家電通販ECカレントの、全社を巻き込むCX戦略の作り方
株式会社ストリームでは、家電通販サイト「ECカレント」においてKARTEをご利用いただいています。ECカレントが目指す、「自販機型」ではなく「実店舗型」な顧客体験とはどのようなものなのでしょうか。今回は、「ECカレント」におけるサービス体験の改善の取り組みについて、営業本部 フルフィルメント事業部マーケティンググループ の皆さまにお話を伺いました。
株式会社ストリームでは、家電通販サイト「ECカレント」においてKARTEをご利用いただいています。ECカレントが目指す、「自販機型」ではなく「実店舗型」な顧客体験とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、「ECカレント」におけるサービス体験の改善の取り組みについて、営業本部 フルフィルメント事業部マーケティンググループ の皆さまにお話を伺いました。(写真左から、山﨑様、関口様、津川課長、小宮様)
エンジニア不要で、マーケティング施策を迅速に実現するために
— はじめに、マーケティンググループの活動について教えてください。
関口:私たちマーケティンググループでは、弊社が運営している家電通販サイト「ECカレント」の、ユーザーが直接操作を行うフロント側のマーケティング施策全般を担っています。具体的には、季節物家電の特集やセールの実施、メルマガの配信、SNSやメールでのコミュニケーションなどの、企画から分析までを担当しています。
マーケティンググループ内の役割としては主に我々4名で分担しており、津川と小宮が数字の分析、小宮が企画立案と集計、山﨑がコンテンツ・クリエイティブの作成、私、関口がディレクションやテクニカル周りの作業、KARTE内のウェブ接客カスタマイズなどを担当しています。
— KARTEの導入に至った経緯を教えていただけますか?
津川:弊社は、社内に開発部隊(以下、システムグループ)を抱え、アウトソースすることなくサイトや機能の改善ができます。ただ、気軽に社内のシステムグループに相談できる反面、細かい課題・案件が積もりやすく、開発のタスクはどうしても優先順位を付けての対応となります。
その結果、マーケティンググループが取り組みたい施策を実現させていきたいスピードと、開発側の優先順位に差異がありました。マーケティンググループだけで施策を実現できないかと考え、ツールの導入検討が始まったのです。
関口:以前は、欲しいデータがあるとシステムグループに要請し、バック側で組み込まれているそのままのデータを共有してもらって分析していました。システムに関わる部分やテンプレートに組み込まれているような商品ページ、カートフロー以降部分など、サイト全体に関わる部分の改修は、システムグループへの依頼が必要でした。
そのため、データ分析やサイトの改修をより早く実施できないか考えたときに、JavaScriptを入れるだけで導入ができるKARTEが候補に挙がりました。
ー KARTEを候補に挙げてくださってありがとうございます。具体的にはどのような施策をする上で課題があったのでしょうか?
津川:当時、マーケティンググループでは「ログイン前の状態で、会員様向け特典があることを知らせたい」、「ポイント機能を活かせていないので、様々な施策を実施したい」など、こうした施策を迅速に実施できたらと考えていましたね。
また、サイト側ではないですが、メルマガ運用にも課題を抱えており、メール配信機能もあるのがKARTEの導入に至った大きな要因のひとつです。以前は、文面やクリエイティブの制作からチェックまで、トータルでかなりの手間がかかっていました。これをKARTEのテンプレートで効率化したいという狙いもありました。
無料のツールでは物足りなさを感じた
— 新しいツールもいきなり導入は難しいかと思います。KARTEを導入するに当たっては、どのように社内での承認を得ていったのでしょうか。
関口:実は、最終的にはKARTEを導入する想定のもとで別の無料ツールを使い、ウェブ接客ツールの有用性を証明するというプロセスを挟みました。効果をシミュレーションするため、すでに弊社で導入しているツールと比較した際にKARTEは比較的高額だったので、「ツールを導入し、ウェブ接客を実施すればこんなに効果が上がる」という実績が必要だったんです。その後、さらに費用をかけたときに見込める効果を社内で提案しました。
— 他のツールを試した上で、KARTEを選んでいただいたのですね。
関口:無料のツールは試しやすいですが、使っているうちにもっと色々と活用したいなという欲が出てくるんですよね。他社製品の場合、ウェブ接客だけを提供しているものや、カスタマイズができないサービスも多い。KARTEは、ウェブ接客のカスタマイズやチャット機能も備えているため、それらの課題も全てクリアできる。加えて、前述のメルマガ対応もできるため、これだなという判断になりました。
チームで週次の「KARTE作戦会議」を実施
— KARTEを活用するためにどのようなことを行われましたか?
津川:メンバー4人が集まり、『KARTE作戦会議』と題した定例ミーティングを週次で行っています。主なアジェンダは、数値の報告やキャンペーンについての相談、顧客行動に関するディスカッションなどです。
会議では、特に顧客行動に関する議論に時間を割いています。ランダムにお客様を抽出し、メンバーみんなで「なぜこういう動きをしたのか?」を考えます。“ユニークな動き”を分析することが、消費者行動や消費者心理を知る上で有益で、またそれを意識するための重要な時間になっています。
— 「KARTE作戦会議」はどのような経緯でセットされたのでしょうか?
関口:元々、マーケティンググループとしての定例会議はありました。ですが、KARTEを使った施策はメンバーがそれぞれ対応していることが多く、KARTEに関する知見や気づきを共有できる場があった方が良いよね、となり生まれました。
始まったばかりの「KARTE作戦会議」は、接客一覧を見て数字的な分析や気づきを共有する場でした。ですが、ある日の会議で1人不思議な動きをしているユーザーに気づいたんです。そのユーザー分析を契機に、より顧客理解を深める重要性を感じ、個々の顧客行動にフォーカスして分析する時間を取り入れるようになりました。
ストアから学び、自社へと落とし込んでいく
— 会議から生まれたものも含め、これまで取り組んできた施策を教えてください。
小宮:お買い物にご利用いただけるポイント配布施策はわかりやすく結果に繋がった施策でした。キャンペーン実施のタイミングで、「ストア」で見つけたルーレットによりポイントを獲得できる仕組みを取り入れてみたのですが、ECカレントのポイント配布の仕様上、ルーレットが回って当たり外れが出た後、お客様にポイント獲得手続きをしていただかないとポイントが反映できないんです。
そのため、獲得手続きをせず、ポイントを獲得しないお客様が存在していました。そこで、獲得していないお客様を追いかけてポイント交換案内を再表示し、ポイント獲得を促したんです。結果、獲得率の向上はもちろん、売上の向上にも繋がりました。ポイント施策は、KARTEでかなり活性化できましたね。
※ストア:そのまま利用できる接客シナリオ、企業事例を掲載した「ナレッジ」情報とKARTEで提供するさまざまなオプション機能を確認し追加することができる「プラグイン」を集約したサービス。
ルーレットでポイントを獲得できる施策イメージ(※実際に掲出された画面とは異なります)
ポイント獲得をしていない人に限定して再表示した接客例(※実際に掲出された画面とは異なります)
ー 「ストア」を参考にされているものは多いのでしょうか。
関口:かご落ち対応や閲覧人数の表示に関しても、「ストア」から取り入れたものですね。
かご落ち対応は、接客サービス内のメールの仕組みを参照し、ECカレントのシステムで運用できる形にカスタマイズしました。KARTE導入前のメール機能だと、ユーザーの状態に合わせた配信ができなかったので大きな進歩です。
コンバージョンを高めるには、お客様に適切なタイミングでの配信が必要です。現状はやっとその手段を手に入れた状態で、チューニングまではまだまだ手が回っていません。今後、楽しみな部分です。
ストアイメージ
— かなり「ストア」をご覧になっていただいているんですね。
小宮:そうですね。可能性を知らなければ、的確なアイデアも生まれません。他社事例もシナリオも、どちらもくまなく見て、何か良い企画につながる案がないかなと考えるようにしています。
KARTEは、ツールというより“プラットフォーム”
ー そのほか、KARTEを使う上で印象的だったことはありますか?
関口:気づきが大きかったのは、KARTEの導入により実現したチャットサポートでしょうか。例えば、希望している商品が地域的な理由で届けられない商品だった場合に、お届け可能なスペックの近い商品を提示しご提案できる。本当に接客をしているような状態を作れるんです。例えるなら、今までは“自販機”だったサイトが、“実店舗”に近くなってきました。
津川:従来のネット販売では購入しないとコミュニケーションができないところが、チャットだと商品購入を検討する段階からリアルタイムで会話ができる。実店舗のように交渉やコミュニケーションを行うチャネルのひとつとして、今後成長の余地が大きい部分だと思いますね。
ー まさにKARTEが提供できる大きな価値のひとつですね。ここまで実際の成果をお伺いしてきました。振り返って、御社にとってKARTEの価値はどのような点だとお考えですか?
津川:自由度の高さだと思います。実現したいことを、KARTEだけで完結できる環境をつくれるのは魅力です。管理画面の見やすさも大きいですね。今まではExcelで管理していたものを、KARTE上で全て完結できるので。
関口:自由度は確かに大きいですね。もはやツールというより、プラットフォーム的な存在に近い。また、「ストア」が充実しているのはありがたいです。事例を参考に、カスタムして試せる。見ているだけでネタも増えるので、自分の考えられる施策の幅も広がりました。
先ほども話しましたが、かご落ち対応や閲覧人数の表示に関しても、「ストア」から取り入れ、ECカレントで使えるようにカスタムができたので実現することができました。
小宮:企画の出しやすさと実行へ移すスピードの速さが改善されたのが大きいですね。「これが売れない」などの課題から考えると、リソースが必要だったり、複雑な機能改修が必要で、そのために稟議を通したりと動きが鈍くなることがある。KARTEであれば、とりあえず試してみようというトライアンドエラーもしやすいです。
山﨑:クリエイティブでは、メルマガ運用に割くリソースの負担がかなり軽減されました。接客サービスのテンプレートを整えたことで、専門スキルをもった制作スタッフじゃなくてもメルマガが作成できるようになったため、クリエイティブリソースを他の施策に割けるようになりました。
次に目指すのは全社を通したCX(顧客体験)戦略
— 今後、KARTEを活用してやってみたいことはありますか?
関口:大きな視点でみると、顧客視点でのサイト運営へ転換していくことを目指したいところではあります。そのためにKARTE Datahubなどを活用し、バラバラで測定している顧客のデータを統合し、より顧客を知った上でのサイト作りをしたいですね。
津川:そうですね。導入1年目でKARTEを使う土台ができたので、次の1年での目標はマーケティンググループだけではない、全社を通したCX戦略を進めることを目指したいですね。
※KARTE Datahub:社内の基幹システムや様々な外部サービス、プロダクトに存在する顧客データをKARTEに統合し、エンジニアリングスキルを持たない方でも高度なデータ分析や活用を行うことができる機能。
— 全社でのCX戦略は素晴らしいですね!KARTEを使う部署が顧客目線を持つことはできたと思います。一方、その動きを全社に広めるためには、何が必要だと考えられますか?
津川:データの見方を変えることは大きいなと思っています。どうしても、基本的には売上に対する効果が求められる。ただ、細かいKPIで見ていくと、訪問回数や滞在時間が上がっていることもある。その道筋の重要性に対し、社内で理解を得る必要があると思っています。
— 最終的な売上だけでなく、そのプロセスにある数値を社内に見てもらうと。
関口:おっしゃるとおりです。自販機型のサイトは、中に溜まっているコインの量しかみてもらえません。つまり、お金を投入するまでにあったことは見てもらえない。
ですが、その過程にあるユーザーの反応や意志決定のプロセスこそが重要です。そのプロセスの重要性を社内に向けて説き続けていかなければいけないと考えています。
— ありがとうございました。