部署をまたいでお客さまに向き合っていく。CXワークショップを経てイーデザイン損保に生まれた変化

イーデザイン損保の販売するIoTセンサーを活用した新しい自動車保険「&e(アンディー)」では、KARTEとRightSupport by KARTEなどを導入し、異なる部署を横断してCX向上を目指した取り組みを進めています。導入の裏側や活用方法、今後の展望について伺いました。※取材日時点の情報です

イーデザイン損害保険株式会社(以下、イーデザイン損保)は、東京海上グループとNTTグループの提携のもと、通販型損害保険会社として誕生しました。設立以来、お客さまとインターネットや電話などを通して直接やりとりし、自動車保険を販売してきました。

2021年11月には「事故のない世界」を目指して、IoTセンサーを活用した新しい自動車保険「&e(アンディー)」(以下、&e)の販売を開始するなど、デジタルを活用して新たな施策を次々と手がけています。

同社は、&eのスタートを機に、基幹システムやCRMなどを刷新。合わせて、KARTEシリーズのKARTEとRightSupport by KARTE(以下、RightSupport)などを導入。異なる部署を横断して活用し、CX向上を目指した取り組みを進めています。

今回、イーデザイン損保 お客さまサポート部 企画開発グループリーダー 滝沢 豪さん、お客さまサポート部 企画開発グループ アシスタントマネージャー 植元 夢佳さん、CX推進部 アソシエイト 横山 似雛さんに導入の裏側や活用方法、今後の展望について伺いました。

デジタル技術を駆使し、新しい自動車保険を提供

まず、貴社の事業内容について教えてください。

滝沢:当社は「事故時の安心だけでなく、事故のない世界そのものを、お客さまと共創する。」をミッションに、ドライバーの方々に安全な運転を意識してもらい、事故そのものがない世界を共創することを目指して活動しています。

2021年までは従来の自動車保険をインターネットで販売していましたが、2021年11月から新しく、最新のIT技術を活用した新しい自動車保険「&e」を発売しました。そのタイミングで、基幹システムやCRMなども刷新。現在は&eを販売しながら、お客さまに安心安全をお届けできるようにデジタルの活用に力を入れています。

みなさんの部署の役割について教えてください。

滝沢:私と植元が所属するお客さまサポート部は、お客さまとの接点を担当する部署です。もともと、カスタマーサポートセンターとして有人対応の運営がメイン業務でした。以前は、電話を中心にお客さまをサポートし、最近では有人チャットやメール対応も含めてマルチチャネル対応を行っています。

さらに&eを開始して以降、チャットボットやFAQなど、お客さまに問題を自己解決していただくようなサポートも、お客さまサポート部の管轄となりました。人とデジタルの両方を融合したお客さまサポートを行っている部署です。

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イーデザイン損害保険株式会社 お客さまサポート部 企画開発グループリーダー 滝沢 豪氏

横山:私が所属するCX推進部は、保険商品の検討から申し込みのお手続き、契約期間中の体験や継続のお手続きなど、一連の流れにおけるお客さまの体験を向上させる部署です。前身はマーケティング部でしたが、&eの提供を始めるにあたり、お客さまの体験を高めていくためにCX推進部に名称を変更しました。

部署の編成は、私が所属するWebサイトを運用するWebチーム、お客さまとのコミュニケーションを担うコミュニケーションチーム、アプリを企画運用するアプリチーム、まだ&eを知らないお客さまに働きかけるプロモーションチームなどに分かれています。

(イーデザイン損保の組織再編の背景については、こちらの記事も合わせてご覧ください)

事故時の安心だけでなく、事故のない世界を共創する。保険業界の常識を覆すイーデザイン損保の目指すCX

課題は山積みでも、解決するための開発リソース不足で対応できない

KARTEを導入するにあたり、抱えていた課題はどのようなものだったのでしょうか?

植元:東京海上グループで情報共有会が定期的に開催されていて、そこでグループの一社から話を聞いたのが、KARTEを知ったきっかけでした。社内に持ち帰ってメンバーと一緒にKARTEの情報を調べてみて、「こんなこともできるんだ!」と盛り上がったことを覚えています。

当時の課題としては、Webサイトの保守、改善が3ヶ月に一度ほどの頻度でしか実行できないというものでした。やりたいことリストの項目は多いのに、なかなか希望が通らず、反映ができないという状態だったんです。

KARTEを導入できれば、待つことなく自分たちで施策を展開していけるようになるのではということで導入しました。

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イーデザイン損害保険株式会社 お客さまサポート部企画開発グループアシスタントマネージャー 植元 夢佳氏

RightSupportの導入はどのような経緯だったのでしょうか?

滝沢:&eをリリースするタイミングで、提供を目指すバリューである「究極の先回り:疑問や不安を感じない」や「究極の快適性:カンタン・わかりやすい・迷わない」などを実現したカスタマーサポートは、どのようなものになるのかということを考えました。

まずは、わかりやすいUIをつくってお客さまがつまずかないようにすること。そのうえで、わからないことがあればFAQで自己解決を促し、ご自身で解決が難しい場合はお問い合わせいただく形をトライしてみました。ですが、FAQのみではご不明点を解消いただくことは困難な状況でした。

その経験を踏まえて、チャネルの充実が重要だと考えてチャットボットなどを導入し、同時期にRightSupportも導入しました。これなら、FAQだけでは解決できないお困りごとに対応するために、お客さまの行動に合わせて提案するコンテンツを実装し、お客さまがつまずかない環境を用意できるのではと。

植元:RightSupportのことは展示会で知り、調べてみたらプレイドさんのグループ会社だとわかったんです。それですぐに社内で相談して、スモールスタートすることになりました。&eではお客さま体験を良くしていこうという考え方が中心だったため、スムーズにRightSupportのPoCを進めていくことができました。

KARTEシリーズを導入し、開発なしでさまざまな施策を実行可能に

KARTEを導入して、どのように活用していますか?

横山:CX推進部ではKARTEを中心に活用していて、現在大きく2つの目的で利用しています。ひとつは、お客さまの体験を良くするための課題が多々あるため、これらを改善するために開発せずにできる施策を実行しています。

もうひとつは、災害時にお客さまにすぐお知らせを出すために活用しています。損保は災害時にもお客さまに安心をご提供する使命を負っており、緊急時でも速やかにお客さまにご連絡する必要がありますが、KARTEでスピーディに緊急時の対応ができています。

以前は、課題解決のためにWebサイトの改修をしたくても、開発リソースが限られる中で、実施したいことの全てを実現できるわけではありませんでした。

開発の計画は年間でおおよそ決まっていて、スケジュールも定められています。そのため、年度内で開発を差し込むとしたら、相当緊急度や重要度が高い案件でなければ不可能でした。KARTEを導入してからは、お客さまの体験向上に向けた施策を実施する場合、CX推進部で完結できるので助かっています。

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イーデザイン損害保険株式会社 CX推進部 アソシエイト 横山 似雛氏

植元:お客さまサポート部では、RightSupportを主に活用しています。PoCの時点でさまざまな利用を想定していたので、導入後すぐにいろいろ施策を試してみました。RightTouchの方にサポートいただきつつ、見積もり結果が表示される画面にRightSupportでサポートウィジェットを出す施策を試してみたところ、良い結果につながりました。

ただ、その後はチャットボットとのすみ分けをどうするのかなど、運用の仕方を悩んだ時期が長く、思うように使いこなせない日々が続きました。「これはRightSupportでできそう」とアイデアは出るものの、なかなか施策につなげられない状態だったんです。

なにがハードルになっていたのでしょうか?

植元:大きな課題は、部署間の連携でした。Webサイトの更新はCX推進部が担っていますが、FAQやチャットボット、RightSupportはお客さまサポート部が担っている。両部署の間で、お客さま体験の課題認識をすり合わせる機会が十分に確保できておらず、カスタマージャーニーの全体を俯瞰した施策が打ち出せていませんでした。

滝沢:こうした課題を踏まえて、プレイドさんからのご提案で実施することになったのが両部署のメンバーが参加するCXワークショップです。

お客さまになりきって一連の行動を想像したことで施策検討がしやすく

CXワークショップはどのようなものだったのでしょうか。

植元:お客さまの行動を一連の流れで捉え、課題や解決のアイデアを考えるというものです。合計2回のワークショップを開催し、各回両部署から合計で十数名ほど参加しました。

1回目は、はじめてイーデザイン損保の自動車保険を検討する方に向けて、私たちに何ができるかを検討しました。お客さまの行動導線を想像し、どうWebサイトを訪れ、どのように商品を探し、申し込むのかを考えました。

2回目は、ご契約済みのお客さまに対して、お車の買い替えタイミングや年に1回の契約更新タイミングにおいてどのような課題があるかを検討しました。お客さまの体験をなぞりながら、どのようなことができるかのアイデアを洗い出しました。

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ワークショップの様子。お客さまの行動を付箋を使って考えている様子

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グループごとに発表する様子

CXワークショップを実施してみて、どのような発見がありましたか?

植元:以前から、お客さまの体験をひとつにまとめたカスタマージャーニーマップは社内にありました。ただ、各チームや担当者が具体的な施策を検討する際に、そのマップを活かしてお客さまのことを想像できていたかというと、そうではありません。

横山:カスタマージャーニーマップができあがった後に入社した、マップ作成当時の議論内容を知らないメンバーなどは、マップの内容を自分ごと化することがなかなか難しいという面はありました。自分ごと化できていないと、施策にするうえでの課題の優先度もつけづらい。CXワークショップを機に、参加メンバーでお客さまになりきって、改めてカスタマージャーニーを考えてみることで、かなり具体的に想像できるようになりました。

滝沢:お客さまサポート部では、カスタマージャーニーを踏まえて施策を考えるというアプローチ自体を実施していませんでした。体制が整ってきたので、お客さまとの接点をカスタマージャーニーをつくりながら整理したいと考えているタイミングで、CXワークショップのお声がけをいただきました。

以前は、カスタマーサポートはお問い合わせが生じた際にいかに適切な回答をするか、という点での捉え方になっていました。お客さまの行動を線で捉えてサポートしていこうという思考になっていなかったと思います。加えて、業界全体でもカスタマーサクセスをしっかり実現していかなければという機運も徐々に高まっていて、私たちも遅れないように対応していかなければ、とも考えていました。今回の経験を活かし、しっかりと進めていきたいですね。

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CXワークショップを経て、施策は変化しましたか?

横山:2度のCXワークショップを経て、数多くの施策アイデアが出ました。まずは、できる施策からやろうと優先度をつけて順番に取り組んでいます。まだ、リリースしたばかりの施策も多く、効果が出てくるのはこれからです。

たとえば、CXワークショップのときに挙がった課題に、お客さまが所有しているお車の情報を入力する過程で、型式を入れるステップのわかりにくさがありました。この課題を改善するための施策をKARTEで実施することになり、CX推進部の新規体験プロジェクトのチームがリードして進めて、9月末にリリースしました。

ほかには、事故・トラブル時の連絡先を掲載した携帯サイズの「ご契約者カード」についての改善要望の対応もあります。ワークショップで契約申し込みの後、ご契約者カードをつくってほしいというお問い合わせが多いという課題が出てきました。そのため、ご契約者カードを作成して、お客さまがダウンロードできる状態をつくり、それも8月にリリースしました。

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ウェブサイトからダウンロードしてお客さまが印刷ができるご契約者カード

植元:ご契約者カードの施策も、作成してお渡しするだけでなく、お渡しする時期や内容も工夫しました。今回は、つくったあとにどうしたらお客さまが利用できるかを考え、「このタイミングでほしいと感じるのでは」というページに、KARTEで埋め込みを行い、ご契約者カードへの導線をしっかりと用意しました。

ほかには、契約後にお車や補償内容を変更された方からのお問い合わせの対応もあります。契約内容に関連するお問い合わせが多く寄せられるのですが、そのうちのひとつが「自動車を変えたのに、保険証券の情報が昔のまま」というお問い合わせです。

保険会社側の都合で、お客さまがお車を変更したときにお申し込み時の契約内容の情報の一部しか出せず、お客さまには「変更承認書」と「保険証券」を合わせてご確認いただく仕組みになっているんです。ただ、これはお客さまにとってわかりにくい。

現在のご契約内容が確認できる「契約証明書」という書類も用意はしていたのですが、この存在がなかなか伝わっておらず、保険証券だけをチェックするお客さまが多かったのです。

契約内容を変更したお客さまに対しては、最新の契約証明書への導線をページの一番上に設置して、ダウンロードできるように変更しました。

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保険証券等のダウンロードページにおいて、契約証明書をページの一番上に変更

お客さまと接する現場メンバーとの距離も縮まり、行動への解像度も高まる

CXワークショップを経て、さまざまな変化が生じているのですね。

植元:お客さまと直接コミュニケーションする役割のメンバーとの連携も変わっていきそうな手応えがあります。カスタマーセンターには、お客さまからの電話を受ける「安心アドバイザー」という役割、そして安心アドバイザーから相談を受ける「スーパーバイザー」という役割があります。

日頃から、お客さまと対話しているメンバーからどのような声が出てくるかは気になっていたので、2回目のCXワークショップではスーパーバイザーを担っているメンバーにも参加してもらいました。

CXワークショップで良い意見交換ができたことをきっかけに連携も深まり、スーパーバイザーも交えて、お客さまから寄せられている声をふまえて改善要望を共有する会議を週一ペースで実施するようになりました。スーパーバイザーから課題の共有だけでなく、改善のアイデアも合わせて提案してもらえるように動き始めています。

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CX推進部のほうでもCXワークショップを経て変化はありましたか?

横山:これまでもお客さまサポート部との接点はありましたが、カスタマーセンターの現場メンバーから生の声を聞く機会はありませんでした。CXワークショップに参加したメンバーは、自らの課題感をカスタマーセンターの現場メンバーに共有して、議論することでお客さまに対する解像度を向上できたと思います。

改めて、CXワークショップを開催したことの手応えについて教えてください。

滝沢:開催してよかったですね。以前、カスタマーセンターはカスタマージャーニーをつくる際はヒアリングされる立場でした。多様な担当者の知見を集めて、一緒につくっていけたのはとても重要な経験になりました。これが単発の取り組みで終わってしまうと、CXワークショップに参加した人たちだけの経験になってしまうので、いかに継続するかが大切です。

お客さまの体験を向上させるためには、カスタマーセンターとCX推進部の連携は欠かせません。そのためには整理したカスタマージャーニーを更新しながら、現在進めている施策をきちんと管理できるようにする必要があります。各部署が単発の施策を進めるだけでは、お客さまの体験向上にはつながっていかない。部署をまたいでお客さまに向き合っていくために登るべき階段はたくさんありますが、試行錯誤しながら登っていきたいですね。

横山:CX推進部でも、担当領域の枠を超えてじっくりお客さま体験について考える時間を設けるのは、日々忙しく業務をこなす中で決して簡単ではありません。担当領域に限らず、お客さま体験全体をどうしたらよくしていけるか?を考えられたのはとてもよい機会でした。

CXワークショップを経て、KARTEの使い方にも変化はありますか?

横山:部署を横断して課題について議論し、施策をやってみようと決めたあとは、RightSupportを使うのか、KARTEを使うのかを話し合っています。KARTEでやろうと決まれば、CX推進部に持ち帰って、プロジェクトチームに渡したうえで、チーム内で優先度をつけて対応してもらっています。CXワークショップを経て、施策の実行もスムーズになりました。

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プロダクトを活用し、人間とデジタルのサポートが融合した状態を目指す

今後、KARTEやRightSupportを活用してやっていきたいことがあれば教えてください。

滝沢:今年は、お客さま体験を磨き上げていくことを計画に盛り込んで推進しています。まずは、お客さまがつまずかない導線をつくる。そのうえで、発生するお困りごとを簡単に解決に導けるようにコンテンツを最適化したり、適切にサポートウィジェットを出したりして、取り組んでいきます。

それでもお困りごとが解決できない場合、有人サポートが必要です。このサポートを改善するために、お客さまのお困りごとに応じて最適なオペレーターやチャネルへの接続ができる「RightConnect」の導入も含めて、対応していきます。人間によるサポートと、デジタルによるサポート、2つを融合させてよりよいお客さま体験の実現を目指していきます。

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植元:RightSupportを活用して、お客さまがお困りごとを自己解決できるようになれば、お問い合わせの電話をする必要もなくなります。その分、電話を受ける安心アドバイザーたちの時間が増え、直接のお問い合わせが必要なお客さまを成功に導くための対応に集中できるようになるはず。そのためにも、カスタマーセンター全体で、お問い合わせ起点ではなく、お客さまの体験を想像しながら対応ができるようになっていかなければ、と考えています。

横山:CX推進部では、よりお客さまにパーソナライズした施策を実行していきたいと考えています。

直近では、見積もり結果画面に「見積もりドクター」という、補償プランに無駄や漏れがないかを電話で相談したりWebでチェックしたりできる新規見積もり限定サービスをご案内するサポート施策をRightConnectで出しています。お客さまに不安が生じた際、電話で相談したい方は電話で、自己解決が可能な方はWeb上のコンテンツで、といったようにお客さまに合わせた対応を進めています。

ほかにも、はじめてLPを訪れる人と、2回目に訪れるお客さまでは、持っている情報量が異なり、知りたい情報も異なるため、LPへの訪問回数でセグメントを分け、表示する情報を変えてもいいのではと考えています。普段からアプリを活用しているお客さまには、Webサイトのマイページに掲載する情報を変更するなどのパーソナライズも検討できます。一人ひとりのお客さまに合わせた施策を、KARTEを通じて実施していきたいですね。

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