効果を上げるメール配信の考え方とMAツールの選定ポイントとは?仮説検証の確度とスピードを高めるポイントを解説
こんにちは、プレイドでKARTE版マーケティングオートメーション(以下、MA)のパッケージ「KARTE Message」のプロダクトマーケティングを担当する冨里晋平です。
日ごろ「MAツールを導入したい」「メール配信の効果を上げたい」といった相談をよく受けます。その際に効果を上げるポイントとしてお伝えするのが「行動データの適切な活用」です。
今回は、MAツール選定のポイントや行動データを使ったセグメントメール配信の考え方について解説します。
メールマーケティングの主な目的や指標をおさらい
メール送信やプッシュ通知のためにMAツールを検討している企業の抱えるニーズはさまざまですが、大きく3つに分類できると考えています。
1つ目は、よりメールやプッシュ配信の「効果を上げたい」というニーズ。特にこれまでユーザーのリストに対して一斉配信をしていたけれど、よりパーソナライズした内容・タイミングでメールを配信することで、効果を高めたいというもの。
2つ目は、複数のツールを「統合していきたい」というニーズ。メール配信ツールだけではなく、A/BテストやWeb接客など複数のツールを導入しており複数のツールの管理が煩雑になっているので、単一のツールに統合する必要性を感じているケースです。
3つ目が、別のツールに「乗り換えたい」というニーズ。メール配信ツールやMAツールを導入したけれど、なかなか成果につながらず、別のツールへの乗り換えを検討している方は少なくありません。
なかでも、特に多いのは「効果を上げたい」というニーズです。このニーズの解消方法を解説することは、他2つのニーズの解消にもつながってくるので、「効果を上げたい」にフォーカスして解説していきます。
「効果を上げたい」について考える前提として、そもそも企業がメールマーケティングを実施する目的を振り返っておきましょう。代表的な目的と関連する指標として、以下が挙げられます。
- 情報を届ける(指標:開封率、開封数)
- サイト/アプリに来訪してもらう(指標:クリック率、クリック数)
- 購入してもらう(指標:コンバージョン率、コンバージョン数)
これらの数値目標を設定し、達成のために用いられるメールマーケティングの手法についても代表的なものを確認しておきましょう。大きく3段階に分かれ、だんだんと高度化していきます。
1段階目が「一斉メール」。ユーザーリストに向けて同じ内容のメールを一斉に配信する、安価かつ始めやすい方法です。
2段階目が「セグメントメール」。ユーザーリストの中で配信対象となるユーザーのセグメントを作成し、メールの内容などを出し分ける方法です。一斉配信よりもユーザーの属性やニーズに合わせたメールを届けることができます。
3段階目が「ステップメール、シナリオメール」。「いつ・誰に・どの内容のメールを送るのか」といったステップやシナリオを設計し、特定のタイミングや条件に応じてユーザーにメールを配信する方法です。一通一通のメールだけでなく、一連のメールから成る体験全体を、ユーザーに合わせて最適化できます。
メールマーケティングで効果が出ないのはなぜ?
このようにさまざまな手法が発展していますが、先程述べたようにメールマーケティングにおいて「効果が出ない」という課題を抱える企業は少なくありません。この「効果が出ない」は、手法の3つの段階に対応して、3つの課題に分類できると考えています。
1つ目の課題は、効果が出ているかもしれないが、 メールからの効果測定が計測できていない こと。セグメントを分けたり、メール配信でのクリック率や開封率は把握できていても、サイトやアプリ内行動との紐づけができておらず、購入や申込みといった成果につながっているのかを把握できていない。そうすると施策の効果を判断できず、効果が出ているという実感を持てないという事態に陥ってしまいます。
2つ目の課題は、 セグメント分けに必要な軸とデータがない こと。どのような軸でセグメントを分けたらいいかわからない、あるいはそもそも分けるためのデータが存在しないため、適切な顧客に適切な内容を届けることができていない例は多いです。
最後に、ステップメールやシナリオメールを送りたいけれど、 どういう順番でメールを送ったら効果が出るかがわからない という課題です。2つ目の課題と同様、判断の軸や判断材料となるデータが不足している場合に起きやすいと言えます。
メールマーケティングにおいて「効果が出ない」と感じている方は、自分たちのメールマーケティングの方法がどの段階なのか、どの課題を抱えているのかを整理してみてください。
属性だけではなく行動データでセグメントを分ける2つのメリット
「効果が出ない」という課題を解消するためには、メールマーケティングの目的に立ち返ることが大切だと思っています。
メールマーケティングの目的として、先ほど「情報を届ける」「サイトやアプリに来訪してもらう」「購入してもらう」という3つを挙げました。これらは抽象化すると、いずれも「ユーザーの行動を変化させること」だと言えます。
これまで見ていなかった情報を見る、サイトに来ていなかった人がサイトに来る、購入したことのない人が購入する。何かしらの行動を“していない"人が"する”ようになる。行動変容の積み重ねが、開封や来訪、購入といった成果につながるのです。
だからこそ、メール配信の効果を上げたいなら、性別や年齢といった「属性」だけではなく、サイトの閲覧有無や商品の購入有無などの「行動」でもセグメントを分け、分析や施策を行うことが重要になります。「属性」だけではなく「行動」でセグメントを分けるメリットは大きく2つ挙げられます。
1つ目は、施策のゴールが明確になることです。例えば、サイトの来訪を増やすためにメール配信を行うとします。「直近1週間に来訪したユーザー」と「一年以上来訪していないユーザー」が混在するリストに一斉配信した場合、メール経由の来訪者数が上がったとしても、施策によって「来訪していなかったユーザーが来訪するようになったか」は判断できず、効果もわかりません。
これに対して「直近1ヶ月間サイトに来訪していないユーザー」でセグメントを分けてメールを配信した場合、メール経由の来訪者数をそのまま施策の効果と見なすことができます。効果が出たかどうかの検証もしやすく、改善策も考えやすくなるでしょう。
2つ目は、施策の重複配信を防げることです。例えば、あらかじめ「会員登録をしたか・していないか」という行動でセグメントを分けておけば、性別や都道府県などの属性ごとのセグメントでメールを配信する際に、すでに登録を行ったユーザーに複数配信してしまうといったミスも防ぎやすくなります。
行動データを使ったセグメントメール配信の成功事例
「行動データ」でセグメントを分けた事例を紹介していきます。取り上げるのは人材系マッチングプラットフォームでのメール配信施策です。まず、ユーザー行動の全体像を整理し、どういった行動変容を起こしたいのかを定めます。
人材系マッチングプラットフォームには、求職者側のユーザーと採用側のユーザーがいるため、ユーザーの行動は少し複雑になります。サービスとして目指すのは、両者がマッチングし、面談数が増えることですが、面談を行っていないユーザーにいきなり面談を行うよう変容を促すのは現実的ではありません。
そこで、まずは求職者側のユーザーと採用側のユーザーが面談にいたるまでの行動を、以下のように分解・整理しました。
このように行動で分けると、それぞれのユーザーがどの段階の行動でつまずいているのか、どういった課題を抱えているのかを考えやすくなります。
この事例では、まずファネル分析を実施し、ユーザーがどの行動でつまずいているのかを数値で把握していきました。ファネルごとにつまずいているユーザーのボリュームが分かると、どの課題を解決するかの優先順位もつけやすくなります。
ファネル分析の結果から「スカウトを受け取る」でつまずいている求職者側ユーザーが多いことがわかったため、今回は「スカウトを受け取っていない人を、スカウトを受け取る人に変える」という行動変容をゴールに設定し、施策を考えていくことにしました。
施策を考える上でも、鍵になるのはユーザーの行動です。先ほどの整理を踏まえると、求職者側のユーザーが「スカウトを受け取る」ためには、採用側のユーザーが「求職者を検索」して、「レジュメの詳細を閲覧」して、「スカウトを送る」といった複数の行動をとる必要があります。
そこで、求職者側のユーザーの中で「一定期間スカウトを受け取っていない人」をセグメントに分けた上で、さらに「企業側の検索結果一覧に表示されない人」「レジュメの詳細を閲覧されない人」「詳細は閲覧されているがスカウトが送られない人」という3つのセグメントを設定。それぞれのセグメントの求職者側のユーザーに対して行動変容のためのアクションを行うことにしました。
アクションを設計するうえでは、各セグメントのユーザー行動についても詳しく分析。例えば、スカウトを受け取っていないユーザーの行動を細かく見ていくと、レジュメの文字数が平均よりも少ないことが把握できたため、文字数についてアドバイスしてみよう…といった形でアクションを検討していきました。最終的には、それぞれのセグメントの求職者側のユーザーに以下の内容でメールを配信しました。
- 企業側の検索結果一覧に表示されない人:「社長賞受賞」や「AI」など、人事側のユーザーから検索の多いキーワードを提案
- レジュメの詳細を閲覧されない人:人事側のユーザーが閲覧するレジュメ一覧ページに表示されやすくするためのヒントを共有
- スカウトを送られない人:レジュメのブラッシュアップ方法や文字数の目安などを共有
メール配信の結果、求職者側のユーザーのレジュメの文字数が増えるなどの行動変容がみられ、スカウトを受け取る人も増加しました。
数ヶ月間、安定して効果が出ていることを確認できた後は、配信の自動化にも取り組みました。具体的には「1ヶ月間でスカウトを受け取った人と受け取っていない人」をセグメントに分け、固定されたテンプレートでメールを送るというアクションを自動化しました。
行動データを用いたメールマーケティングによる事業の成長ステップ
この事例を踏まえて、行動データを用いたメールマーケティングによるサービス成長の流れは以下のように整理できます。
- ユーザー行動の整理
- ユーザー行動の分析
- 施策の準備
- 施策実行
- 自動化
各ステップのポイントを簡単に紹介します。
1つ目のステップが「ユーザー行動の整理」です。日ごろ社内で共有しているカスタマージャーニーなども参照しながら洗い出していきましょう。ここは数分程度で終わらせるイメージで、後の分析に時間を割きます。
2つ目が「ユーザー行動の分析」です。ここで重要になのは、行動ごとに何人くらいのユーザーがつまずいているかをファネル分析によって定量的に捉え、その上で一人ひとりがどのような行動をとっているかを捉えることです。
先ほどの事例でも、ファネル分析をもとに「スカウトを受け取る」段階でつまずいているユーザーが多いことを明らかにした上で「スカウトを受け取っていない人」の行動を深掘り、レジュメのブラッシュアップ方法を伝えるといった施策に落とし込んでいきました。
3つ目に「施策の準備」を行います。2までの工程をしっかりと実施することで仮説立ては容易になっているはずです。
4つ目に実際に「施策を実行」します。ユーザーの反応を確かめながら必要に応じて改善を重ねていきましょう。
5つ目は「自動化」です。これは最初から前提とせず、一定期間は効果を検証して、安定して成果が出ることが確認できた場合に行うことをお勧めします。
事業とマーケターの成長につながるMAツール選定の4つのポイント
こうしたステップにおいて、多くの企業にとって壁になりやすいのが「ユーザー行動の分析」です。
特にメールマーケティングが高度になるほど、メールの配信から取得できる開封やクリックといったデータだけではなく、サイトやアプリにおける行動データからユーザーの行動を知っておくことが不可欠になります。先ほどの人材マッチングサービスの事例でも、サイトでの行動分析が施策のアイデアにつながりました。
そこで強い味方になるのがMAツールです。以下の図では、サービスグロースの流れにおいて、マーケターが担う必要のあること、MAツールが担えることを整理しました。ご覧の通り、ほとんどの工程をMAツールが網羅しています。
では、そんなMAツールをどのように選べばよいのでしょうか。ここまでの話を踏まえて、成果につながるMAツールの選定ポイントは4つのポイントに整理できます。
まず1つ目は「ユーザーの行動データの管理と集約ができるのか」。先ほどお話した通り、サイトやアプリでの行動データを分析やメールでの施策にも活用できることが重要です。
2つ目が「仮説からアクションまでのスピードアップにつながるか」。データ分析や施策実行、検証といったサイクルを素早く回すことで、マーケターが仮説検証の経験を積み、確度を高めていることができます。
3つ目が「勝ち筋の施策を自動化できるのか」。MAツールというと「自動化」の機能が注目されがちですが、仮説検証によって“勝ち筋”を見つけた上で施策を自動化しなければ、効果は発揮しきれません。
そして、4つ目はこれら3つをツールを「マーケターが実際に活用できるのか」という観点です。必要な機能を備えているかだけではなく、ツールの難易度や使いやすさといった観点で検討が必要でしょう。
行動データにもとづくセグメント配信をKARTEでクイックに実現
今回紹介した行動データを活用したメール配信施策は、プレイドの提供するCXプラットフォーム「KARTE」と、KARTEのマーケティングオートメーションのパッケージ「KARTE Message」を使うことで実践できます。
KARTEではWebサイトの行動データをもとにファネル分析やn1分析を行えます。KARTE Messageではメールやプッシュ通知などサイト外のチャネルにおいて、ユーザーの属性や行動に合わせたパーソナライズ配信をノーコードで実行できます。
私自身、MAツールを導入してユーザーの分析や施策を行う中で、自身やサービスの成長を感じ、端的に「仕事が楽しくなった」と感じています。
MAの真髄は仮説検証の確度とスピードを上げて事業と個人が成長すること。ぜひその真髄を味わって、仕事をもっと楽しんでもらえたら幸いです。