進化し続ける銀行を目指してKARTEを活用。住信SBIネット銀行アプリのCX向上への取り組み
最先端のITを駆使したイノベーションにより銀行のイメージを覆す先進的な取り組みを進めている住信SBIネット銀行。そのUXを支えるUXデザイン部の川崎将史さんと岩井佐也子さんに、KARTE導入のきっかけや活用方法などを伺いました。
2023年3月にネット銀行として国内で初めて上場した住信SBIネット銀行株式会社。創造と変革の実現に向け、最先端のITを駆使したイノベーションにより銀行のイメージを覆す先進的な取り組みを進めています。
今回は、住信SBIネット銀行のUXを支えるUXデザイン部の川崎将史さんと岩井佐也子さんに、KARTE導入のきっかけや活用方法などを伺いました。
進化し続ける銀行を目指して
住信SBIネット銀行が大事にしていることを教えてください。
川崎将史さん
川崎:住信SBIネット銀行は、インターネット専業銀行としてこれまでの銀行のあり方をアップデートし、銀行の枠を超えたテックカンパニーとして、社会をもっと便利に、豊かなものにすることを目指しています。
例えば、どこよりも早く銀行APIを開放したり、決済、預金、貸出といったさまざまな銀行機能をパートナー企業に提供するBaaSプラットフォーム「NEOBANKⓇ」のサービスの提供など、テクノロジーを駆使した国内初の取り組みを積極的に推進しています。
われわれが所属しているUXデザイン部のミッションは、お客さまにご満足いただけるよう最適な顧客体験をデザインし、お客さまと組織の関係性をより良いものに発展させていくこと。また、最先端のテクノロジーを誰でもわかりやすくスピーディに提供することで、利便性の高い機能やサービスを徹底的に追求し、銀行を常に進化させ続けることをミッションとして掲げています。
川崎さんと岩井さんの経歴について教えてください。
川崎:私はこれまでに、ウェブ制作会社でディレクターやプロデューサーを経験してきました。前職で初めて金融業界に関わるようになり、サービス企画やアプリの制作などをやっていました。
岩井:私は2010年に新卒でSBIホールディングスに入社しています。そこから7年くらいSBI損害保険にいて、そこでのキャリアの後半はマーケティングを担当していました。
もう少しマーケティングでできる幅を増やしたいと思い、住信SBIネット銀行に異動しました。そこで過ごしているうちにUXデザインに興味を持ち、現在はUXデザイン部に所属し、UXの開発案件のフロントエンドの取りまとめなどに携わっています。
岩井佐也子さん
御社はBaaS(Banking as a Service)事業を展開されています。この事業について教えてください。
川崎:BaaS事業は、2年ほど前から始めています。最近ですと、プロ野球チームの北海道日本ハムファイターズさんと一緒に「F NEOBANK」というサービスを始めました。
ファンの方々に向けて球場内で決済できる機能など、金融サービスのハブとなるようなサービスや機能を提供しています。他にも、日本航空様やヤマダデンキ様などとそれぞれの企業のお客さまに対し金融サービスを提供する取り組みを進めています。このような提携パートナーは今後も増えていく予定です。
提携パートナー様と一緒に、お客さまにわれわれの金融サービスを身近で便利に活用いただける機会をどんどん増やしていきたいと思っています。銀行業に参入したい、魅力を感じているという企業は結構いらっしゃいますが、自社でライセンスを取るのは難しいです。そういう企業にわれわれのBaaSを活用いただき、お客さまとのエンゲージメントを高めてもらえればと思います。
KARTE導入によって効果検証が簡単に
KARTEを導入いただいたきっかけを教えていただけますか
川崎:KARTEは、2022年の夏に導入しました。導入前の課題としては、お客さまとの主要な接点のアプリにおいて、銀行機能を知っていただく、使っていただくために訴求できる領域が限られており、それを改善したいということです。極端な話、ポップアップが出せればいいと最初は考えていました。
いくつかのツールを比較検討した中で決め手となったのは、グループのSBI証券での導入実績があり結果が出ていることと、CX Clipに豊富な事例が掲載されていたこと。SBI証券の担当者にもヒアリングをして、業界を牽引するリーディングカンパニーのプロダクトを使うのが良いと考えたので、KARTEに決定しました。
KARTE Liveで顧客を知り、適切なご案内を。ストレスフリーな体験を目指す、SBI証券カスタマーセンターの取り組み
岩井:KARTEを導入してみて、ここまでたくさんの機能があることを想定していなかったので、使ってみるといろいろなことができて、本当にびっくりしました。最初はとりあえずKARTEにあるテンプレートをひととおり見て、これ使えそうだよねみたいな会話をしながら使えそうなものを使っていました。
川崎:まずは機能を把握しようと思い、ポップアップ、埋め込み、アンケート、チュートリアルなどテンプレートの種類や掲出場所、タイミングの変更といった切り口で施策を出してみました。スケジュールを決め、いつまでに施策を実行するか考えました。最初にこのような軸で進めたおかげで、早い段階でいろいろな機能にひととおり触れました。
また、KARTEだと施策のA/Bテストでのリフトアップ(接客による純粋な効果)がすぐに分かる点は便利だなと思いました。これまでの施策の効果検証は、複数のツールを組み合わせて効果検証を行っていたのでどうしても高頻度で検証できなかったのですが、KARTE導入後は毎日傾向を確認し、臨機応変に追加施策などを検討できるようになりました。
ユーザーのことがだいぶ想像できるようになってきた
現在は何名くらいでKARTEを運用していますか?
川崎:常時触るのは3名です。毎週一回の定例会議で施策面の振り返りや今後の施策について話しています。
今後は事業部でも使えるようになるといいかなと思っています。実際にサービスを使っている人の動きや考えていることがKARTEを通じて見えてくると思うので、事業を企画、提供している部門の人にとっても大事だと考えています。
ユーザーを知るためにKARTEはどのように活用していますか
川崎:当初は接客のためにKARTEを利用するイメージだったのですが、プレイドのカスタマーサクセス担当の方にユーザーの知るための機能を教えていただき、その後は接客よりもよく使うようになりました。一番衝撃的だった機能は、お客さまのサイト上での行動を動画で再現して確認できる「KARTE Live」です。行動分析と改善に活用しています。
一つ例を挙げると、口座開設フォームのCVRが上がらず、理由が分からないということがありました。しかし、KARTE Liveでフォーム入力の動きを見るとキャンペーンコードを入力する欄で躊躇し、離脱していることが明らかになりました。コードを持っていないお客さまが迷ったり、どこかにあるのかもと離脱したと考えられます。補足の説明を入れてユーザーが迷わないように改善しました。
他にも、施策を打ったときに次の改善案のアイデアを広げていくために、 ユーザーストーリーでの顧客の行動を見てn1分析をしています。ピックアップした方の行動を見て「こう思っているんじゃないか、こういう施策をしてみたらどうだろう」という話をチームでしています。
ネット銀行なので実際にお客さまと対面でお会いすることはないのですが、KARTEによってお客さまのことがだいぶ想像できるようになってきました。この行動の裏ではこういうことを考えているんじゃないかという想像ができるようになったので、そこに対して何か手を打つ。さらにその想像や打ち手が合っているか間違っているかもすぐに管理画面で分かるので、原因を考えつつ次の手を考える。こういうことをずっと繰り返せるというのはすごくいいと思っています。
岩井:n1分析をしていると、時間がすぐに経ってしまうのは嬉しい悩みです。最初はKARTE Liveのようなユーザーの行動を見られる機能があることを知りませんでしたが、プレイドさんとの定例会でサポートしていただき、使い方を教えてもらってからは楽しく使っています。
ジャーニー機能を活用し、ユーザーの目的ごとに施策を変える
KARTEに期待していた点について、現在はどのように感じていますか?
川崎:期待通りで今のところは違和感はありません。一つのツールでPDCAを回せるところがいいです。KARTE導入前は、一つの施策に対して複数人が関わっていました。例えば企画を考える人とデザインする人、実装する人などと分業していました。それを一人で全部やれるようになったので、施策を考え実行し改善までやるという「施策への思い入れ」が強くなったと思います。
岩井:もう一人の担当はコーディングスキルもあるので、技術的に難しい部分があったら相談しながら活用しています。接客も自社でテンプレート化し、変数もカスタマイズして活用することがすごく楽だというのをみんなで発見し、展開しています。
KARTEは住信SBIネット銀行さんのお客さまの初期稼働からアップセル、クロスセルと幅広い範囲で活用されていますね。
川崎:いま一番強く活用したいのは口座開設後のお客さまにどれだけ使っていただけるかというところです。あとはカスタマーサポートの領域も活用していきたいと考えています。
部署としてのKPIは、初期稼働率です。口座開設してくれたユーザーが定期的に来てくれている数値です。口座開設の翌月にもログインして使っていただく方を増やすためになにをすればいいのかを考えています。
例えば、口座開設後に入金してもらえると、ちゃんと翌月もログインしていただけるので入金を促したり、デビットカードの設定が終わっていない方に、設定方法をお伝えするチュートリアルを出してあげるなどして定期的にサービスを利用してもらえるようにしています。
入金を促したり、入金後にお客様の悩みに応じた案内をするための接客例
岩井:ジャーニー機能のおかげでお客さまの行動ステップに応じた案内がしやすくなりました。口座開設した後にセットアップが終わった方に対しては入金してくださいと促したり、入金が終わった後にはアンケートを取って、何を目的に口座開設したかを聞きます。アンケートの回答をセグメントとしてそのまま施策に活かせるので、さらにそこから口座開設の目的ごとに施策を変えています。
このジャーニー機能の活用はまだ始めたばかりなので、これからもっと型を作っていきたいと考えていますし、型ができればBaaS事業の各提携先でもパッケージのような形で提供できるんじゃないかと考えています。口座開設からのカスタマージャーニーは似た行動を取ると思うので、鉄板施策として用意できると思っています。
ジャーニー機能の画面例
KARTEの社内利用定着化を図るために実施したことを教えてください。
川崎:自社のサイトとアプリのデザインに合わせた接客のひな型を作りました。ボタンの色など、細かいところの統一感を図りたかったので、ひな型を作って誰が使っても困らないようにしました。他にはとにかく機能を使ってみることと、最初の頃はKARTEの機能の発見大会をしていました。週に一個は発見を共有しようという会です。
岩井:「この機能でこんなことができたよ」とか、「ここからこう見ると早いというの知ってましたか?」みたいなことを共有する形ですね。
クリエイティブの変更によってクリック率が88%改善
KARTEを活用して効果を感じたことを教えてください。
川崎:われわれのサイトには動的ページと静的ページがあります。静的ページは自由に変更できるのですが、動的ページは一部を除き、自分たちでは変更できません。変更するには社内手続きが必要ですし、時間もかかってしまいます。
例えば動的ページでシステムに組み込まれている一文を差し込みたい場合は、システム担当に依頼して改修してもらう必要がありました。それがKARTEであれば、簡単に動的ページにも一文を差し込めます。クイックに試せるのは価値があると思っています。
岩井:接客サービスのPDCAを回すことで、早期立ち上げができました。掲載位置や訴求ポイントやクリエイティブなど、段階的なABテストを複数実施することで、最適化を図りました。クリエイティブ変更によって、クリック率は88%改善した例もあります。
KARTEにあるテンプレートを活用することで、導入開始から4ヶ月でポップアップやアンケートや埋め込みなど、アプリで約80件の接客を実施できました。
KARTEで得られたユーザー理解を社内の共通認識にしたい
今後、KARTEを活用してやっていきたいことを教えてください。
川崎:われわれが知見を得るだけでなく、各事業部に還元していきたいです。KARTEを活用することで分かるお客さま像やサービスを使う人の実際の動きや傾向を共通認識として持っておくことでサービス自体を良くすることにつながると考えています。
データ統合のために「KARTE Datahub」も活用して、われわれがデータベースに持っている顧客情報とKARTEの情報を連携して活動を行っていきたいです。
今後サービスとして目指していきたいことを教えてください。
川崎:世の中が銀行に抱いている”当たり前”を変えていきたいです。個人的には、KARTEなどのツールを使ってPDCAを回せる人材をどんどん増やしていきたいと思っています。スピードを大事にする企業文化は大事にしつつも、振り返りまでちゃんとできる人材を増やしていきたいです。われわれの部署でそういう人材を増やしていって、その人材が違う部署に行ったらそこでPDCAの文化を広めていく。そうすることで、会社組織としても進化しつづけていくと思っています。