データ分析に裏付けされた施策で、アプリ経由の購入率が向上!パルが実施した顧客分析による効果とは?

雑貨ブランド3COINSのほか、50ものアパレルブランドを展開するパルは、すべてのグループブランドの情報発信や販売を行うWebサイトとアプリ「PAL CLOSET」を運営している。同社では最近、アプリ経由の売上が伸びている。その成長には、プレイドが提供する「KARTE」での顧客体験改善とプロフェッショナルサービス「PLAID ALPHA」による、ユーザー分析データから得た示唆が大きく貢献したという。どのような示唆を得て施策へと転換していったのか。パルの髙橋貴宏氏と名嶋恵佑氏、プレイドの中野康平氏に話を伺った。

アプリPAL CLOSETの売上を伸ばすパル

今回はパルのアプリ「PAL CLOSET」で実施した、データに裏打ちされたCX設計について伺います。まずは自己紹介をお願いできますか。

髙橋 :パルのWeb事業推進室で、ECのマーケティング責任者をしています。自社ECをはじめ、他のモールでの出店も含めて50ほどある全ブランドをサポートすべく、全体の戦略設計や戦術マーケティングを統括しています。

名嶋 :パルのWeb事業推進室でECサイトおよび自社アプリ「PAL CLOSET」のマーケティングを担当しています。プレイドさんが提供するKARTEを使ったUI改善や、KARTEに蓄積された顧客データに基づいてアクションの設計などを行っています。

中野CXプラットフォーム「KARTE」や、CX変革に向けた全体計画の設計から実行までを一気通貫で支援するプロフェッショナルサービス「PLAID ALPHA」を提供するプレイドで、アパレル領域をメインにセールスを担当しています。

共感を得るSNS投稿が、アプリの集客へとつながる

生活者がオフラインに回帰していますが、ECやアプリなど、デジタルにおける顧客の動きはどのようになっていますか。

髙橋 :コロナ禍を経験して、オンラインの接点はお客様にとって欠かせないものになりました。その状況は変わらず、現在ではオンラインでの顧客接点を強化すれば、リアル店舗の売上にもつながることがわかっています。そのため我々の担うデジタルマーケティング領域のミッションは弊社の中でも大きくなっています。

特にアプリPAL CLOSETはお客様とのつながりを強化できる場所なので、昨今力を入れていて、会員数は大きく伸びています。

アプリPAL CLOSETはどのように、会員数を伸ばしていったのでしょうか。

髙橋 :元々このアプリは、全ブランドの紙のポイントカードを一元化するための会員証としてスタートしました。そこから、世の中のオムニチャネル化の波などに対応するべく、EC機能や商品情報といったコンテンツを追加していきました。

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株式会社パル WEB事業推進室 マーケティング・ディビジョン長 WEBプロジェクトグループ統括責任者 髙橋貴宏氏

髙橋 :パルでは、コロナ禍よりも前からInstagramを中心に各ブランドスタッフの個人アカウントによる情報発信を強く推奨してきました。各スタッフが自由に発信し、体型や年齢、ライフステージなどを切り口にすることで、投稿を見るお客様の共感を得られました。

以前のブランディングは憧れの存在になることが大事でしたが、今はマスからSNSへとプロモーションが変わり、生活者に親近感を持っていただくことが大事になっています。そのためスタッフ個人のInstagramでの投稿を入り口にWebサイトへと流入し、そこからアプリのダウンロードをしていただくという流れで、アプリのユーザー数を増やしてきました。

アプリ会員を増やし、LTVの高い顧客を獲得する

なぜ今、アプリの会員獲得に力を入れているのでしょうか。

髙橋 :大きくはLTVの観点です。Webサイトでは一度購入していただいても、2回目、3回目の購入へとつなげづらいところがあります。しかし一度アプリをダウンロードしていただければワンタップで立ち上がりますので、ブランド想起や次の購入につながりやすくなります。もう一つは、スマホは生活者が普段触れるデバイスであることです。購入の約95%がスマホ経由ということからも、いかにアプリをダウンロードしていただけるかを重視しています。

名嶋 :会員証機能があることもあり、アプリをダウンロードしたお客様はリアル店舗、ECどちらも使ってくださる方が多く、その点もLTVが高くなる理由の一つです。

そのためアプリへの訪問を習慣化していただくことが大事だと考え、アプリを開くだけで毎日1ポイントもらえる「check-in ポイント」を3年以上前から継続しています。このサービスを導入してから、MAUが一気に上がりました。

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株式会社パル WEB事業推進室 CXディレクター 名嶋恵佑氏

各ブランドの世界観を重視して、別々のアプリやECにしようという話にはならなかったのでしょうか。

髙橋 :そういった話は出ました。しかし、開発予算がブランドごとに分散して小さくなり、予算の都合から中途半端なものになったり、やりたいことを実現しきれなくなったりするというデメリットがあります。1つに集約して予算をまとめることで、大きな変化をもたらす取り組みができるのではないか。その方が各ブランドにとっても良い効果をもたらすのではないかと考えました。

さらなるアプリ成長を目指し、課題解決を行う

アプリの成長をより加速させるために、どのような取り組みを行ったのでしょうか。

名嶋 :パルとプレイドさんのお付き合いは長く、2016年ごろより利用しています。初めはWeb、次第にアプリやその他の顧客接点でも活用が広がりました。そこから売上の増加やアプリの成長にしたがって、今までより解像度の高い顧客理解が必要になってきました。チームからも「アプリのお客様って、どんな人でどんな行動をしている?店舗メインのお客様とどう違うんだっけ?」といった疑問が出てきた形です。

髙橋 :加えてデータはあるのに、「アプリユーザーの行動特性」といった俯瞰した分析ができていない課題がありました。解決策を模索する中、KARTEだとWebとアプリを横断して、1ユーザーの行動データを確認できる特徴があることを知りました。今後さらにアプリを強化するには、意味ある顧客群を捉えて行動パターンを知り分析していくことが必要だと考え、2023年にプレイドさんにご相談しました。

中野 :KARTEはポップアップを出したりレコメンドを表示したりとコンバージョンを上げるのが得意なツールだと思われている面があるかと思います。しかし、そうした適切なコミュニケーションで売上向上を実現するためには、クライアント企業の顧客の膨大な行動データを適切に計測・蓄積していることが大前提になります。

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株式会社プレイド Sales&Origination Sales Manager 中野康平氏

中野 :だからこそ、データを弊社のプロフェッショナルサービス「PLAID ALPHA」で分析することで、様々な示唆を取り出せるのではとご提案しました。まずは売上が向上していたアプリの分析から取り掛かりましょうということになりました。

名嶋 :KARTEでは顧客行動のデータが細かく取れます。それらを分析することで得られる示唆があるのではないかと、大きな期待がありました。

PLAID ALPHAのレポートから得た示唆を施策へとつなげる

PLAID ALPHAでは、どのような分析データを提供したのでしょうか。

中野 :KARTEで収集したデータに加えてパルさんのリアル店舗でのデータをご提供いただき、それらを組み合わせて分析していきました。そして、アプリの使用状況などに関する30数ページに渡るレポートを5回に分けてお出ししています。

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CX変革を加速するプロフェッショナルサービス「PLAID ALPHA

中野 :たとえば、「アプリやWebそれぞれでどのように商品検索をして購入に至っているのか」といったお客様の行動のほか、購入に関するユーザー行動の分析を行っています。ユーザーがアプリを起動した時は常に購入を目的としているわけではないので、目的による行動の違いもレポートしています。

また、ブランド別のECでの年間売上、会員数、年間購入者数、1人当たりの年間売上平均額とあわせて、ブランドごとの特徴も分析しました。

さらに購入経路の分析から「アプリユーザーとWebユーザーの店舗購入経験との関連性」に着目したり、アプリの中でどの画面、どの部分がタップされ、どこを経由して購入に至っているのかを機能ごとに出したりもしています。

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レポートのイメージ

レポートからはどのような示唆が得られましたか。

髙橋 :弊社ブランドの中でも、雑貨の「3COINS」の人気が高いので、多くのお客様がパルブランドと接する入口となっています。しかし、その方々があまりアパレルブランドで購入していないという分析結果から、各ブランドにつながりを生み出せていないという課題が見えました。また、3COINSのお客様はWebサイトからの購入が多いこともわかりました。

そこから、「3COINS」のお客様にアプリをダウンロードしていただき、アパレル購入にもつなげていく取り組みを進めていこうと、方向性が見えてきました。

中野 :3COINSのように商品単価が安い場合、送料無料ラインに到達するまで多くのアイテムをカートに入れる必要があります。そこでアプリよりタブを複数開いておけるWebブラウザの方が買い物しやすいことが理由の一つではないかとも話しましたね。

得られた示唆から、アプリのUIを調整。購入率の向上につながる

レポートから得られた示唆の中から、具体的な施策や効果につながったものはありますか。

名嶋 :アプリユーザーはお気に入り登録からの購入率が高いことがわかったので、アプリのホーム画面に「ニュース」「ホーム」と並んでお気に入り一覧を表示する「♡」のタブを追加してより前面に押し出すことにしました。

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左:2023年5月当時、右:2024年5月のアプリホーム画面イメージ

名嶋 :お気に入りに登録されたアイテムが値下げされたり在庫数が残りわずかになったりした際にKARTEを使ってアプリでプッシュ通知できます。お気に入りユーザーやお気に入り登録されるアイテム数が増えれば、必然的に購入の確率が上がっていきました。

この取り組みだけの成果とは言いきれませんが、お気に入り登録からの購入はさらに増えました。

中野 :価格や在庫数の変動をアプリでプッシュ通知するのはアプリを立ち上げるきっかけになるので、お気に入り登録を増やすことは売上向上に貢献しやすい施策ですね。

今後の展望や展開についてお聞かせください。

髙橋 :アプリの利用者数や売上は毎月伸びていますので、「WebサイトのECから購入するものの、アプリは利用しない方々」はシェア数だけを見るのではなくて、KARTEで見られる様々な行動データをきちんと見て行動パターンを読み解くことで、アプリユーザーへと導く解決策を見つけていけたらと考えています。

名嶋 :今後も引き続きKARTEを使ってスピーディにアプリやWebの改修は続けていきますが、KARTEは個へのアプローチが得意なツールなので、よりパーソナライズに力を入れていきたいです。

中野 :KARTEはPDCAを高速に回せるマーケティングツールとして、これまでマーケターの方が思いついた施策をすぐ試行錯誤できる点に価値を見いだしていただいてきました。今後は、PLAID ALPHAで分析した顧客データを用い、マーケティングに限らず事業における自体に様々な場面でご活用いただけると思います。

こうした貢献はまだできていないところもあるので、パルさんを始めとするクライアント企業の方々により一層知っていただき、活用いただくことで取り組みを加速させていきたいです。

(この記事は、翔泳社「MarkeZine」で2024年6月14日に公開された記事を転載しています)


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