Event Report

アパレルから“ライフスタイルテック企業”へ。デイトナ・インターナショナルの店舗DXツール開発と今後の展望

2023年7月に「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、デイトナ・インターナショナル DX本部 UXデザイナーの目黒 希望氏は、実店舗のDX化の取り組みとして、オンラインとオフラインをつなぐ自社オリジナルの「DXソリューション」とその成果を語りました。

ECサイトの普及により消費者の購買行動が大きく変化するなか、実店舗をかまえる小売業界ではDX実現が急務となっています。アパレルブランド「FREAK’S STORE」を展開する株式会社デイトナ・インターナショナルも、2021年5月に経営刷新を行い、DX強化に乗り出しました。ECと実店舗をシームレスにつなぐ数々の施策によって、2023年度の自社ECの売上は、現状ですでに前年比160%を記録しています。

2023年7月に「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、デイトナ・インターナショナル DX本部 UXデザイナーの目黒 希望氏は、実店舗のDX化の取り組みとして、オンラインとオフラインをつなぐ自社オリジナルの「DXソリューション」とその成果を語りました。

実はそれらのソリューションは、すでに外部企業への提供を始めています。このソリューション提供事業を通して、同社はアパレルから“ライフスタイルテック企業”への移行を図っているといいます。今後、「KARTE」を使って実現していきたい顧客体験を含め、同社の具体的な取り組みを紹介します。

3つのレコメンドで新たな発見を提供する「+PLUS MIRROR」

2021年より店舗DXを推進するデイトナ・インターナショナル。特に開発に注力してきたのが、世界初のオリジナルインタラクティブミラー(デジタルサイネージ)の「+PLUS MIRROR」です。

★02 デイトナ

+PLUS MIRRORは、デジタルサイネージとして情報を展示できるだけではありません。店内の商品をスキャンし、スナップや在庫情報、似ているアイテム、カラーバリエーション等を紹介できます。また、お客様の服装をAIカメラで読み取り、おすすめのスタイリングや類似アイテムの提案も可能です。

デジタルサイネージアワード2022にて優秀賞を受賞するなど、業界からも注目されている+PLUS MIRRORの意図について、目黒氏はこう語ります。

目黒氏「+PLUS MIRRORがお客様に新しい発見を提供し、新たな自分への挑戦の背中を押せることを目指しています。そのために、3つの診断機能を搭載しています。

お客様のお顔や肌色などの生まれ持った特性から導き出す、フェイスパーソナルカラー診断。ファッションスナップを直感的な好みで選んでいただく、ファッションタイプ診断。そして、その日の気分や情緒にもとづく、占い診断の3つです。

さまざまな角度の診断と、その結果をもとにしたレコメンドによって、『こんなファッションも試してみようかな?』という気持ちを後押ししたいと思っています」

診断結果は「診断カルテ」としてお客様に渡されます。その内容や形態に、デイトナ・インターナショナルの顧客体験におけるこだわりが見て取れます。

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目黒氏「診断後は、Webページと紙の診断カルテを合わせて発行しています。カルテには、レコメンドの結果とともにお客様自身が選んだ『お気に入りアイテム』のリストも掲載されています。QRコードを読み込むことで、帰ってからも簡単に商品ECページにアクセスしていただけます。

紙の診断カルテは、持ち運びしやすいようにA5の2つ折りサイズにしてあり、また持ち帰ってからも大切にしたくなるような上質な紙を採用しています。デジタルな体験の楽しさとともに、アナログだからこその嬉しさにもこだわっているんです」

店舗VMDと連携し、最適な情報を提供する「+PLUS PAD」

続いて、目黒氏はもうひとつのDXソリューションを紹介しました。店舗に置いてある商品情報やキャンペーン情報、画像動画の情報をループで表示する、タブレット型のサイネージツール「+PLUS PAD」です。

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+PLUS PADは、本部による一元管理ではなく、各店舗のVMD(商品陳列)にあわせて表示する情報を変えられるサイネージ配信システムです。店舗側が柔軟に情報を変えることで「お客様の体験も向上できる」と目黒氏。

目黒氏「お客様側の画面には、商品やキャンペーン情報、ブランドストーリーなどが表示されます。画面に表示されるQRコードを読み込むことで、ECの商品ページに簡単にアクセスすることが可能です。

従来の店舗だと紙で表現していたポップですが、デジタルにするといいことがあるのではないか?という着想を元に開発を行いました。

デジタルで表現することのメリットはたくさんありましたが、一方で個別の商品の魅力を伝えていこうとするとそれなりの数を入れていく必要があり、従来のサービスではランニングコストがかさんでしまうという課題がありました。

またレジ前など、ご案内したい情報がたくさんあるケースにおいては、小さい紙のポップが散乱してしまうような状況もありました。+PLUS PADはそんな課題を解決し、お客様にわかりやすい発信を実現します」

お客様の求める体験をよく思い描き、ゼロから開発

現在、デイトナ・インターナショナルは、+PLUS MIRRORを直営店の9店舗に、+PLUS PADを11店舗に導入しています。特に+PLUS MIRRORの診断機能は、お客様アンケートで「また使ってみたい」と答えた人が100%となり、「非常に面白い仕掛け」「新しい発見ができてうれしい」「分析のクオリティに感心しました」といった多くの声が寄せられているそうです。

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顧客満足度の高いソリューションを開発するプロセスでは、どのようなことを意識してきたのでしょうか。経緯を振り返りながら「想像力を持つ」ことが大事だったと目黒氏は言います。

目黒氏「約3ヶ月という短い期間で、両方のツールの要件定義、ハードウェア・ソフトウェアの開発、オペレーションへの落とし込みを行いました。いくつかの工程は平行して進める必要があったため、ハードウェアが完成していない段階でUI/UXを考える必要があり、想像力を持って進めることが必要でした。

例えば、オフィスの壁にマスキングテープを貼り、+PLUS MIRRORのサイズを確認したり、プロジェクターに画面のデザインを投影したりして、見え方や使い勝手を検討していきました。

他にも、タッチセンサーの性能テスト、プロジェクト外のメンバーによるユーザーテスト、店舗での実証テストなど、本当に手探りでひとつずつ進めていったんです。これらの工程があったからこそ、本当にお客様が求める体験に近づけたと思います」

また、導入後も「ツールの浸透定着を促進し、同時に改善を続けた」と目黒氏は語ります。リリースから1年間の取り組みで意識してきたのは、実店舗で得られる“リアルな情報”に直接触れることだったそうです。

目黒氏「導入店舗のスタッフと定期的にミーティングを実施して、現場の声を施策に反映しています。また、ソリューションの利用ログデータや購買データなど定量的な数値から分析するだけでなく、実際に使ってくださるお客様の様子を直接見ることも大事にしました。

定量的なデータと定性的な気づきを組み合わせ、さまざまな性能のA/Bテストを行い、勝ちパターンを見つける。世の中で話題のサービスや製品を分析して新たなアイデアを発掘する。また、展示会などで積極的に「+PLUSシリーズ」の展示を行い、さまざまな方の反応を見ることで、サービスに対する期待感や導入企業となり得るお客様のニーズを深掘りする。こうした一見地味に見える行動を丁寧に繰り返すことで、本当に普遍的な価値のあるプロダクトに育てられると考えています」

KARTEと連携し、施策の一括管理とユーザー識別に取り組む

デジタルとアナログをうまく融合し、お客様の体験価値を高めることができた「+PLUS MIRROR」と「+PLUS PAD」。ただ、購買データとの突合や施策のPDCA管理など、企業側の使い勝手にはまだまだのびしろがあるとのこと。そこでデイトナ・インターナショナルは、KARTEと連携し、管理画面機能の強化に取り組んでいます。

目黒氏「ミラー側のログデータと店舗・ECの購買データを突合したダッシュボードをKARTEを活用して開発しています。また、「+PLUSシリーズ」の各プロダクトの一括管理CMSを構築し、+PLUS MIRROR、+PLUS PAD、その他のサイネージで流れるコンテンツの効果測定ができる管理画面を作ろうとしています」

また、店舗内の行動分析をより精密に行うための取り組みも、KARTEと連携して実現しようとしています。

目黒氏「現在は入り口につけた来店カウンターで入店数・入店率を測定していますが、お客様の識別はできていません。店舗側で取得している来店データと、KARTEで取得している顧客会員データを連携してお客様を識別し、来店頻度や購入率まで取得したいと考えています。

また、どのお客様がどのアイテムを試したかのデータを収集し、分析することで、マーケティングだけではなく商品開発にもつなげていこうと考えています」

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ファッション企業からライフスタイルテック企業へ

こうした機能拡張の先には、デイトナ・インターナショナルが目指す新しい価値提供の形があります。

目黒氏「自社で開発した店舗DXやOMO推進のソリューションをパッケージ化し、外部企業へ販売することで『ファッション企業からライフスタイルテック企業への発展』を目指しています」

+PLUS PADはすでに外部販売をスタートしていますが、ひと目見るだけでは判断できない魅力のある商材に、特に有効だという手応えを得られているそうです。

目黒氏「+PLUS PADは、ワインやオリーブオイルのようにある程度の知識がないと選択が難しい商品や、コスメやインテリアなどカラーバリエーションや使用感も合わせてご提案したい商品に適しています。

お客様が収集しきれていない情報を提示することで、店舗での購買におけるミスマッチを防げると考えています。各社がお持ちのデバイスを利用でき、台数あたりではなく、1店舗あたり5台入れても10台入れても『月額1万円』の低コストで導入できます」

+PLUS MIRRORは、すでに「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」内にある「LaLaport CLOSET」に導入されており、「その企業の特性に合わせて機能をカスタマイズしている」と目黒氏は言います。

目黒氏「LaLaport CLOSETは、複数ショップの商品をまとめて試着したり、キッズスペースやカフェラウンジを楽しめたりする、ショッピングにまつわる機能を集約したスペースです。

店舗数・ブランド数の多い施設なので、お客様の好みからブランドをおすすめしたり、診断結果にフロアと場所を添えることで店舗を認知する機会につなげたり、店舗への送客ができたりする設計になっています。店舗や施設の特性に合わせてカスタマイズができることも、+PLUS MIRRORの強みです」

+PLUS MIRRORと+PLUS PADの開発をはじめアパレルから“ライフスタイルテック企業”への発展を図っているデイトナ・インターナショナル。自社の直営店舗で実証実験を繰り返し、より良いプロダクトとオペレーションを追求する同社のソリューションが、他業種のDXを加速させる未来はそう遠くないかもしれません。

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