顧客行動の可視化でマイページ利用率10%向上。大樹生命保険のRightSupport by KARTE活用とは
大樹生命保険株式会社 お客さまサービス統括部はRightSupport by KARTEを導入し、お客様のWebサイト行動の可視化とWeb手続き体験の改善を実現しました。プロダクトの導入背景や活用の様子、今後の展望を伺いました。
大樹生命保険株式会社 お客さまサービス統括部は、これまで紙媒体が主流であった保険手続きのデジタル化推進に取り組んでいます。
同社では、RightSupport by KARTE(以下、RightSupport)を活用して会員向けサイト(大樹生命マイページ)のユーザー行動を分析。サイト離脱や手続きが中止された理由をデータに基づいて特定し、Web手続き体験の改善を続けています。
今回は、同社のお客さまサービス統括部で副部長を務める松村貴博さんにRightSupportの導入背景から活用方法と成果、そして今後の展望を伺いました。
マイページでのスムーズな保険の手続き実現を目指して
最初に、松村さんの所属する部署について教えてください。
松村:私は、大樹生命保険株式会社のお客さまサービス部門内にあるお客さまサービス統括部の副部長をしております。当部は、保険の新規契約の申込やご契約後のお手続きに関する、事務設計と開発されたシステムの検証を担当する部署です。

大樹生命保険株式会社 お客さま統括サービス部 副部長 松村貴博氏
大樹生命の「マイページ」について教えてください。
松村:大樹生命では、2023年7月にWeb上の「マイページ」で利用できる手続きの種類を拡充しました。私は新たなマイページのシステム開発スタート時からプロジェクトに参加しましたが、システム開発の対応内容や適用するツールは既に計画済み、決裁済みとなっていました。
マイページでの手続き画面の設計にあたり、できる限り簡素で見やすい画面設計を志向しましたが、生命保険特有のお客様向けの注意文言や請求時に必要な入力項目が多い手続きもあり、一部の画面は初見のお客様では入力に迷う懸念があることを踏まえた開発となりました。
マイページシステム開発後、どのような課題に直面されたのですか?
松村:マイページでの手続きにおいて、必要事項の入力や画面操作が分かりにくく、手続き件数が伸び悩むという課題がありました。マイページの登録者数は契約者全体の約30%にとどまっており、営業担当者からは登録に必要な項目が多く、画面操作も煩雑で、初回登録が難しいという意見がありました。
また、マイページにご登録いただいたとしても、必要な時にログインできないということもしばしば見受けられました。保険に関する手続きは頻繁に実施するものではないため、パスワードを忘れてしまっているケースがあるためです。ただ、こうしたお客様のお困りごとの推測や仮説はあったものの、お客様がどの画面で離脱しているのか、また何に困っているかを定量的に計測できないことが課題でした。
その課題に対してどのような対策を考えられましたか。
松村:お客様が画面上で入力や操作をする際、迷いを少しでも減らせるよう、画面上でサポート文言を表示する入力ナビゲーションツールの導入を検討しました。
顧客サポートで、マイページのログインが約10%改善
RightSupportを導入した決め手を教えてください。
松村:さまざまなツールを検討している中で、RightSupportに出会いました。サイト上でナビゲーションなどを行えるWebサポート以外にも、お客様のWebでの行動の可視化・分析など、いろいろとできることもあります。RightTouchのカスタマーサクセス担当の方に伴走してサポートいただけるという点が安心につながり、RightSupportの導入を決めました。
導入当初のことを教えてください。
松村:2024年4月からRightSupportの導入を始めましたが、当社で担当予定だった社員が急遽異動してしまったため、私が代わりに導入や活用を担当することになりました。当時の私はRightSupportに関する知識はほとんどなく、プロダクトの理解から始める必要がありました。担当の方から丁寧に教えていただき、さまざまなドキュメントも用意されていたため、とても助かりました。
まず、Webでのお客様の行動を可視化することから始めました。各ページ内にタグを設定し、行動データを取得できるようになってからは、実現したい理想的なサポートの状態と、実現するための施策を一緒に議論しました。
大きなテーマは「マイページの利用促進」でしたが、細かいことは決まっていない状態だったので、追いかけるべきKPIについてもRightTouchの担当者にアドバイスをいただきました。プロダクト理解のための支援だけでなく、目標設定や施策内容についても伴走いただけたため、大変助かりました。

実際に、どのような取り組みを行ったのでしょうか?
松村:RightSupportを導入してまず実現したのが「マイページ」でのWebサポート施策です。マイページにアクセスするお客様のお困りごとを解消するための情報を、サポートアクション機能を通じて表示しました。
例えば、「久しぶりにログインしたいけどパスワードを忘れてしまった」というお客様がマイページからパスワードの再設定を試みます。パスワード再設定手続きの途中で「保険契約の証券番号」が必要となるのですが、その場面では証券番号がわからなくてマイページから離脱してしまうという事態が発生していました。他の項目も入力しているのに、途中で手続きを進められなくなると、お客様の失望も大きいです。パスワードの再設定手続きの前に証券番号が必要だと分かっていれば、事前に準備してからスムーズに手続きを進められます。

再発行手続き途中の実際の画面
そこで、パスワードの再設定手続きに進もうとしているお客様に対して、サポート施策を通じて、パスワード再設定に必要な情報を先回りしてお伝えするようにしました。結果は、再設定手続きからログイン完了まで到達するお客様が施策実施前と比べて約10%増加しました。仮説を立てて施策を実行した結果がデータで見えるのは、お客様の役に立てていると実感できて嬉しかったですね。
※施策配信前(2024/10/1-10/31)と施策配信後(2024/11/1-11/30)でのログイン完了数を比較。
(具体施策の動画)
Webでの顧客行動を可視化したことで社内に生じた変化
RightSupportを導入して、どのような変化がありましたか?
松村:まだ始まったばかりなので実施した施策の数は多くありませんが、お客様の行動データが可視化されたのは大きな変化ですね。行動データを分析して仮説を立て、施策を実行して結果を見ながら次の仮説を組み立てる。このPDCAサイクルが回るようになりました。
行動データの分析により離脱したページや課題箇所がわかるようになり、課題の抽出・施策の発案が格段にやりやすくなりましたね。

RightSupportで行うWebサポートPDCAの3ステップ
分析は主にRightSupportで行っているのでしょうか?
松村:はい。RightSupportのダッシュボードでお客様の行動を分析しています。また、KARTE Liveを活用し一人ひとりのお客様がサイト上でどのような行動をしているかを動画で見て、お客様がどこで迷うのかを確認しています。
実際の行動を動画で確認することで、想定外の箇所で戸惑われている様子も確認できました。当たり前のことですが、お客様はWebサイトや保険の専門家ではありません。そのため私たちが気づかないうちに、お客様には伝わりづらいご案内をしてしまっていることもあります。
例えば、当社サイトではマイページに入る画面内にログイン導線(既存登録者)と新規の会員登録導線がそれぞれありますが、普段から利用するサービスではないこともあり、お客様が両方の導線を混同して迷ってしまう様子などを発見できました。この課題に対してはコーチマークを用いたナビゲーション施策を導入し、お客様の無駄な操作を削減する効果にもつながっています。このように、客観的なデータや実際の行動の様子を通じて、お客様の課題やお困りごとを発見できるので非常に助かっています。
(具体施策の動画)
データで顧客のことを理解できるようになったことでの変化はありましたか?
松村:データに基づく分析と施策を経て、社内の議論も「データありき」に変化してきています。担当者の主観に頼りすぎず、データを見ながら効果を追求する姿勢が生まれてきました。これはRightSupportでの施策に限ったことではありません。
例えば、マイページの画面自体を修正するという影響範囲の大きな改善も、行動データをもとに議論するようになりました。また、RightSupportを使って動的にお客様のサポートができるとわかったので、ページの修正案を考える際にどうしたら画面をすっきりさせられるか?という観点での議論も行われるようになりました。
以前であれば、画面内にさまざまな注意文言を記載せざるをえませんでしたが、サポートアクションウィジェットを使って動的に情報を表示できるのであれば、必要に応じて情報の表示方法を分けられるかもしれませんという観点で、なるべく情報を減らす設計なども検討しています。
他の部署の方への影響なども感じますか?
他の部署や担当者にも、少しずつ視点の変化が生まれています。以前は、お客様のサービス利用のサポートを行うにしても、どこでお困りなのか、どこを変えるとインパクトの大きな改善につながるのかが明確にはわからず、改善行動に二の足を踏んでいる場面もありました。RightSupportによってお客様のマイページを含むページ遷移を数値で確認できるようになると、どこでお困りなのかが発見しやすくなり、自信を持って改善につなげられそうという変化が生じ始めているんです。
マイページのリニューアル前から、時間が経過して不必要となったWebサイト上の情報やFAQの断捨離が課題でした。ただ、「必要になるかもしれない」と考えてしまうのと、ページの削除にも開発工数がかかるため、整理の意思決定が難しい状況です。こうした課題も、Webサイト上でのお客様の行動データが可視化できれば、データに基づいて自信を持って意思決定が可能になるはずだと考えています。

顧客と社内の双方のためになる改善を目指す
今後、RightSupportを活用してどのようなことを目指していますか?
松村:引き続き、お客様がお困りの部分や分かりづらい部分は適宜改善したいと考えています。新たに取り組みたいと考えているのは、FAQなどのマイページに関連するページも分析できるようにし、お客様の行動をさらに可視化すること。さらに詳細にお客様の行動を可視化し、お困りごとを発見して、改善につなげていきたいと考えています。
また、Webだけでなく、電話サポートの改善にも取り組み、顧客体験をさらに向上させたいと考えています。例えば、お客様のお困りごとに応じて最適なオペレーターやチャネルへスムーズに繋げることで、迅速に問題が解決でき、同時にコールセンターの業務負担も軽減できるはずです。
こうした取り組みにより、お客様にも従業員にも、双方にとって「より良い体験」を提供できるサポート体制を目指していきたいですね。

RightSupportにかかわらず、大樹生命のサービスとして今後取り組みたいことを教えてください。
松村:私たちは長らく生命保険のサービスを提供してきていることもあり、紙の手続きも残されています。こうした手続きはお客様に負担をかけるだけでなく、社内で対応する人員の負担もかかります。こうした紙の手続きをデジタル化していくことは、お客様と当社の双方にメリットがあります。
マイページはそのために大切な役割を担うものですが、まだまだ改善の余地があり、お客様のマイページ登録率も上げていく必要があります。マイページが使いやすくなることで、お客様と直接会話する営業やコールセンターの担当者もマイページ登録や利用を案内しやすくなると考えています。
マイページを使いやすくするという挑戦はまだ始めたばかりですが、この取り組みは会社の持続的で無理のない業務設計、そしてサービスの安定的な提供にもつながっていくと信じています。