KARTE STAR 2025 「GOLD STAR」受賞インタビュー:野原グループ株式会社
KARTE STAR 2025 「GOLD STAR」を受賞した野原グループ株式会社のチームの皆様へのインタビューをお届けします。
KARTE Friendsのチャレンジを表彰する年に一度のアワード「KARTE STAR」の受賞企業が2025年も決定いたしました。
KARTE STAR 2025の「GOLD STAR」を受賞したのは野原グループ株式会社のみなさま。 なんと、KARTE STAR初受賞で、GOLD STARの受賞となりました。
野原グループは建材販売を中心に、建設業界で幅広い事業を展開。近年では、建設DXを推進し、BIM(Building Information Modeling)を活用したソリューション「BuildApp」の提供を通じて、サプライチェーンやプロセス改革による生産性向上を目指し、建築業界のアップデートに取り組んでいます。
同社では、国内最大級の事業者様向け建材・建築資材・建築材料のオンラインストア「アウンワークス」にKARTEやKARTE Blocksを活用。外注なし、低コスト・短期間で多岐にわたるWebサイト改善施策を実行したといいます。
今回、野原グループにてアウンワークスの運営に携わるチームのみなさんに、受賞に関してお話を伺いました。
KARTE STARは、顧客の体験向上(CX)、デジタルによる事業変革(DX)、従業員およびチーム変革(EX)に取り組むKARTE活用企業(KARTE Friends)のチャレンジを表彰する年に一度のアワードです。KARTEとともにチャレンジを続け、輝きを放つKARTE Friendsに進呈する賞であることから「KARTE STAR」と命名しています。
プレイドでは、KARTE STARの表彰によって、KARTEによる顧客体験向上や事業成長を成し遂げた方々の栄誉を称え、そのベストプラクティスを広く共有することを目指しています。
KARTE STARでは、各社からエントリーいただいた内容を「顧客の体験向上」、「デジタルによる事業変革」、「従業員およびチーム変革」の3つの観点から評価させていただき、KARTE GOLD STAR、KARTE SILVER STAR、KARTE BRONZE STARを選定しています。
初めての受賞が、取り組みを客観視できる貴重な機会に
このたびはKARTE STARの受賞、おめでとうございます!受賞の連絡が届いた直後はどのような気持ちでしたか?
長井:最初は「まさか選ばれるとは思っていなかった」という驚きが大きかったです。ただ、これまでの取り組みが評価されたことは素直に嬉しいですね。「自分たちで思っていた以上にKARTEを使いこなせていたのかもしれないな」と感じました。他のカンパニーのメンバーからも「すごいね」というリアクションが届いていて、嬉しいですね。
澤中:私は10年ほど同じ会社に在籍していますが、他社がどのような施策を行っているか分からないことが多いんです。利用しているプロダクトの会社から「評価される」という形で客観的に取り組みを認識できたのは、とても良い機会でした。
佐藤:「自分たちはまだまだKARTEの機能を使い切れていない」という認識が強かったので、正直なところ受賞はないだろうと思っていました。仮に受賞できるとしてもブロンズぐらいかな、と。ところが実際に賞をいただいたので、「面白い、特化した使い方ができていたのかな」と感じました。KARTEがないとWebサイト改善が難しい状況を乗り越えたことが評価につながったのではないかと思います。

野原グループ株式会社 長井 文平氏
あらためて、今回の応募のきっかけを教えてください。
長井:プレイドのカスタマーサクセス担当の方から後押ししてもらったのが大きかったですね。取り組みをまとめる過程で自分たちがやってきたことを振り返り、見直しもできました。KARTE STARだけでなく、外部のアワードを目指して活動していきたいね、という話は前々からしていたんです。その結果が出たことは嬉しいことです。
所属されている部署と役割などを教えてください。
長井:私たちは、オンラインストアカンパニーのマーケティング課に所属しています。オンラインストアカンパニーでは、建材ストア「アウンワークス」を運営し、40万点以上の幅広い品揃えと当日・翌日出荷の短納期対応で建築現場の生産性向上に貢献することを目指して活動しています。
なかでも、私と佐藤はUI/UXを担当しています。澤中はCRM周りを担当し、二本松は集客を主に担当しています。井上はMD(マーチャンダイジング)を担当していて、商品登録などの商品関連の業務を行っています。
KARTEを活用し、顧客やサポートの負担を下げ、事業成長に寄与
少し前のことを振り返りますが、まずはKARTEを導入した背景について教えてください。
澤中:2019年頃、二本松と私で「ユーザーの離脱防止ツール」を探していたんです。さまざまなサービスの話を聞いている中でKARTEに出会って、詳しく話を伺い、導入に至りました。
当時は、マーケティング課とUI/UX課が分かれており、はじめはマーケティング課側でKARTEを導入し、キャンペーン表示などでポップアップを活用していました。ですが、Webサイト上での表示という観点では、UI/UXのメンバーが使ったほうがより幅広い活用ができるだろうと考えていたんです。
実際にWebサイト上に表示するものはデザインの面で慎重になりやすいですし、早い段階で長井や佐藤へ連携することで、KARTE Blocksの活用もできるようになりました。
長井:KARTEの導入前は、デザインのカンプを作成して、その先の実装はベンダーさんに依頼するという流れでした。そこをKARTEやKARTE Blocksを活用することで工数を削減できたのが大きなメリットですね。

野原グループ株式会社 澤中 志寿子氏
KARTEを活用して解決できた大きな課題や印象に残るエピソードはありますか?
長井:例えば、サービスの変更やプライバシーポリシーの改定など、Webサイト開発にまで至らないフロント対応が次々と発生する中、限られた開発リソースの中で迅速に対応することが課題となっていました。
この課題を解決するため、KARTEとKARTE Blocksを活用し、クリティカルな内容の修正対応が即時に実現できたのは非常に助かりました。この対応で結果を出せたのは印象深いですし、その後も成長を継続しています。
具体的にKARTEを活用して実行している施策内容はどのようなものがありますか?
長井:2024年10月時点で公開している接客サービス数は200件超えており、さまざまな施策を実行しています。たとえば、「クーポン施策」では、Webサイトのリニューアルに伴うポイント制度廃止の代わりとしてクーポンをKARTEを使って訴求しました。PDCAを繰り返した結果、クーポンの利用数が3月の配布に対して10月は約5倍となりました。

クーポンを商品購入画面に配信し、購入時の利用を促す埋め込み例
また、「商品検索結果ページの最適化」を実施しました。この施策では、商品検索結果を表示する際、商品一覧の上部にカテゴリを埋め込みました。たとえば、「フロアタイル」と検索した際に検索結果の一部として商品カテゴリを表示するという接客を実施しています。

商品検索結果の最適化の例
長井:この施策では、外注の工数100時間を1〜2時間ほどに削減し、コストを99.8%削減しました。また、検索から購入ゴールへの到達率が2021年12月から比べて2024年10月には約20%ほど向上し、、接客経由の売上金額も伸びています。今後はこのような表示機能を社内でシステム化し、より効率的な運用を目指す予定です。
このほか、細かい表示改善も行っています。テキスト修正や注意書きを追加し、お客様の利便性向上に取り組みました。たとえば、注文入力フォームに注意書きを追加し、配送日は商品ごとに最短で配送なので全てまとめて届くわけではないことを案内して、配送に関する問い合わせを削減しました。

野原グループ株式会社 二本松 倫子氏
計画的にも、突発的にもKARTEをつかって素早く施策を実行
数々の施策を実行していますが、施策の立案から実行の流れはどのようになっているのでしょうか?
佐藤:計画的に施策を実施することもあれば、会話から新たなアイデアが生まれることもあります。アウンワークスで扱う商品は、追加の説明が必要だったり、説明文だけでは分かりにくい場合が少なくありません。そうした状況で、KARTEが大いに役立ちました。
例えば、配送遅延や追加送料発生の情報を該当する商品ページに表示する施策を実施しました。その結果、必要な情報を対象のお客様にだけ届け、不必要なトラブルを未然に防ぐことに成功しました。これにより、顧客満足度の向上と効率的な運用体制の構築を同時に実現できたのです。

特定商品へ注意喚起を購入ページに埋め込みで挿入し、必要な情報をお伝えする接客例
井上:スピーディにお客様への注意事項や代替品の表示などができるのは、とてもありがたく、いつも使わせてもらっています。あるとき、取引のあるメーカーの工場で生産問題があり、商品が欠品した際も、KARTEを活用して対応しました。そのメーカーは複数の工場で商品をつくっているため、欠品したのは特定のシリーズのみ。そこで「類似の商品はこちらです」と代替品を表示したいと相談して、スピーディに表示できました。
佐藤:KARTEやKARTE Blocksを使うことで、できることが一気に増えました。KARTE Blocksではセレクタを指定して埋め込みができ、テンプレート一覧のブロックストアもあるため、一からデザインする必要がありません。UIもわかりやすく、学習に時間がかからないので、自分たちの本来の業務に集中しやすくなりました。気づけば作業スピードが上がり、施策の上限にも達したため、上限を引き上げてもらったほどです。施策を増やせるようになったことは大きな変化です。

野原グループ株式会社 佐藤 大幸氏
顧客の分析に関してはいかがでしょうか?
長井:KARTEを使ったn1分析をMD課にも展開したことですね。分析情報を提供することで、個別商品の購入データや顧客行動データを深掘りし、商品戦略の精度向上を図りました。
井上:会社の課題でもありますが、特にMDには顧客理解が十分でないという課題がありました。「誰に、何を、どのように売りたいのか」を考えるうえで、そもそもの「誰に」の部分が明確になっていないと、商品を売るための特集を組んだとしても的外れになってしまいます。ですから、この「誰に」という部分をしっかり補完する必要がありました。
以前、プレイド主催のセミナーを受講して、顧客IDを基点にお客様の導線を一通り確認する方法を知りました。これによって、大口のお客様の注文が入った際に「どのような経路をたどって購入に至ったのか」を把握できるようになったんです。MDにお客様目線が加わったのは、大きな収穫だと感じています。
佐藤:KARTE以外でも商品分析は行ってきましたが、これまでは大まかな単位でしか分析できませんでした。しかし、KARTEを使って個々のデータ(n1)を確認することで、分析の精度が大幅に向上したと感じています。さらに、単にデータを見るだけでなく、お客様の実際の行動を観察することで、より具体的で実感のある分析ができたと思います。

野原グループ株式会社 井上 龍氏
他部署との連携を強め、顧客を大切にした対応を
MD課以外に、KARTEを使って連携している部署はありますか?
佐藤:社内でKARTEの認知が進む中、「これ、KARTEでできないの?」が一時期流行語になったこともありました。
長井:MD課以外だと、CS(カスタマーサポート)課との連携を行ってきました。CS課から定期的にお客様の声を共有してもらい、「お問い合わせが来る前に改善できることはないか」と考え、表示上で注意書きを入れたり、文言を変更したりしていたんです。すると次第にCS課のほうからも、「こういう部分を改善したいんだけど、KARTEでできないか」という相談が増えてきました。
どんな相談があるのでしょうか。
長井:商品情報の話もあれば、Webサイト上の表示に関するものもあります。「お客様から実際に問い合わせがあった内容をどう解消するか」という視点で、「それをKARTEでできないか」という流れができあがってきたんです。今では毎月の会議でCS課から「ここをKARTEで改善できないか」という声があがるようになりました。
最近は配送に関する注意事項が増えてきていますね。配送会社ごとに送れない条件があったりして、CS課がお客様と直接やり取りをして説明する負担が大きくなっていました。そこで、先述の施策のようにその条件に該当する商品のページに注意書きを表示することで、事前に解消しようとする施策を実施し、やり取りを少し減らすことができました。

注文フォームに注意書きを追加した例
CS課ではもともとは電話を中心としたアナログな対応が多かったんです。細かいやり取りも多く、業界知識が必要だったり、細かな対応が求められる部分がある。自動化したい気持ちはありつつも、きめ細やかな対応はCS課の強みでもあるので、強みを活かした対応ができるようにWebサイトでもうまく対応していけたらと考えています。
CS課の負担を減らすことで、本来の強みがより活かされそうですね。
長井:そう思います。繁忙期には電話のお問い合わせも多く、対応できないことも増えていました。お問い合わせ内容を分析してもらったところ、初めてのお客様からの問い合わせには、Webサイト上で解決できる内容も多かったため、まずは初めてのお客様からの電話対応を減らそうと考えました。
これを実現するために「ログインしているユーザーにのみフッターで電話番号を表示する」という施策をKARTEで実装してみたんです。結果として電話問い合わせ数が10%ほど減り、電話放棄率(電話を受けられない率)が30%減少しました。チャットやメールでの問い合わせに振り分けられたことで、電話対応にかかる工数を削減できました。

お問い合わせ電話番号の表示を制限した例
お話を伺っていると、顧客のことを考える組織文化があるように感じます。
澤中:サービスの立ち上げ当初からチャットサポートを導入していたこともあり、お客様から「対応が素晴らしい」というお声をいただくことが多かったんです。それが会社全体で「対応の良さ」「体験の良さ」を大切にするきっかけになったのではないか、と思います。
佐藤:当社ではもともと「お客様を大切にする」という考え方を強く持っていましたが、Webサイト運営の過程でデータ重視になり、お客様の視点が見えにくくなることがありました。機能やアイデアを優先した施策も行っていましたが、結局はお客様ファーストでなければ成果につながらないことを、経験を通じて学びました。ここ数年は「顧客目線を忘れないように」と意識して社内で声を掛け合い、最近では常連のお客様にしっかり向き合う姿勢が強まり、さらにその姿勢を徹底しようとしています。
長井:そもそも私たちはオンラインサービスで対面でお客様と接していないため、データ中心になりがちです。だからこそ、お客様の声をしっかりと聞こうと意識するようにしています。こうした積み重ねもあり、最終的に迷ったときは、「それがお客様のためになるかどうか」で判断するようになってきていると実感しています。
顧客理解をさらに進め、パーソナライズした接客の実現を目指す
これから取り組みたいと考えていることを教えてください。
長井:まずは、先程も述べたように常連様に対する解像度をさらに高めたいと考えています。なぜ継続して購入してくださっているのか、どんな機能を使ってくださっているのかをもっと深く知りたいんです。そのために「ユーザータイプ分析」の機能も整理しn1分析などに役立ています。
佐藤:常連のお客様もいくつかのタイプに分類されるので、それぞれに合った施策を打つ必要があると感じています。しっかり打ち手を分けて取り組めば、成果につながるはずなので、それをやりきれる環境を整えていきたいですね。
長井:お客様が私たちのサービスを利用する用途は基本的にはリフォームですが、壁紙の修繕や間取りの変更、店舗改装など、目的によってまったく特性が異なるんです。サイト上で求めている情報も異なるので、それぞれに合った体験を提供できるようにしていきたいと思います。リフォームの規模感によってもニーズが大きく変わってくるので、そのあたりの対応をしっかり考えたいですね。
澤中:大規模なリフォームの場合は、あまり納期を意識されないお客様が多いんですが、小規模のリフォームでは「短い納期」を求められるケースが多いです。そういうニーズの違いを捉えたいですね。
井上:MDの観点から言うと、どのような工事をしようとしているかによって不足する商品が明確になり、対応方法も変わってくるんです。お客様についての理解が深まれば、それだけお客様にあった対応ができるようになると思います。
将来的に挑戦したいことや展望があれば、教えてください。
澤中:現状、私が担当する施策の多くはメールが中心になっているのですが、そのメール施策とKARTEによるWebサイト表示をもっと連動させていきたいですね。常連のお客様の分析を進めていく中で新たに見えてきたことも多いので、それを踏まえてKARTEでの接客にも生かしていきたいです。
二本松:流入元によるKARTEとの連動という観点では、広告との連動も進めたいです。広告の流入元に応じてサイト上の表示を変えるなど、さらに細かく検討していきたいと思っています。
長井:一人ひとりのお客様に対して、「One to One」で接客できるようにしていきたいです。現状はある程度セグメントをまとめて接客していますが、より細かく個別対応する形を目指しています。