストを作成できます。最終的にリストを作った後は全てKARTE Message上の操作で完了しています」

矢島さんの話を受け、和田はKARTE Messageの機能のデモを実施。リストの作成や、マスターリストからサブリストを作る方法、新しく実装されたAIにより条件指定ができる機能を紹介しました。

続いて、効果測定の難しさについても話題に。特に証券業界特有の課題として、相場におけるバイアスをどう排除するかという点が挙げられました。

矢島「時系列だけでデータを見てしまうと相場のバイアスが強すぎて、正直効果検証にならないというケースが非常に多いんですよ。たとえば、メンバーから『このメールのコンバージョンは、今月は先月の倍になっていたんですよ』って報告を受けても、今月はそもそも相場の出来高が倍になっている、ということもありえます」

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この課題を解決するため、KARTE Messageのコントロールグループ機能を活用。同じセグメントでプッシュ通知を送った群と送らなかった群を比較することで、施策の純粋な効果を測定できるようになったといいます。実際の効果として、プッシュ通知を送った群では注文率が約2倍になるという成果が得られたそうです。

一方で、適切だと思われるタイミングでの施策が逆効果になるケースも発見されました。注文したいというニーズが顕在化しているにも関わらず、企業側からの積極的なコミュニケーションが逆効果となり、購入意欲が失われてしまうケースがあると、矢島さんはいいます。

矢島「これはお客様自身の考えに企業側の意図が入り込んだ結果、行動を変えてしまうことが原因だと考えています。このような状況に対し、当社ではプッシュ通知やメールの遷移先に特定のパラメータを設定し、お客様の流入元を特定しています。これにより、プッシュ通知から当社のアプリやWebサイトに流入したお客様の行動を追跡し、分析することが可能です。

プッシュ型でコミュニケーションを取った結果、お客様がどのように反応し、サイトやアプリでどのような行動を取ったのかを詳細に分析します。その行動が当社の期待値と一致していれば問題ありませんが、多くの場合、ズレが生じています。このズレが生じた原因を特定し、PDCAサイクルを回すことで、コミュニケーション戦略の改善につなげています」

トークの後は、参加者同士のディスカッションタイムへ。MA活用の課題や取り組みについて、各社の事例を共有しながら議論が展開されました。「最適な送信タイミングの見極め」「顧客に不快感を与えないための施策設計」など、共通の悩みを持つ参加者同士で、課題に感じていることや現在の取り組みについての情報交換が行われました。

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KARTE Messageの正式版提供開始と今後の展開

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イベントの終盤では、和田からKARTE Messageの今後の展開についても共有がありました。これまで4年間、β版として提供してきたKARTE Messageは、7月9日から正式版の提供を開始しています。この日は、このお知らせを一足先に来場者のみなさんにお伝えしました。

和田「正式版の提供開始後も、KARTE Messageではメール、LINE、アプリプッシュに加えて、SMS配信の機能追加も予定しています。また、金融業界のみなさまのニーズに応えて、東京リージョンでのデータ保存や、S/MIME対応など、セキュリティ面での強化も進めていく予定です」

その後は、プレイドの平田 麻衣が1st Party Dataを活用して広告効果の改善を担う「KARTE Signals」についての紹介を行いました。KARTEシリーズのなかでは、KARTE Messageと同様にサイトの内外をつなぐ役割を担っているKARTE Signals。MA活用に関心のある方は、ぜひKARTE Signalsも合わせてチェックしてみてください!

交流会で業界特有の情報をさらに深く共有

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発表やグループワークが終わってからは、ドリンクや軽食を楽しみながらの立食形式の交流会の時間に。カジュアルな雰囲気の中、参加者同士でより具体的な情報交換が行われました。

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今回の勉強会では、三菱UFJ eスマート証券の矢島さんの実践的な事例を通じて、MA施策において顧客の行動データを丁寧に分析し、サイト内外での体験を連続的に設計することの重要性が改めて共有されました。

また、参加者同士のディスカッションや交流を通じて、金融業界特有の課題や、それに対する各社のアプローチが共有され、今後の施策立案に向けた貴重なヒントが得られる機会となったのではないでしょうか。
プレイドでは今後も、業界特化型の勉強会を通じて、KARTE Friendsのみなさまの交流と学びの場を提供していく予定です。次回の開催もぜひお楽しみに!


KARTE CX Conference 2023の登壇レポートは下記よりご確認いただけます。

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