マーケターが安心して便利に使えるパーソナライズ配信を。データを活用したメッセージ配信が可能になる「KARTE Message」開発の背景
KARTE Messageの事業責任者の山本、プロダクトマーケティングの冨里、プロダクトカスタマーエンジニアの和田に、KARTE Messageの特徴や開発の背景、プロセス、今後の展望を聞きました。
プレイドが新たに開発した、KARTE版MA(マーケティングオートメーション)とも言える「KARTE Message」。2022年11月にβ版をリリースし、企業への導入が進んでいます。
KARTE Messageにより、これまでKARTEが強みとしてきた、サイトやアプリ”内”における顧客軸のデータの可視化と柔軟なアクションの実行に加えて、サイトやアプリの“外”においても一人ひとりを知り、合わせることが可能になります。
今回は、KARTE Messageの事業責任者の山本、プロダクトマーケティングの冨里、プロダクトカスタマーエンジニアの和田に、KARTE Messageの特徴や開発の背景、プロセス、今後の展望を聞きました。
パーソナライズ配信をめぐるデータや知識のハードルを下げる
はじめに、KARTE Messageがどのようなパッケージか教えてください。
山本:メールやプッシュ通知などサイト外のチャネルにおいて、顧客の属性や行動に合わせたパーソナライズ配信を支援するパッケージです。
KARTE Messageでは、SQLを書かずにセグメントの絞り込みができ、伝えたい顧客に合わせたタイミングで、メールやプッシュ通知などのサイト外でのコミュニケーションを実施できます。
KARTEの行動データと自社のデータを統合して施策などに活用できるプロダクト「KARTE Datahub」を活用して、KARTEで取得する行動データだけでなく、社内の基幹システムやPOSのデータなどを含めて、配信に活用する顧客リストをGUIで作成できます。
リスト管理から配信コンテンツ作成までの流れ
作成した顧客リストをもとに設定したキャンペーンを、特定のタイミングに合わせて自動で配信もできます。たとえば、顧客の誕生日に合わせてお祝いのメールを送る、過去に閲覧した商品がセールになったらプッシュ通知を送信するなど、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを最小限の工数で実現できます。
また、サイト内外の施策を管理できる機能「Journey」との連携により、カスタマージャーニーに沿ったシナリオをワンストップで設計・検証・改善まで行うことも可能です。クリックや閲覧など顧客の行動によって分岐を作り、メールやプッシュ通知などの施策を自動で配信するよう設定できます。施策が顧客体験にどう貢献しているかを俯瞰して、効率的かつ効果的に仮説検証を回せます。
Journeyの管理画面イメージ
さらに、配信施策の成果をわかりやすく可視化するレポート機能も備えています。メールの開封率やプッシュ通知のクリック率といった定番の指標に加えて、KARTEで取得するイベントをもとにウェブやアプリでのコンバージョンまで計測できます。
メールやプッシュ通知を受け取った顧客がその後にどのように行動したのか。施策がコンバージョンに寄与したのかを把握し、改善に生かせます。
メールの開封率やクリック率だけでなく、クリック後の購買アイテムや金額などまで確認できる管理画面のイメージ
SQLなどの知識がなくても、簡単にパーソナライズした配信を実行できるのですね。
和田:簡単かつ素早く配信を始められる点は、大きな特徴だと思います。KARTE Datahubがデータ基盤として使われているため、配信にあたって必要なデータの整形や加工も、プレイドのメンバーが細かくサポートできます。データが整っていないと言う方には「メールアドレスと顧客IDのリストさえあれば配信を始めることができます」とお伝えすることもあります。最短で2週間で導入、検証が可能です。
和田 吉平:プロダクトカスタマーエンジニアとして、KARTE Messageの実装・活用の支援、得られたフィードバックや課題の社内共有、改善提案などを行う
一人ひとりに合わせたメッセージを届けるための障壁をなくす
KARTE Messageはどのような背景から開発したのでしょうか?
冨里:業界における課題意識と、KARTEの機能をよりよくしていく延長線という2つの点があります。前者は、メールマーケティングに対する課題意識です。昨今、企業から毎日読みきれない量のメールを受け取っている顧客は少なくないと思います。しかも大量に受け取ったメールのうち「これは自分に関係があるな」と思って開きたくなるものは限られているはずです。
こうした事態が起きている要因の一つは、一斉配信が妥当だと考える環境になってしまっているからだと思います。
パーソナライズした配信を行うには、属性や行動などのデータを配信ツールに連携させたり、リストを作成したりと、複雑な設定が必要です。その分、工数もかかりますし、マーケターだけでは対応するのが難しい場合も多い。
一方、メールアドレスのリストにもとづく一斉配信であれば安価なツールで簡単に行える。極端な言い方をすれば、一通送っても、一億人に送っても工数はあまり変わりません。
安く、簡単に、大量に送れるからこそ、開いてもらえる可能性がなくても「送っておこう」と考えてしまいやすい。
冨里:もちろん、安価にメールを配信できる便利なツールがあるのは素晴らしいことです。一方、受け取る側にとって大量に関係のないメールを受け取るのはポジティブな体験ではありませんよね。それに送る側も、一人ひとりに合わせたメールを送りたいと思っているのに、データやシステム面、コスト面の壁があって実現できていないケースもあります。
こうした、送る側と受け取る側の課題を解消するためにKARTEに何ができるのか。考えた結果、パーソナライズ配信のハードルを下げ、コストパフォーマンスを高めることに挑戦しようと考えました。
冨里 晋平:KARTE Messageの認知拡大などプロダクトマーケティング全般を担当
山本:KARTE側の背景として、配信機能の課題もありました。
これまでKARTEでメールやプッシュ通知などを配信するには、ターゲット配信 という機能を使っていました。これは、KARTEや外部ツールのデータをもとに作成したセグメントを使って、配信対象の顧客やスケジュールを設定、一斉配信を行える機能です。
従来の機能でも、顧客の属性や行動に合わせてパーソナライズしたメールやプッシュ通知を送ることはできます。ですが、メールの配信は外部ツールとの連携が必須かつ一斉配信できる件数は30万件まで。
また、KARTE以外のツールのデータを連携させるには、SQLを書いて高度な設定を行わなければいけませんでした。データ連携の手間がかかってしまうと、担当者の工数が多くかかってしまいます。
こうした既存の配信機能の制約を取り払いたいという考えも、開発した背景にはありました。
山本哲生:KARTE Messageの事業責任者として、プロダクトの方針・戦略策定や採用含めチームビルディング等を担う
マーケターが安心して便利に使えるように磨き込み
どういったプロセスで開発を進めてきたのでしょうか?
冨里:まずは、外部ツールを使わずに配信するための基盤を開発しました。KARTEは大規模な顧客を持つ企業の利用も増えているので、膨大な数の配信に対応できるスケーラブルな基盤が必要です。この基盤を1年半ほどかけて作り込みました。
そこから、SQLを書かなくても簡単に配信リストを作成できるGUIの機能を形にしていきました。
約1年前にその機能が完成し、KARTE Messageのクローズドβ版をリリース。先行活用しているKARTE Friendsからフィードバックをもらいながら機能を改善してきました。
クローズドβを利用したKARTE Friendsからは、どのようなフィードバックがあったのでしょうか?
山本:メールやプッシュ通知は顧客に一度送ってしまうと取り消せません。そのため、配信するメールに問題がないかの確認をしたいという声が多く寄せられました。
プレビュー画面からすぐにテスト配信を行えるようUIを設計したり、プレビュー自体の速度を向上させたりと、マーケターが安心して配信できる状態を実現することを意識しました。
和田:マーケターが安心して送れるかに加えて、マーケターにとって使いやすいかについても意見をもらいました。フィードバックが多かったのは、配信する内容に商品データを反映させる機能ですね。
例えば、最初の頃は顧客がカートに入れたまま決済しなかった商品を通知する配信は、カート内の商品数が可変だったため実現ができませんでした。
活用いただいているお客様から、商品数が顧客ごとに違う施策が多いということを伺い、商品数が可変でもメールやプッシュ通知に埋め込むことを可能にする開発を行いました。
これらの声を機能に反映していった結果、以前にも増してお客様がやりたいと思うことが実現できるようになりましたし、商品データを配信内容に埋め込む操作も、よりシンプルになりました。
冨里:さまざまなフィードバックを踏まえて改善を重ねた末、2022年の11月にβ版の提供を開始しました。
データの制約ではなく「顧客のために何をするか」から考えられる
β版の提供を開始して、どんな反響がありますか?
山本:KARTE Messageの導入時に、データの制約条件にとらわれず「どんな施策を実現したいか」を考えられる点やプレイドとそのような議論ができる点を評価いただいています。
導入を検討している方のなかには、過去にMAツールを導入して配信を始めようとしたのに、そもそもデータが溜まっていなかったり、データ連携がうまくいかなかったりといった苦労をしてきた方もいます。そうした経験があるからこそ「施策の前にデータ周りの制約や課題をどうクリアするかを話さなければいけない」と思っている方も少なくありません。
KARTE Messageの場合、導入を検討している方と「どういう施策をやりたいか」の発散や整理をし、最後にデータをどうするかの話をします。データの整形や加工、連携における課題はプレイド側で「何とかできる」からこそ、やりたい施策の話から始められる。そこは価値を感じてもらえているポイントだと思っています。
冨里:導入後、やりたい施策が増えていったときに、対応の幅が広いのもKARTE Messageの利点だと思います。
まずはメールやプッシュ通知が一斉に配信できるツールを導入し、その後に自動化が必要になり別のMAツールを導入するなど、配信において複数のツールを導入している企業は少なくありません。
KARTE Messageはセグメント配信や配信の自動化、シナリオ設計・検証など多様な機能を備えています。メールやプッシュ通知の配信にまつわる施策の実施を一つのツールで完結させられるのは大きなメリットかと思います。
さらに、メールやプッシュ通知などの配信以外の施策を実施したい場合も、KARTE Datahubに蓄積したデータをKARTEの他のプロダクトに連携することで簡単に実現できます。
実際にKARTE Messageを導入して、しばらく経ってから「送った後の振り返りやサイトでのコミュニケーションも大事」と思うようになり、サイトにもKARTEを導入したKARTE Friendsもいらっしゃいます。
KARTE Messageをきっかけに、他のKARTEのプロダクトの導入に至ったケースもあるのですね。すでにKARTEを利用している顧客にとっての利点や価値はいかがでしょう?
冨里:すでにKARTE Datahubに溜まっているデータを、複雑な設定や開発を行わずにメールやプッシュ通知などの配信に利用できる点は価値だと思います。すでにKARTEを利用していれば、比較的容易にチャネルをまたいで一貫性のあるコミュニケーションを実現できます。
たとえば、サイトやアプリでKARTEを使っていれば、サイトでよく閲覧しているコンテンツに合わせた内容のメールを配信したり、アプリの利用頻度に沿ってプッシュ通知の内容や頻度を出し分けたりできます。
体験向上と事業成長のドライバーへ、KARTE Messageは進化する
β版の提供を経て、KARTE Messageは今後どのようなことにチャレンジしていく予定ですか?
和田:まずは、LINEやSNSでのメッセージ機能などチャネルを増やしていくこと。お客様の使うコミュニケーションツールは年代によっても異なりますから。チャネルをまたいだコミュニケーションに対応していきたいです。
また、今回リストの作成やデータ連携をノーコードで実現しているので、次はメールのコンテンツ作成機能も拡充したいです。本文の作成やデータ・画像の埋め込みを、より簡単かつ柔軟に行える機能を実現できればと思います。
山本:使いやすさと同時に、安全性も担保していきたいですね。特に個人情報のマスキングや社内の権限設定にまつわる機能は重要です。個人情報の共有や閲覧にまつわるルールが厳しい企業でも、問題なく使えるように作り込んでいきます。
マーケターにとっての使いやすさと安全性をさらに強化していくのですね。
冨里:「誰にとって効果があったのか」や「事業にどんな影響があったのか」についても可視化したいと思っています。
現状のKARTE Messageでも、配信したメールやプッシュ通知がどのような行動につながったのか、購入などのコンバージョンに寄与したかは一定把握できます。
ですが、もう少し中長期的な顧客の変化を捉えることも重要だと思っています。たとえば、3ヶ月間メールを開いてくれなかった人が、今回のメールをきっかけに開いてくれたとか、半年サイトを訪れていない人が、このプッシュ通知から流入したとか。
単純に「メールを開いた」や「商品を買った」だけではなく、顧客への影響や事業のインパクトも把握し、改善に活かせるようにしたい。
そうやって進化していけば、KARTE Messageは顧客の体験向上はもちろん、事業成長のためのドライバーにもなり得ると、これまでの手応えから感じています。
他のKARTEのプロダクトとの連携で考えていることはありますか?
冨里:プレイドは複数のチャネルからデータを蓄積し、顧客軸での解析・可視化を行い、それらをあらゆるチャネルで活用、顧客の体験に還元する新しいプラットフォームをつくることを目指しています。
これまでは主にサイトやアプリといったチャネル向けのプロダクトを提供してきましたが、近年は広告効果の改善を支援する「KARTE Signals」や、カスタマーサポートにおける顧客の行動把握・サポートを行う「KARTE RightSupport」と、多様な領域・チャネルでの施策をカバーできるようになりました。
プレイドグループのプロダクト/サービス
個人的にはKARTE Messageを始めとする、この1年間に新たに登場したプロダクトによって、ようやく「CXプラットフォームです」と胸を張って言えるようになった気がします。
今後もマルチチャネル化を進めることで、どのKARTEのプロダクトから使い始めても、KARTE Datahubに溜めるデータを活用して施策の幅を広げ、よりよい体験を次々と形にできる。そんな世界観を目指していきたいと思っています。