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企業と顧客の媒介者となる「聞き手」。熱量あるストーリーを生み出すために大切な姿勢とは

企業と顧客の媒介者となる「聞き手」。熱量あるストーリーを生み出すために大切な姿勢とは

18th Oct, 2021

2021年6月23日〜24日、「CX(顧客体験)とEX(従業員体験)のつながりを考える」をテーマにしたカンファレンス「Experience Day 2021」を開催しました。

「ストーリーがEXとCXを高める。熱量が循環する情報発信に欠かせない聞き手とは」と題して行われたセッションには、キリンホールディングス株式会社コーポレートコミュニケーション部の平山高敏氏、スマートニュース株式会社のエグゼクティブ・コミュニケーション / クリエイティブ・ディレクターである原田朋氏が登壇。モデレーターは弊社のCommunication Directorの川久保が務めました。

企業がオウンドメディアやSNSアカウントを開設し、自社の情報を発信することが当たり前になっている昨今。情報発信のハードルは下がっている一方で、ただ発信するだけでは山のようにある情報に埋もれてしまい、顧客に届けるのは難しくなっています。

では、企業が顧客に「届く」発信をするためにはどうすればいいのでしょうか?今回は組織の中で発信活動を担い、各所から様々な情報を引き出しながら、企業と顧客の媒介者となる「聞き手」に着目します。

本セッションでは企業の内側からストーリーを発信し、「聞き手」でもある両氏に、情報発信やコンテンツ作りの考え方や思い、「聞き手」としての役割について話を伺いました。

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可視化されていない企業の裏側を記事にし、読者に届ける

キリンホールディングス株式会社(以下、キリン)、スマートニュース株式会社(以下、スマートニュース)は、顧客に支持され、ファン化につながるような情報発信を行っています。平山氏、原田氏はそんな両社の発信を支える「聞き手」の役割を担っています。

キリンの平山氏は、広告代理店を経て、株式会社昭文社へ入社。旅行ガイドブック「ことりっぷ」のモバイル版サイト「ことりっぷweb」にて、プロデューサーとしてコンテンツ企画からブランド戦略まで全般を担当。2018年にキリンに入社し、「KIRIN公式note」を立ち上げました。現在noteには13,000人ほどのフォロワーがおり、影響力のあるオウンドメディアへと成長しています。

スマートニュースの原田氏は、1996年より博報堂でコピーライター、クリエイティブディレクターとして、幅広い業種のクライアントを担当。2020年12月からスマートニュースの広報責任者を務めています。現在アドバタイムズでコラム「48歳のピボット・ターン 〜広告会社のCDが、テックベンチャーに入ったら〜」を連載中です。

企業として、またその企業に勤めるいち職業人として発信活動をしている両氏に、「そもそもなぜ発信を行っているのか」と川久保が問いかけます。

平山氏「キリンへ入社し、まず一個人として『この会社には発信できることがまだまだある、もったいない』と感じました。これは転職をしてきた身だからこそかもしれません。弊社が創業から130年ほどかけて培ってきたカルチャーや技術力の高さ、商品に対する熱い思いを社内外にもっと伝えていきたい

そこで2年前にnoteの公式アカウントを開設し、商品作りに携わっている人々のインタビューなどを掲載。今は、従業員の声を丁寧に届けるメディアとして育てている最中です」

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平山氏に続けて、原田氏は発信している理由を「サービスの裏側にいる『人の存在』を知ってほしい」と語ります。

原田氏「『スマートニュース』は日米合わせて5000万人以上(※2019年)にダウンロードされているニュース配信アプリです。ただ、お客様の目に触れるのは、あくまでもスマートニュースに掲載されたニュース記事。アプリ自体をどんな人が作っているのか、作っている人がどんな思いを持っているのかなどの情報はなかなか表に出る機会がないんです。

そこで、サービスを作っているいわゆる“中の人”の熱い思いを知ってもらい、そして企業に対するファンを増やしていきたい と考えるようになりました。入社後は、アドバタイムズでコラムの連載を開始。このコラムでは、転職した身だからこそ見えてくるスマートニュースの新たな一面を切り取っています」

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川久保も両氏の発言に触発され、イベントやメディアに注力している理由を「良い顧客体験が実現されている世界のイメージを伝えていきたいから」と言います。メディアの運営形態やあり方は三者三様ですが、そのときの社会や会社の状況を鑑みて感じた個人的な思いの発露が、情報発信への推進力になっているようです。

発信が顧客との相乗効果を生み、嘘のないストーリーが共感を呼ぶ

では実際に発信された内容(ストーリー)を顧客はどのように受け止め、どんな反応を示しているのでしょうか。まず平山氏が「企業と顧客という関係性を越えて、ビール市場を盛り上げる『仲間』になれた」と語ります。

平山氏「私たちの取り組みの一つに、ビール工場で行われる『キリンビールセミナー』があります。これはビールの歴史、製法、ペアリングなど様々な角度からレクチャーを行うセミナーです。

私たちだけではなく、お客様にもビールに情熱をかけている方がいる。その情熱を、私たちとお客様、そしてお客様同士で共有しあえるようなコミュニティを作れないか。そして、一緒にビール文化を盛り上げていけないかと考え、2019年に『キリンビールサロン』を立ち上げました。

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2021年現在、このサロンは三期目を迎え、会員は100名ほど。参加しているメンバーは、キリンビールだけでなく他社ビールの魅力も積極的にSNSで発信してくれています。Twitterで#キリンビールサロン とつけて感想をつけて投稿いただいたリーチは1,500万を超えています」

続けて原田氏は、顧客にストーリーを受け取ってもらうための鍵は「ドキュメンタリー」だと話します。

原田氏「企業が発信する情報をお客様に受け取っていただくのは、そもそも難しいことだと感じています。特に、お客様が手にとって触れる物理的なプロダクトがなく、デジタルサービスを届ける弊社のような場合、その裏側にいる人やストーリーに興味を持ってもらいにくい。

そんな中でもお客様に届けやすい形として 『ドキュメンタリーである』 ことがポイントだと考えています」

そう実感したエピソードとして、今年の2月、スマートニュースがローンチしたワクチン接種状況がひと目で分かる機能「新型コロナウイルスワクチン接種状況」を、起案からたった29時間でリリースした事例を挙げました。この機能が進化して、現在の新型コロナワクチンチャンネルへとつながっています。

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原田氏「この機能は会議でアイデアが出た瞬間から『絶対必要だよね』と満場一致で決まって。そこから急ピッチで開発して、リリースしました。

この機能について自分のTwitterで『両親がワクチン難民だったところをスマートニュースのサービスを使うことで予約がとれた』と自分の身の回りで起きたことも交えてツイートしたところ、今までにないリツイートやいいね数になったんです。その前に同じ機能についてお知らせツイートしたときには、そこまでの反響はありませんでした。

ただの機能説明ではなく、リアルなドキュメンタリーであると、見る人はそのストーリーを自分ごと化しやすくなる 。実際に、ツイートをきっかけに機能を活用し、ワクチンを予約した人もいらっしゃって。ストーリーが届いたことで、機能の価値が伝わり、ユーザーの行動も促せたなと思います」

また、定例会議でプロダクトの開発が決まってからローンチするまでの様子をアドバタイムズのコラムでドキュメンタリーとして発信。スマートニュースのミッション『世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける』を、顧客だけでなく求職者に理解してもらう一歩になったそうです。

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発信は従業員の活力になり、行動を変えていく

キリンやスマートニュースの事例では、企業の発信するストーリーが顧客の日々の暮らしを豊かにしたり、行動を起こすきっかけになったりしていることがわかります。一方で、近年では企業の情報発信が社内や従業員にもたらす影響にも注目されています。ストーリー性のある発信を行っていくことで、EXにはどのような影響がもたらされているのでしょうか。

原田氏「自分自身も含めて、周りのメンバーの業務に関する発信を目にすることで、入社前に抱いていた『社会のために良質な情報を届けたい』という気持ちを改めて思い出すきっかけになっています。社員間で共感が生まれたり、結束が強まったりもしています。

また既存の社員だけではなく、これから社員になる人、つまり採用面でもプラスの影響があります。発信した内容で見た、働く人達の姿勢やビジョンに強く共感し、入社を決めてくれる人も増えました」

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平山氏は原田氏の発言に共感しつつ、キリンでは「従業員の自信に繋がっている」と言います。

平山氏「自分たちが丹精込めて地道にやってきたことが可視化され、多くの人の目に触れ、シェアされる。自分たちの活動が『受け入れられている』と喜んでくれる社員が多いです。

社内からコンテンツの企画案も出てくるようになりました。出てくるアイデアは、商品をプロモーションする視点ではなく、会社全体のミッションやコミュニティ、ビールや製品に込めた思いなど、『ファンを形成する』という情報発信の目的を理解した上で発案されたものばかりで、ありがたい限りです」

あえて無知でいる「聞き手」の存在が企業の新たな価値を見いだす

企業のいちメンバーでありつつ、自社を客観的に観察し、従業員の声に耳を傾け、発信を行う「聞き手」である両氏。二人の考える「聞き手」の役割について伺ってみると、平山氏がまず口を開き、「“転校生”的視点で会社の価値に光を当てなおす」 ことであると語ります。

平山氏「私は会社にいながらも半分転校生のような、すべてを知りきらないスタンスでいるようにしています。そうすると、社員の取り組みや思いに対して、面白いと素直に感じられ、社内で埋もれてしまっている価値に気付くことができる。

その価値に気付けると、今まで社内では出てこなかったようなアイディアを提案できます。社内からは『そういう視点が欲しかった』という声をもらうことも多いです」

知らないことが多い状況は一見するとマイナスに感じます。しかし、第三者のような視点があるからこそ、ファンを生むコンテンツ作りに繋がるのでしょう。一方、原田氏は「聞き手」の役割を「半分素人でいる」ことだと言います。

原田氏「社内で起こる様々なことに対して『すごいな』と驚いたり、違うキャリア、違う人生を歩んでいる人に対する尊敬の念を抱いたりし続けることが大事です。社内にあるものすべてを『当たり前ではないもの』と捉える ことで、ストーリーやドキュメンタリーを熱量高く作り込むことができると考えています」

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最後に川久保は「聞き手であるためには、何を心がければいいのでしょうか」と両氏に疑問を投げかけました。

平山氏「『思いを持ち続けること』です。自分たちが伝えていきたいことへの思いを大切にし、軸をぶらさずに守り通せるかは常に意識しています。そして、すぐに結果を求めるのではなく、伝えていきたいことを言葉にし続けること が大事です。そのために、成果を図る際には、『面』で捉えるようにしています。

ソーシャル上でどのくらいシェアされたのか『点』で評価することに加えて、作ったコンテンツが採用や営業活動などで横展開できるか、また5年後、10年後の新卒にも見せられるような長い時間軸で活用できるか。横と縦の伸び率を見ながらオウンドメディアでやるべきコンテンツを選んでいくことが重要だと考えています」

原田氏「『社内の熱い思いの代弁者であり続けること』を心がけています。

私は『聞き手』でもありますが、同時に社外に向けた『話し手』としての広報の役割も担っています。記者の方にいかに社員の熱い思いに興味を持っていただき、面白いと思ってもらえるか、伝え方をいつも工夫しています。自社とメディアの架け橋になれることが大切です」

二人の発言を受け、川久保はセッションの締めくくりに「社内のストーリーを外部に伝えたいという強い想いを持ちつつ、転校生や素人目線といった組織に対する第三者視点も持つ。それこそが『良き聞き手』となる第一歩なのかもしれません」と示唆しました。

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