小さな改善の積み重ねが大きな成果に。ドコモが「スゴ得コンテンツ」で実践するKARTEを活用した顧客志向のサービス改善
株式会社NTTドコモが提供する「スゴ得コンテンツ」では、KARTEの導入により素早い施策実行が可能になりました。その結果、サービス継続率の向上や新たな収益の創出などの成果を生み出しています。ドコモがどのようにKARTEを活用して成果を生み出してきたのか、その取り組みを伺いました。
株式会社NTTドコモが提供する「スゴ得コンテンツ」は、ウェザーニュースやナビタイムなど、通常は個別に課金される有料コンテンツを月額定額で利用できるサブスクリプションサービスです。「安心・便利・お得」をコンセプトにサービスを提供し、多くの顧客に利用されています。
同サービスは、顧客にとって価値ある情報を随時届けていきたいと考えていたものの、開発との兼ね合いなどから時間とコストがかかっていたといいます。その状況から、KARTEの導入により素早い施策実行が可能になりました。その結果、サービス継続率の向上や新たな収益の創出などの成果を生み出しています。
同社のコンシューマーサービスカンパニー コンテンツサービス部 サービス推進第一担当 中山 可南子さんに、どのようにKARTEを活用して成果を生み出してきたのか、その取り組みを伺いました。
知識がなくても、すぐに施策を実行できる環境へ
まず、中山さんが所属されている部署とご自身の役割について教えてください。
中山: コンシューマーサービスカンパニーのコンテンツサービス部に所属し、「スゴ得コンテンツ」のマーケティングを担当しています。「スゴ得コンテンツ」を利用していただいているお客様に継続して利用していただくことや、サービス内で複数のコンテンツを利用していただくことが主なミッションです。
「スゴ得コンテンツ」はどのようなサービスなのでしょうか?
中山: 「スゴ得コンテンツ」は、通常は個別に有料となるコンテンツを、月額定額でまとめて利用できるサブスクリプションサービスです。天気予報や乗り換え案内など、生活に役立つ様々なコンテンツを提供しています。2013年から「安心・便利・お得」をお客様に届けることを目指して運営しているサービスで、ドコモの通信サービスをご契約しているお客様を中心にご利用いただいています。
KARTEを導入した背景について教えてください。
中山: KARTEを導入したのは2019年11月頃です。私はまだ在籍していなかったのですが、当時の担当者に聞くところによると、以前利用していたCMSは少々独特で、ポップアップひとつ出す、画像をひとつ埋め込む、といった施策を行うにもHTMLやCSSの知識が必要だったそうです。そのため、委託先への依頼が必要となり、そこにも時間がかかっていました。
そうした課題を解決するために複数のツールを比較検討した結果、KARTEは機能面が充実していて、操作も直感的でわかりやすく、サポート体制も魅力的だったことから導入を決定したと聞いています。
中山さんが初めてKARTEを使って成功したと感じた施策はどのようなものでしたか?
中山:当時、スゴ得では「月に一回、土曜にdマガジンが読み放題」というキャンペーンをしていました。毎月、その日に向けて告知をしていたのですが、あるときからKARTEでカウントダウン施策をはじめました。「あと何時間」という形で、終了までの時間を表示したところ、CTRがかなり上がりました。やはり「読まないと」という気持ちになるんですよね。新入社員として入社してすぐの時期でしたが、KARTEを使うことで、こんなに簡単に効果的な施策が実行できるんだということを実感した、最初の成功体験でした。
小さく素早い変更で大きな成果を創出。開発の効率化にも寄与
KARTEを導入以降、どのような変化がありましたか?
中山: 私が2020年に新入社員として入社した当初は、KARTEの運用を始めたばかり。まず、「とにかく、色々やってみよう」という方針で、ポップアップやページへの画像の埋め込みなどの施策を試しました。
当時から、お客様が最初にサービスサイトに来訪したタイミングでスゴ得のサービス内容を説明をする施策をKARTEで実施しているのですが、以前は開発側での実装が必要でした。KARTEで実装するようになってからはすぐに文言やカラーの変更が可能になり、PDCAを回しやすくなりましたね。

株式会社NTTドコモ コンシューマーサービスカンパニー コンテンツサービス部 サービス推進第一担当 中山 可南子氏
今までの中山さんが取り組んだものの中で、印象に残っている施策を教えてください。
中山: 印象的な施策はいくつかあります。まず、解約ページでのUIテストです。解約すると「いちおしパック」に含まれるクラウド容量オプションが使えなくなることや、携帯保証サービスの権利がなくなることなど、重要な注意点を伝える文言を解約ページに追加するA/Bテストを実施しました。その結果、解約ページから先へ進むボタンのクリック率が23%から17%へと、約6ポイント低下しました。わずか数行の文言を追加しただけで、サービス継続に大きな効果がありました。
「スゴ得コンテンツ」のお客様には、単体コンテンツを契約している方と「いちおしパック」で契約している方がいらっしゃるのですが、「いちおしパック」の契約者に向けて表示したいと考えていました。KARTEを使えば簡単に契約者にだけセグメント分けができたので、非常に助かりました。事前にKARTEでA/Bテストを実施して効果を検証し、効果が確認できた施策は本実装に移すという流れができたことで、無駄な開発を避けられるようになったという利点もあります。
開発という観点でも効果を発揮したのですね。
中山: はい。他にも、「いちおし情報」という弊社がおすすめしたい情報を掲載しているコーナーのUI改修にも役立ちました。横にスライドする形式にするのか、タイル状にするのか、どちらがCTRが良いかをテストしました。そのコーナーのCTRが高くても全体としての離脱率が上がっては意味がないので、次のページへの遷移率なども確認して、その結果を実際のサイトのUIに反映しました。
他にも印象的な施策があれば教えてください。
中山:もう一つ印象的だったのが、画面右下に表示するアンケートのボタンの色を変更した施策です。もともと、黒色で表示していたものを、様々なパターンを試した結果、赤色にしたらCTRが約3.6倍になったんです。
これはKARTEでA/Bテストが簡単にできるからこそ得られた結果だと思います。もしA/Bテストを実行するハードルが高かったら、ずっと黒のままで施策を出し続けていたと思います。KARTEを使った小さな変更で、大きな結果を出すことができた事例ですね。
中山: 他には、スゴ得が提供するコンテンツを2つ以上利用していることを指標にした「2種類以上利用率」を向上させるための施策として、コンテンツの探し方を紹介するチュートリアル施策を実施しました。社内のデータを分析して、コンテンツを2種類以上利用しているお客様は、1種類のみの利用者と比べて継続率が高いことが判明。そこで2年ほど前から、「2種類以上利用率」をKPIとして設定し、向上に向けた施策を展開しています。このチュートリアル施策では、2種類以上利用率が5ポイントほど改善しました。
施策のアイデアはどのように生み出しているのでしょうか。
中山: データ分析とお客様の声の両方を踏まえて施策を考えています。データ分析についてはKARTE以外のデータも含めて、データアナリストのメンバーがユーザーの利用状況を細かく分析しています。お客様の声については定期的にデプスインタビューも実施し、直接聞くようにしている他、KARTE Liveで実際のWeb上での行動の観察もしています。
こうした分析や観察から、サービスをよく利用しているユーザーとそうでないユーザーの行動に差があるとわかれば、その差を埋めるための施策を立案しています。施策のCTRなども分析し、どのクリエイティブがクリックされやすいかなどを検証する中で、多くの発見があり、それも施策のアイデアにつなげています。
KARTEを使って広告を表示し、事業の収益にも貢献
自社のユーザーIDとも連携した取り組みもされていると伺いました。
中山: 以前は、当社のユーザーIDとKARTEのIDの紐づけはできていませんでした。そのため、既に契約していただいているお客様にも新規ユーザー向けの施策が何度も表示されてしまうということもありました。実際の契約数の3倍ほどのユーザー数に対して施策が表示されていたんです。
当社のユーザーIDを直接外部のシステムに連携するのは難しかったため、2年前に当社側でKARTE用の固有IDを作成し、KARTE Datahubを介して連携したことで、ユーザーの契約状況などを正確に認識して施策を実行できるようになりました。
これにより、より精密なセグメント配信が可能になっています。例えば、一定期間利用のないユーザーを対象としたキャンペーンを実施しました。対象ユーザーの固有IDを抽出してKARTEにインポートし、KARTEでこのセグメントを対象にしたポップアップ、埋め込み、フローティング配信を実施しました。この施策を実施した月の再来訪率は実施前に比べて約2倍となり、その後の定着率も向上しました。

休眠ユーザーを対象とし、ポップアップやフローティング、埋め込みバナー配信を実施
想定した通りにはいかなかった施策もありましたか?

中山: ありましたね。新規ユーザー向けのバナー施策で興味深い発見がありました。「初めての方はこちら」といった初心者マークをつけたバナーと、特におすすめのコンテンツを紹介する初心者向けでないバナーを比較したところ、初心者マークがついていない方が圧倒的にクリック率が高かったんです。
私たちの感覚では、初心者マークがある方が絶対に新規ユーザーのクリック率が高くなるだろうと思っていたので、とても意外でした。このように、実際にやってみないとわからないことも多いですね。
他にも、KARTEを使って生まれた成果があれば教えてください。
中山:スゴ得コンテンツ内の広告枠としてもKARTEを活用しています。1年ほど前からコンテンツプロバイダーに対してKARTEのポップアップや埋め込み機能を用いた広告の販売を開始しました。ユーザーから見ると通常の画面表示と変わりませんが、実はコンテンツプロバイダーが枠を購入して表示している広告枠になっています。
もともと、プッシュ通知やトップページのカルーセルなどの枠を広告として販売をしていたのですが、新しいメニューとしてポップアップを開始しました。この取り組みにより、かなりの収益増加を実現できました。

広告をポップアップやバナーで表示
思いついたらすぐ実行。スピード感が最大の価値
現在のKARTEの運用体制を教えてください。
中山: 社員3〜4名と、KARTEの設定をサポートしてくださっている外部企業の方と一緒に運用しています。施策の内容や結果は、パワーポイントで一覧化して管理しており、過去の全ての施策を参照できるようになっています。これはかなりの資産になっていますね。
他部署との連携はいかがですか?
中山: 社内の他チームからも「KARTEなら頑張れば1日で施策が出せるんじゃないか」という認識を持ってもらえていて、様々な依頼が来ます。たとえば、クーポンチームからは発券画面でのバナー表示の依頼があったり、コンテンツ開拓チームからは新しいコンテンツの需要調査のためのアンケート実施の依頼があったりします。
KARTEを使ったアンケートはどのように実施しているのでしょうか。
中山:私たちが実施しているアンケートは、大きく分けて2種類あります。1つ目は、解約者向けのアンケートです。解約ページにおいて「なぜスゴ得を解約されるのか」「これまでどのような使い方をされていたか」といった質問を設置し、サービス改善のヒントを収集しています。
2つ目は、需要調査のアンケートです。新しいコンテンツの追加を検討する際に「このようなコンテンツを追加予定ですが、どう思われますか」といった形で、お客様のニーズを事前に把握するようにしています。基本的には、スゴ得サービス全体のお客様を対象に、セグメントを限定せずにアンケートを実施していますが、より深い洞察が必要な場合は、特定のセグメントに絞った調査も行っています。
たとえば、デプスインタビューを実施する際には、毎日スゴ得を利用している方々を対象に、日常的な利用実態や満足度について詳しくお話を伺っています。また、契約経路別のインタビューも実施しており、ドコモショップで契約された方と、店頭外のWeb等で契約された方それぞれにインタビューを行い、契約経路による利用行動の違いを分析しています。
ただし、実際にはお客様がWebで契約していても、その経緯を忘れてしまうケースも少なくありません。そのため、アンケート内で「どこで契約されましたか」という質問を設け、ドコモショップか、それ以外かを確認しています。その上で、実際の契約データと照合し、両方の情報が「ドコモショップ以外」で一致する方に対して、インタビューへのご協力をお願いするという形で調査を進めています。

社内でKARTEの費用対効果についてどのように説明していますか?
中山: 以前は、複数コンテンツ利用による継続率の向上を効果として説明していました。ただ、KARTEだけの成果を切り出して伝えるのは難しく、説明に苦労していました。しかし、KARTEを使った広告販売を開始したことで、直接的な収益貢献を説明できるようになり、社内での理解も得やすくなりました。
KARTEを他の方にも紹介するとしたら、どのようなサービスだと表現されますか?
中山: 「セグメントを分けて、スピーディに施策を実行できるサービス」ですね。UIテストもポップアップも、思いついたらすぐに実行できる。このスピード感が最大の価値だと思います。
スピードを活かすためには「とりあえずやってみる」こと。まず色々やってみて、良かったら続ける、良くなかったらやめる。この繰り返しで、お客様にとって本当に価値のある施策が見つかると思います。
今後、KARTEを使ってやってみたいことやサービスの展望について教えてください。
中山: 現在は契約者向けのリテンション施策が中心ですが、今後はWeb経由の契約者を増やすための施策にも取り組みたいと考えています。たとえば、現状Webからご契約したお客様に対して、契約後にデータを活用してご案内ができていないという課題があります。契約前の時点から、契約後、無料期間、そして有料期間という形で、一連の流れにおける行動データを踏まえた施策を実施していきたいと考えています。
また、現状はお客様全体に向けて一律の施策になってしまっている部分もあるので、お客様の利用状況やドコモのデータを活用して、より個別最適化の施策を実現したいと考えています。
サービス全体としては、さらなる「お得」の提供や、「ここにしかない」というコンテンツを増やしていきたいですね。会員数を増やし、収益化に向けて取り組んでいけたらと考えています。