店舗の体験をアプリでも実現へ。顧客体験の向上と運用効率化の両立を目指したオーケーのKARTE活用
首都圏と関西に160店舗のディスカウントスーパーを展開するオーケー株式会社は、オーケークラブ会員カードアプリにKARTEを導入。実店舗経験を持つIT本部の若手メンバーが「お店でしか分からない商品の良さを、お客様に伝えたい」という想いで取り組んだ活動から、さまざまな成果が得られています。今回は、その活動の背景とKARTEの導入背景や活用方法についてお話を伺いました。
オーケー株式会社は、1都3県と関西にディスカウント・センターおよびディスカウント・スーパーマーケットを展開しています。同社は、会員限定の割引サービス「オーケークラブ」を運営しており、776万人(2025年3月時点)以上が加入しています。
2024年、「お店でしか分からない商品の良さを、お客様に伝えたい」という想いのもとオーケークラブ会員カードアプリにKARTEを導入し、店舗業務を経験していた若手メンバーが顧客体験の改善に取り組んだといいます。
今回、オーケー株式会社 IT本部店舗業務システム部の長岡 雅之さん、光吉 桃花さん、高橋 南帆さんの3名にKARTEの導入背景や活用方法、導入後の変化、今後の展望についてお話を伺いました。
実店舗での体験をアプリで再現し、商品情報を届けたい
まず、貴社の事業について教えてください。
長岡:オーケーは「高品質・Everyday Low Price」を経営方針とし、関東および関西に160店舗(2025年4月現在)のディスカウント・センターやディスカウント・スーパーマーケットを展開しています。当社の特長である低価格を維持するために、さまざまな取り組みを行っています。
また、オーケークラブ会員になると、現金支払い時に酒類を除く食料品の本体価格の3/103(3%相当額)が割引されます。この会員サービスは「オーケークラブ会員カードアプリ」でも利用できます。

オーケー株式会社IT本部 店舗業務システム部 店舗支援グループ マネージャー 長岡 雅之氏
みなさんの役割について教えてください。
長岡:IT本部 店舗業務システム部 店舗支援グループにてマネージャーを務めています。主にネットスーパーやアプリなど、顧客接点があるシステムの運用を担当しています。
光吉:私は2023年度にオーケーに新卒で入社しました。学生時代にオーケーの青果売場で4年間アルバイトしていた経験があり、現在は開発パートナーとのコミュニケーションやコンテンツの運用を担当しています。
高橋:私も2023年度に新卒で入社しました。入社後に実店舗の青果売場で半年間勤務した後、2023年10月からIT本部に配属となっています。学生時代にデザインを学んでいたこともあり、デザインやクリエイティブの業務を主に担当しています。

アプリとして顧客に提供したい体験はどのようなものなのでしょうか。
長岡:アプリでは、毎週月曜にオーケーが厳選したおすすめ商品が配信されるほか、お客様が店舗で購入した商品の履歴を確認できるなど、さまざまな機能を提供しています。
弊社では商品情報紙としておすすめ商品の紹介を行っておりますが、店頭にいらっしゃったお客様以外にはなかなかお届けすることができませんでした。そこで、アプリをリリースすることで私たちからお客様に向けて商品情報をお届けできるようにしました。
「顧客体験の向上」と「運用効率化」の両立を目指す
KARTE導入前には、どのような課題があったのでしょうか?
長岡:主に3つの課題を抱えていました。
まず1つ目は、それぞれのお客様にあわせてパーソナライズされた情報をお届けすることが困難だった点です。一律の配信ではなく、ニーズに合わせたレコメンドを行いたかったのですが、運用コストやデータの扱い方など、さまざまな面で障壁がありました。
2つ目は、購買履歴などのデータを十分に活用できていなかった点です。オーケーでは会員データ、購買履歴、商品マスタなどあらゆるデータを分析基盤に集約しており、それらをリアルタイムに活用できる仕組みが整っているにも関わらず、有効活用ができていませんでした。
3つ目は、運用メンバーの負担が大きかったことです。コンテンツ配信のフローが複雑化していて、顧客体験を向上させようとすればするほど、手間と時間がかかっていました。
KARTEを導入する決め手はどのようなポイントだったのでしょうか?
長岡:大きなポイントは、ネットスーパーですでにKARTEを導入していたことと、「KARTE Datahub」を社内データベースと双方向につなぐことで、自由度の高いデータ活用が可能になる点でした。これによりアプリでも社内のデータを自在に扱うことができました。
さらに、別システムのフォームで入力したコンテンツをKARTE Datahubを通じてアプリに掲載する仕組みを構築できる柔軟性も魅力でした。これらの点が、データを有効に活用しつつ運用効率を大きく高められると判断し、KARTEの導入を決めました。
KARTEの導入に加え、光吉や高橋のように実店舗での接客経験があるメンバー3人がIT本部に異動してきたことが、「顧客体験の向上」と「運用効率化」の両立プロジェクトをはじめるきっかけとなりました。IT本部は店舗業務を経験したことがないメンバーがほとんどでした。そこへ、お客様が実際に店舗で商品を手にとる様子を見てきたメンバーが入ってきて、その体験をアプリでも実現することを目標としてプロジェクトがスタートしました。
データと連携してレコメンドやコンテンツの自動配信を実現
導入後、具体的にどのようにKARTEを活用しているかを教えてください。
長岡:まず、購買履歴を集計し、KARTEを通じてお客様にパーソナライズした商品をレコメンドできるように対応しました。たとえば、過去の購買データをもとに一人ひとりに合わせておすすめ商品の並び順を変更しています。
商品をおすすめするために、どのような施策を実行しているのでしょうか?
長岡:過去3ヶ月以内の購入額が多い商品を優先的に表示し、買い物メモ機能のおすすめ商品としてもレコメンドしています。

過去3ヶ月以内の購入額が多い商品を買い物メモ内に表示するまでのデータの流れ
長岡:ほかには、アプリのホーム画面のおすすめ商品に、過去3ヶ月以内にお客様が店舗で購入した商品カテゴリのうち購入額の多いカテゴリの商品から優先的に表示することで、お客様の嗜好に合った商品を見つけやすくしています。

アプリのホーム画面のおすすめ商品に過去3ヶ月以内の購入額が多い商品を優先的に表示するまでのデータの流れ
レコメンドする際のコンテンツ配信の仕方にも工夫があるのでしょうか?
長岡:はい。別システムの入力フォームと連携する仕組みを構築し、運用メンバーがコンテンツを登録すると、自動的にKARTEで配信できるようにしています。KARTEは、各種データベースとの親和性も高く、開発側も運用側も使いやすい仕組みとすることができました。この施策はIT本部のなかにアプリ運用のチームを組成したことで実現できたと考えています。同じチーム内でアプリを運用しながら、すぐにデータにアクセスしてログ集計ができる環境があったからこその施策だと思います。
配信するコンテンツはどのように制作しているのでしょうか。
高橋:配信するコンテンツのクリエイティブは毎週つくっています。翌週に配布予定の商品情報紙の内容を事前に見て、どう表現したらお客様に関心をもっていただけるかを考えながら、3人で週20本前後の量を制作しています。
長岡:このほかにも、お客様がアプリ内の商品一覧からいずれかの商品をタップした際に、商品データベースから自動生成したコンテンツをポップアップで表示し、よりリッチな情報提供を行えるようにしています。

商品データベースから自動生成したコンテンツをポップアップで表示するまでのデータの流れ
KARTEを使ったユニークな取り組みですが、どのように実現していったのでしょうか?
長岡:社内の定例会議などで、相談や議論を繰り返しながら仕組みを考えていきました。プレイドの担当の方にも随時相談しつつ、進行していった形です。社内にあるデータをなんとか活かせないかと考え、実際に試してみたものについても、ほぼすべて形にできました。KARTEは自由度が高く、「これをやってみたい」と思ったことは、やり方次第でほとんど実現できていると感じています。
運用効率が大幅に向上し、メンバーが他の業務に集中可能に
お二人はIT関連業務も初めてだったかと思います。施策に取り組むなかで、変化はありましたか?
高橋:少しずつではありますが、確実にお客様理解が深まってきたと感じています。最初は「とにかくやること」を目的としていましたが、試行錯誤を繰り返すうち、徐々にお客様が何を求めているのかが分かるようになってきました。
1週間の配信を行い、その翌週の月曜日にどれだけタップされたか、タップした人が購入に至ったかなどを効果検証しています。すると、タップ数は多いのに購入されないケースや、タップ数は少ないものの購入につながっているケースなど、さまざまなパターンがあることが見えてきました。さらに、コンテンツ内のフォントが小さいと、読みづらくなってしまいますし、色合いによって目立ち方が変わるため、タップ率も大きく変動します。そうした検証結果をもとに、デザインやレイアウトにもいっそう気を配るようになりました。

オーケー株式会社 高橋 南帆氏
KARTEを通じた施策によって、どのような成果が得られたのでしょうか?
長岡:大きく3つの成果がありました。
1つ目は、運用効率の大幅な向上です。これまで2人がかりで施策の配信と確認を行うのにかかっていた時間をトータルで30%以下に削減できました。
2つ目は、ビジネス連携の強化です。設定や確認作業が短縮されたことで、運用メンバーがプロモーションに集中できるようになりました。たとえば、クリスマスケーキの予約受付など、季節・イベント特有の施策に集中できるようになりました。さらに、関西での出店に伴う商品登録作業が増えた際にも、スピーディに対応できました。これは大きな変化ですね。
光吉:ウイスキーの抽選販売の施策では、バイヤーや店舗とのコミュニケーションを担当し、チームのメンバーを頼りながら一緒に考えて施策を実行しました。アプリの新しい機能がリリースされる際には全店舗向けに運用の説明会を開催しているのですが、これも運用が効率化され、余裕ができたことで実現できていると思います。

オーケー株式会社 光吉 桃花氏
長岡:3つ目は、顧客体験の向上です。アプリの改修を必要とせずKARTE Datahubのクエリ上で修正した結果がアプリに即時反映されるためトライアンドエラーのサイクルが飛躍的に速くなりました。レコメンドロジックを改善することで、アプリを開いたタイミングで最適な商品を提案できるようになり、レコメンドした商品のタップ率やお買い物メモへの追加数が増えています。
社内全体にKARTEを活用して得た知見を広め、新たな価値を生み出す
組織面ではどのような変化があったのでしょうか?
長岡:人材の育成や組織的な柔軟性が高まっていると感じています。ITが未経験の若手社員も施策の運用に携わり、KARTEを使ったデータ分析や施策の実行を担うようになっています。
高橋:他部署との連携も増えました。たとえば、惣菜の部門からは「この情報をアプリで伝えてほしい」と連絡をもらって、私たちで対応しています。店舗にも、どの商品がアプリに掲載されるのかという情報も共有されています。

KARTEが他の部署の方にも認知されていますね。その他に、KARTEでメリットを感じている点はありますか?
長岡:KARTEは開発時のつなぎこみの自由度が非常に高いと感じています。データベース同士を相互につなぐことができて、そこに入っているデータをKARTE上でしっかりと活用できるのは大きな利点ですね。
最後に、今後の展望を教えてください。
光吉:オーケーにはオリジナル商品があるのですが、実際にはまだあまり知られていないことが多いと思います。そこで、全体に向けた配信や、セグメントを絞った配信などの施策を活用して、アプリから売上に貢献できたらいいなと考えています。
高橋:アプリに限らず、会社全体の方針として、関西のお客様の認知度や利用数がまだ少ないのが現状です。今後は関西のお客様にも、さらにご支持いただけるように、さまざまな取り組みを進めていきたいと考えています。
長岡:現在は購買履歴や外部データとの連携を中心に活用していますが、今後はさらにさまざまなデータソースを組み合わせて、顧客体験のさらなる向上を目指したいと考えています。たとえば、店頭で掲示している値上げ前にお買い求めいただくことをおすすめするPOPや、よく購入される商品が値下げしたことをお知らせするなど、お客様一人ひとりに最適化したサービスを提供できるはずです。
また、プロモーションだけでなく、店舗スタッフの業務効率化など、全体にKARTEを活用して得た知見を広げていくことも視野に入れています。今後も引き続きKARTEを活用しながら、新たな価値を生み出していきたいと考えています。