ユーザーの喜びが循環する“正のループ”を回したい。マーケターやエンジニアの体験向上を目指すKARTE App
2020年5月、ローンチ後初となるメジャーアップデートを実施した「KARTE for App」。新機能の追加とSDKのOSS化によって一人ひとりに合わせた顧客体験の実現に貢献します。
「アプリでも、ユーザーに応じてコンテンツを出し分けたり、プッシュ通知を送ったりできないか」
KARTEをWebサイトに導入したクライアントのこうした声に応えるべく、2018年に「KARTE for App」をローンチしました。
KARTE for Appは、アプリでのユーザー行動をリアルタイムに解析し、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを図ることができます。リリースから約2年の間に、ECや人材、金融など幅広い業界で導入されてきました。
2020年5月には初のメジャーアップデートを実施。「ビジュアルトラッキング」や「リテンションレポート」といった新機能の追加やSDKのオープンソースソフトウェア化(以下、OSS化)によって、さらなるアプリの顧客体験向上を目指します。
今回は、KARTE for App事業責任者兼プロダクトマネージャーの棚橋寛文、リードエンジニアの古賀友規に、アップデートの内容や意図、クライアントに届けたい体験について聞きました。
仮説の精度を高め、スピーディーに検証するための新機能
──はじめにKARTE for Appがどのようなプロダクトなのか説明をお願いします。
棚橋 :アプリのユーザー行動をリアルタイムに解析して様々な切り口から可視化し、その上で柔軟にユーザーをセグメントしてプッシュ通知やアプリ内メッセージなど、パーソナライズされたコミュニケーションの配信まで一気通貫できるプロダクトです。
また、Web版のKARTEと併用すれば、Webサイトとアプリで分断されているデータをユーザー軸で紐付け、ユーザーをより立体的に理解できます。
例えば、通勤中にアプリで商品を検索し、帰宅後にWebサイトで購入しようとしたユーザーがいた場合、Webサイトを訪れた際にアプリで検索した商品をポップアップ表示できます。
ユーザーを数値やデータではなく、ひとりの「人」と捉え、Webサイトとアプリを横断した体験を届けられる点がKARTEの特徴です。
──今回のメジャーアップデートで何が変わるのでしょうか。新機能が2つあるそうですが、1つ目の「ビジュアルトラッキング」はどのような機能でしょうか?
棚橋 :ビジュアルトラッキングとは、アプリの行動データの計測のために必要なイベントの設定をより簡単に、効率的に行うための機能です。
ウェブと違い、アプリでは画面閲覧などのイベントもすべて個別に実装する必要があり、またアプリの申請やユーザー側でのアップデート対応などもあり、一つイベントを追加するにもエンジニアの工数と時間がかかります。
ビジュアルトラッキングの機能を使うと、計測したいイベントを実装の手間なく管理画面上で簡単に発生させることができるので、すぐに取りたいイベントを計測することができます。
──通常イベント実装にはどのくらい工数がかかるんですか?
棚橋 :どれくらいの量のイベントを実装するかにもよりますが、実装、検証、反映まで含めると2~3週間程度はかかるケースが多いと思います。
開発が終わったら、アップデートをストアに申請しなければいけない。申請しても審査が通らない可能性もありますし、ユーザーがアプリをアップデートしてくれないと計測が開始されません。
KARTE for AppのSDKを導入しているアプリで、ビジュアルトラッキング機能を使えばイベント実装に関する工数を大幅に削減できます。運用する中でイベントを追加したいという時にも、管理画面から設定するだけですぐに計測が開始されるので、ユーザー行動を計測して分析したり、プッシュ通知やアプリ内メッセージなどのマーケティング施策をより良くするための学習ループを素早く回せます。
──具体的にどのような手順で設定できるんですか?
棚橋 :管理画面からの操作のみで簡単にイベントの設定ができます。
管理画面に表示されるQRコードをスマートフォンで撮影し、アプリを起動します。その状態でアプリを操作し、計測したい行動、例えば特定の画面を閲覧したり、お気に入りボタンをタップしたりすると、管理画面に「画面表示」や「タップ」などの操作のログが表示されます。そのログに名前をつけて保存すると、その行動がイベントとして追加され、それ以降に同じ行動をしたユーザーで設定したイベントが発生します。開発することなく、およそ2、3分で新しいイベントを設定できるようになります。
このような方法でイベントを設定できるプロダクトはあまりないと思うので、β版を利用したクライアントからも「こんな簡単なやり方があったのか」と喜びの声をいただいています。
参考:KARTE for App 新機能|ビジュアルトラッキングで管理画面からアプリのイベントを簡易計測、開発工数の削減にも貢献!
──2つ目の新機能「リテンションレポート」について教えて下さい。
棚橋 :その名の通り、ユーザーのリテンションレート(継続率)を把握するための機能です。端末の情報やユーザー属性、行動データなどからセグメントを作成し、各セグメントごとの継続率を閲覧できます。
例えば、年齢によってどのくらい継続率が違うのか、初回起動のときにどのような行動をしたユーザーが継続しているかなど多様な切り口での分析が可能です。
──継続率を確認するだけでなく「なぜそうなったか」を深堀りするための機能なんですね。
棚橋 :その通りです。日ごろ、アプリ事業者の方々と話していると、リテンションレートを重視している一方、「既存のツールだと全体的な傾向しか把握できず施策につなげられない」という課題をよく聞きました。その課題にKARTE for Appで何ができるかを考え、機能に落とし込んでいったんです。
参考:KARTE for App 新機能|3つのリテンションレポートでアプリの継続率を様々な切り口で分析可能に
エンジニアが安心して導入できるプロダクトをつくる
──続いて、SDKのOSS化について教えてください。
古賀 :OSSはソースコードが公開され、一定の決まりのもとで改変や再配布が認められているソフトウェアです。代表的な事例としては、Googleの提供しているモバイル向けOS「Android」や、ブログプラットフォーム「Wordpress」などが挙げられます。
これまでKARTE for AppのSDKはOSSではなく、クローズドソース。つまり外部からソースコードが見えない形で提供していました。OSS化によって今後はインターネット上でソースコードが閲覧できる状態になります。
──OSS化したのはどのような理由があったのでしょうか?
古賀 :プロダクトの透明性を向上させ、クライアントに安心感をもってKARTE for Appを導入、利用してほしいと考えました。
KARTE for Appの導入を検討する場合、エンジニアは「アプリの挙動に悪影響がないか」を必ず調査します。その際、クローズドソースだとソースコードがわからないので、確信を持って影響の有無を判断するのは難しい。そのため、導入に慎重だったクライアントもいらっしゃいました。
OSS化すればソースコードはもちろん、ソースコードの変更内容や、顕在化している不具合の内容、開発に貢献しているエンジニアの人数といった情報等もオープンになります。
また、導入してからSDK側でエラーやクラッシュが発生したときも、ソースコードが公開されていればどのソースが原因になっているのかをクライアントサイドのエンジニアが自ら確認することができ、素早く問題解決を図ることが可能になります。
“ユーザーの喜び”を実感できる瞬間を増やしたい
──アップデートしたKARTE for App、クライアントにはどのように活用してほしいですか?
古賀 :仮説検証を効率的に回すために活用してもらいたいですね。
特にエンジニアには、リアルタイムなセグメント分けや柔軟なアクションなどKARTE for Appが得意な部分は任せてもらって、自社のアプリにおけるコアな機能の企画や開発に全力を注いでいただけたら嬉しいです。
──そのほかにKARTE for Appで実現したいことはありますか?
棚橋 :マーケターやエンジニアがユーザーの喜びを実感できる瞬間を増やせたらと思っています。
数字だけを見て無機質に対応するのではなく、一人ひとりのユーザーが何に困っているのかを理解し、解決のための施策を実行する。それに対し「ユーザーが本当に喜んでくれた」とか「良い体験に繋がった」と感じられる。
そうした体験はさらに改善しようとする意欲や新たなアイディアにつながり、エンドユーザーの体験をより良いものにしていくと思います。KARTEやKARTE for Appが媒介となって、そんな“正のループ”が回っていく世界を実現したいですね。
──その実現に向けて、二人の今後の展望を教えてください。
古賀 :エンジニアの立場でいうと、OSS化によってSDKに対するフィードバックを得やすくなるので、その声をプロダクトの改善につなげていきたいですね。将来的には世界中のエンジニアとともにKARTE for Appの開発を進められたら良いなと思っています。
棚橋 :クライアントの要望に応えるだけでなく、その奥にある本質的なインサイトや課題を深堀りし、解決していきたいですね。KARTE for Appが本当に提供すべき価値とは、を常に突き詰めていきたい。
今回の新機能もそういった試行錯誤の末に生まれました。その結果、どちらもユニークな価値のある機能になり、嬉しく思っています。
今後も何かをベンチマークするのではなく、KARTE for Appならではの方法で、顧客体験の向上に貢献していきたいですね。