データを活用して膨大で多様な作品をユーザーの好みに合わせて訴求する。「コミックシーモア」のKARTE活用事例
今年で20周年を迎えるコミックシーモアでは、KARTE、KARTE for App、KARTE Datahub、KARTE Blocks、KARTE Craft、Emotion Tech、プロフェッショナルサービスであるPLAID ALPHAなど、複数のプロダクトやサービスを導入。KARTEシリーズの導入背景や活用の様子、今後の展望についてお話を伺いました。
NTTソルマーレ株式会社は、スマートフォンを通じたコンテンツやエンターテインメントサービスの領域で事業を展開しており、日本最大級の電子書籍配信ストア「コミックシーモア」を運営しています。
今年で20周年を迎えるコミックシーモアでは、KARTE、KARTE for App、KARTE Datahub、KARTE Blocks、KARTE Craft、Emotion Tech、プロフェッショナルサービスであるPLAID ALPHAなど、複数のプロダクトやサービスを導入。
今回、NTTソルマーレ 電子書籍事業部マーケティング部門長の石井 隆祐さん、電子書籍事業部販売統括チームの前田 絵美さん、電子書籍事業部サービス企画チームチーフプロデューサー増山 裕樹さんの3人にKARTEシリーズの導入背景や活用の様子、今後の展望についてお話を伺いました。
膨大な量のコミックと、一人ひとりのユーザーの好みをマッチングしたい
コミックシーモアの事業内容について教えてください。
石井:私たちは、20年前の2004年にコミックシーモアの原型となる、ケータイ向けコミック配信サービス「コミックi」をスタートしました。2010年にサービス名称を「コミックシーモア」に変更。2012年からはスマートフォンに対応し、Webサービスとして運営を続けてきました。
現在では、取り扱う電子書籍は国内最大級となる約145万冊を超え、毎月Webサイトの訪問数は4000万UU以上と、非常に多くの方々に使っていただいています。類似サービスと比較すると、男女比が4:6で女性が少し多いという点が特徴となっています。
私たちがもっとも力を入れているのは、値引きやポイントバック、クーポン利用などのキャンペーンの企画です。月1000本以上のキャンペーンを実施しており、他社と比べてもキャンペーンの質と量には自信を持っています。
手間をかけたキャンペーンの例を挙げてみますと、少し前に「あなたの青春タイムマシーン」という企画を実施しました。生まれた年代を入力すると、同じ年代の作品が表示され、SNSなどでのシェアを促すという企画です。
NTTソルマーレ 電子書籍事業部マーケティング部門長 石井 隆祐氏
石井:こうしたキャンペーンは、社内で企画している場合もあれば、出版社様と相談しながら生まれるものもあります。
電子書籍がなかったガラケー時代から、出版社の方々と一緒に取り組んできたこともあって、出版社との関係構築ができていることも、コミックシーモアの特徴のひとつですね。
先行配信という形として、数カ月間はコミックシーモアだけで作品を掲載してもらうといった対応をしてもらうなども、ここ数年取り組んできたことです。
そのような取り組みの背景にはどのような課題があったのでしょうか?
石井:コミックシーモアのお客様は、他にも複数のサービスを並行して使う方も多くいらっしゃいます。そのことを前提として、コミックシーモアを選んでいただく頻度を上げるにはどうするかを考えなければなりません。
大切なのは、Webサイトの使いやすさや作品との出会いやすさだと考えています。「一人ひとりのお客様に合う作品を紹介して、読み進めてもらい、漫画を好きになってもらいたい」「漫画を読んでこなかったという方にも、フィットする作品をおすすめして漫画の良さを知ってもらいたい」と考え、試行錯誤を重ねてきました。
一方、取り扱う漫画の種類は多く、内容やジャンルもバラバラの状態。人によって漫画の好みも変わってきます。膨大な数の漫画と、お客様の好みをマッチングさせるのは非常に大変です。従来のキャンペーンによる人力でのマッチングにも限界があると感じていたので、仕組みで解決できないかと考えていました。
リアルタイムにデータに合わせて施策を実行できる環境を構築
KARTE利用前はどのようにデータ活用をされていましたか?
石井:ちょうどDWH(データウェアハウス)をBigQueryに変えようと検討していました。以前のDWHでは自社データの分析しかできなかったのですが、BigQueryにGoogle Analyticsのデータや他の外部データも取り込んで、データを統合して活用できる状況をつくりたいと考えたのです。
また、以前使っていた他社のWeb接客のツールでは、お客様のデータを活用するには毎回DWHからCSVをダウンロードして、ツールにアップロードする必要がありました。CSVを出すにも、社内で依頼をして抽出してもらい、チェックをしてからアップロードしてはじめて施策に活かせる状態。これに約3週間ほど時間がかかっていました。
つまり、以前は3週間前のお客様のデータを踏まえたコミュニケーションになっていたんです。キャンペーンのターゲットは、数ヶ月連続で課金している方や初めて利用する方など、細かく絞って企画をしていました。その際に用いるデータが3週間前のものだったのでタイムラグが大きく、適切なコミュニケーションが難しい状況でした。
サービスとしては「ここを超えたらユーザーが定着する」という鍵となるポイントがあり、そのポイントを基準に目標を設定しています。施策実行のタイミングと、用いるデータに時間差があると、適切なタイミングで、適切なターゲットに接客できません。リアルタイムにデータを活用できるようにすることは、非常に重要な課題でした。
KARTEを知ったきっかけについて教えてください。
石井:数年前に一度KARTEのトライアルを実施したこともあって、KARTEのことは社内では把握していました。そのときは当社のデータベースが整っていなかったこともあり、うまくデータを活用して使いこなせなかったと聞いています。以前と状況も変わり、データの環境が整ってきたこともあって、再度検討することになりました。
複数のサービスを比較検討する中で、データをしっかり活用してWeb接客にまでつなげられるのは、KARTEの大きな利点だと感じました。また、機能面だけではなく、サポート面と機能開発のスピードというのも重視しましたね。
プレイドさんはどんどんプロダクトの開発を進められていて、われわれもサービスをスピード速く伸ばしていきたい中でKARTEを活用してご一緒させていただくのがいいのではないかと思い、KARTEの導入を決定しました。
KARTEを活用してスピーディな仮説検証が実行可能に
普段、KARTEをどのように活用していますか?
前田:コミックシーモアを使い慣れているお客様は、ご自身で探して作品を購入しています。新しいお客様は、まだ情報量の多いサービス画面に慣れていないため、作品を探す際に迷う傾向があります。新しいお客様に向けて、作品を読むきっかけを提供できると次の購読につながりやすくなるため、そのための施策においてKARTEをいろいろと活用しています。
たとえば、新しいお客様がなにかの作品を読んだあと、次の作品をおすすめする際に、通常のランキングとは別で、人気が急上昇している作品をお伝えしています。このレコメンドは良い結果につながっていますね。
ほかにも、ポイントを増量するキャンペーンを訴求する際にもKARTEを活用しています。
また、複数の作品を購入している方や、続刊・続話が出る際に通知があると、継続利用につながりやすい傾向があります。最近では、お客様が読んだ作品のカテゴリーなどに応じて、おすすめする作品を変えるなども試し始めていて、今後はさらにパーソナライズしたおすすめをしていけたらと考えています。
NTTソルマーレ 電子書籍事業部販売統括チーム 前田 絵美氏
KARTE Blocksも活用されていますね。
石井:KARTEを使ったWeb接客以外にも、KARTE BlocksでWebサイトのA/Bテストを実施しています。KARTE Blocksは、WebサイトのA/Bテストをもっとスピーディーに実施したいと考えて導入しました。最近では、A/Bテストで検証できたことを本実装につなげることもできるようになっていて、いい変化が生まれています。
KARTE BlocksでのA/Bテストはどの程度の数実行しているのでしょうか?
増山:まだ使い始めたばかりなので、そこまで多くはありませんが、9月は10個ほどのA/Bテストを実施しました。
たとえば、コミックシーモアでは無料で閲覧できる作品も掲載していて、これをバナーで訴求するのがいいか、書影をいくつか並べて訴求するのがいいかをA/Bテストしました。書影のパターンの結果が良かったため、無料作品の訴求は書影で行っています。
ほかにも、トップページで作品紹介をする際、書影、作品名、作家名と情報量が多く、「作家名はいるだろうか?」と疑問が生まれて、ありなしをA/Bテストしてみました。結果はどちらも変わらなかったので、いまは作家名の記載はなしにしています。
サポート面はどのように活用されていますか?
前田:基本的には定例会議でカスタマーサクセスの担当者に相談しています。そのタイミング以外に不明点が出た場合は、チャットサポートを活用しています。カスタマーサクセスやチャットサポートをふくめて、十分すぎるほどのサポートだと感じています。なにか新しい施策をやろうとした際、ものすごい数の提案もいただいて、「ここまで提案してもらえるのか」と驚きました。
チームのアイデア発想が活発になり、社内からの相談も増加
KARTEシリーズを導入してみての手応えはいかがですか?
前田:導入したばかりのころは、管理画面が運用担当者の目線に合わせて作られていると感じました。同時に、やれることが多いので、使いこなせるかなと少し不安もありました。まずは一つひとつ施策を配信してみて、少しずつ施策数を増やしていきました。
使い慣れていくにつれて、いろいろと応用もできるようになりました。以前のツールは、自由度が低く、作業的な使い方しかできず、施策を実行しても次に活かせるような発見が得られにくかったのです。
KARTEを使うようになってからは、「これができるなら、次はこんな施策を試してみよう」と、アイデアや意見がメンバーからも活発に出るようになりました。自分たちでセグメントをいろいろと設定できるようになったことが、大きな要因だと考えています。
「このイベントが発火したときに接客したい」「この属性の人たちに向けて接客したい」といった設定が自分たちで実行できるようになったことで、アイデアも出やすくなりました。以前のツールでは、セグメントも自由に設定できませんでしたし、タイムラグもあったので、これは大きな変化ですね。
KARTEに関わる人たちでの定例会議などは実施していますか?
前田:やりたい施策や改善案は、毎週のチームミーティングで相談しています。仮説を持った状態で相談や議論を実施するようにしていて、実施後にはデータを見ながら振り返りも行っています。この振り返りの内容にも変化が生まれています。
購買がゴールということもあり、以前は購買促進以外の認知目的施策などの結果は見てはいるものの、強く気にしてはいませんでした。ただ、あるとき施策の結果を振り返る際に、少しセグメントの条件を変えてみたんです。クリック率は変わらなかったものの、接客数が大幅に減った影響で施策の参加人数が半分に減ったということがありました。
このときに、クリックされていなくても、ポップアップが視認されることで、お客様の認知に影響しているという発見がありました。その発見があってからは、データだけではなく、施策の中身も振り返るようにしています。
KARTEは社内でも認知されているのでしょうか。
前田:社内からとても好評で、使ってみたいとよく言われます。管理画面は多くのメンバーが閲覧できるようにしていることもあって、ユーザー行動の分析レポートやユーザーの動きがわかるユーザーストーリーなど、さまざまな角度から分析された結果を活用しています。
こうしたレポートを見たうえで、社内の各所で検討が進んで、「こんな配信をしたい」と依頼がくるようになっています。ユーザーストーリーを見た人からは、「ここまでユーザーの行動がわかるんですね」という反応も多く寄せられています。
石井:
当社には「シーモアコミックス」という漫画編集部もあります。そこのメンバーからは自分が手掛けた作品の訴求を強化するため、KARTEで接客を出してほしいと相談してくることも珍しくありません。実際にKARTEで接客を出すと、数字も伸びるので、どんどん相談が来るようになっているんです。
前田:KARTEで接客を出すかどうかは、お客様にとっての価値を踏まえて判断し、作品の中身や認知度などに合わせて調整しています。すべての相談を扱っていると、かなりの量になってしまいますから。セグメントを絞り込むことで対応することもあります。
行動データやNPS®調査で顧客の理解がさらに進む
KARTEを導入したことによる変化はありますか?
前田:KARTEを導入してから、明らかに施策の数が増えましたね。大変なこともありますが、逼迫はしていません。これだけ数が増えても運用できているのは、KARTEというツールのおかげだと思います。
石井:計測面でも変化があります。以前はセッションのなかのどこで購入になっても、同じように計測していたのですが、プレイドさんに特別にクエリを組んでもらって、より細かく行動が計測できるようになりました。おかげで、お客様がどの情報を見てから購入したかもわかり、総合的にお客様に向き合えるようになりました。
その他、顧客の理解が進んだと感じることはありますか?
増山:エモーションテックさん(プレイドのグループ会社)に協力いただいて、NPS®調査も実施しています。NPS®は以前から実施したかったのですが、具体的にどう実施するのか、結果はどう分析するのかなど、わからないところもありました。
エモーションテックさんの協力で、NPS®調査が実施できただけでなく、KARTEと組み合わせての分析が可能になったのは大きな変化です。NPS®調査後に作成いただいているレポートも非常に参考になっていて、今後も年2回ほどは継続してNPS®調査を実施していこうと考えています。
NTTソルマーレ 電子書籍事業部サービス企画チーム チーフプロデューサー 増山 裕樹氏
※ネット・プロモーター® 、ネット・プロモーター・システム® 、ネット・プロモーター・スコア®及び、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。 eNPS℠はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの役務商標です。
NPS®調査では、どのような発見がありましたか?
石井:最初は「テレビCMは本当に効果がある?」などの確認をする意味合いが大きかったですね。過去にもアンケート調査などは実施していましたが、直接お客様に聞いたことはなかったんです。
NPS®調査を実施したことで、私たちが伝えたいメッセージがお客様に伝わっているかどうかを確認できました。調査の結果をもとにさまざまなキャンペーンに取り組んでいます。
直接、サービスの使いやすさについてのご意見もいただけているので、そういったフィードバックはUIやUXの改善に落としこんで、順次対応を進めています。
国内外に漫画の面白さを広めていくためにサービスを拡張
最後に、これからKARTEを使ってやりたいことがあればお伺いさせてください。
石井:現在、KARTEは、国内サービスであるコミックシーモアを中心に利用しています。今後は、海外向けのサービス「MangaPlaza」でも活用を進めていきたいと考えています。国内サービスは、数多くのお客様に使っていただけるものに成長しましたが、MangaPlazaはこれから。MangaPlazaも、KARTEをつかってお客様の定着に向けた取り組みを進めていきたいですね。国内については、お客様の好みや関心にあった作品を、KARTEをつかって自動的にお届けしていくことに挑戦していきたいと考えています。
前田:お客様にとって、コミックシーモアがいろいろな作品との接点の場になればと考えているので、そのための施策をどんどん実行していきたいですね。KARTEをつかって作品だけじゃなく、キャンペーンについてもパーソナライズして接客していけたらと考えています。
増山:以前は、Webサイト改善に時間がかかっていましたが、現在ではKARTE Blocksを使いながら、柔軟に変えられるようになってきました。この部分は今後も強化していきながら、どんなWebサイトにしていくかを検討していけたらと思います。
前田:あとは「作品へのコメントに対し共感ボタンを用意して、共感した人数が表示される」施策で、KARTE Craftを利用する予定です。会員数がとても多いので、最初はベータ版として対象を絞って実施してみます。この施策を実行することになったきっかけは、キャンペーンの企画をしている部署からの「ユーザー参加型の施策をやりたい」という相談でした。こうしたカスタマイズした企画も、今後はチャレンジしていきたいですね。
今後、サービスとして目指していきたいことがあれば教えてください。
石井:私たちは、漫画を読んでくださる方を増やすためにサービスを拡張していきたいと考えています。具体的には、コミックシーモアでは「まずはここに来たら漫画を楽しむことができる」と認知してもらって、どんどん漫画の面白さを体験していただき、MangaPlazaではしっかりとサービスを立ち上げていこうと考えています。
オリジナルコミック事業のシーモアコミックスは、販売サイトを運営する会社内に漫画を作る編集部があることは大きな強みだと考えています。販売と制作とうまく連携しながらシーモアコミックスの事業を育てていけたらと思っていて、ここにもうまくKARTEを取り入れていきたいですね。