在庫問題を解決し、粗利額16%増。KARTEとFULL KAITENのプロダクト連携で実現した、アーバンリサーチEC改善の裏側
2022年11月24日に開催されたセミナー「アーバンリサーチ執行役員に聞く! 粗利額116%を実現した成功の裏側」では、株式会社アーバンリサーチで執行役員、デジタル事業本部 デジタル営業部部長を務める齊藤悟氏が登壇。 セミナーでは、アーバンリサーチが運営するオンラインストアで、『FULL KAITEN』と『KARTE』を活用しながら、粗利額・粗利率をアップさせた取り組みについて紹介いただきました。
株式会社アーバンリサーチ(以下、アーバンリサーチ)は、衣類や小物などを販売するセレクトショップを展開。全国で約206店舗のアパレルと自社公式オンラインストア『URBAN RESEARCH ONLINE STORE』(以下、EC)を運営しています。
同社はECに、在庫を効率よく利益に変えるクラウドシステム『FULL KAITEN』と『KARTE』を掛けあわせたプロダクト連携によるソリューションを導入。データドリブンによるEC運営で、売上高は昨対比11%増、粗利額は16%増を実現しました。
2022年11月24日に開催されたセミナー「アーバンリサーチ執行役員に聞く! 粗利額116%を実現した成功の裏側」では、アーバンリサーチで執行役員デジタル事業本部 デジタル営業部部長を務める齊藤悟氏が登壇。『FULL KAITEN』と『KARTE』を活用した施策や取り組みの裏側を紹介しました。
感覚重視からデータドリブンなEC運営へ
コロナ禍による巣ごもり需要の拡大などで、EC業界は大きく成長しました。経済産業省の調査によると、2020年の物販系分野のBtoC-EC市場の市場規模は約12兆3300億円。伸長率は前年から21.71%増となりました。アーバンリサーチが運営するECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」も時代の潮流にのり、売上は伸長していました。
齊藤氏はアーバンリサーチの1号店で販売スタッフを経験したあと、プレスの立ち上げやマーケティング部門などを経て、2020年現職に着任。コロナ禍のなかEC運営に奔走していた当時を、「顧客データと販売データの紐付けができていなかったり、売上・粗利・粗利率予算はあっても細かいKPIが設定されていなかったりと、施策が場当たり的になってしまっていた」と齊藤氏は振り返ります。
齊藤氏「これはアパレルショップによくあることなのかもしれませんが、商品を販売するうえで、データよりも感覚を重視する傾向にありました。参照できるデータはあるのに、データの活用方法がわからなかったことが原因です。根拠のないままクーポン配布や値引きなどの施策を打ってしまっていました。
また当時はOMOを推進しようとするにも、店舗とECが同じ営業方針や商品計画を共有するといった“共通言語”がない状態。いわば、店舗とECが分断されていたんです」
それでも店舗休業中のECの売上は右肩上がりだったため、特に問題視はされていませんでした。けれども店舗営業を再開するにつれて、在庫消化率や粗利率の低下に陥り、ECの立て直しが急務になったのです。まずはECを強化するため、齊藤氏は社内にデータ活用を根付かせる仕組みを導入していきました。
齊藤氏「取り組んだのは、二つです。一つ目はKPIの再設定。これまでのKPIは売上予算・粗利予算・粗利率予算のみで、大まかなものでした。そこで、売上の構成要素でもある、セッション、CVR、単価にも言及し、KPIを細かく再設定し直しました。
取るに足らない改善かもしれませんが、データの管理方法もテコ入れをしていきました。弊社のECはいくつかの課が横断的に関わっています。それぞれが持つデータはスプレッドシートだったり、属人的だったりと管理方法がまちまち。正確な情報を素早く取り出せる状況ではありませんでした。そこで、データの管理方法を統一。全員が同じ資料を見て、KPIの進捗を細かく追えるようにしました。
二つ目にUI/UXデザインの効果をGoogle Analyticsで測るようにしました。これまではEC内のボタンの変更やバナーの差し替えをしても、どんな効果が生まれたのかは測定していませんでした。デザイナーとしてはどんな効果が生まれたのか、どこの変更点がお客さまの役に立っているのかわからずじまい。次の改善にどう繋げていいかわからず頭を抱えていました。そこでGoogle Analyticsを導入。デザインの変更前と変更後の変化を数字で測り、検証可能にしました」
データ活用を根付かせる取り組みに続いて、ECの立て直しには店舗の協力が必要不可欠です。齊藤氏は店舗スタッフやMDにもECの動向に目を向けてもらうため、施策を考えます。そこで取り組んだのが「ECでよく売れている商品の可視化」でした。年間の週次ランキングのトップ20に入った商品をブランド別にスプレッドシートにまとめ、商品の写真、お気に入り数、顧客からもらったコメントを一覧化。ECではどんな商品が、どのように売れているのかをデータで明らかにしました。これにより、店舗の販売方法や商品企画にデータを活かすことができ、ヒット商品の開発にもつながったそうです。
齊藤氏「あるブランドのワンピースのレビューに、『丈が長い。私148cmなんです』というコメントをいただきました。それが一人、二人だけではなく、複数人の方からのお声だったんです。そこで低身長の方向けのサイズカテゴリを増やしたところ、以前に比べてよく商品が売れたんです。これをきっかけに、他ブランドのヒット品番に対しても低身長の方向けのSサイズを設け、ブランドの強化に繋げていきました。
弊社のEC担当やMDは店舗経験者がほとんどです。これまで感覚を頼りにしていたメンバーが、今回のようなデータを活用した施策の成功を体験することで、彼らが抱いていたデータへの固定観念を変えられたんじゃないかなと思います。少しずつですが、『データドリブンは売上につながる』という意識改革を社内で進めていきました」
KARTEとFULL KAITENの活用で、売上や粗利率を改善
2022年2月より、KARTEとFULL KAITENのプロダクト連携によるPoC(Proof of Concept:概念実証)に参加した同社。売上の向上を考えていくにあたって、いつもぶつかる問題が在庫の最適化だったと齊藤氏は語ります。
需要予測が当たらず、商品を欠品させてしまったり、反対に売れ残ってしまったりと販売の機会損失が起こっていました。くわえて、顧客分析に力を入れてはいたものの、売上に結びつける有効なアクションが打てていなかったといいます。両プロダクトで得たデータを活用し、在庫と顧客分析を利益に変えていくアクションを実行していきました。
齊藤氏「まず、FULL KAITENを活用してEC内の在庫を分析します。4象限マトリクスを用いて、数ある商品を分類。Best・Better・Good・Badにマッピングしていきます。
ここで私たちが注目したのは、Betterに分類される“隠れた売れ筋商品”です。ここに抽出されるのは、プロパー消化のポテンシャルが高いのにタイムセールにかけてしまっていたような商品。すなわち、粗利率の改善が見込める商品群です。これらは、値引きをしなくてもレコメンドを強化することで売れる可能性が高い。なので、KARTEを活用して、適切なお客さまに向けておすすめしていきます」
KARTEの特徴は「ユーザーを知る」「ユーザーに合わせる」です。Webサイトに訪問中の顧客を一人ひとり個別に判別し、各顧客の行動をリアルタイムで可視化。データとして蓄積されていきます。それらのデータから顧客がどんな商品に、どのような行動を起こしたのか、顧客の属性や嗜好を分析し、示唆を得ていきます。一人ひとりの顧客を深く知ったうえで、商品を適切なタイミングで顧客にレコメンドすることができるのです。
齊藤氏「FULL KAITENで抽出された隠れた売れ筋商品は、KARTEを活用して、最適な顧客とマッチングさせていきます。KARTEでお客さまの興味や嗜好を把握できるようになったことで、ブランドが一方的に消化対象商品をお客さまに売るのではなく、『いいね』と思ってもらえそうな方に向けて商品をアピールできるようになりました」
KARTEとFULL KAITENを活用したPoCにより、滞留在庫に対し施策をスピーディに実施した同社。結果、前年と比べて売上は19%増、粗利率は15%増、コンバージョンレートは31%増と期待していた成果を出せました。
店舗でもデータを活用し、顧客LTVの向上を目指す
自社ECの伸び率を見た社内からは「ECはまだまだ伸びる。さらなる成長を目指して、20%増の売上予算を組もう」という話が出たそう。しかし齊藤氏は、「売上5%上げるのも容易ではない。重視すべきなのは顧客LTVの向上」と語ります。
齊藤氏「予算を20%に引き上げるとなると、商品の販売価格を引き上げたり、新規のお客さまを今まで以上に増やしたりと抜本的な施策が必要になります。しかし、私たちは売上だけではなく、顧客LTVの向上に力を入れていきたいと考えています。そのためには、ファンを増やし、お客さまに長く愛用し続けてもらえるECに育てられるかが鍵になってきます」
PoCの実施が、最終的な目標である顧客LTVの向上に寄与していると齊藤氏は言います。施策の回数を重ねるにつれて、顧客一人ひとりに寄り添った接客が可能になっているそうです。
齊藤氏「FULL KAITEN、KARTEの導入が顧客LTVの向上に一役買ってくれていることは言うまでもありません。ただツールは魔法の杖ではないことも理解しています。自社に最適なツールの活用方法は、施策の試行錯誤を重ねながら探っていく必要がある。そこで大事なポイントが“イマジネーション”です。目指したいECの姿を思い描きながら、どのくらい施策期間を設けるのか、どんなサイクルで数値を見ていくかなどを考えることが、顧客一人ひとりに寄り添った接客の実現に近づいていくのではないかと思います」
最近は、店舗の店長職もKARTE・FULL KAITENを活用しているという同社。今後、さらなる顧客LTVの向上を目指して、店舗もMDもデータを活用し、施策のPDCAを回せる体制づくりに取り組んでいきます。
齊藤氏「店長には『毎日最低限これだけはやってほしい』と伝えて、KARTE・FULL KAITENを活用しはじめてもらっています。両プロダクトは、EC担当者やマーケターのためだけにあるものではありません。今は初歩的な部分のみですが、ゆくゆくは店長が自分自身で施策を考え、効果的に在庫の確保をしたり、無駄な値引きをやめることを示唆できるようにしていきたいです。
店舗でも両プロダクトを活用できるようになれば、ECと同じ視点に立ち、施策を考えることができます。店舗とECで一気通貫のKPIやアクションプランの実施が可能になり、弊社でも理想的な形で、OMOが実現できるのではないかと考えています」