“人”による丁寧なサポートと工数削減を両立。HRBrainが KARTEで推進するテックタッチ
「顧客ロイヤルティ向上を阻む壁の越え方」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2022」。「HRBrainのTech Touch推進〜お客様との最適なコミュニケーションの追求〜」と題したセッションでは、株式会社HRBrainのカスタマーサクセス部門マネージャー 小西隼生氏が登壇。抱えていた課題とテックタッチ推進に至った経緯、KARTEなどを使ったサポートコンテンツの改善施策、今後の展望などを語っていただきました。
「顧客ロイヤルティ向上を阻む壁の越え方」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2022」。「HRBrainのTech Touch推進〜お客様との最適なコミュニケーションの追求〜」と題したセッションでは人事領域で成長を遂げるSaaS企業、株式会社HRBrainの取り組みが共有されました。
HRBrainは2016年に創業。人事評価や人材データの管理などを一括で行えるタレントマネジメントシステム、組織と個人の課題を可視化する組織診断サーベイ、労務管理や社内向けチャットボットなど、人事の課題解決に寄与するクラウドサービス群を展開。特に2020年以降はリモートワークの導入や、人事業務のDX推進に注力する企業が増えたことから、導入企業数を大きく伸ばしています。
同社のカスタマーサクセス部門では、担当者が導入企業の状況や課題に合わせて丁寧に活用を支援しつつ、KARTEを始めとするツールの活用によって業務を効率化。ツールでは代替できない業務に担当者が時間を割ける仕組みをつくり、サポートの質を向上させるための取り組みを行ってきました。
セッションでは、株式会社HRBrainのカスタマーサクセス部門マネージャー 小西隼生氏が登壇。抱えていた課題とテックタッチ推進に至った経緯、KARTEなどを使ったサポートコンテンツの改善施策、今後の展望などを語っていただきました。
導入企業数の急増、CX向上と業務効率化はトレードオフ?
HRBrainの主力プロダクトであるタレントマネジメントシステム「HRBrain」は、業界や事業領域、組織規模など様々な企業で導入されています。人事制度や人事評価の考え方、抱えている課題なども多岐にわたるため、カスタマーサクセス部門では顧客に合わせた個別の手厚いサポートを重要視してきたといいます。
小西氏「お客様ごとの考え方や課題に合わせて的確に支援するには、担当者が一対一で丁寧にやりとりする『ハイタッチ』な対応が不可欠と考えてきました。
そのため、2020年に導入企業数が急増、プロダクト数や機能数の増加も重なると、カスタマーサクセス担当者の業務量は一気に膨れ上がってしまったんです。当時は、業務の効率化を優先するとサポートの質が下がり、お客様の体験にネガティブな影響があるのではと思っていたので、打ち手が見えずにいました。
ですが、『テックタッチ(テクノロジーを使って顧客の活用を支援する)』を進めるためのツールの機能や活用事例を調べていると、テックタッチによって担当者の負荷を下げつつ、お客様にとって『リッチで高品質』なサポートを届けている例がいくつか見つかりました。
ツールの活用や仕組み化をうまく行えば、業務効率化とCX向上はトレードオフどころか好循環を与え得るものなのではないか。そう考え、HRBrainでもテックタッチの推進に取り組むことにしました」
テックタッチの推進にあたり、小西氏は担当者が各業務に割いている工数を可視化、効率化すべき部分の洗い出しを行いました。
小西氏「表にしてみると、担当者は全体の工数のうち、2%しかお客様のプロダクト活用や事業における目標達成を支援する『活用サポート』に割けていませんでした。それ以外のほとんどの工数を、導入時のお客様との打ち合わせやその準備、機能や活用についての問い合わせ対応に費やしていたのです。
もちろん打ち合わせや問い合わせ対応も重要な業務ですが、本来カスタマーサクセスが担うのは、お客様が導入後にプロダクトを活用し、望む成果を得られるよう導くこと。そのためのサポートに2%しか時間を割けていないのは、大きな課題だと捉えていました。
そこでテックタッチの推進にあたっては、打ち合わせ準備や問い合わせ対応の工数を半減させること、活用サポートに割く工数を全体の工数のうち2%から50%まで引き上げるという目標を設定しました」
作って終わりにしない。サポートコンテンツを改善し続けるサイクル
目標の達成に向けて、小西氏は二つの施策を掲げます。一つは、顧客の運用開始までのサポートを行う「オンボードプログラム」の刷新と型化です。導入前の打ち合わせ時に担当者がオンボーディングを設計したり、資料を準備したりする工数を減らそうと試みました。
二つ目がサポートコンテンツの拡充です。顧客が問い合わせをする手間をかけずとも、コンテンツを参照して自ら困りごとを解決し、プロダクトを使いこなせる状態をつくろうと考えました。
HRBrainでは、ヘルプページに基本的な設定や機能を説明する記事をいくつか掲載していたものの、メンテナンスはほぼできておらず「質も量も高くはなかった」そうです。
まずはコンテンツの量を拡充させるため、小西氏は「問い合わせが多いにもかかわらず、ヘルプページに情報が十分に載っていない項目」を整理し、新たな記事を作成。テキストだけでなく、視覚的にわかりやすく表現した画像や動画も新たに用意しました。
コンテンツの量の不足を解決した後は、質を高める取り組みにも着手します。
「一度作成して終わりではなく、顧客の反応を踏まえてメンテナンスするサイクルを回したかった」と語る小西氏。複数のチャネルでコンテンツを届け、問い合わせ数や記事のPVなどを参考に改善し続ける仕組みを構築しようと考えました。
そのために導入したのがCXプラットフォームの「KARTE」です。機能や設定にまつわる情報を、顧客にとって最適なタイミングで伝えるべく仮説検証を重ねていきました。
小西氏「以前は、プロダクトの管理画面でコンテンツを届けるなど、お客様とコミュニケーションを図るには、プロダクト自体に開発を加える必要がありました。ですが、KARTEを導入したことで、ヘルプ記事や動画への導線を設置する、新機能の案内をポップアップで表示するなどの施策を手軽に実装できるようになりました。
お客様に合わせたコンテンツの出し分けも行っています。たとえば、特定のユーザー権限を持つ方が、新機能の追加されたページを初めて訪れた際、操作手順を示すチュートリアルを出す施策などです。
プロダクトの管理画面はお客様が日常的に利用するものであり、コンテンツの表示方法やタイミングによっては、操作を妨げてしまう可能性もゼロではありません。コンテンツの内容や出し方、頻度、対象者、配信を停止する条件などは、プロダトマネージャーやデザイナーとも毎回丁寧に議論しています」
担当者による手厚い個別のサポートにリソースを割けるように
半年ほど、サポートコンテンツの拡充とオンボードプログラムの刷新に取り組んだ結果、目標としていた工数の削減に大きな手応えを感じられていると、小西氏は語ります。
小西氏「テックタッチを推進する前と比べ、問い合わせ対応と打ち合わせ準備にかかる工数は半減しました。活用サポートにかけられる工数も、全体の工数のうち50%という目標には届かなかったものの、31%まで引き上げられています。
特にサポートコンテンツの拡充によって、不明点があればヘルプページを見る習慣がお客様に定着したのは大きかったと感じています。今まで多かった基本的な使い方についての問い合わせは大幅に減少。担当者はお客様の課題解決や目標達成に、より一層、時間やエネルギーを注げるようになりました。業務効率化とCX向上の両立が、徐々に実現できつつあるのではと感じているところです」
テックタッチの推進によって「活用後のサポートに注力できていない」という課題が解消したことで、新たな課題もみえたのだそうです。
小西氏「基本的な使い方にまつわる問い合わせは減ったものの、複雑な困りごとや課題の相談の数は変わっていません。なるべく担当者が一対一で対応できればと思いますが、動画などのコンテンツを活用することで、お客様が問い合わせる手間をかけずとも、一定解決できるかもしれない。担当者による手厚いサポートを大切にするのは大前提ですが、『すべて人がやらなければいけない』と思い込むことはせず、お客様と担当者双方にとってより良い方法を探索していきたいです。
また、社内でサポートコンテンツの拡充について認知が広がったこともあり『こんなコンテンツが欲しい』という声も頻繁に届いています。喜ばしい反応ですが、作成やメンテナンスの工数が増えすぎては本末転倒ですから。一定の型をつくったり優先順位を設けたりして、制作プロセスを効率化していきたいです」
セッションの最後、小西氏は顧客へのサポートやプロダクト自体の質をさらに高めるため、利用データの分析や社内連携を強化したいと展望を共有してくださいました。
小西氏「今後は、お客様の利用データを分析し、プロダクトの管理画面でのコミュニケーションに活かしていきたいと考えています。たとえば、『この機能を利用した企業はプロダクトの利用継続率が高い』といった定量的なデータに、ユーザーインタビューから得られた定性的なデータを掛け合わせ、プロダクト画面上で表示するポップアップや通知などの内容やタイミングを最適化したいです。
また、お客様の課題のなかには、サポートコンテンツなどではなく、プロダクト自体の改善によって、根本的に解決しなければいけないものもあります。カスタマーサクセス部門に集まった声を開発にも共有する仕組みを整えるなど連携を強化し、プロダクトを磨き込んでいきたいです」