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満足度向上からオーバーツーリズム解決へ。京都市観光協会が目指す「観光のCX」

満足度向上からオーバーツーリズム解決へ。京都市観光協会が目指す「観光のCX」

9th Feb, 2020

公益社団法人 京都市観光協会(DMO KYOTO)は、京都市の観光資源を活用したイベント企画や観光情報の発信、案内所の運営など、観光振興に向けた幅広い事業を展開しています。

同協会は2019年からKARTEを導入。観光客の満足度向上やオーバーツーリズムの解消に向け、京都大学経営管理大学院および弊社と共同研究を実施しています

研究を率いる同協会DMO企画・マーケティング専門官 堀江卓矢様に、KARTE導入や共同研究の背景、これまでの成果について伺いました。

観光客の「量」から、観光体験の「質」へシフト

——公益社団法人京都市観光協会(以下、観光協会)について教えてください。

京都市内の行政機関や学術機関と連携し、観光振興に向けた事業を展開しています。伝統行事や文化財を活用した観光事業の実施、「京都観光Navi」や「Kyoto Official Travel Guide」といった公式ウェブサイトでの情報発信、海外メディアへの情報提供や取材支援、観光事業者の経営支援をはじめとした受入環境整備、観光案内所や売店の運営などの事業を展開しています。

——堀江様はどのような業務を担当されているのでしょうか。

DMO企画・マーケティング専門官として、経営戦略の策定やデータ分析を担当しています。ちなみに、DMOとは観光庁の掲げる「観光地域づくり法人(Destination Management/Marketing Organization)」の略称で、テクノロジーを積極的に活用し、戦略的に観光振興に取り組む法人を指します。観光課題の解決に向け、KARTEを始めとするデジタルツールの導入やデータの活用を推進するのも私の仕事です。

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DMO企画マーケティング専門官・堀江卓矢氏

——京都市はどのような観光課題を抱えているのでしょうか。

近年、とくに課題となっているのは、交通機関や一部観光地の混雑のイメージ定着による客離れや、それに伴う観光客の満足度の低下です。京都市の統計においても、2016年を境に日本人観光客の満足度は減少し始め、外国人観光客の満足度も伸び悩んでいます。また、混雑や一部観光客のマナー違反などによって、地元住民の暮らしにもネガティブな影響が懸念されています。こうした状況を「オーバーツーリズム(※)」という表現で、数年前から注目されるようになってきています。

※オーバーツーリズムとは・・・特定の観光地にキャパシティ以上の観光客が訪れ、地域生活や環境、観光客の満足度を大きく損なっている状態。具体的には人混みや交通渋滞、騒音などのトラブルが挙げられる。

かつて、京都では観光客5,000万人構想を掲げ、「量」を目標に観光振興に取組んできました。しかし、2008年(平成20年)に5,000万人を達成したことをきっかけに、さらに「量」を拡大するためには、「質」の向上が不可欠であるということで、「量」から「質」への転換を図ってきました。こうした背景や、2016年にDMO法人として認定を受けたことも踏まえて、当協会では一人ひとりの満足度をいかに向上させるかということに着目した取組を開始し、試行錯誤を続けてきました。

——観光客の数だけでなく、観光体験の「質」も重要になっているのですね。満足度を向上させるために、何が必要だと考えられていますか。

観光客一人ひとりのニーズを的確に理解し、最適なイベントや訪問先、サービスを提案しなければいけないと思います。

京都には有名な寺社がたくさんあり、大勢で賑わっています。。けれども、訪れている人のなかには、本当は落ち着いた場所で過ごすことが好きなはずなのに、そうした潜在的ニーズに応えることができる他のスポットがあることを知るきっかけがなく、成り行きで訪れてしまっている人もいると思うんです。観光客自身も自分の潜在的なニーズに気づくことは難しいため、無数にある京都の観光スポットのなかから、自分にあった場所や体験を見つけ出すのは、そう簡単ではないでしょう。

そこでもし、観光客自身でも認識できていないニーズや関心を事前に把握することができれば、その人に最適な観光地やイベントを提案しやすくなり、観光の「質」の向上につなげることができます。ニーズや関心に応じて観光客の向かう場所を分散させることができれば、結果的に一極集中の緩和も期待できるはずだと考えています。

観光課題の解決は「ニーズを知る」ことから

——ニーズを知ることで、満足度向上だけでなくオーバーツーリズムの解消にもつながるのですね。ニーズや関心に沿った提案に向けて、どのような施策に取り組まれてきたのでしょうか。

施策以前に、まずはオンラインの行動データを収集・分析、マーケティングに活かすための環境づくりが必要でした。それまではマーケティング施策に対し、誰がどのように反応し、アクションしてくれたかといったデータが可視化されていなかったんです。観光客のニーズや関心を知る手段は紙のアンケートなどに限られていました。

私が観光協会に転職したのが2016年。当初は予算編成なども兼務していたので、2年ほどかけて「京都観光Navi」と京都市観光協会のWEBサイトとの統合リニューアルに取組みました。

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京都観光オフィシャルサイト「京都観光Navi

——その後、2019年にKARTEを導入されたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

前年にCRMツールを導入しましたが、このツールはメールアドレスを登録した人にしかアプローチができませんでした。私たちのサイトはECサイトではないですから、メールアドレスを登録する人が少なく、アクションを起こせる相手を増やすことにかなりの労力が伴うことになりました。

一方KARTEでは、サイトにアクセスした人の行動を把握し、メール以外にもプッシュ通知やポップアップなど、多様なタッチポイントでコミュニケーションできます。より多くの観光客と接点を持ち、ニーズや関心を把握する機会をつくれそうだと感じました。

また、CVを向上させるだけでなく、顧客理解に重点を置いている点も、私たちのやりたい方向性と合致していました。

——顧客との接点を増やし、理解を深めることが目的なのですね。実際に使ってみていかがですか?

「京都観光Navi」と「Kyoto Official Travel Guide」を訪れた人がどのページを閲覧したのか、行動ログで可視化されるので、一人ひとりが何を考え、どのような行動をしたのか仮説が立てやすくなりました。

仮説を立ててから、ABテストを行う際の手軽さも魅力です。KARTEの運用は私一人で担当しているので、バナーやポップアップなど、開発なしで簡単に文言やデザインを変更でき、素早く仮説検証のサイクルを回せるので助かっています。

観光客の目線に立って仮説検証を繰り返す

——導入に合わせて2019年8月からは京都大学と弊社と共同研究もスタートしています。どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

元々京都大学とは観光客の満足度向上に向け、データを活用したマーケティング手法の共同研究を進めていました。

KARTEの導入に向けて話をするなかで、プレイドの尾形さんから「共同研究にプレイドも加われないか」」と提案いただきました。観光協会としてはプレイドさんのマーケティングやデータ活用の知見を得られるのは大変心強いですし、プレイドさんにとっても、データ活用によって、オーバーツーリズムという社会課題にチャレンジする良い機会になる。お互いにとって良い取り組みになるはずだと考えました。

——おっしゃる通り、弊社にとって公共性の高い課題に取り組める、とても貴重な機会だと思っています。共同研究の内容についても詳しく教えてください。

混雑緩和と観光客の満足度向上に向け、KARTEを使って観光客のデータを解析しています。「京都観光Navi」と「Kyoto Official Travel Guide」でマーケティング施策の仮説検証を行なっています。

現在は2週間に1度、学生の皆さんと私、プレイドの担当の方数人が集まり、データの分析、KARTEを用いた仮説検証を進めています。学生さんもKARTEを活用して、施策の立案や分析を担ってくれています。

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京都大学での授業の様子(【京都共同研究】オーバーツーリズム解消に向けた取り組みへの注目度が本当に高いという話|研究日誌 vol.2)

——共同研究のなかで特に印象深い施策はありますか?

プレイドの尾形さんに提案いただき、京都市フリーWi-Fiのログイン画面にある「京都観光Navi」のバナーリンクのABテストを行いました。フリーWiFiは多くの観光客が利用するため、少しデザインを変更するだけで流入数が大きく変化します。検証を重ねるなかで、観光客のニーズや関心を示すデータも集まっています。

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「京都観光Navi」のバナーリンクのABテスト

また、中国語で「Kyoto Official Travel Guide」を閲覧している人に対し、「京都観光Navi」へ誘導するポップアップを表示しました。

——「京都観光Navi」は日本語のサイトですよね。中国語で閲覧している人を誘導するのはなぜなのでしょうか。

外国人観光客向けの施策を考えているときに、京都大学の中国人留学生が「中国人観光客のなかには、外国語だと情報量が少ないため、日本語で観光情報サイトを閲覧する人もいる」と教えてくれたんです。漢字だけでもある程度意味は理解できるそうです。

実際にポップアップを設置したところ、他の施策と比べても高いクリック率となったことが確認でき、中華系観光客による情報収集ニーズの実態を捉えることができました。

今後は、彼らが日本語サイトにおいてどのようなページを閲覧したのかなどを参考に、「Kyoto Official Travel Guide」のコンテンツの充実や、「京都観光Navi」との役割分担を整理していきたいです。

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中国語で「Kyoto Official Travel Guide」を閲覧している人に対し、「京都観光Navi」へ誘導するポップアップ

一人ひとりにとってベストな京都観光へ

——共同研究ならではの気づきが得られているのですね。これからKARTEをどのように活用していきたいと考えていますか?

KARTEのチャットやアンケート機能を使って、Webサイトを訪れた人と双方向のコミュニケーションを取っていきたいです。

2019年末からは「KARTE Talk」のチャット機能を活用して、「京都観光Navi」と「Kyoto Official Travel Guide」のトップページに、サイトを訪れた人が気軽に質問できるチャットを実装しました。これまで観光案内所では人数のカウントしかしておらず、どの国のどういう人たちが、どんなタイミングでどういった質問をしているのか、データが揃っていなかったんです。

今後はチャット機能を軸に、京都観光にまつわる要望やニーズを掬い上げ、マーケティング施策に活かしていきたいです。また、将来的にはオフラインの計測とオンラインのデータを連携させ、Webサイトで反応した人が現地に足を運んでいるのか把握できるようにしたいと考えています。

——最後に、今後どのような観光体験を目指していきたいのかを教えてください。

訪れる度にベストな京都が更新されるような体験ですね。例えば、一度目に有名なお寺を訪れた人が再び観光協会のウェブサイトを訪れたとき、別のお寺や関連するイベントをレコメンドするなど、一人ひとりに合った提案ができればと思っています。

一度訪れた人がリピーターになり、自分らしく京都を楽しんでもらえたら、自然と訪れる場所やイベントは多様化していくはず。それが遠回りのようで一極集中やオーバーツーリズムの回避に欠かせないと思います。

今はまだまだユーザーのデータを貯めている段階。これからKARTEの活用や共同研究によって様々なニーズや関心を掬い上げ、観光客にとってベストな京都観光を届けていきたいです。

——ありがとうございました。

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