サイレントカスタマーの声にも耳をすます、QANT Web/QANT スピークで挑む、ロート製薬の「ハートのある」顧客体験

ロート製薬株式会社 顧客製品情報部 お客様サポートセンターは、「QANT Web」および「QANT スピーク」を導入。Web上の顧客行動を可視化し、電話対応と連動させることで、これまで捉えきれていなかった“声にならない声”の把握と迅速な課題解決を実現しています。組織横断での取り組みにより、顧客体験の向上と業務効率化を同時に推進しています。本記事では、その導入背景や具体的な活用事例、今後の展望について伺いました。

医薬品や化粧品など、幅広い製品を手がけているロート製薬株式会社。同社の顧客製品情報部 お客様サポートセンターは、ドラッグストアやEC(電子商取引)モールなどで製品を購入した顧客からの問い合わせを一手に引き受ける総合窓口としての役割を担っています。しかし、顧客層の高齢化・呼量の減少により、従来の電話を主体とした運用では特に若年層の声を拾い上げづらいという課題を抱えていました。

この課題を解決するため、同社はRightTouchが提供するWebサポートプラットフォーム「QANT Web」およびボイスボット「QANT スピーク」を導入しました。Webサイト上の行動データを可視化し、これまで把握できていなかった「サイレントカスタマー」の声に耳を傾け始めたといいます。

本記事では、同社の顧客製品情報部 お客様サポートセンターのマネージャー藤井氏、同センターの香山氏、寺嶋氏に、導入の経緯から具体的な活用法、そして同社が目指す顧客中心の体験について伺いました。

※希望により、寺嶋氏の撮影写真なしで掲載しています。

「お客様とメーカーのギャップを埋める」カスタマーサポート(CS)部門のミッション

まず、皆さまが所属するお客様サポートセンターのミッションや、目指している姿について教えてください。

藤井:私たちはOTC(一般用医薬品)メーカーとして医薬品を扱っており、お客様の声をきちんと受け止めることが重要だと考えています。安全性や品質に関する情報はもちろん、お客様からのご意見は事業の根幹に関わります。そのため、私たちの部門は、お客様と会社をつなぐ最前線の窓口として、そのギャップを埋める役割を担いたいと常に考えています。

現在、部門のミッションをアップデートしている最中です。従来は「電話して良かったと思っていただける体験」を掲げていましたが、より全員のビジョンを反映させる形にしようとしています。弊社の「ロートは、ハートだ。」というコーポレートスローガンを軸に、心のこもった対応でお客様を元気に、健康にし、その声を社内に還元していく、という考えを盛り込む予定です。メーカー側の事情に偏らず、常にお客様視点であることを大切にしています。

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それぞれの役割についても教えてください。

藤井:私はお客様サポートセンターの全体統括を担当しており、QANTシリーズのツールだけでなく、電話の応対品質や呼量管理など、センター全体のマネジメントを行っています。

香山:私は主にお客様からの電話応対を担当しています。問い合わせやご指摘への対応、販売店からのお電話も受け付けています。以前はメール応対も担当していましたが、現在は「QANT Web」を活用したWebサイトの導線改善などにも携わっており、現場に近い立場で業務にあたっています。

寺嶋:電話関連のシステム全般やボイスボットの運用などを担当しています。QANTシリーズの導入に伴い、ボイスボットのリーダーとしてプロジェクトに携わりました。そのほか、チャットボットやWebサイト関連の業務も担当しています。

見えない顧客の声をどう可視化するかーーCS部門が抱えていた課題

RightTouchのプロダクトを導入する前は、どのような課題がありましたか?

藤井:長年、電話主体で運用してきましたが、年々、電話の呼量が減少していることを肌で感じていました。同時に、電話をくださるお客様の年齢層が高くなっている傾向も見られました。長く利用してくださっているお客様のお声は私たちにとってかけがえのないものです。一方で弊社では「肌ラボ」や「メラノCC」といった若い方向けの製品も多く展開しているなかで、その世代の声がほとんど入ってこない状況に危機感を抱いており、幅広い世代のお客様の声を受け止められているのかという点に、課題を感じていました。

メーカーとしてお客様の声を受け止めることがミッションである以上、顧客接点が減っていく状況は避けたいと考えていました。私たちの目的は問い合わせを減らすことではありません。むしろ、お客様の声が社内に届かなくなることのほうが課題だと捉えていました。声が減ること自体が、メーカーにとってはリスクだと考えていました。

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特定のチャネルや層に偏るのではなく、多様な声を把握していく必要があるとも感じていました。実際には問い合わせに至らない方も含め、どのように製品を利用しているのかを理解することが重要です。受け身で待つだけでは届かない声もあるからこそ、自ら積極的にお客様の声を集めにいく必要があると感じていました。

導入した当時、タグを設置した対象ページだけでも、月間約200万人が訪れていました。つまり、200万人分の行動データがそこには存在していたということです。

直接的な顧客の発話データではありませんが、閲覧や遷移、離脱といった一つひとつの行動は、顧客の関心や迷いを示唆する重要な情報です。いわば、「200万件分の声になり得るデータ」が蓄積されている状態でした。

それにもかかわらず、行動データを体系的に可視化し、顧客理解につなげるための手段がありませんでした。

RightTouch社からの提案を受けたとき、「まさにそこだ」と感じました。電話だけでなく、Web上にも、これから向き合うべき顧客接点があるのではないかと気づいた瞬間でした。

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(ロート製薬 顧客製品情報部 お客様サポートセンター マネージャー 藤井 泰代氏)

寺嶋:現場で電話を受けていると、「サイトを見ても分からなかったので電話した」という声をいただくことがよくありました。また、どの製品を使ったらよいかというご相談に対し、「サイトの該当ページを見ると、もっと詳しい情報があるのに」と感じる場面も多々ありました。しかし、Webサイトは他部門の管轄であり、私たちCS部門にはWebに関する知見もなかったため、具体的な改善策を講じることができませんでした。

WebサイトにはFAQやチャットボットも設置されていたそうですね。

藤井:はい、FAQ、チャットボット、問い合わせフォームを一通り用意していました。しかし、それぞれが効果的に機能しているかを検証する仕組みがなく、定量的なデータも取得できていませんでした。いわば“出しっぱなし”の状態で、Webサイトというチャネルにおける顧客体験を、継続的に改善する体制にはなっていませんでした。

顧客の行動を可視化し、継続的なPDCAサイクルを回すために

そうした課題に対し、どのようにアプローチしようとお考えでしたか?

藤井:最初から明確な解決策があったわけではありません。呼量が減っていくことへの漠然とした不安のなかで、たまたまRightTouch社からご提案を受けたのがきっかけです。その提案を受け、Web上の顧客行動を可視化できるソリューションがあることを知りました。

ご提案を受けながら、これまで感じていた“違和感”や“もどかしさ”が、本当にWeb上で起きているのか。それを確かめたいという思いに駆られました。QANT Webの導入後、実際にデータを見たとき、現場で感じていた課題感が可視化され、「やはりそうだったのか」と確信に変わりました。

弊社のスタンスは「お問い合わせをなくしたい」のではなく、「お客様の声に耳を傾けたい」というものでしたので、その方向性がRightTouch社の思想と合致した点も大きかったですね。「まずはお客様の現状を把握しよう」というところから取り組みを始めました。

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CS部門が主体となってWebサイトの改善を進めるというのは、組織的にハードルが高いケースもあると思います。

藤井:弊社の組織体制が後押しになった面はあります。経営層の下に各部門がフラットに並ぶ体制で、アメーバのように互いを補い合って動くのが理想とされています。そのため、他部門に伺いを立てなければ動けない、といった壁は比較的少ないですね。CS部門が「お客様のためにこれは必要だ」と判断したことに対して、経営層も理解を示す風土があり、風通しの良い環境が、部門主導でのツール導入を可能にしたのだと思います。

導入はスムーズに進んだのでしょうか?

藤井:いえ、一定の時間はかかりました(笑)。検討開始から導入まで約1年かかりました。当初、社内からは「お客様のアクセス状況を知るのは短期的な調査で十分ではないか」という意見もありました。

しかし、お客様の行動は常に変化します。施策を実施し、その変化を継続的に追い続けることの重要性を粘り強く説明し、まずは短期間での導入から始める、という形で合意に至りました。

今振り返ると、改善とは一度で終わるものではなく、継続的なPDCAサイクルそのものであると実感しています。

電話の問い合わせとWebの行動データを組み合わせ、施策の精度を高める

「QANT Web」を導入後、まずは何から着手されたのでしょうか。

香山:まずはサイト全体の可視化から始めました。それまでまったく見ていなかったページビュー数やお客様のつまずきポイントがデータで明確になり、「このページはこんなに見られているんだ」といった発見の連続でした。特に優先度が高いと判断したページに対して、電話で寄せられる問い合わせ内容とWeb上の行動データを組み合わせながら、ポップアップ施策の仮説を立てました。

具体的に、どのような施策で効果を感じましたか?

香山:印象的だったのは、敏感肌用のスキンケア「ケアセラ」の先行乳液に関する施策です。これは化粧水の前に使う新しいタイプの製品だったのですが、製品自体に使用順序の十分な説明がなく、「いつ使えばいいのか」という問い合わせが非常に多く寄せられていました。

ブランド担当者と連携し、ブランドサイト上に使用順序を案内するポップアップを表示したところ、非常に高いクリック率を記録し、電話での問い合わせも徐々に減っていきました。導入から数ヶ月で、部門内だけでなくブランドチームとも連携した手応えのある成果を出せたのは大きな成功体験でした。

現在、どの程度の規模で施策を運用していますか?

香山:常に20件以上の施策を運用しています。効果が確認できたものや役目を終えたものは停止し、また新しい施策を追加するというサイクルを回しています。

寺嶋:特に人気のある製品や、リニューアルなどで問い合わせの増加が見込まれる製品を中心に施策を展開すると、効果が出やすい傾向があります。以前、定番のリップスティックが大幅にリニューアルした際、「何が変わったのか」という問い合わせが電話でもメールでも殺到しました。

QANT Webがなければ、オペレーターは「この情報をページに出せたらいいのに」と思いながらも、他部署では対応の優先度が上がらなかったかもしれません。お客様がつまずいているデータを即座に示し、迅速に施策を実施できるようになったのは、非常に大きな変化です。

「ハートポスト」で可視化したサイレントカスタマーの熱量

Web上の行動データだけでなく、これまで届かなかったお客様の声も把握できるようになったそうですね。

香山:はい、お客様相談室のトップページに「ハートポスト」と名付けたご意見箱を、QANT Webを活用しサイトに埋め込む形で設置しました。これは匿名で自由に意見を投稿できるフォームなのですが、設置してみると、これまで電話では接点のなかった若い世代の方々から、驚くほど多くのご意見が寄せられました。投稿は300件以上にのぼり、その多くが製品への熱量の高いご意見や、応援のメッセージです。

正直、これほどまでに多くの声が届くとは思っていませんでした。声をあげていないだけで、意見や要望などの想いがないわけではなかった。その熱量に驚かされました。

寺嶋:メールの問い合わせは、どうしてもお名前や連絡先を伺う必要があります。個人情報を伝えたくはないけれど、意見は届けたい、というニーズを持つお客様がこれほど多くいたのかと驚きました。

藤井:面白いことに、同じような意見箱をブランドサイトに設置しても、ハートポストほど声は集まらなかったんです。悩んだり、意見を言いたいお客様は、きちんとお客様相談室のサイトに来てくださる、ということが分かりました。

廃番になった製品の復活を願う切実な声など、事業にとって非常に貴重なVoC(Voice of Customer:顧客の声)も集まっており、これらの声はすぐにVoCを分析するチームや製品開発部門に共有しています。

複雑すぎた前ツールからの脱却、決め手は「自分たちで操作できる」操作性

「QANT Web」に続き、ボイスボット「QANT スピーク」も導入しています。どのような経緯だったのでしょうか。

寺嶋:検討し始めたきっかけは、お客様サポートセンターの受付時間を変更したことでした。営業時間外にかかってきた電話に対し、アナウンスを流すだけで終わるのは不親切だと感じ、何かで補えないかと考えたのがボイスボット検討の始まりです。実は、QANT スピークを導入する前に別のツールを利用していました。

ツールの切り替えを検討した理由を教えてください。

寺嶋:以前利用していたツールは、管理画面が複雑でした。英語表記ばかりで直感的な操作ができず、専門知識を持つ情報システム部門のメンバーに協力してもらっても、理解が難しいほどでした。
ベンダーに問い合わせても、回答を得るまでに時間がかかってしまい、お客様の課題を迅速に解決したいという私たちの求めるスピード感とは合いませんでした。自分たちで改善を進めようにも、システムの複雑さが障壁となり、その可能性が大きく制限されている状態でした。

数あるボイスボットの中から、「QANT スピーク」を選んだ決め手は何だったのでしょうか。

寺嶋:10社以上のツールを比較検討しました。その中でQANT スピークは、管理画面が非常に分かりやすく、ダッシュボードで離脱率や成功率といった数字が一目で把握できる点がまず評価のポイントでした。お客様がどのルートをたどり、どの発話が理由で分岐したのか、といった行動の詳細まで可視化される。これなら「自分たちで簡単に操作できそう」という感触がありました。

現在は、お客様のログを確認しながら即日シナリオを修正できます。改善の優先順位が明確になり、自分たちで改善を進められる体制になった。この“自走できる”感覚は非常に大きな違いです。また、お客様からのお困りごとに対して、SMSで関連性の高いFAQページのリンクを自動で送信できる機能も、顧客体験を大きく向上させる可能性を感じ、導入の決め手となりました。

ツールの切り替えはタイトなスケジュールだったと聞いています。

寺嶋:はい、通常、ボイスボットのシステムリプレイスはかなり時間がかかるのですが、RightTouch社にも尽力いただき、3ヶ月という短期間で移行をしています。まずは既存のシナリオを移植することから始め、早期に運用を開始しています。運用を始めると、お客様の応対ログからWebサイト上での操作ログまで横断して確認できるため、お客様がどこでつまずいたのかを立体的に把握できるようになりました。データに基づいた改善サイクルが、以前とは比較にならないほど回しやすくなったと感じています。

現在では、営業時間外に加えて、混雑時にお客様をお待たせしないよう部分的にQANT スピークを活用し、月に約1,000件超に対して解決策を提供することが出来ています。私たちもこれまで拾えなかった声を拾うことができるようになっています。

チャネル連携とデータ統合で見据える、次世代の顧客体験

「QANT Web」と「QANT スピーク」など、複数のプロダクトを連携させることで、どのような顧客体験を目指していますか?

寺嶋:QANT Webも、QANT スピークも、そして電話も、それぞれが独立したチャネルではなく、お客様の状況に応じて適切な手段へスムーズにご案内できる状態が理想です。Webで解決できる方はWebへ、サポートが必要な方は迷わず電話へ。チャネルを“分ける”のではなく“つなぐ”発想です。各チャネルの担当者が連携し、お客様の年代やお悩みに合わせて「この問い合わせはボイスボットから電話へ」「このWeb上の行動からはFAQへ」といった誘導をシームレスに行えるようにしていきたいですね。現在はまだ道半ばですが、その可能性は大きく広がったと感じています。

藤井:第一段階として、お客様が課題を感じたときに迅速に解決できるよう、自己解決できる環境を整えることが重要だと考え、FAQコンテンツの充実に力を入れています。ボイスボット導入を機に、FAQをQANTで管理することとしました。常に最新のFAQをすべてのチャネルで提供できる基盤をQANTシリーズを活用して構築しています。

次の段階では、集まった問い合わせデータをより深く分析し、事業全体に活かしていくことを目指しています。たとえば、特定のエリアで製品の欠品に関する声が多ければ、その地域の営業担当にいち早く情報を共有し、店頭展開に活かす。お客様の行動データを網羅的に分析し、必要な部署に届けるサイクルを確立することで、サービス全体の価値向上に貢献していきたいです。

集まったデータは、単なる件数ではありません。お客様の生活や体験が詰まっています。その情報を事業全体に還元していくことが、私たちの役割だと考えています。

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最後に、今後の展望について教えてください。

藤井:今後は、よりパーソナライズされたコミュニケーションにも挑戦したいと考えています。現在、会員サイトの情報などを集約するCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)基盤を整備している段階です。基盤が整えば、お客様のセグメントに合わせた情報提供など、新たな施策の可能性が広がると期待しています。また、インバウンドのお客様への多言語対応として、有人チャットの導入も検討しています。店頭で困っている海外の方をサポートしたい、という現場からの声がきっかけです。

最近では、他部署から「サイトを大きく改修するほどではないが、お客様に届けたい情報があるので、QANT Webでポップアップを表示したい」といった相談が寄せられるようにもなりました。CS部門が社内と社外をつなぐハブとしての役割を担い始めていることを実感しています。私たちは、声を減らすのではなく、声に近づきたい。そのために可視化し、改善し、つなぎ続ける。その積み重ねこそが、「ロートは、ハートだ。」を体現することだと考えています。これからも、お客様一人ひとりに寄り添った体験を追求し続けていきたいと思います。

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