メール開封→クリック率が50%超えに!TENTIALの行動データを起点とした、パーソナライズ施策とは
顧客行動の多様化を受け、多くの企業がパーソナライズ施策に取り組んでいる。しかしナレッジ不足や施策の属人化に加え、データを連携・活用しきれないといった課題に直面することも少なくない。本記事では、コンディショニングブランド「TENTIAL」の取り組みを通して、顧客行動を起点としたパーソナライズ施策の重要性と、実行のポイントを深堀りしていく。
顧客行動の多様化を受け、多くの企業がパーソナライズ施策に取り組んでいる。しかしナレッジ不足や施策の属人化に加え、データを連携・活用しきれないといった課題に直面することも少なくない。本記事では、コンディショニングブランド「TENTIAL」の取り組みを通して、顧客行動を起点としたパーソナライズ施策の重要性と、実行のポイントを深堀りしていく。
(この記事は、翔泳社「MarkeZine」で2024年4月24日に公開された記事を転載しています)
「TENTIALを選ぶ理由」を作り、ファンを増やしていく
リカバリーウェアなどを展開する「コンディショニングブランド」のTENTIALでは、2024年2月にリブランディングを実施されました。その背景や内容をお教えください。
横田:リブランディングの背景として、事業成長にともなうVI(ビジュアルアイデンティティー)の課題が挙げられます。旧ロゴはオンラインベースでの使用を想定していたため、製品数が拡大し実店舗にも力を入れていく中で、見直しの必要が出てきたのです。
新たなロゴは、今までのアセットをいかに引き継いでいくかに工夫を凝らしました。結果、円形の旧ロゴを1本のラインに伸ばし折り返して「T」を表すロゴが生まれました。カラーも旧ロゴの青と紺を引き継ぎつつ、親しみやすさが感じられるアースカラーを取り入れました。
出典:https://note.tential.jp/n/n3887eacacb86
横田:合わせて、企業が大切にしている価値観や役割を示す、ミッションステートメントも刷新しました。TENTIALの役割は、コンディショニングの考え方をアスリートの方々だけでなく一般の生活者まで広げ、実践いただくこと。コンディショニングの文化が広がる真ん中にTENTIALがある状態を作ることが、リブランディングで目指すゴールです。
株式会社TENTIAL執行役員 ブランド戦略本部 本部長 横田康平氏 コンサルティングや事業会社にて事業戦略やブランディング・マーケティング戦略の策定・推進を経験した後、2023年よりTENTIALに参画。ブランドを梃子に、顧客・社会とTENTIALとの強固な関係性構築を目指して、ブランド戦略本部を率いる。
横田:私たちブランド戦略本部は、競合企業・ブランドが多くひしめく中でお客様がなぜTENTIALを選んでいただくのか、そしてなぜ選び続けていただくのか、「Why TENTIAL(選ぶ理由)」の部分を強化することをミッションに考えています。
その中でも泉が率いるCRMグループでは、TENTALと一度でも接点を持っていただいた既存のお客様との関係をより深いものとすべく、F2転換(リピート購入率)やロイヤルユーザー比率の向上、ファン創出を指標として見ています。
パーソナライズ施策のカギとなる、行動データとは
顧客との関係性を深める上で重要なことや、課題について教えてください。
横田:人気商品である機能性パジャマ「BAKUNE」シリーズはLPでコンバージョンするケースが多く、ワークウェアやリカバリーサンダルなど他製品の認知が取れていないことが課題です。そこで既存顧客に対しクロスセルを促すことを重視しています。
泉:リカバリーウェアは、近年新しく市場に登場したカテゴリーのため、まだ「よくわからない」という心理状態の方が多いですね。まずは初めて買っていただいた顧客との関係を構築すべく、ステップメールなどのパーソナライズ施策を強化しています。
株式会社TENTIAL ブランド戦略本部 CRMグループ グループマネージャー 経営企画部 泉晃治氏 TENTIALのブランド戦略本部CRM(顧客関係管理)グループに所属。既存顧客との結びつきを強化してリピート促進やファン化につなげる取り組みを推進している。
パーソナライズ施策を、効果的に実現するためのポイントは何でしょうか。
青木:メールのパーソナライズは、従来性別や年齢などの属性で切り分ける方法が一般的でした。しかし、メールを打つ目的は「ユーザーが今どういう状態にいて、どんなフェーズに進んで欲しいか」が根幹にあるはず。その目的と施策をいかに紐づけるかがカギになります。
現在は、顧客がサイトに来る目的や興味を持った理由、重視する点まで多様化していますから、「どのコンテンツに触れた顧客がどのような行動をするか」という行動データの活用が必要です。「一度購入した人に一律にリマインド」などではなく、目的と手段を間違えず状況に応じた適切なパーソナライズを実行することがポイントですね。
属性ではなく「行動」で顧客のフェーズを切り分けるポイント
属性データではなく行動データを施策の起点にすることがカギ、ということでしょうか。
青木:そうですね。とはいえ、行動データの取得にはツールが必要だったりデータが散らばっていたりと、技術的なハードルが高いケースも少なくありません。
メールを配信するために都度SQLを書いてリストを作成しなければならないようでは、労力が上回って施策が軌道に乗らないでしょう。また、データ抽出のタイミングによっては時間差が生まれ、送りたい情報をタイムリーに届けることが難しくなる場合もあります。
顧客にとって見当違いなアプローチを避けるためにも、これらのハードルを超えて行動データを柔軟かつ誰でも簡単に扱える環境を整えることが重要といえます。
株式会社プレイド Customer Experience Designer 青木卓氏 プレイドでカスタマーサクセスを担当。クライアントの事業方針に沿いながら顧客の解像度を高め、よりよい顧客体験の届け方を一緒に考えていくことがミッション。プレイドが提供するプロダクト「KARTE」の活用支援も行う。
一人ひとりの状況に合わせた施策が可能な「KARTE Message」
TENTIALが行った取り組みを教えてください。
泉:「最適なお客様に、最適なタイミングで、最適なコンテンツを提供する」ことが重要だと考え、MAツール「KARTE Message」を導入してステップメールを構築しました。単純に「購入後◯日目に送信する」ではなく購入の目的や商品に応じてシナリオを分け、顧客一人ひとりに合わせた情報発信に着手しました。
TENTIALではギフト用購入も多いのですが、ギフト購入と自分用に購入いただいた方では、目的はもちろん、ブランドへの理解度も違います。実際に機能性を実感いただくことがリピートにつながる大きな要素だからこそ、ギフト購入層にはブランドストーリーや商品の開発背景、愛用者インタビューなど、ブランドを知っていただける情報を届けています。また、在庫切れの商品の再入荷情報をメールで通知する施策も実施しています。
ギフト購入と自分用に購入いただいた方とでその後のコミュニケーションを分岐
青木:当社が提供する「KARTE Message」では、サイト上にタグを埋め込むことで行動データを計測し、メール送信時のセグメントに利用することができます。それだけではなく、メール送信後の行動計測まで一気通貫で見ることができます。そのため、たとえば「カートに入れたが購入まで至らなかったユーザー」にメールを配信し、「その後サイト内でどのような行動をとったのか」「メール経由でどの商品がいくら購入されたのか」といったことがわかるなど、様々な条件で配信、分析できることが特徴です。
メールのクリック率50%以上、リピート購入率1.3倍に!
施策の成果はいかがでしたか。
泉:品切れ商品の再⼊荷通知メールは最も効果があり、開封からクリックに至る率は50%以上、クリックからのCV率も17%超という驚異的な成果が出ました。このような施策が奏功して、リピート購入率も前年比の1.3倍に。またステップメールの分岐もアクション数を増やし、顧客に情報を届ける機会が多くなりました。
「KARTE Message」ではサイト内・外の行動を一元化できることが大きなメリットです。青木さんがおっしゃったように、「このメールを送った人がサイト内でどういう行動をしたのか」がデータとして残りますし、顧客の解像度を高めるサイクルを回す上で、非常に役立っています。
またデータ基盤ともリンクできるため、メールリストを簡単に作成できるようになりました。これまでカラムを一つ追加するだけでも1週間ほどかかっていた工程が最短30分ほどで可能になるなど、施策実行までの時間が大幅に短縮されました。また、コンテンツもドラッグ&ドロップで作り込めるため誰でも容易に作成ができるようになり、属人化を解消できたことも大きな成果です。
社内のデータベース、外部サービスに蓄積された顧客情報を連携し、施策に活用できる
成果につなげるポイントについてご解説ください。
青木:「KARTE Message」によって行動データの管理から分析まで一気通貫で行え、PDCAサイクルを効果的に回す環境を実現できます。ユーザーの行動は「メールをクリックした・開封した」だけでなく、サイトで購入する、アプリを起動する、あるいは店舗に来店するなどチャネルを横断していますから、各接点での行動データを一元管理できることが重要です。
また、TENTIALさんでは「どういうユーザーがいて、何に困り、どういうコミュニケーションができていないか」という仮説をベースに、部署を横断しながら積極的に検証する仕組みがあります。数値目標ありきではなく、ユーザー目線での議論が活発ですね。
横田:TENTIALにはN1分析の文化が根付いており、定期的にロイヤルユーザー分析やヒアリングを実施しています。そしてテック・事業・マーケティング・ブランドの部署が集まり、各部署の視点を交えつつ横断的・多面的に顧客一人ひとりの行動を分析することで、仮説検証の精度を高めています。
「世帯マーケティング」戦略のもと新プログラムを実装
最後に、今後の展望をお聞かせください。
泉:多様化する顧客の悩みに応じて、ユーザーインタビューやデータ分析を通じた理解と、行動データの活用を今後も進めていきたいと思います。また、ロイヤルティプログラムを2024年5月よりスタートします。収集した行動データを活用し、顧客に価値を還元していきたいです。
横田:これまではCVR維持のため、簡易的な会員登録のみで購入できる構造にしていました。ロイヤルティプログラムでは顧客との関係性を強化し、ギフト需要を踏まえた「世帯マーケティング」を戦略に置いています。
リカバリーウェアなど家の中で着用する商品を贈る相手はパートナーや家族が多く、口コミから「自分も買おうかな」と購入につながりやすいです。つまり、世帯内での拡散と浸透が非常に強い商材といえます。家族の誕生日を登録することでポイントを付与するなど、世帯内での広がりに寄与できる仕組みを取り入れる予定です。
青木:ロイヤルティプログラムの新設などにともない、TENTIALさんではさらに施策の目的が細分化されていくと思いますので、短期的な顧客コミュニケーションだけでなく中長期的なコミュニケーションまで引き続き伴走してまいります。またKARTEは「個」のユーザー分析だけではなく、「群」で関係性の変化をつかんだり「面」で顧客接点をつなげたりしていく機能も拡充していますので、顧客理解の観点でもより適切な提案をしていきたいです。