Event Report

おもちゃのサブスク「トイサブ!」の顧客体験を支える、「ルールを決めすぎない」組織づくり#exp_liveout

「CX Session」では、子どもの成長に合わせたおもちゃ・知育玩具を定期的に届け、交換する定額制レンタルサービス「トイサブ!」を提供する株式会社トラーナ代表取締役の志田 典道氏が登壇、株式会社翔泳社でマーケティング専門メディア「MarkeZine」編集長を務める安成 蓉子氏がモデレーターを務めました。志田氏と役員の少人数体制で、創業期から顧客に寄り添う方針でサービスを提供してきたトラーナ。人数が増えていくなかで、どのように顧客に向き合う精神を重視しながら、仕組みをつくってきたのかをお話しいただきました。

2020年9月29日に開催された「Experience LIVE OUT」では、顧客にとっての価値を高めるCXと「DX(Developer Experience / Digital Transformation)」および「EX(Employee Experience)」という、「3つのX」の連環に取り組む企業から、実践と背景にある思想が語られました。

CXに注力している企業をゲストにお招きした「CX Session」のひとつに、株式会社トラーナ代表取締役の志田 典道氏が登壇。株式会社翔泳社でマーケティング専門メディア「MarkeZine」編集長を務める安成 蓉子氏がモデレーターを務めました。

本セッションでは、トラーナが手がけるおもちゃのサブスクリプションサービス「トイサブ!」の顧客体験と、それを支える組織づくりが論点となりました。

一人ひとりの顧客に合ったおもちゃを届ける定額制レンタル「トイサブ!」

トイサブ!は、子どもの成長に合わせたおもちゃ・知育玩具を定期的に届け、交換する定額制レンタルサービスです。おもちゃの二次流通サイクルまで含めたサービスの提供、ユーザーから集めたおもちゃ評価データによるマッチするおもちゃの選定、すべての子どもに個別でおもちゃ選びをプランニングするなどの特徴があります。

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志田氏「これまでのレンタルサービスでは、借りる商品を選ぶのはお客様でした。トイサブ!では、私たちがお貸し出しするおもちゃを選んでいる点が他の定額制レンタルサービスとの違いです。

その理由には、乳幼児の成長は早く、適したおもちゃが変わるのも早いことがあります。たとえば、生後5か月から7か月の2か月の間でも、乳幼児のできることが増え、興味をもって楽しく遊べるおもちゃも変化します」

同じ月齢であったとしても、子どもの嗜好や特性、自宅にすでにあるおもちゃ、過去に送付したおもちゃなどから、一人ひとりの顧客に合わせたプランを作成していると、志田氏は語ります。トイサブ!が取り扱う1600種類ものおもちゃを検証して、顧客に合わせて届ける。こうしたおもちゃの選定を支えているのが、トイサブ!独自のおもちゃの評価データです。

志田氏「トイサブ!は、2カ月ごとにおもちゃを選び、お客様へと提案します。おもちゃは1度に6点お届けしていて、返却時にお客様から評価データを共有いただいています。その評価データをもとに次のおもちゃを選定してお届けしています」

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実際、顧客からは「普段は買わないおもちゃが届き、子どもがすごくよく遊んでくれた」と新しい発見を喜ぶ声や、「伴走してくれてありがとうございました」といったメッセージが多く寄せられていると、志田氏は語ります。

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安成氏「子どもの月齢によって画一的なおもちゃを送るのではなく、評価データをもとに一人ひとりにぴったりの提案が届くというインタラクティブなやりとりは、お客様が『私のためのサービス』を作ってもらっていることを実感する、大きなきっかけになっていますね」

定額制のレンタルサービスでありながら、2ヶ月ごとに貸し出すおもちゃを変えているトイサブ!の魅力について安成氏はコメント。続いて、セッションの内容はおもちゃのマッチングを可能にしているトラーナの組織づくりへと移っていきました。

顧客体験向上のための「ルールを決めすぎない」組織づくり

現在、トラーナの社内で直接的に顧客体験を担っているチームは3つ。ひとつはおもちゃの梱包・発送を担うチーム、もうひとつはおもちゃのプランを作るチーム、最後に顧客対応を行うカスタマーサポートのチーム。

元々、志田氏と役員の少人数体制で、創業期から顧客に寄り添う方針でサービスを提供してきたトラーナ。人数が増えていくなかで、顧客に向き合う精神を重視しながら、仕組みができていったそうです。

安成氏からの「組織として、またそれぞれの部門において、どのように顧客体験に向き合っているのでしょうか?」という疑問に対して、大事なことは「ルールを細かく決めすぎないこと」にあると志田氏は話します。

志田氏「トラーナでは、仕事の進め方はガッチリとかためすぎず、個人の自主性に委ねている部分が大きいですね。そのほうが、お客様に喜んでいただける提案がチームから生まれやすいと考えています。

例えば、梱包・発送を担うチームから『おもちゃにも顔がありますよね。お客様が箱を開けたときに、おもちゃの顔が全て自分を向いたほうが嬉しいのでは?』と提案がありました。実際に変えてみたら印象が変わったんです。こうした提案はマニュアルを作り込みすぎていたら生まれなかったと考えています」

一人ひとりが顧客と向き合い、どうしたら顧客のニーズに応えられるかを考える。志田氏は、「シグナルを捉える」と表現しながら重視している考えを語ります。

志田氏「おもちゃのプランを提案するチームでは、アルバイトから社員まで全員がユーザーの『シグナル』を捉えて、言葉に変換して提案しています。一人ひとりのお客様によって微妙に異なるシグナルを捉えるというのは、ルール化が難しい。

お客様は一人ひとり違うので、一律化した対応は難しい。もちろん、サービスとして最低限守らなければいけない点はあります。しかし、それ以外は現場の担当者たちが考え、より良い方向へと提案を重ねるほうが、顧客体験の向上につながると考えています」

「お客様の生の声をインタラクティブで反映するために、ルールを決めすぎず、メンバーが自分で考えて行動する余白を残しているんですね」と安成氏はトラーナの組織づくりに対してコメント。その言葉を受けて、志田氏は「徹底的に顧客に向き合うことに尽きる」と語ります。

志田氏「先日、私がお客様から『トイサブ!からのメールが受信できない』というお電話に4時間ほど対応したことがありました。無事トラブルは解決できたのですが、この対応に4時間使うのは非効率という考えもあるかと思います。

ですが、トラーナではこういう場合に『困っているんだったら助けてあげたらいいじゃない』という話をしているんです。人間、根本的には困っている人を助けたいじゃないですか。それにブレーキをかけず、徹底的に顧客に向き合うことが大事だと思います」

「親子の関係をよりよいものに」が顧客へのメッセージ

最後に安成氏から投げかけられた「生活者の余暇時間が限られるなかで、トイサブ!が選ばれる理由やポジショニングについて、どのようにお考えでしょうか?」という質問に対する志田氏の回答はとても本質的なものでした。

志田氏「創業当初から、おもちゃを使って親子で楽しんでもらいたいというメッセージを伝えています。その背景には、おもちゃを『子どもに1人で遊んでもらうための道具』だと捉えてもらわないように、という考えがあります。

子どもに1人で遊んでもらうための選択となったら、YouTubeや映像コンテンツなどが競合になってきます。そうなると、競争は非常に厳しいものになってしまう。ですが、自宅のなかで親子で楽しむ時間を創出するツールであれば、それほど競合の存在がいないと私たちは考えています」

「親と子の関係を磨いていくためのサービスとして、今後もブラッシュアップしていきたい」と語る志田氏。一人ひとりの顧客に向き合うサービスを徹底するための大切さを共有いただいたセッションでした。

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