Event Report

auカブコム証券のコミュニケーション戦略のカギは、深い顧客理解と正確な効果測定

2023年7月に開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、auカブコム証券株式会社 営業推進部 マーケ企画グループ長の矢島優人氏に登壇いただき、2023年にリニューアルした新アプリに込めたコンセプトやCX戦略、刷新するにあたっての課題と、改善の鍵になる「機動的な改善活動」と「評価の定量化」を実践するためのKARTEの活用術について共有しました。

「すべてのひとに資産形成を。」というミッションを掲げて、オンラインでの株式トレードの環境を顧客に提供するauカブコム証券。同社は顧客との理想のコミュニケーションを実現するために、「粒度の細かい顧客理解」と「コミュニケーション施策の正確な効果測定」を重視し、コミュニケーション戦略を立てているといいます。

「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、auカブコム証券株式会社 営業推進部 マーケ企画グループ長の矢島優人氏が登壇。

本セッションでは、2023年にリニューアルした新アプリに込めたコンセプトやCX戦略、刷新するにあたっての課題と、改善の鍵になる「機動的な改善活動」と「評価の定量化」を実践するためのKARTEの活用術について共有しました。

また、金融市場、マーケット状況の変化により施策ごとの正確な効果測定が難しいという条件下での顧客の行動ごとに最適化されたコミュニケーションを実現するための「KARTE Message」の活用事例が語られました。

顧客の評価を定量化し、課題に優先順位をつける

auカブコム証券は2023年3月に10年ぶりにスマートフォンアプリをリニューアル。2年の構想期間をかけたという大きな決断の背景を、矢島氏はこう説明します。

矢島氏「2019年、私たちはカブドットコム証券株式会社からauカブコム証券株式会社に商号を変更しました。その後、KDDIグループ各社とのアライアンスを推進したことをきっかけに、KDDI経済圏からスマホネイティブのお客様がauカブコム証券に流入。現状、全体の15%以上がKDDI経済圏から流入したお客様です。

また、新規口座を開設したお客様の約7割が、スマホから初回のログインをしています。新たな経済圏から流入するお客様の増加、そしてログインに用いる端末の変化に対応するには、10年前にリリースしたアプリはUIや機能が陳腐化していました。そこで、時代に適したアプリにするためのリニューアルに踏み切ったのです」

リニューアルによって「直感的なデザインで総資産がパッとわかる」「銘柄検索から最短ステップで注文へ」「主要指標や市況情報、ランキングなど充実の投資情報を提供」の3点を改善。「使いやすくなったという評価をいただく一方、既存のお客様を中心に、いくつかの厳しい評価をいただいた」と矢島氏は言います。

矢島氏「寄せられるご意見の中で特に多かったのは、『使いたいツールがない』『欲しい機能が見つからない』『操作がわかりづらい』など。こうしたお声を真摯に受け止め、更なる改良を進めることになりましたが、優先順位の付け方が課題になりました。

お客様からのフィードバックは定性的なものが多いため、それをもとに優先順位を付けるのは難しい。また、営業、CS、システム開発など、役割によっても『優先すべきこと』の考え方は異なります。そこで、まずはお客様からの評価を定量化し、明確な基準をもって課題に優先順位を付けるべきだと考えました」

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ユーザーの声を定量的に分析し、課題に優先順位を付けるべく、auカブコム証券はKARTEを活用しました。矢島氏は、KARTEに用意されたWebサイトのユーザビリティを評価するテンプレートをアプリ用に改修し、一定以上アプリを利用したユーザーに対して表示するという施策を実行しました。

矢島氏「改善に活かすために、さまざまなお客様の声を集めることは大事でしたが、過度な負担を強いるとUXを毀損してしまう恐れがあります。お客様の負担が最低限になるよう注意しました」

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アンケート実施において矢島氏が重視したのは、顧客の負荷軽減だけではありません。回答結果を社内に共有するための工夫も行ったそうです。

矢島氏「回収したアンケートの結果は『KARTE Datahub』に蓄積し、全社員がデータを閲覧できるように、データを加工した上で分析ツールであるMicrosoftのPower BIに連携しました。例えば、Power BI上ではアンケートの回答結果の項目をスコアリングし、年代ごとにレーダーチャートで表示できるようにしています。

これにより、営業だけでなく、エンジニアなど全メンバーが『何を開発しているのか』ではなく、『誰のために開発しているのか』の認識を合わせて、アプリの改善活動を進められるようになりました」

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顧客からの評価を定量化した後、改善活動を実施する上でKARTEを活用しています。矢島氏は、どのように活用しているかの事例を紹介します。

矢島氏「『すべてのセグメントのお客様から低い評価が下された項目』の改善にKARTEを活用しました。アンケートの自由回答には『新しい機能の操作性がわかりづらい』内容も多く寄せられていました。

改善策として、新しい機能への初回訪問時に限って、機能のチュートリアルを表示しています。現在、お客様の約45%がこのチュートリアルを閲覧しています。

その他にも、わかりづらいというご指摘のある箇所の直前でのお客様の行動分析を行った上で、該当する行動の補助を行うなどの対応を行っています」

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アプリ更新とKARTE活用を組み合わせ、リニューアル後のCXを向上

KARTEを活用して、ユーザーの声の詳細な分析とアプリの改善を進めているという矢島氏。続けて、アプリのアップデートによる対応と、KARTEの活用による対応の棲み分けについての考え方を4つの項目に分けて説明します。

矢島氏「1つ目は『PDCAの頻度』です。アプリをアップデートする場合、ストア申請などの煩雑な手続きが必要になります。一方、KARTEをうまく活用すれば、細かな検証を繰り返した後に、効果が出た施策だけをアップデートに反映させることが可能になります。

2つ目の『対応可能範囲』は、KARTEの機能内での対応となるため、どうしても制約があります。そのため、アプリのアップデートで対応したほうが制約が少なく済みます。

3つ目の『改善内容のパーソナライズ』は、KARTEを活用するほうがパーソナライズ対応が容易です。アプリでも対応は可能ですが、開発要件が増加しますし、後から要件を変えるには再度開発が必要です。KARTEを使えば、必要なお客様にのみ体験の追加や変更が可能です。

4つ目の『工数/費用』も、エンジニアの工数が必須となるアプリのアップデートより、マーケターのみで施策を完結できるKARTEを利用した方が低く抑えることができると実感しています」

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これらの比較を踏まえ、矢島氏はアプリのリニューアルにおけるCX向上のために重要な要素をこう語ります。

矢島氏「既存アプリとの比較評価が基本となるアプリのリニューアル後の改善活動では、リリース後の素早い改善と、客観的な評価を目的とした評価の定量化の2点が重要です。

ただ、アプリのアップデート頻度や開発リソースには限界があります。そのため、重要な課題についてはアプリのアップデートで対応し、KARTEを使った柔軟で素早い対応を行うことで、リニューアル後のCXの改善が可能です」

「KARTE Message」を活用し、理想のコミュニケーションを実現する

続いて、矢島氏はauカブコム証券が目指すコミュニケーション戦略と、その実現に向けたKARTE Messageの活用について語りました。矢島氏は「対面証券の担当者に劣らないコミュニケーションをオンラインで実現することを目指しているものの、その実現にはいくつかの壁がある」といいます。

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矢島氏「対面での接客を必要としないオンライン取引は、対面取引と比較すると取引の際に必要となる手数料を安く抑えられます。しかし、最大の差別化要因が『安さ』になってしまっていることが、オンライン証券業界の課題です。

というのも、安心感や適切な情報提供を求めるお客様の多くは、対面取引を提供する企業を利用する傾向にあります。対面取引では担当者が顧客とのコミュニケーションを通じて、家族構成やライフプラン、趣味嗜好など、多岐にわたる情報を引き出した上で、深くお客様を知った上で適切な情報を提供しています。

一方、オンライン取引は現状ではお客様とのコミュニケーション量が不足してしまっています。つまり、画一的な情報を提供するのみで、付加価値の高い情報を届けられていないのです」

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こうしたオンライン証券の課題を解決し、理想とするコミュニケーションを実現するためのポイントが「粒度の細かい顧客理解」と「正確な効果測定」の2つだといいます

矢島氏「まず、粒度の細かい顧客理解を実現するための対応について。以前から、auカブコム証券ではマーケットデータと社内の顧客データを活用した上で情報提供は行っておりました。ただし、これらのデータはあくまでも『過去』を示すものであって、現在のお客様の動きやインサイトをとらえるものではありません。

KARTEの導入後、現在のお客様の行動データも連携可能になりました。このことによって『お客様がどのタイミングで、どのデータを閲覧し、どんなアクションを起こしたのか』などがわかります。

現在、この行動データと従来のデータとを連携することでお客様が一定期間に見ている銘柄の数や、どのような特徴をもった銘柄に注目しているかなどを分析しています。

この分析結果をもとに、お客様ごとの嗜好性に関する仮説を立て、その仮説に基づいてさまざまなコンテンツを出し分けすることによって、お客様一人ひとりのニーズに合った情報を届ける取り組みを進めています」

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続いて、2つ目のポイントである「正確な効果測定」のために利用しているのが、今年の4月から導入を開始した「KARTE Message」だと矢島氏は言います。その背景には、従来のメールマーケティングにおける効果測定の困難さがありました。

矢島氏「例えば、チームのメンバーから『2023年5月、既存のお客様に配信しているメール内容をリニューアルしたところ、クリック率が1.3倍、コンバージョン率も1.2倍向上しました。』という報告があったとしましょう。

しかし、当時はマーケット自体が活況だったこともあり、この効果がリニューアルによって得られたものか或いは単にマーケットの活況による効果なのか判断が難しく、結果として施策としての有効性の判断基準も不明瞭でした。。オンライン証券のコミュニケーション課題はここにあります。つまり、市況などの変数を除いて、正確に施策の効果を測定するのがとても難しい。

この課題の解決につながっているのがKARTE Messageです。このツールを使うと、従来のツールよりも簡単にコントロールグループを作成でき、効果測定もできるようになりました。

KARTE Messageのおかげで、本当に効果があった施策と、そうではない施策を見分け、PDCAサイクルを高速で回せるようになりました。少しずつではありますが理想のコミュニケーションに近づけていると感じています」

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誰でも大量の情報が得られる時代にあって、顧客を深く理解した上で、正確に「付加価値が高い情報」を提供することは、サービスの成否を分ける重要な要素となります。矢島氏は「私たちが理想とするコミュニケーションを実現するために、これからもKARTEを活用しながら試行錯誤を繰り返していきたい」と語り、セッションを締めくくりました。

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