「うちの子に合う学びはどれ?」に応えるために。「進研ゼミ」のベネッセコーポレーションがKARTEで挑む、お客様の期待に合わせた体験設計

長年にわたり、精緻なセグメントに基づいたダイレクトメール(DM)を通じ、学年や学習状況に応じた最適な情報を届けるマーケティングを磨き上げてきたベネッセコーポレーションの「進研ゼミ」。顧客の情報収集の場がデジタルへと移行し、Webサイトが顧客との重要な接点となるなかで、デジタル広告からサイト体験までを一気通貫で担うデジタルマーケティングチームの挑戦と進化について詳しくお話を伺いました。

長年にわたり、精緻なセグメントに基づいたダイレクトメール(DM)を通じ、学年や学習状況に応じた最適な情報を届けるマーケティングを磨き上げてきたベネッセコーポレーションの「進研ゼミ」。しかし、顧客の情報収集の場がデジタルへと移行し、Webサイトが顧客との重要な接点となるなかで、従来の郵送物を起点とした「勝ちパターン」だけではなく、多様化する顧客一人ひとりの来訪目的に沿った提案も必要だと感じていました。

同社はWebサイトを訪れる顧客の状況に合わせた情報提供を実現するため、KARTEを導入。デジタル広告からサイト体験までを一気通貫で担うデジタルマーケティングチームが、高速な仮説検証サイクルを武器にサイト改善を推進しています。データに基づいた顧客理解は、施策の精度を高めるだけでなく、「自分たちが伝えたいこと」から「お客様が求めている体験」へと、チームの思考そのものを変えつつあります。

DMで培った知見をデジタルでいかに進化させているのか。同社の家庭学習カンパニー デジタルマーケティング開発部 サイトエクスペリエンス課の冨田 幸子さん、堀尾 知華子さん、末次 志帆さんにお話を伺いました。

DMでの精緻な出し分けによる「勝ちパターン」をデジタルマーケティングでも実現するために

はじめに、貴社の事業におけるデジタルマーケティングの位置づけについて教えてください。

冨田: 私たちが担当しているのは、ベネッセコーポレーションの通信教育事業「進研ゼミ」です。「こどもちゃれんじ」から「進研ゼミ高校講座」まで、未就学のお子さまから高校を卒業するまでをサポートする通信教育として、毎月届く教材を通じて学力や学びに向かう力を伸ばしていくサービスです。机に向かう勉強だけでなく、それ以外の学びも含めて、お子さまが自分の興味関心を見つけ、成長の糧にしてもらうことを目指しています。

これまで「進研ゼミ」のマーケティングは、DMがメインのプロモーションツールでした。長年の取り組みのなかで、お子さまの性別や生まれ月、受講経験といった属性ごとに訴求内容を細かく変えるなど、精緻な作り分けによる「勝ちパターン」を築き上げてきたのが弊社マーケティングの大きな強みです。

しかし昨今、スマートフォンやタブレットの普及で世の中に情報があふれるようになり、DMを送っても開封してもらえないケースが増えています。「もう知っている情報だ」と受け流されてしまうことも多く、DMの重要度が相対的に下がってきているのです。DM中心で成果を出し続けることが難しくなるなかで、これまでDMのサブという位置づけだったデジタルマーケティングの重要性が急速に高まり、近年はDMと並ぶ強力な柱としてデジタル領域への投資を加速させています。

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ベネッセコーポレーション 家庭学習カンパニー デジタルマーケティング開発部 サイトエクスペリエンス課 冨田 幸子さん

デジタルマーケティングチームはどのような組織体制をとっていますか?

冨田: デジタルの利点は、認知からご入会いただくまでのプロセスを分断させずにつなげられることです。私たちの部署では、認知のための広告配信からサイト領域まで、デジタルマーケティングを一気通貫で見ていける体制になっています。

「こどもちゃれんじ」「小学講座」「中学講座」といったゼミ領域ごとにチームを編成しているので、「広告ではこういうメッセージを出しているから、こういう方がサイトに来るはず。だからこういうおもてなしをするべきではないか」と、広告からサイトまで一貫したコミュニケーション設計がしやすくなっています。私はサイト領域全体の取りまとめを担当し、各ゼミの個別施策と全体として推進すべきことの調整や、成功事例の横展開などを通じた成果の最大化の支援を行っています。

堀尾: 私は「こどもちゃれんじ」担当として、サイトの設計や制作、KARTEを使った接客施策の企画・実行を担当しています。

末次: 私は「進研ゼミ中学講座」の担当で、新規のお客様向けLP(ランディングページ)の設計・運用・ディレクションを行っています。

顧客の悩みに寄り添い、ポジティブに伝える姿勢をデジタルでどう再現するかの試行錯誤

デジタルマーケティングへ注力するうえで、どのような課題がありましたか?

冨田: まず業界全体の課題として、少子化で市場自体が縮小していること、そして社会に対する先行きの不透明感から教育費への支出に対する心理的ハードルが上がっていることがあります。加えて、情報がさまざまなところから手に入る世の中になり、情報選択の仕方も変わってきました。以前であれば塾の先生や一人の専門家の言うことを「そういうものなんだ」と受け入れていた方も多かったと思いますが、今は情報の取捨選択が難しくなっています。

保護者の方々には「子どもに失敗させたくない」という気持ちが強くあり、「あちらがいいかも、こちらがいいかも」と比較してなかなかすぐには決められないという方も多くいらっしゃいます。習い事の選択肢も増えていますから、限られた予算内で選んでいただくには、お客様の望みにフィットする提案が不可欠です。

私たちが大切にしているのは、弊社の「よく生きる」という理念に基づき、お子さまのやる気や学習意欲を引き出して伸ばしていくことです。何かを買ってもらうために危機感をあおるようなやり方もあるかもしれませんが、それでは私たちが目指す「お子さまが気持ちよく成長していく」というところには結びつかないと考えています。「これをやらないと点数が下がるよ」といったコミュニケーションは絶対に行わないようにしていますし、お客様の悩みに寄り添い、「それを解決できる教材をご用意しています」とポジティブに伝えていくことが、DM時代から一貫して守ってきたポリシーです。

私たちのチームとしては、このポリシーをデジタルでどう実現するかが課題でした。KARTE導入前もA/Bテストツールは利用していましたが、ページを作って出し分けても、CVR(コンバージョンレート)に大きな差が生まれにくい状況にありました。すると、「やはりこれまで通りの王道の訴求でいいのでは」という結論になりがちです。意味のある差が生じるくらい抜本的なページ変更を行うには、時間もコストもかかります。計測にも長い期間が必要で、改善のサイクルが非常にゆっくりになってしまうというジレンマがありました。

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そうしたなかで、KARTEを導入されたきっかけは何だったのでしょうか。

冨田: デジタル広告を増やしていくなかで、サイトを訪れるお客様が多様化してきたことが大きなきっかけです。以前はDMを見て関心を持ち、ある程度サービス概要を理解した意欲の高い方のサイト来訪がほとんどでした。しかし広告を増やしたことで、認知はあるが検討度合いは浅いといった方も来訪するようになりました。

そうなると、DM経由のお客様を前提とした「今月の教材はこれです」といった情報中心のサイトでは、検討初期段階の方は「何のことかわからない」と離脱してしまいます。まずはどういう方がサイトに来ているのかを可視化し、その方々にどんな訴求をすれば検討が進むのかをテストできる環境を探していたなかで、KARTEを選びました。

導入当初は、どのように活用を進めましたか?

冨田: 最初に導入したのは「進研ゼミ小学講座」です。広告と同じクリエイティブをサイト上で出してみたり、「進研ゼミとは」という基本情報を紹介するページに誘導してみたりと、さまざまなテストをしましたが、なかなか「これはいいね」と言える成果が出ず、1年ほど試行錯誤が続きました。

転機になったのは、「広告経由の初回訪問者」というシンプルなセグメントで切り出して施策を配信したことです。それまでどこ経由の訪問かで出し分けをしていなかったため、初回訪問者のCVRは低かったのですが、広告経由に絞って施策を出したところ明らかに改善が見られました。この経験から、「来た人をひとまとめに捉えるのではなく、どういう方なのかをセグメントで切り分け、それぞれに合った施策を考えることが重要だ」という認識がチーム全体に広がりました。

この成功体験が、「こどもちゃれんじ」から「進研ゼミ高校講座」まで全部門でKARTEを展開していく後押しになりましたね。

仮説をデータで検証し、サイトの構造そのものを変える

お二人の担当サイトでKARTEを導入してみて、どのような印象を抱きましたか?

堀尾: 「こどもちゃれんじ」では、KARTEの前に別のWeb接客ツールを使っていました。しかし、設定のしやすさや配信先の出し分けの柔軟性に課題を感じていたんです。KARTEはクリエイティブの設定がしやすいだけでなく、施策の結果分析もツール内で完結するので、施策の勝ち負けがつかみやすく、次のアクションにつなげやすいと感じました。

末次: 私が「進研ゼミ中学講座」の担当になったときには、すでにKARTEは導入されていましたが、まだ十分に活用されているとは言えない状態でした。そこで、まずは学年別のセグメント分析から始めました。中学生は学年や時期によって関心や行動が大きく異なるためです。各学年の生徒が時期ごとにどのような動きをしているのかを可視化しながら、定期テスト前の訴求や、一度退会された方への再開を促す訴求など、仮説を立てて試していきました。

現在、KARTEをどのように活用されていますか?印象的だった施策があれば教えてください。

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ベネッセコーポレーション 家庭学習カンパニー デジタルマーケティング開発部 サイトエクスペリエンス課 堀尾 知華子さん

堀尾: 以前はポップアップ施策が中心でしたが、ここ1年ほどはKARTE Blocksの活用が増えています。ポップアップは「申し込み締切まであと何日」といったお知らせ的な用途で使い、KARTE Blocksは仮説をもとに「サイト自体をどう変えるべきか」を検証する用途で使い分けています。KARTE Blocksでテストして良い方向性が見えたら、サイト本体の設計に反映していくという流れです。

特に学びが大きかったのは、「こどもちゃれんじ」のトップページにある「年齢別振り分けボタン」の表示・非表示テストです。これは年齢別の講座に応じて、お子さまの年齢に合った詳細ページに飛ばすためのボタンで、わかりやすいようにページ上部に配置されていました。以前はDM経由の来訪者が多かったので、すぐに自分の子どもの学年の詳細ページに飛べるこのボタンは有効でした。

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堀尾: しかし、来訪理由が多様化した今、いきなり詳細を見せるより、まずは「こどもちゃれんじ」がどういうサービスで、どんな設計思想で作られているのかという全体像を知りたい方がいるのではないか、という仮説を立てました。そこで、検討初期段階の方にはこのボタンを非表示にするテストをKARTE Blocksで実施したのです。

結果として、施策全体のCVRは下がりました。しかし、セグメントを細かく分析すると、検討初期段階の方のなかでも特に広告経由の方ではCVRが向上していることがわかりました。検索経由の方と広告経由の方とでは、求めている情報がまったく違うということがデータで裏付けられたのです。この知見は、現在のサイト全体の構造や設計に反映されています。

以前の環境では、こうしたテストをするにもページ単位で作り替える必要があり、工数も費用もかかっていました。KARTE Blocksを使うことで、テスト自体のハードルが大きく下がりましたし、試してみてわかったことをベースにサイト本体を改善していける。その手応えは大きいですね。

「進研ゼミ中学講座」ではどのようにKARTEで施策を展開していますか?

末次: 「進研ゼミ中学講座」では、地道な改善の積み重ねが大きな成果につながっています。CTAのカラーをA/Bテストしたり、KARTE Liveのセッションリプレイ機能を使ったn=1分析をしたりと、仮説検証を行ったことで数値も向上しました。

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末次: また、広告経由でサイトをある程度閲覧してくれた方に対して、ポップアップで分岐を設けるなど流入経路ごとの出し分け施策も実施しています。「情報が欲しいのか」「キャンペーンに興味があるのか」「商品の詳細を知りたいのか」を選んでいただき、その後にサイトで何を見せるかを変えるというものです。

たとえば、小学6年生向けに9月から1月にかけて販売する中学準備講座では、「中学ってどんな感じだろう」と情報を求めている方と、「この講座をやろうか迷っている」方とでは、欲しい情報にかなり差があります。前者にはいきなり入会促進ではなく、まず情報コンテンツを見て回遊してもらう。後者にはポイントやキャンペーンの情報を表示する。お客様の状況に合わせて導線を分け、欲しい情報を提供できるようにしています。

チームの共通言語は「お客様」。データが思考と意思決定を変えた

KARTEの活用は、チームにどのような変化をもたらしましたか?

冨田: とにかく改善のサイクルが劇的に速くなりました。弊社はもともと、LPひとつ作るにも企画内容の検討に時間をかける会社で、そこからページ制作を外注する期間が発生していました。それが、KARTEを使えば1週間で施策を実行し、翌日には結果を分析して次のアクションを決められる。このスピード感は、他の部署から見ても驚かれるようなものだと思います。

もう一つ大きいのが、施策の実行期間中に仮説のズレに気づけるようになったことです。弊社はDMが主軸だったこともあり、事前の調査で「今年はこういうセグメントの方がこういうニーズを持ちこういった行動をとるだろう」と想定を立て、DMをはじめとしたマーケティングプランを組み立てていきます。

以前はその想定が外れたとわかるのはすべての施策が終わり、計画時点から何ヶ月も経った後でした。しかし、施策実行期間中に「何か想定と違うぞ」と気づけるのがデジタルマーケティングの強みです。今はそこから、「DMでこう伝えているなら、Webではこう伝えてみよう」「この方たちだけセグメントして、追加の訴求をしてみよう」と、戦略を途中で切り替えながら対応できるようになりました。

堀尾: 営業部門など他部署と一緒にサイト制作を進めるなかで、以前は「あれも言いたい、これも言いたい」という要望が多く、定性的な議論で意思決定が難航することがありました。しかし、KARTEを導入してからは「では、A/Bテストで数字を見てみましょう」と提案できます。実際にテストして数値的に「こちらのほうがいいですね」というファクトが出れば、それをベースにスムーズに進められるようになりました。

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ベネッセコーポレーション家庭学習カンパニー デジタルマーケティング開発部 サイトエクスペリエンス課 末次 志帆さん

末次: 「自分たちが伝えたいこと」からではなく、「お客様が求めている体験は何か」を起点に考えられるようになったと感じています。プロダクトの機能性を前面に出した、いわば「プロダクトアウト型」の訴求も出していたのですが、データを見ると、そのサービスを使うことで「お子さまにどんな素晴らしい未来が待っているか」を想起させるような、寄り添い型のコピーのほうが響く場合があることもわかってきました。

サイトを訪れる方の構成比や来訪のモチベーションそのものが変わってきていることも、KARTEを通じて可視化できました。以前はDM経由の方がDMを見た後に検索して来訪していたのが、最近はDMに印字している申込用のQRコードから直接申し込みするケースが増えています。その結果、現在の検索経由の来訪者の中ではDMを見ていない層の割合が上がり、以前は8割近くの方に届いていた王道の訴求も、今では半数の方にしか響かない可能性がある。変化した来訪者の背景を捉え直して、残り5割の方の心に響く新しい体験設計を生み出していく必要があります。こうした来訪者の構造変化が可視化できたことは、大きな収穫でした。

施策で得られた知見は、どのように共有・蓄積していますか?

末次: 施策を実施する前と後で、仮説や結果を「事例集」としてドキュメントにまとめています。事前に「仮説はこうで、こういう観点で確認したい」と書いたうえで実施し、結果も書き添える。想定と違えば次に何をするかを記載し、想定どおりで「勝ちパターン」として確定できた場合は、サイト本体に反映します。そしてまた新しい改善に着手するというサイクルを回しています。

冨田: 各講座の販売期間が終わるタイミングで、チーム全体で共有会も実施しています。成功事例だけではなくうまくいかなかった施策も含めて共有し、「いいね」となったものはすぐに他の講座でも試してみる、という気軽な情報共有ができています。教材が違っても、お客様のインサイトには共通する部分が多いですからね。

DMとデジタルの相乗効果で、一人ひとりに最適な学びを

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

末次: 今後は、KARTEで得られた「お客様に何が響くのか」という知見を、プロダクト開発にも積極的にフィードバックしていきたいです。現在、時期と学年ごとに「王道の訴求」と「それ以外」で何が響くのかをマップ化する取り組みを始めたところです。

また、新規・既存・再入会といった会員の受講経験に応じた、よりパーソナルなコンテンツの出し分けにも挑戦しています。受講経験などの社内データとKARTEのデータを連携させて、お客様一人ひとりの状況に合わせた精度の高い体験設計ができるようにしていきたいですね。

堀尾: 「こどもちゃれんじ」は最近、サイトやフォームをリニューアルしたところです。これからはそのうえで改善を重ねていくフェーズに入りますので、KARTEを積極的に活用していきたいと考えています。

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冨田: デジタルに注力したとしても、DMはなくならないと考えています。弊社のDMは単なる商品紹介ではなく、最新の教育情報やお住まいのエリアにおける受験事情など、お客様にとって有益な「気づき」を提供するという価値を持っています。その価値をしっかりお伝えするという点でも、DMは依然として重要な役割を果たしていくはずです。

一方でデジタルは、DMではリーチできない方や、DMをきっかけに興味を持ってくださった方々を受け入れる場所としての役割があります。この2軸がそれぞれ進化していくことが重要です。また、いまはほとんどのお客様がWebで申し込むという流れになっていますので、最終的な受付ツールとしてのWebの重要性は今後も変わらないでしょう。

弊社ではDMによるお客様へのアプローチは長い年月をかけて磨き上げてきましたが、それに比べるとデジタルはまだ注力し始めて日が浅い。デジタル領域は技術がどんどん進化していきますので、それをどう取り込んでいくかも含めてまだまだやれることがたくさんあると感じています。

※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

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