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アプリの成長に、ユーザーとの関係構築は必須に。ユーザーのエンゲージメント向上を支える「KARTE for App」の進化

アプリでのユーザー行動をリアルタイムに解析し、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実現する「KARTE for App」。2023年3月、ユーザーのエンゲージメント向上を支援するプロダクトへと進化を遂げるべく、3年ぶりのメジャーアップデートを発表しました。今回は「KARTE for App」プロダクトマーケティングマネージャーの矢ノ目、プロダクトマネージャーの四十に、アップデートの背景や新機能の特徴、活用事例を聞きました。

アプリでのユーザー行動をリアルタイムに解析し、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実現する「KARTE for App」。2018年3月のリリース以来、幅広い業界・業種のアプリで導入され、ユーザー体験の向上によるアプリの成長に寄与してきました。

2023年3月には、ユーザーのエンゲージメント向上を支援するプロダクトへと進化を遂げるべく、3年ぶりのメジャーアップデートを発表。カスタマージャーニー設計機能「Journey」やプッシュ通知配信の最適化機能「KARTE Message」、プッシュ通知のストックコンテンツ化機能「Inbox(β版)」を追加しました。

なぜ今「エンゲージメント」に焦点を当てて機能を拡充したのか、アップデートによってアプリ事業者に届けたい価値とは。今回は「KARTE for App」プロダクトマーケティングマネージャーの矢ノ目、プロダクトマネージャーの四十に、アップデートの背景や新機能の特徴、活用事例を聞きました。

アプリ成長の要は、短期の施策改善から中長期の関係構築へ

はじめに、今回のアップデートの背景を伺えますか。

矢ノ目:KARTE for Appは2020年に前回のメジャーアップデートを実施しました。それ以降も、アプリ市場は変化し続けています。

ユーザーの持つ端末の性能は向上を続け、アプリで実現できる機能やデザインの幅が広がりました。それに伴い、ユーザーがアプリに期待する体験の基準も高まっています。市場にアプリが溢れる中、目の肥えたユーザーが限られた時間やお金をどのアプリに費やすかを考えている状態。市場の競争はより激しくなっています。

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矢ノ目亮 やのめ・りょう
経営工学修士号を取得後、新卒でサイバーエージェントに入社。ソーシャルゲームプランナーとしてキャリアを始める。2015年に当時7名のLink-Uに加わり、『マンガワン』をはじめとしたマンガアプリのグロース全般を担当する。マザーズ・東証一部市場への上場を経験した後、2021年にプレイドに参画。現在はプロダクトマーケティングマネージャーを担当。

市場の変化に、アプリ事業者はどのように対応しているのでしょうか。

矢ノ目:短期的な施策の成果だけでなく、中長期的な顧客との関係構築も見据えてアプリ改善に取り組む企業が増えている印象です。

2020年頃までは、アプリの成長における「リテンション」の重要性が広く認識され、リテンションレート向上のための施策に注力する企業が多かったんです。

しかし、今は個々の施策改善をやり尽くし、成果の限界を感じている企業も少なくありません。個々の施策を積み重ねるだけではなく、ユーザーにとって価値ある体験を継続的に提供できなければ、アプリを使い続けてもらえないという理解も進んでいる印象を受けています。KARTE for Appを利用する企業においても、結果指標としてリテンションのみに注目するのではなくユーザーとの関係性を示すエンゲージメントに関心が移っていると感じます。

そうしたアプリ事業者のニーズに応えたい、KARTE for Appが貢献できる余地は大きいはずだという思いが、今回のメジャーアップデートの背景にあります。

中長期的なエンゲージメント向上に課題を感じるアプリ事業者に対し、なぜKARTE for Appが貢献できる余地は大きいと考えたのでしょうか。

四十:ローンチ当初から、KARTE for Appは中長期的な顧客との関係構築を見据えて、深い顧客理解と柔軟なアクションのための機能を拡充してきました。顧客一人ひとりを「知り、合わせる」というKARTEの思想に沿って、アプリにおいても“一人”のユーザーまで掘り下げて、行動や感情を詳しく分析するアプローチを採っているのは、KARTE for Appのユニークな点だと思います。

さらに、多様な機能を使って事業やアプリの成長を支援する人材も社内に揃っていますし、必要な実践知も貯まっています。

エンゲージメント向上に必要な機能はもちろん、必要な人材や知見といった面でも大いに貢献できるのではないかと考えており、まずは今回、機能面での大幅なアップデートにいたりました。

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四十岳洋 よと・たかひろ
WEB制作会社、事業会社などを経て2022年プレイド入社後よりKARTE for Appのプロダクトマネージャーとして従事。

個別施策だけでなく「ユーザー体験がよくなっているか」を考える

エンゲージメントの向上ために、新たに加わった機能について教えてください。まず、カスタマージャーニー設計機能「Journey」はどのような特徴があるのでしょうか?

矢ノ目:「Journey」は、複数の施策が連動した体験全体を俯瞰しながら、各施策を設計・実装、検証できる機能です。

どのようなニーズを抱えるユーザーに、どのタイミングで、どのような行動をし、どのような状態になってほしいのか。理想とするユーザー体験をもとにシナリオを設計し、施策を実装できます。各施策の最適化はもちろん「ユーザーの体験全体がよくなっているのか」という視点も持って、改善と向き合えます。

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ユーザーの絞り込みや条件分岐のほか、各施策のABテストも設定できます。施策の成果やABテストの結果、シナリオで達成したいゴールの達成率なども、一つの画面上で一覧化されるため、成果に寄与している施策、あるいはボトルネックとなっている施策を発見し、改善のためのアイデアにつなげられます。

先ほどお話されていた「個々の施策を積み重ねるだけではなく、ユーザーにとって価値ある体験」を提供できているかに向き合いながら、改善を回せそうですね。

矢ノ目:そうですね。それらを直感的なUIでノーコードで設定できるのも、「Journey」の大きな特徴です。エンジニアでなくても、シナリオの設計から実装までを行えるので、仮説の実行から改善、顧客理解を深めるサイクルを早められます。

また、リリース前から活用いただいている企業では、機能を使う“楽しさ”への言及もありました。オンラインホワイトボードやブレインストーミングツールのような画面で、手を動かしながらアイデアを練る。その体験がパズル的で楽しいとおっしゃっていました。

個人で施策を担当する方にとって使いやすいのはもちろん、チームでアイデアを発散したり、成果を振り返ったりする際にも、効果的に使っていただけるのではと考えています。

「Journey」を先行利用中の企業ではどのようなシナリオを設計・実装しているのでしょうか?

矢ノ目:集英社公式のマンガアプリ電子書籍アプリ『少年ジャンプ+』では、新規ユーザー向けのシナリオを設計し、体験の改善につなげています。新規ユーザーにアプリを使い続けてもらえるかは、面白いマンガと出会えるかに大きく左右されます。そのため、編集部がお勧めする人気の3作品をユーザーに読んでもらうまでのシナリオを設計し、施策を行っています。

具体的には、ユーザーの現在読んでいる作品やステータスに合わせて、人気のある3作品を段階的におすすめしています。例えば、初回は、3作品すべて(作品A, B, Cとする)を掲載したポップアップを表示し、ユーザーが作品Aを選んだら、次は作品Bをフィーチャーして訴求する…といった流れです。

最近始めた施策なので改善の効果が出るのはこれからですが、すでに「作品Bを先に読んだ人のほうが、次の作品を読んでいる人が多い」などの傾向が見えてきています。それらを活かしてシナリオを改善していくのが楽しみです。

すでに具体的な成果が出ている活用事例もあるのでしょうか?

矢ノ目:はい。株式会社セブン銀行の『Myセブン銀行』では、30日以上利用がないユーザーに向け、再度利用を案内するプッシュ通知のシナリオ配信施策を実施しています。

Journeyでは、「30日以上利用がない」などといった休眠ユーザーもクエリなしで抽出でき、プッシュ通知を送る間隔も画面上で簡単に設定できるため、施策の実現にかかる時間も短縮できました。施策の結果、30日以上休眠をしたユーザーのうち、10%程度が再びアプリに来訪するという成果につながっています。今は再来訪後も継続して使ってもらうための施策を検討していらっしゃいます。

また、株式会社ぐるなびの『ぐるなびアプリ』では、新規ユーザーが初めての飲食店利用予約をスムーズに行えるよう、オンボーディングのシナリオを「Journey」で設計、実装されています。ユーザーのステータスに合わせてモチベーションを分け、それぞれに合わせて適切な分岐を設定した結果、従来の施策比で、およそ2倍の予約率向上が実現しているそうです。

ぐるなびの担当者の方からは「ユーザーのステータスに応じてモチベーションを区分し、適切な分岐を伴った線のコミュニケーションに進化させられた結果だと手応えを感じています」とおっしゃっていただき、大変嬉しかったです。

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大規模なプッシュ通知配信も、ノーコードで個別最適化

エンゲージメントを高めるためには、アプリのユーザーとのコミュニケーションも重要かと思います。メジャーアップデートを行ったKARTE for Appではコミュニケーション面にはどのような変化があったのでしょうか。

四十:「KARTE Message」と「Inbox(β版)」という新機能を実装しました。どちらもアプリ体験において重要なプッシュ通知にまつわる新機能です。

「KARTE Message」では、KARTEで計測したデータや外部から連携したデータをもとに、SQLなしでターゲットリストを作成できます。内容や頻度、属性や行動に沿ったプッシュ通知の設定を、一定以上複雑なものでなければ、ノーコードで行えるようになりました。1配信あたり数百万ユーザー規模のプッシュ通知に対応しているので、ユーザー数の多いアプリにおいても、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを行えます。

先行利用中の株式会社radikoでは、ラジオ配信プラットフォーム『radiko』において、外部DMPのデータとKARTEの行動データを使い、ユーザーの利用状況や聴取した番組に応じて、プッシュ通知の内容や頻度を出し分けています。社内のマーケターのみで配信の設定が完結するため、開発・運用工数も減少。クイックに施策の検証を繰り返すことができ、MAUなどのKPI数値の改善に手応えを感じていると伺っています。

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開発・運用工数が限られていても、プッシュ通知における細やかなパーソナライズを行いやすくなったのですね。「Inbox(β版)」は、どのような機能でしょうか?

四十:InboxはKARTEから送信したプッシュ通知のメッセージ情報を保存できる機能です。ユーザーごとに蓄積されたメッセージ情報を、KARTE for App SDKを介して取得することが可能になります。

Inboxを活用することで、一度ユーザーに送ったプッシュ通知の内容を、アプリ内のコンテンツとして再利用できるようになります。これにより、たとえばユーザーが重要なプッシュ通知を見逃してしまった場合に、再度アプリ内で情報を届けるといったアクションも可能になります。プッシュ通知を起点として、アプリにおけるユーザーとのコミュニケーションをより円滑にし、エンゲージメントを促進することを目指す機能です。

「できたらいいな」ではなく必要条件。アプリでも“一人の顧客”と向き合う

最後に、これからの展望について伺えますか。

矢ノ目:前提として、モバイルアプリは企業やブランドにとって、重要な接点であり続けると思います。スマートフォンを持つ人は、92%の時間をアプリの利用に費やしているという調査結果もあるほど、アプリは人々の日常に入りこんでいます。いつでも携帯している端末から、ワンタップでアクセスできる、とても身近な接点です。

だからこそ、ニーズや文脈に沿わないコミュニケーションはオフにされてしまう。KARTEが向き合ってきた一人ひとりの顧客を「知り、合わせる」ことは、アプリの体験向上において「できたらいいな」ではなく、必要条件になっていくはずです。

その上で実現したいのは、アプリのネイティブの要素を簡単に編集できる機能です。ポップアップのように画面上に要素として重ねるのではなく、アプリの機能やデザインの中に自然に組み込む形で、ユーザーにアクションできるようにしたいです。

また、自社のツールに蓄積されたデータとKARTEのデータを連携させ、施策を行う際のハードルを無くしていきたいです。人材やシステム面の障壁があっても「KARTE Datahub(KARTEの行動データと自社のデータを統合して施策などに活用できるプロダクト)」を使って、データ連携施策を実現した事例も増えつつあります。もっと数を増やし、ナレッジを発信していく予定です。

四十:矢ノ目が話したように、ネイティブの要素も含めてアプリ体験を改善する際、メンテナンスや改善にかかるコストが事業者にとって大きな壁になると思います。そこをKARTE for Appの機能で効率化していきたいですね。

また、これまでもKARTEは一人のユーザーを深く分析する機能、属性や行動などでグループ分けして分析する機能、そしてカスタマージャーニーを設計・検証する機能など、ユーザーを多面的に捉え、理解を深めるサポートをしてきました。

ですが、まだまだ掬い上げられていないお客様の課題やニーズは存在するはず。今後も私たち自身が、一人ひとりのアプリ事業者、ひいてはエンドユーザーの声に向き合い、KARTE for Appとして提供できる価値を最大化していきたいです。

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